Prrr…Prrr。
あら…電話。唯かしら…?
こんな時間にしょうがない子。
「…え?澪?」
これは予想外ね…。こんな時間にどうしたのかしら…。
「もしもし?」
『あ…和。こんな時間にゴメン。今大丈夫?』
「ええ平気よ。でもどうしたの?
 唯のお祝いしているのだとばかり思っていたのだけど」
 そう…今日は唯の誕生日。
 今年は離れ離れだから私が傍で祝うことは出来ないけれど、
 同じ寮には唯だけじゃなく澪や律、ムギもいる。
 だから安心していたのだけれど…。
『ああ…さっきまで騒いでたんだけど……』
 そこで澪の言葉が止まった。
「…澪?」
『何ていうか唯が変だったような気がして…』
「…唯が変?いつものことじゃない。」
 あの子なりに色々考えてはいるみたいだけど…
 私には読めないのよね。
 少なくとも電話したときはいつもと変わりないように感じたわ。
『……いや…なんというか
 …最後に見た唯が寂しそうだったから…』
 だから心配で私に電話掛けて来たと…。
 まったく…この子たちは…。
 呆れ半分、でも喜び半分で溜め息をつく。
 7月初旬の唯との電話で、2人の間に何か遭ったことは気付いていた。
 隠したがっているみたいだから訊かなかったけれど。
「…誕生日の夜は憂と一緒だったから……かしら?」
『…え?』
「それと、ときどき一緒に寝てたみたいね。
 人に抱きつくと落ち着くみたいだから」
 それで二人揃って私に抱きついてきて、そのまま眠ってたぐらいだもの。
 何度被害にあったことやら…。あまりに幸せそうだから剥がせないし…。
『………そっか。ありがとう和。』
「…ふふっ。どういたしまして」
 後はお休みの挨拶で締めて電話を終えた。
 これから澪は唯のところに行くのだろう…。
 唯は澪をずっと気にしていた。私が妬いてしまうほどに。
 そして澪も…そういうことだろう。
 本当手が焼けるんだから。
 私が出来ることはもうやったわ。後は澪次第。
 Happy Birthday、唯。
 これが私が唯に贈る秘密のプレゼント――。

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END



最終更新:2011年11月27日 19:36