その日の夜
紬「上手くいくかしら…」
私達はムギの家にいる
相変わらず画面には隠しカメラの映像
澪「…カメラは撤去するんじゃなかったのか?」
紬「上手くいったらしますわ♪」
…あの土下座は何だったんだ?
紬「ハルヒまであと1時間ですわ」
澪「そうだな…」
画面を見ると梓はもう寝ているようだ
律は起きてるけど、珍しく勉強している
先生には電話で話をした
半信半疑だったが、『見ない』と約束をしてくれた
その先生は今一人で晩酌をしている
澪「唯は…」
紬「起きてるわ」
画面には、先週と同じ場所でテレビを見ている唯の姿があった
澪「唯…」
スッ
澪「…電話する」
プルルル
紬「澪ちゃん止めて!!!覗きがばれちゃう!!!!!!」
澪「上手くやるから大丈夫」
紬「ああああああああああくぁwすぇでrftgyふじこl」
ガチャ
唯『…もしもし』
澪『唯…か』
唯『…うん』
澪『…ハルヒ…見るのか?』
唯『…うん』
澪『最後のお願いだ。頼む、止めてくれ』
唯『…嫌』
澪『どうして!!!』
唯『だって…』
唯『見なきゃ………………………………夏休みが終わっちゃう!!!!!』
澪『え…………?』
今なんて?
見なきゃ
終わっちゃう??
澪『ゆ、唯…』
唯『ねえ、そこにムギちゃんもいるんでしょ?みんなで見よ?』
唯『りっちゃんやあずにゃん、さわ子先生とも一緒に見て』
唯『…エンドレスエイト、やろう?』
澪『……』
唯『時がたてば、みんなと離れ離れになっちゃう』
唯『みんな遠くへ行っちゃう…そんなの耐えられない』
唯『だったら、みんなで終わらない時間を過ごそう?ハルヒ見れば記憶もリセットされるから辛くないよ…』
澪『……』
唯の言葉は続いた
なぜこんなことが出来るかはよく分からないと
ただ「エンドレスエイトが欲しい」と願っただけだと
するとそれが叶ってしまったと
そして
唯にも繰り返してる自覚はちゃんとあると
澪『唯…一ついいか?』
唯『…何?』
澪『…この2週間を何回繰り返した?』
唯『…もう覚えてない…でも15000回はいってると思う…』
澪『なっ―――!!』
唯『でも辛くないよ。だってみーんないるもん』
言葉が出てこない
私やムギは10回の自覚でもう限界だったのに…
唯『…もう切るね。ハルヒが始まる…』
澪『唯!!待て!!』
澪『私は…私はどこにも行かない!!』
唯『気休めなら止めて』
澪『そんなんじゃない!!』
澪『高校卒業したって、大人になって結婚したって、年をとってしわしわになったって!!!』
澪『唯は大事な仲間だ!!!』
唯『澪ちゃん…』
澪『唯だけじゃない!!律もムギも梓も、みんな仲間だ!!!』
澪『大事な……放課後ティータイムの…仲間なんだよ…』ポロポロ
唯『………』
澪『楽器を持ってくれば、いつだって戻ってこれる』
澪『ううん、楽器が無くたって、みんなでお茶をすれば、いつだってどこだってあの音楽室になる』
澪『だから…同じことの繰り返しじゃなくて、もっといっぱい思い出を作ろ?』
澪『いつかみんなで音楽室に帰ってきたとき、いっぱい話せるようにさ…』
唯『澪ちゃん…』ポロポロ
澪『…学園祭でライブやろ?また先生の恥ずかしい衣装着てさ』
唯『…うん』グスッ
澪『またクリスマスにパーティーしよう。憂ちゃんに料理頼んどいて』
唯『……うん』
澪『そんでみんなで初詣に行って、あ、またさわ子先生がおみくじ引きまくってるかも♪』
唯『うん……うん…』
澪『どう?15000回の夏休みより何倍も楽しそうでしょ?』
唯『うんっ!!!!』
澪『だから…ハルヒは……』
唯『……うん、分かった』
澪『唯……』
唯『…ごめんね今まで。私…みんなのこと信用してなかった』
澪『……』
唯『でももう大丈夫!!頑張れる…気がするよ』
澪『うん』
唯『あ、そこにムギちゃんいる?』
