17. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/09/02(金) 01:14:55.96 ID:o3ynrZxQo
  ――私が和の妹から手紙を受け取り  騒動の末に記憶を取り戻してから1ヶ月が経っていた―

  そして私は再び差出人不明の手紙で呼び出される。

////////////////////////

  ――葉書は2枚来ていた
  
  1枚は『桜高軽音部、同窓会のお知らせ』と題された何の変哲もない内容だ。

  だがもう1枚はとても不可解だ、書かれていたのはたった一言

  『犯人はあなただ』


    場所は……桜ヶ丘女子高等学校音楽準備室
    時間は……明日の正午



  ……まさかな

//////////////////////////
19. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/09/02(金) 01:16:02.79 ID:o3ynrZxQo
/////////////////////////


  【部室】

  ガチャ

律「おーす」

紬「あ、りっちゃん、久しぶりだねー」

律「お、まだムギだけか」

紬「そうみたい」

律「待ちますか」ガタッ

紬「待ちましょう〜」


紬(……)


紬「……りっちゃん」

律「ん?」

紬「…高校のころは楽しかったよね」

律「……」


律『あぁ、そうだな』

紬「ねぇ、りっちゃん」

律「何?」

紬「……8年間、なにやってたの?」

律「…んーフラフラしてた」

紬「ふらふら?」

律「そ、大学いったり働いたり、地元だけどな」

紬「……そっか」

律「…うん」

紬「…この同窓会ってりっちゃんが計画したの?」

律「ううん、知らない」

紬「…?」

律「どした?」

紬「…澪ちゃんなら私にわざわざ手紙を送らなくていいから違うし…」

紬「…梓ちゃんも今屋敷で預かってるし…」


紬「…唯ちゃんは私に「びっくりだよー」ってメールを…」

律「……おい」


  嫌な予感がする。


律「じゃあ……誰だよ…あんな不気味な手紙送ってきたの…」ボソッ

紬「…ぶきみ?」

律(しまった!)

律「えっと…その…」

  ガチャ
21. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/09/24(土) 23:51:15.83 ID:eDP6o+rCo
純「どうも、みなさん」

律「……!」

紬「純ちゃん?  何でここに……

紬「もしかして…あなたが招待状を出したの?」

純「そうですよ?」

律「あの

紬「なら、りっちゃんに妙な手紙を送りつけたのもあなたなの?」

純「?」

純「何のことですか?」

律「……!」

  まずい
  あの手紙の差出人が純ちゃんじゃない

  それは当然純ちゃん以外の誰かが送ってきたということだ

律(…うそだろ……)ダラダラ

純「大体、手紙を二つに分けることに意味がないじゃないですか」

純「差出人書いてないんですし」

紬「…それもそうね」

律「……」ダラダラ

紬「りっちゃん?  どうしたの?  汗凄いけど……」


律「ん…あ、ああ…ちょっと厚着しちゃったかな…はは」

  純ちゃんじゃない誰かが私の何かに気づいた……

  ……

律「…待ってよ、そもそも何で純ちゃんがこんな計画立てたの?」

純「あーそれはそのー……

純「私はただ招待状だすのを頼まれただけなんで」

紬「誰に?」

純「えっと……


  ガチャ


  「もういいよ、純ちゃん」



27. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/10/04(火) 00:29:29.36 ID:9qxT9mzlo
澪「私だよ、その手紙を出したのは」

紬「澪ちゃん!?」

律「……」

純「澪先輩…あの…

澪「純ちゃん、もういいよ、黙ってて」

純「……

澪「さあ律、もう止めにしよう」

律「……」

  ……

紬「??  …澪ちゃん、どういうこと?」


澪「……律、私はお前が自分から唯達に説明すると思ったんだ」

律(?)

澪「でもお前はそれをしなかったよな?」

律「……な、何をだよ?」

  …?  

澪「何って…1つしかないだろ」


澪「火事の直接の原因がお前だってことだよ」

紬「!」

律「……」

澪「あの日、和を突き飛ばした後、お前はリビングにいたよな」

澪「地震が起こったのはちょうどその時だ」


28. 1  ◆PYEaiMpGRI 2011/10/04(火) 00:30:18.69 ID:9qxT9mzlo
澪「そこで棚の上にあった置物がお前の上に落ちてきたんだ」

澪「……私は倒れたお前を寝かせてからみんなの無事を確認しにいった」

澪「そしてリビングを離れた数分の間にキッチンから出火したんだ」


澪「……どう考えてもお前しかいないだろ」

律「……」

  この女は何を言っているんだ

律「……そうだよ、私が火をつけたんだ」

律『…あの時和に色々言われたり、澪とケンカしたこと思い出したりして自暴自棄になってたんだと思う』

律「……それが何だっていうんだ?」

律「まさか唯達がそのことに気づいていないとか言うのかよ?」

澪「……」



律「ちょっと考えればわかることだろ!  澪や唯が嘘をついた理由とか、ムギの家があの騒ぎをすぐに鎮められた理由とか!」

律「答えは「私がやったから」それだけだろ?  友達思いのお前らが田井中律を庇おうとした、それだけであの日のことは全部説明がつく!」


律「……それが今更何だって言うんだよ?」

澪「……」

紬「……」

純「……」

律「……」

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  誰も何も喋らない

  部屋が沈黙に包まれてしばらくしてから澪が口を開いた

29. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/10/04(火) 00:30:48.92 ID:9qxT9mzlo

