梓「あ、りつせんぱいだ!」

律「ん、律先輩だよ」

梓「とつげーき!」ドーン

律「ぐぇっ! ……と、突撃じゃねえっ」

梓「えへへ~奇遇だね、こんな所で会うなんて」

律「お前と一緒に来たんだよ」

梓「そうだっけ? 忘れちゃった」テヘッ

律「こいつめんどい」

梓「めんどいって言った……恋人にめんどいって言ったぁ……」

律「泣くか笑うかどっちかにしてくれ」

梓「じゃあ笑う」ニコニコ

律「……」

梓「りつせんぱーい」ギュウウ

律「ちょ、く、首しまってるって!」

唯「おお! これがいわゆる『逢い引き』ですか」

澪「唯は黙ってような」

紬「」グビグビ

澪「ムギもその辺にしておきなさい」

純「ごめんなさい、急にペースを速めて」

律「気にしなくていいよ、悪いのはこいつだし」

梓「むー! 私は悪くないもん!」

律「はいはい」

純「かなり飲んだみたいです」

律「たくっ、あんま強くないくせに」

梓「律先輩だって飲んでるじゃん!」

律「私は節度を守って飲んでるからいいの」

純「一応戻させたので大丈夫だと思いますけど」

律「そっか、迷惑かけたな」

純「いえいえ」

梓「どういたしまして」

律「お前に言ってるんじゃない」

梓「りつせんぱい」

律「あん?」

梓「ひざまくらして」

律「ダメ」

梓「けちっ!」

律「ダメなものはダメ」

梓「律先輩はけち先輩です!」

律「けち先輩で結構」

梓「いじわる!」

律「ふーん」

梓「いじわるいじわるいじわる!!」バタバタ

律(無視)

澪「いいのか?」

律「構ったら付けあがるだろ」グビッ

梓「むー……」

梓「……いつもはしてくれるのに」

律「ぶっ!」

澪「へぇ~」

律「ちょ、何言い出すんだよお前は!」ガバッ

梓「むぐむぐ!」

律「口封じだこいつ!」ドタバタ

梓「む~~~!!」バタバタ

澪「傍から見てるとイチャついてるようにしか見えないんだけど」

憂「同感です」

唯「らぶらぶですなぁ」

律「この! この!」

梓「」ギリッ

律「てーっ、こいつ噛みやがった!」

梓「」バッ

梓「家の中なら膝枕も、腕枕もしてくれるくせに!」

律「」

澪「ほぅ」

憂「へぇ」

唯「おおぅ!」

紬「!?」ムクリ

純「」ビクッ!

澪「お前たち随分上手くいってるみたいだな」ニヤニヤ

律「ちょっ、これはちがっ」

紬「何が違うというの!?」

律「元気になったなおい!」

梓「律先輩、ひどい……」グスン

唯「うっわーりっちゃんサイテーあずにゃん泣かしたー」

律「唯てめぇっ」

澪「というか、さっきから梓ずっと律にタメ口使ってるし」

憂「あ、それ私も思いました」

律「……はっ!」

唯「これは二人きりの時だけタメ口のパターンだね」

紬「何それ最高」

律「べ、別にそういうんじゃねーし」アセアセ

純(何この人可愛い)

