純「今度は、本当の本気です!」
唯「よし、それじゃあその本気やらを今見せて貰おうか?」
純「やっぱ、明日からで…」
唯「だめだ、今すぐ本気を出せ」
純「いきなり、本気出せと言われても具体的に言ってくれないと…」
唯「お前さっき梓より自分のほうが勝ってるって言ってたよな」
純「当然です!梓なんかに負けるはずありませんから」
唯「じゃあお前、梓の代わりに演技してみろ」
梓「ちょっと何言ってるんですか!平沢さん、ここでキャスト変更なんて
ちょっと酷くないですか?」
唯「今更、この映画でのメインキャラクター変更なんてやるわけないだろう」
梓「だって今、純に私の代わりに演技してみろって…」
唯「純があまりにも梓にライバル心を燃やしてるから、その演技とやらが
どんなものか見定めてやろうってだけだ」
梓「本当にそれだけですよね?」
唯「そもそもキャステングを決めるのは監督だしな
今回の映画は無理だとしても今後キャストの変更もありうるだろうし
今のうちから新人の演技を見ておくのも悪くないだろう?」
梓「見るだけならいいですけど…」
純「もしかして梓、私に嫉妬してるの?」
梓「はぁ?誰が純なんかに嫉妬するって言うの?」
純「ヒロイン役を私に奪われたくないんでしょう?」
梓「奪うもなにもまだ何も決まって無いし…」
純「まぁー見ててよ。私の本気の演技を見せつけてあげるからさ」
唯「それじゃあ、まずは海に行こうか?」
純「こんな猛吹雪の中海に行くとか冗談でしょう?」
唯「私が冗談を言った事があるか?」
純「本気で言ってるとしたらどうかしてますよ!なんの嫌がらせですか!」
唯「よく、考えてみろ。本来の季節は夏なんだぞ
台本読めばわかると思うけど、当然海に行くシーンもある」
純「だからってあんな猛吹雪の中、海に行っても撮影になりませんよ」
唯「なにも、無理に行けとは言わない。当然お前にも断る権利はあるからな」
純「そんなの断るに決まってるじゃないですか。なにバカなこと言ってるんです」
唯「そうか、お前の本気はその程度だったんだな」
純「ですから、私の本気と言うのはですね…」
唯「梓ならこんな状況でも断らないよな?」
梓「え?私ですか?」
純「こんな悪条件での撮影、梓みたいなヘタレじゃもっと無理ですよ」
梓(なん…だと。純の奴…)
「ええ、もちろん。私なら断りませんけどね。
いやー見損なったよ純。あんたの本気がこの程度だったとはね…」
唯「残念だなー、純には次期エースとして期待してたのに
口だけで終わってしまうとは…」
純「口だけって…」
唯「こんなことでは純が監督の目に止まることは一生ないだろうな」
純「誰が口だけですか!」
唯「私は真実を言ったまでだが」
純「それじゃあ口だけじゃないことを証明してみせましょう。
猛吹雪だろうとなんだろうとかかってこいですよ!」
律「いいのかそんなこと言って?」
純「私に二言はありません!」
唯「それでこそ私が見込んだ純だ。よし、早速海へ行こう」
純「はい!」
澪「おいおい、本当に大丈夫なのか?」
律「なんやかんや理由付けて生意気な新人を締めたいだけだろうな…」
梓「一回痛い目に遇ったほうがいいんじゃないですか?」
紬「つ、冷たいのね。梓ちゃん…」
純「ほら、みんなも早く来なよ!私の勇姿を見せてあげるよ」
澪「どうする行く?」
律「まぁ暇だし行ってみるか」
梓「どんな按配になるのか見てみたい気もしますね」
紬「なんだか楽しそうね」
律「それじゃあ私たちも見るだけ見てみるか」
海岸にて
監督「この天気じゃ海のシーンの撮影なんてできないな」
AD「どうします?」
監督「もう、ロンドンのシーンも日本で撮るか」
AD「イギリスの海と全然違いますけどね」
監督「仕方がないだろう。天候だけはどうにもできないし」
唯「おーい、監督!」
監督「これはこれは、平沢さん。こんなお寒い中わざわざお越しいただかなくても
呼びつけていただければ私がホテルまで行ったのに」
唯「それがさ、新人の
鈴木純が監督に本気の演技とやらを見て貰いたいって言うんで
今、連れて来たんだけどさ…」
監督「平沢さんともあろう人があんな新人相手にすることないですよ
純は私に任せて平沢さんはホテルで待機していただければよろしいかと」
唯「おもしろそうだから、私も見てやろうと思ってさ」
監督「平沢さんがそうおっしゃるのなら構いませんが」
唯「おーい、監督からOKでたぞ」
純「私の本気を見て下さいよ監督!」
監督「君、この糞寒い中その格好でやるつもりなのかい?」
純「だって、海といえばやっぱり水着でしょう!」