澪「律」

律「何だよ?」

澪「記憶はあるんだよな?」

律「ああ」

澪「…私と初めて話した日のこと、覚えてるか?」

律「!」ビクッ

澪「…あの頃の私は律に助けてもらってばっかりだったな」

澪「今でも感謝してるぞ」

律「……」

  ……やめてくれ

紬「?」

澪「……高校に入って軽音部再開して…ムギ達も入ってくれて」

澪「本当、楽しかったよな、あのころは」

  やめろ

澪「…2年の時に、律とケンカしたこともあったな」

澪「あの時、ムギは本気で心配してたんだぞ」

澪「なあ?」

紬「う、うん…そうだったけど……

紬(澪ちゃんは何を言いたいのかしら?)

澪「でもその原因が和と私が仲良くしてるのが気に入らなかったから、って聞いて何かおかしってさ」

澪「私は助けられてばっかりだったから…律がそうやって私のこと考えてくれてるってわかってちょっと嬉しかったんだ」

  …………

澪「…でも、その時私がちゃんと和とお前を仲直りさせておかなかったから…

澪「…ごめんな、律」

澪「……そうだ、久々に演奏しないか?  楽器もあることだし、ムギと私はちょくちょく練習してたんだぞ?」


律「……うるさい!」

紬「?  …りっちゃん?」

律「うるさい!もう何も聞きたくない!」



純「ほら、私の言った通りでしょ?  澪先輩?」

澪「……今度ばかりは認めるよ、私も元々怪しんではいたし……」グッ

紬「…?どういうこと?」


澪「……律の記憶の話だ」

紬「え?」

澪「律の【記憶】は確かに戻ってる、私達の名前も知ってるし、高校時代の記憶も、私達が覚えてるくらいにはあるはずだ」

澪「……ただ…

紬「?」
30. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/10/04(火) 00:31:23.36 ID:9qxT9mzlo
紬「?」


純「…私が話しましょうか」

純「……そうですね、例えば・・・音楽」

純「ただの音符の集合とみるか、それとも綺麗なメロディーとしてみるか」

純「……まず大前提として、律先輩の記憶喪失…のようなものの原因は和先輩と澪先輩への嫉妬」

純「そしてそこから目を背けるために記憶の一部が破棄された」

純「…ですがよく聞くように記憶喪失になっても当時の再現とか、リラックスした時とか、ふとした切欠で思い出すことが多いんです」

純「…それなのに律先輩が8年も記憶喪失のままでいた、というのは甚だ疑問である、と思うんですよ」

純「地元に住んでいれば、それなりに馴染みの深かった場所も多いでしょうに」

紬「…どういうこと?  じゃありっちゃんは…?」

純「…あーつまりどういうことかと言いますと



純「律先輩の記憶自体は今日、真鍋家に行く前からとっくに戻っていた」

純「しかし、一つだけ欠点、欠陥があった」

純「…それは――


律「感情」

律「脳の記録に対しての感情や感想……一言で言い換えれば

  【思い出】

澪「……」

紬「!?」
31. VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2011/10/04(火) 00:32:12.32 ID:9qxT9mzlo
紬「!?」

律「…いつからか何て覚えてないけど…たまに夢をみるようになった」

律「…知らない学校の、知らない部屋で、知らない子達が楽しそうにお喋りして、お菓子を食べてる夢」

律「…最初はただの夢だと思った…けど…澪が私の所に来たとき…全部わかったんだ」

律「『あぁ、この夢は私の記憶だったんだ』って」

律「…わかっとき、嬉しさなんて微塵もなかったよ、だって私はそこに何の思い出もないんだから」

紬「…で、でも…思い出したんなら…

律「……カメラで部屋を覗くようなものだよ…べつに面白くもなんともなかった…

律「むしろ……怖い、と思ったな」

律「…この人達にどんな顔して会えばいいんだ…友人と同じ顔で同じ声の人間から『もう友達は帰ってきません』って告げられるあなた達のこと…か、考えてて…」グスッ

律「…隠しておくつもりだったんだよ……全部戻ったふりして…『田井中律』として生きよう、って決めてたのに……」ポロポロ


澪「…律」ギュッ

澪「…悪いけど、もう私にできることは何もない」

澪「…根本の原因が私にある以上、私が躍起になって律に関わっても悪い影響がでるだけだ」パッ

澪「……ムギ」

紬「…………何?」

澪「…律を頼む、私と菫でお前の分の仕事もこなすから――

律「ま、待ってください!」

律「…その…『子供時代の私』は…誰がみてもあなたに支えられていた…

律「…傍観者みたいにしか昔を知らない私でもわかった!  田井中律という人間は……み、澪が…いないと・・・

澪「…律、それは違うよ」

澪「律に助けられてたのは私だ、それは絶対の自信を持って言える」

澪「…傍からみたら逆にみえても…それが揺らいだことは絶対にない」ジワッ

澪「…だ、だから…律は…私がいなくても……」ボロボロ

律「…い、いやだ……

澪「…本当の意味で…き、記憶が戻ったら…その時は…また…


澪「じゃあな、律」ダッ


純「あ!  …追いかけます!」

純「ちょ…澪先輩!」

  バタン!と大きな音を立てて扉は閉じた。





32
最終更新:2011年11月25日 22:48