唯「ながくーあまいーくちづーけをかーわすー」
澪「くっ、くちづけっ?!」
律「おっ!それ、なんだっけ?」
唯「えっとー…この前テレビでやってた!」
律「昔流行ったんだよなー!」
唯「まさに、昔の人たちの特集でした!」
び、びっくりした…。
唯が突然歌い出したその歌は、私とムギが、昨日お泊りした日に交わした…///
律「澪?なーんで赤くなってんのかなぁ~?」
私は律に顔を覗かれて、自分の顔が熱くなっていることに気づく。
澪「な、なんでもない!」
慌てて否定するところが、また怪しい…そんなことを言われそうなタイミングで、ムギがお茶を淹れて戻ってきてくれた。
紬「今日はアップルティーでーす!」
唯「いいにおーい!」
律「やっぱり、ムギの紅茶は美味しそうだ!」
澪「そ、そうだよな!」
今突っ込まれたことを思い出して、ムギを見る。
ムギは目が合うと優しく微笑んでくれた。
紬「おかわりもあるから、言ってね?」
律・唯「はーい!」
律は、アップルティーとお菓子のうまさで、私の異変を忘れてるみたいだ。
紬「澪ちゃん!」
突然、ムギから声をかけられ驚いた。
思ったより近くにいて、昨日の事を思い出す。
澪「ひえっ!」
なぜか私の身体はムギと反対方向に逃げてしまい、そして、案の定ー。
ガターン!!
澪「いたた…」
紬「大丈夫?!」
澪「う、うん…ちょっと擦りむいたかも…」
律「何やってんだよー澪ー」
唯「へ、平気ー?」
澪「大丈夫だよ!ちょっと、保健室に絆創膏もらいに行ってくる。」
紬「私も行くわ!」フンス
澪「だ、大丈夫だから、さ」
紬「一緒に行かせて!」
律「もしかして、怪我をした友達を保健室に連れて行くのがー。」
紬「夢だったのー!」
そう。表向きの理由はそうだったの。
でも、本当は違う。
大事な人だから、そばに居たい。
二人の時間が欲しかった。
人気のない廊下になると、私は澪ちゃんの手を握った。
流石に今度は少し抵抗されちゃったけど、私たちは手を繋いで、保健室の入り口まで歩いた。
澪ちゃんの手は、優しくて暖かい。
そして、唇は柔らかくて優しいー。
澪「あれ…?誰もいないみたいだ。」
その言葉を待ってました!
私は遠慮せずに澪ちゃんの後ろから抱きつくと、澪ちゃんは少し悲鳴をあげた。
優しく私の腕をほどくと、そこには赤い澪ちゃんの顔。
やっぱり、澪ちゃんは可愛いわぁ。
澪「び、びっくりさせないでくれ!」
私はそういって、ムギと少し距離を取る。
自分でも顔が赤いのがわかるくらい顔が火照ってる。
ムギは大胆すぎる!
紬「嫌だった…?」
そう言って少ししょげているムギも魅力的だ。
あぁ、なんでこんなに可愛いと思ってしまうんだろう。
あ、何か良い詩が浮かびそうだ。
私が何も言わないことを、受諾と受け取ったのか、ムギはまた距離を詰めて来た。
こういう時のムギは積極的だ。
澪「ちょっ、ちょっとまっー。」
ムギを止めようとしたけど、遅かった。
ムギの唇は、すでに私の唇の上に…。
と、思った私を殴りたい。
ムギは私の腕を引き、机の上にあった消毒液を手に取った。
紬「まず消毒よね?」
私の考えを見透かしたのか、ちょっとイタズラに笑ったムギ…。
それもまた、可愛いムギの一面だった。
優しく治療をしてくれるムギをぼーっと眺める。
窓から差し込む日の光が、髪の毛に反射して、ムギの美しさを一層際立てて…。
お、また良い詩が…。
紬「はい!終わりました!」
そんなことを考えていたら、治療が終わったようだ。
ムギは手際よく、治療をしてくれた。
さすが、夢だっただけはあるのかも。
なんて、感心をして、ムギに目線を戻す。
ムギは目を閉じて、私からのキスを待っていた。
澪ちゃん!チャンスよ!