監督(バカもここまで来たか…)
「君がその気なら構わないけど。私は一切責任を取らないからね」
純「ええ、わかってますよ。あくまでも私の判断ですから」
唯「それじゃあ、Fパートのシーン5からやってみろ」
純「海に到着したシーンですね。任せて下さい!」
律「うわー本当にやってるよ」
澪「この寒さで水着とか…」
梓「もはや、お笑い芸人ですね」
紬「風邪ひかなきゃいいんだけど」
純「わーい!海だー…」(ガタガタブルブル)
唯「声が震えてるぞ」
純「そんなこと言われても…」
唯「もう、一回!」
純「てか、なんで平沢さんが監督みたいになってるの?」
監督(さては、純ちゃん平沢さんの逆鱗に触れたな。
まぁ、風邪でもひいてもらったほうが静かでいいけどな)
純「へっくしょん!」
唯「カットカット。くしゃみをするシーンなんかなかっただろう」
律「散々乗せられて、やってることはお笑い芸人っていうのがなんとも滑稽だな」
澪「よくやるよ」
梓「本当私じゃなくてよかったですよ」
2時間後
純「もう、ダメ…」
唯「まだ、撮影は終わってないぞ!」
監督「あの平沢さん…」
唯「なんだ?」
監督「お言葉ですが、その辺にしておいてたほうがよろしいかと
脇役とはいえ共演者になにかあったら映画の公開にも響きますんで」
唯「それもそうか。よし、今日はこの辺にしておいてやろう」
純「あ~、やっと終わった」
翌日
ロンドンの空港にて
律「天候が悪かったせいで結局なにも撮影できなかったな」
澪「せっかくロンドンまで来たのに観光も出来なかった」
梓「ロンドンのシーンも日本で全部撮るらしいですね」
律「夏って設定なのに冬の風景だとおかしいからな」
梓「なんのために来たんだか」
唯「みんなお疲れ」
律澪紬梓「お疲れ様で~す!」
唯「今回は残念だったな。撮影もロクにできなくて」
律「天候はどうにもできないですからね」
澪「日本に帰ったら頑張りましょう」
梓「結局やったのは純の模擬撮影だけでしたね」
純「だけとはなによだけとは!それは私のステップアップの
第一歩なんだからね!」
澪(お笑い芸人になるためのステップアップか?)
唯「この通り、純も風邪をひくこともなく元気いっぱいだからな
いいことだよ…」(苦笑)
純「芸能人たるもの体が資本ですからね!」
梓「バカは風邪ひかないって本当だったんだ…」
純「なにか言ったかしら?梓さん?」
梓「いえ、なにも」
日本の空港到着
澪「吹雪の中でのフライト怖かったな」
律「あれぐらいの揺れ大したことないだろうが」
純「あー、楽しかった。日本での私の出番も楽しみだな!」
梓(あれが、楽しかったとかどんな神経してるんだ…)
唯「それじゃあ今日はこの辺で解散するか」
澪「それじゃあ、また明日お会いしましょう」
唯「ああ、休んだら承知しないからな」
律「平沢さんこそ休まないで下さいよ!」
唯「お前も言うようになったな」
律「エヘヘ…」
律「あー、やっと解放された!」
澪「四六時中平沢さんと一緒じゃそりゃ緊張もするよな」
梓「いつ私がターゲットになるんじゃないかとヒヤヒヤしてましたよ」
紬「みんな何事もなくてよかったわね」
律「あれ?そういえば純の姿が見えないんだけど」
梓「もういいですよ純なんか放って置いて。
あの子に付きあっていたらいつ帰れるかわかったもんじゃない」
律「純も子供じゃないんだし、最悪一人でも帰れるか」
紬「みんな、冷たいわね」
唯のマネージャー「平沢さん、次はウジテレビでのバラエティー番組の収録です」
唯「帰国して早々収録か…だるいな」
純「その荷物私が持ちましょうか?」
唯「ああ、頼むよ…ってなんで純がいるんだ!?」
純「空港からずっと着いて来てたのに気がつかないなんて。
平沢さん、相当お疲れのようですね」
唯「なんの用だ?」
純「嫌だなぁー、私は、平沢さんの付き人じゃないですか!」
唯「あれは、ロンドン限定での話だ。もはやお前は付き人でもなんでもない」
純「そんなこと言わずに私を付き人として雇って下さいよ」
唯「お断りだ!」
純「お願いしますよ~」
唯のマネージャー「平沢さん、もう時間が…」
唯「わかってるが、こいつがうるさくて…」
純「その収録、私も着いて行きます!」
唯「もう、しょうがないから勝手にしろ!」
純「やったー平沢さんの付き人だ!」
唯「なんで私がこんな目にあわなきゃならないんだよ!」
こうして、純は
平沢唯の付き人として活躍することになり
日本での映画けいおん!の撮影も順調に終わったのでした。
ーおわりー
最終更新:2011年12月15日 02:01