ピ ポ パ

律「許せん!」



ピロリロリン

唯「あ、電話だ」

唯「はい、もしもーし」

律「わたしわたし」

唯「だれ?」

律「……」

唯「…だれ?」


律「……」

唯「もしもーし?」

律「……だよ」

唯「…え?」

律「わたしは……お前の目の前にある、クッキーだよ!!」

唯「えええええええええっ!?」


梓「ど、どうしたんですか先輩?」

澪「何かあったのか?」

唯「あ、あのね、私の電話にクッ」

律『まちな!わたしの正体をばらしたらどうなるか…』

唯「(ビクッ) な、なんでもないの、みんな…ごめんね」

紬「唯ちゃん…?」

律『さて……あんた、私の仲間をずいぶんむさぼり食ってくれたねえ』

唯「ごめんなさい…ごめんなさい…」

律『あんたが最後に食ったのは…私の旦那なんだよ…』

唯「ヒィィ!」

律『今までずっと連れ添って生きてきたのに…まさかこんなところで死に別れるなんて…』

唯「ごめんなさい!ごめんなさい!」


律「その前に食ったのはあたしの兄さん…その前のは私の母さん…」

唯『うう、うう…』 ヒックヒック

律「そしてその前が…!」


「わたし、クッキーさん」


律「へっ?」

紬「いまあなたのうしろにいるの!!」

律「ぎゃああああああああああっ!!!」


紬「もう、こういうことだったのね。」

律「あちゃー、バレちったか。」

律「しょうがない、唯には種明かししてあやま…」 ガシッ

紬「……」 キラキラ

律「……えーと」

紬「私にもやらせて?」 キラキラ

律「…そうきたかー。」


律「でもさっきのでビックリして切っちゃったよ、ほら」

紬「あらぁ…。」




唯「クッキーさん!?どうしたのクッキーさん!」

唯「クッキーさん!返事してクッキーさん!!」

梓「どうしたんですか?先輩」 モグモグ


梓「先輩?」 モグモグ

唯「……ぁ…」

唯「ぁ……ぁぁ………!」

唯「あずにゃんがクッキーさん食べちゃったんだああああああああああっ!!!!」



梓「え、ええっ!?」

澪「えっ、なんだなんだ?」

唯「びえーん!びえーん!」

梓「いや、あの…え?…いや、ごめんなさい……え?」

澪「ほら唯、クッキーならまだいっぱいあるから」

唯「ちがうのーっ!ちがうのーっ!びえーん!」


律「うわぁ……」

紬「あらあら…大変なことになってるわ」

律「どう収拾つけるんだよ…これ」

紬「電話で始まったことは電話で解決するのが一番よ」

ピ ポ パ



ピロパロポン ピ

唯「ヒック…ズビ………もしもじ」

紬「わたしわたし」

唯「ズビ…だれ?」

紬「クッキーの妹です」

唯「クッキーちゃん!?」


澪「……」


唯「ごめんなさい!私…私…お姉さんに…」

紬『悲しまないで、唯さん……姉は本懐を果たしたのです』

唯「ほんかい?ってなに?」

紬『………』

紬『…私たちは人に食べられるために生まれてきました』

紬『人に食べられることこそが私たちの喜びなのです』

唯「でも…でも、食べられたらもう家族と会えなくなるんだよ!」

紬『唯さん…』

唯「私も…憂と会えなくなったら…寂しいもん……」

唯「本当は…お父さんとお母さんと離れて暮らすのだって……寂しいもん…」 グス…

紬『………』

律「ムギ、鼻血出てる」


紬『なら…食べてください』

唯「えっ?」

紬『人に食べられたクッキーの魂は、クッキーの天国、クッキーマウンテンへ行くのです』

唯「クッキー……マウンテン…」

紬『残さず食べて…私たち家族を再会させて…』

唯「うん…うん…!」

紬『お姉ちゃんに会わせて!』

唯「うんっ!!」


律「ええはなしやー。はいティッシュ丸めといたよ」 グイグイ

紬「ふがふが」


紬『ふいはん……ゴホン。唯さん、慌てて食べては駄目ですよ。喉につまったとあっては、クッキーの恥です』