律「あ、梓も何か言えよ」チラッ

梓「」フニャーン

律「……」

澪「潰れちゃったみたいだな」

律「好き勝手暴れといて」

澪「ちゃんと責任持って連れて帰るんだぞ」

律「わーってるよ」ハァ

梓「……」ニヘラ

律「……はぁ」

憂「梓ちゃん、すごく幸せそう」

純「ほーんと、律先輩にあんなに寄りかかって」

憂「よっぽど律さんのことが好きなんだろうね」

純「……私にもあれだけ好きになれる人がいたらなぁ」

憂「純ちゃんにもきっといつかできるよ」

純「そりゃどうも」

憂「きっと、いつか」

純「おーい、遠い目をしないでくれー」


店員「ラストオーダーになりまーす」

唯「ムギちゃん、もう一杯!」

紬「了解!」

澪「もう二人とも打ち止めな」

唯紬「え~~~!!」

梓「……」スピー

律「よいしょっと」

澪「帰れる?」

律「うん、何とか。雨降ってるのが厄介だけど」

澪「付き添おうか?」

律「いや、大丈夫。二次会あるんだろ」

澪「でも……」

律「楽しんでこいよ。軽音部メンバーで飲むのも久しぶりだし」

澪「……」

律「澪」

澪「?」

律「私たちはさ、顔合わせなくなっても親友だからな」

澪「……うん、ありがと」

律「どういたしまして」


澪「今行く!」

律「それじゃおやすみ」

澪「うん、おやすみ」

唯「おーい、澪ちゃーん」

澪「もう酔いは醒めたのか、唯」

唯「まあそれなりに……りっちゃんと何話してたの?」

澪「梓とお幸せにって」

唯「あ、確かにりっちゃんとあずにゃんてすごくお似合いだよね」

澪「うん、そうだな」

唯「うーん……」

澪「何難しそうな顔してんだ」

唯「りっちゃん、傘さしてあずにゃんおぶってたじゃん」

澪「うん」

唯「あれどっかで見たことあるんだけど、思い出せなくて……」

澪「……」

唯「うーん、うーん」

澪「……トトロとか?」

唯「おお、澪ちゃんビンゴ! あれに出てくる姉妹に似てるんだよね、あの二人」

澪「言われてみればそっくりだな」

唯「ふー、ようやく胸がすっきりしたよ」

澪「よかったな」

唯「そっか、トトロか」

澪「……」

唯「ふんふふん、ふんふ~ふん♪」

澪「……」

澪(確かに、唯の言うとおり)

澪(梓を宥めてる律は姉みたいだし、律に甘えてる梓は妹みたい)

澪(私と律の関係が幼なじみなら、律と梓の関係は姉妹みたいなものなんだろうな)

唯「どうしたの澪ちゃん?」

澪「ううん、何でもない」



ザー シトシト…

梓「……」ダラーン

律「ひぃ……ふぅ……」

律(さすがに傘さしながらこいつ背負うってのはきついぜ)

律(家まで後十分てところかな。よし、もう一息)

律「うんせ、よいしょ……」

梓「……」

梓「りーつ……」

律「あー、何? 起きた?」

梓「ここどこー?」

律「家帰ってる途中」

梓「飲み会は?」

律「お前が潰れたから帰るの」

梓「帰りたくない」

律「あのなぁ」

梓「ばか律」

律「人にここまでさせといてバカ呼ばわりかよ」

梓「ばか律ばか律ばか律」

律「置いてくぞばか」

梓「律先輩のばかー!」

律「……酔っぱらいに何言っても無駄ってか」

ポタッ

律「冷たっ」

梓「……ばか律」

律「……」

梓「……」グスッ

律「何で泣いてんだよ」

梓「……」

律「泣き上戸か?」

梓「……」

梓「何で……なんですか」

律「あーん?」

梓「何で澪先輩にばっか……あんなに笑顔で……あんなに楽しそうに……」

律「澪?」

梓「私じゃダメなんですか……?」

律「はぁ?」

梓「二人が仲良さそうにしてるの……嫌」

律「もしかして、嫉妬?」

梓「……」

律「今日荒れてた原因はそれかよ」

梓「……」

律「ちょっと二人で話してただけだろ」

梓「……」

律「お前とは家で話せるし、それに澪と飲むの久しぶりだったからさ」

梓「……」

律「澪は大切な幼なじみだけど、梓は大切な恋人だよ」

梓「……」

律「だから、そんなことでいちいち悩まなくていいの」

梓「……」

律「それに私は、その」

梓「……」

律「多分お前が思ってるよりずっと、お前のこと好きだからさ」

梓「……」

律「だから、梓?」

梓「スースー」

律「寝てるんかいっ」


チュンチュン

梓「……」

梓「……はっ」

梓「あれ、ここ家?」

ズキッ

梓「痛っ」

律「おはよ」

梓「おはよー……」

律「調子はどうだ?」

梓「何か頭ガンガンする」

律「やっぱり」

梓「ねえ、昨日って……」

律「お前しばらく酒禁止な」

梓「??」

コトコトコト

梓「何作ってるの?」

律「お前のおじや」

梓「わ、嬉しい」

チャンチャンッ

律「はい、できあがり。あちっ、あちっと」

梓「わぁい、いただきます」

律「ん、召し上がれ」

梓「……」ズズ

梓「あつっ」

律「急いで飲むからだ」

梓「ふーってして」

律「自分でやれよ」

梓「うぅ……頭が痛い」ズキズキ

律「こっちのセリフだ」

梓「……」

律「あーもう分かったよ」

律「」フーフー

律「はい、あーん」

梓「あーん」

梓「……」モグモグ

律「どう?」

梓「美味しい」

律「そりゃよかった」

梓「……」

梓「ねー律先輩」

律「うん?」

梓「昨日の帰り道で何か言ってなかったっけ」

律「」

梓「律先輩?」

律「な、なーんも言ってないぞ! そう、なーんも!」

梓「……怪しいなぁ」

律「」ビクビク

梓「すごく恥ずかしいこと言われた気がするんだけど」

律「き、きっと夢だよ!」

梓「そうかなぁ……」

律(てかそもそも昨日私何言ったっけ……?)

律(今から考えると色々と口走ってたような……)

律「うーー」ドサッ

梓「何で布団に顔押しつけてんの?」

律「何でもないっ」

梓「ふぅん」

律「……」

律「うーうー!」パタパタ

梓「変な人」

律「うっさいっ」

梓「律先輩」

律「今度は何っ?」

梓「もっとちょうだい」

律「……はいよ」









最終更新:2011年11月29日 22:28