私はそんなことを思いながら、目をつむった。
保健室の先生はいつ帰ってくるかはわからないけれど、私は澪ちゃんのくちづけが、欲しかった。
澪ちゃんもおそらく、想像していたのだと思う。
これは、絶好のチャンスよ!
紬「んー…」
わざと、物欲しそうに声を出す。
澪ちゃん、キスして?
数分の間の後、澪ちゃんは意を決したのか、ふーっと、息を吐いてる。
紬(そろそろね…!)
昨日のキスが忘れない…。早く!
でも、私達のキスはお預けになっちゃった。
保健室の先生が帰って来てしまったの。
慌てて取り繕って、外へ出ると、二人で同じタイミングで溜息をついて、笑っちゃった。
澪「やっぱり、学校は危ないな」ハハハ
紬「そうね」フフフ
また二人っきりになりたいと、切にそう思った。
好きな人と過ごす一週間はあっと言う間だった。
もちろん、軽音部の皆と過ごしているのも、大きいけれど。
キスをし損ねた次の日、私はムギにもちかけた。
澪「今週末、もし良かったら、うちにー。」
ムギはいい終わるや否や、「行きます!」
と、即答してくれた。
それが今日。今日は二人で料理をすると、約束した。
ムギは思った通り、車に乗ってやって来た。
以前とは違う車だ。
紬「お邪魔します!」
澪「いらっしゃい」
紬「ご両親は…?」
澪「帰ってくるけど、夜遅いんだ。友達呼ぶことは言ってあるから大丈夫。」
友達じゃなく、恋人と堂々と言えないことは、切ない。
けれども、私達は、好き合っている。
愛し合っている。
ムギは荷物を玄関に置くと、すぐにキスをした。
熱く甘いくちづけをー。
久々のキスは、何分経ったか…私の方が、求めていたのかも。
澪「…」
紬「…ん」
私達は互いに見つめ合って息を整えると、またくちづけ合う。
澪「…ムギ…」
キスの合間に名前を呼ばれて、少し我に帰った私は、澪ちゃんを見つめる。
赤く染まった澪ちゃんの顔は、本当に愛おしい。
澪「そ、そろそろご飯の準備しないか?」
気づいたら、辺りは暗い。
本当にどれだけの時間、キスしてたのかしら!
少しいきすぎたキスに、流石の私も恥ずかしくなってしまった。
私はこんなにも、澪ちゃんが好きなんだ。
普段お料理をする私をお手伝いしてくれる澪ちゃん。
こんな未来が、日常になってくれたら…私は切に願う。
きっと、澪ちゃんも、そう思ってくれるだろうな…。
澪「ムギはやっぱり、上手いなぁ」
ムギ「包丁捌きは、シェフ直伝です!」フンス
澪「シェ、シェフ…」
紬「うふふ」
澪「なぁ、ムギ?」
突然呼び掛けられ、顔を向ける。
すると、澪ちゃんからの嬉しいサプライズキスが!
紬「ど、どうしたの?!」
澪「…笑ってるムギが可愛くて…つい」
もう!どうしてそんなテクニックを!
可愛いわ!澪ちゃん!
どうして、キスをしたんだろう。
私はいつか、律たちの前でも、ムギにキスをしてしまいそうだ。
料理がら完成して、二人で食べさせ合いっこをする。
澪「美味しい!」
紬「えへへ…この味は…」
澪「シェフ直伝!」フンス
紬「残念!ばあや直伝です!」
澪「違うのか!」
紬「和食は基本的にばあやなのー」
澪「その人もただものじゃないんだろうな、きっと…」
私は改めてムギの家との違いに、驚いた。
でも、ムギは、私と変わらない女の子だ。
夕食の片付けも、もちろん二人でやる。
こんな幸せな未来が、くるといいなと、思う。
澪「今日は泊まれる…?」
紬「もちろんよ!」
そう言って笑うムギが、何よりも癒しだ。
前みたいに一緒にお風呂に入って、ムギの家のベッドには負けるけど、二人で私のベッドに入ろう。
澪「ムギ」
紬「なぁに?澪ちゃん」
澪「もう少しだけ、またキス、しよう?」
おわり
最終更新:2011年11月20日 20:26