唯「うん、わかった!」

紬『よく味わって食べてくださいね。それこそ私たちの喜び…』

唯「おいしいよ!クッキーちゃんおいしいよ!」 サクサク

紬『では唯さん…ごきげんよう』 プツリ



律「ふー、なんとか一件落着だな。」

紬「楽しかった♪クセになりそうね、これ!」

律「にししし、唯がかわいそうだからほどほどにしとけよー?」

紬「あらぁ、律ちゃんがそれを言う?」

律「あははは」

紬「うふふふ」

プルルルル

紬「あ、律ちゃん電話よ」

律「おう」ピ

律「あい、もしもし?」


『わたし、クッキーちゃん』


律「え?」

澪「今おまえらのうしろにいるぞおおおおおおおっ!!」

紬律「きゃああああああああああっ!!!」


澪「…と、いうわけだそうだ。」

律紬「ごめんなさい……」

唯「ひどいよ!二人で私をだますなんて!」

律「ごめん唯…私もまさか本気にするとは思わなくて…」

梓「まぁ…それは確かに…」

律「一回やったら面白くなっちゃってさ…」

澪「まったく…どうせ朝の電話もお前だったんだろ?」

唯「え?あれは澪ちゃんからかかってきたんだよ」

澪「いや、私横にいただろ。どうやって電話するんだ」

唯「テレパシーで」

澪「……」



律「…なぁ、私の気持ち、少しはわかるだろ」

梓「確かに……あれは…」


紬「じゃあ休み時間にかかってきた梓ちゃんからの電話も?」

梓「え?かけてないですよ私は。」

唯「ええっ!じゃああれもりっちゃんだったの!?」

梓「…どんなこと言ってたんですか、律先輩は」

唯「えーとね、あずにゃんは私にギューされるのが大好きだからもっとしてして、って」

梓「……」 ツカツカツカツカ

律「ちょっと無言で追ってこないで怖い怖い怖い」 ツカツカツカツカ

澪「まったく…律は私のふりして何て言ってたんだ?」

唯「えっとね、その…わたしのこと………って」

澪「えっ?」

唯「だから、私のこと………好き、って」

澪「はあぁ!?」

唯「あ、愛してる……とか………結婚……して…とか…」

紬「まぁ!」

梓「捕まえましたよ先輩!」

澪「よし梓おさえとけ。絶対逃がすな」

律「ヒィィーッ!!」


律「もう…お嫁にいけない…」 オヨヨヨ

梓「そこまでひどいことはしてません!」

澪「まったく…そんなの全部うそっぱちだからな!?信じるなよ唯も!」

唯「そ、そうだよね!私びっくりしちゃって!」

紬「でも全部嘘ってことになると、澪ちゃんは唯ちゃんのこと嫌いってことに…」

唯「ええっ!?」 ガーン

澪「違う違う!全部ってわけじゃないから!唯のことは嫌いじゃないよ!」

梓「わ、私も別にイヤってわけじゃ……ない…けど……あんまり頻繁だと…」

唯「よかったあ!あずにゃん大好き!」 ギュー

梓「わあ!……うう、今回だけですからね…」 ギュ

澪「わ、私も好きか嫌いかでいえば…す、好き…ってことになるけど…そんな愛してるとか、そんなんじゃなくて…友達としての好きって言うか…」 ゴニョゴニョ


紬(ニヤニヤ)


キーン コーン

唯「じゃあ、みんなまたねー!」

梓「また明日です」

律「おれおれ詐欺には気をつけろよー!」

澪「お前が言うな!」  ゴチン

律「あいた!」

アハハハ…

ガチャ

唯「たっだいまー!」

唯「あれ、憂いないんだ。買い物かなー」

ピロリロリン

唯「むっ」 ピッ

唯「はい。もしもし。」



憂「あ、おねえちゃん?わたし。憂だよ。今スーパーにいるんだけど、何か食べたいもの…」

唯『もう、だまされないもん!』 ガチャン

プーッ プーッ プーッ


憂「………えっ」

                          fin





最終更新:2010年01月26日 02:53