澪『いるよ。変わろうか?』
唯『ううん、伝言だけお願い。『――――』って』
澪『ふふっ、分かったよ』
唯『…澪ちゃん、色々ありがとう』
澪『唯も、分かってくれて嬉しいよ』
唯『…ねえ澪ちゃん』
澪『?どうした?』
唯『勝手にいなくなったりしたら、また繰り返すからね』
澪『大丈夫。勝手になんか消えないよ』
唯『良かった♪じゃあおやすみ澪ちゃん』
澪『ああ、おやすみ唯』
澪「ふう…」
これで、なんとかなったのだろうか…
パチパチパチ
澪「!?」
紬「名演説でしたね。私感動しました」ウルウル
澪「やめて恥ずかしい///」
紬「うふふふ///」
澪「あそうだ、唯から伝言」
紬「?」
澪「『明日のケーキは食べ飽きたから、違うのにしてね♪』だってさ」
紬「ふふっ、いつもの唯ちゃんね」
澪「そうだな」
次の日
律「約束どおり、ハルヒ見なかったぞ」
見てたから知っている
梓「まあしばらくしたらようつべにうpされてますよ」
律「そーだな。というか今日見れないかな?」
とまあ、これまでとは違う会話がなされたが、この日も基本的に私の知っている通りだった
そして8月31日
紬「いよいよね」
澪「大丈夫…だよな…」
唯「…多分」
時刻は23時59分になった
すると
いつもの急激な眠気が
私達に襲い掛かる
ことは無く
時計の針は無事に9月1日0時を指し示した
澪「………やった」
紬「夏休みが…ようやく終わりました…」
唯「…よかった」
澪「唯…」
唯「澪ちゃん…」
澪「もうすぐ学園祭だ、しっかり練習しないとな!!」
唯「うん!!!」
紬「うふふふ」
唯「………あ、ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
唯が妙な声を出した
澪「ど、どうした唯!?」
唯「夏休みの宿題……終わって…ない…」
澪「はぁ!?」
紬「あらあらあら」
唯「どどどどうしよう…」オロオロ
澪「15000回も夏休みやってたのに…」ハァ…
唯「……もう一回、繰り返さない?」
澪紬「ああん!!!??」ギロッ!
唯「う…うそ…で…す」
まったく…それは冗談に聞こえない
とまあ何はともあれ、私達は無事にエンドレスエイトを終了した
律と梓と先生は最後まで自覚がないようだった
他のクラスメイトも何も知らない様子だった
エンドレスエイトに気がついていたのはどうやら本当に私とムギだけだったようだ
紬「どういう仕組みだったんでしょう…?」
きっと…唯が離れたくないと思った人だけ、エンドレスエイトに入ったのだろう
それはハルヒを見ることで記憶をリセットし、ループが続く
永遠に
澪(って、ただの推測だけど)
真実は唯にも分からない
そしてその唯はというと…
唯「みんなー!!練習練習!!!!学園祭近いんだよっ!!」ジャラララーン
律「えー、もう少しダラダラしようぜー」
唯「だめだよりっちゃん!!本番はいい演奏しないと!!」
梓「…唯先輩、なんか気合入ってますね、どうかしたんでしょうか…」
紬「澪ちゃんの愛が届いたんですよ♪」
澪「あ、あれは、愛というか、なんと言うか……」
梓「え…まさか澪先輩って……そっち側なんですか…」ササッ
澪「ブッ」
紬「実はそうなのよ。私と一緒///」
梓「……ドン引きです…」
澪「ムギ!!真顔でデタラメ言うな!!!」ドタドタ
紬「きゃー!!澪ちゃんに犯される~」バタバタ
律「ムギーお茶ー」
唯「こらーみんな!!練習するよーー!!」
澪「はぁはぁ…まったくもう…」
とまあ
エンドレスエイトを経て
一回り進化した軽音部は
いつかまたみんなで音楽室に帰ってくるために
今日も思い出を作ります
夏休みを15000回程度繰り返した位じゃ
絶対に生まれない
素敵な思い出を
―FIN―
最終更新:2010年01月26日 00:20