律「…あ、指輪渡してなかった」ピタッ

澪「…受け取ってなかった」ピタッ

律「じゃあえっと…」コホン

澪「うん…」ドキドキ

律「結婚してください!」カパッ

澪「……え?二つ?」

律「え?うん」

澪「なんで二つ?」

律「え、私の」

澪「…こういうときってふつうペアリングじゃなくて一つだけ相手に贈るんじゃないの?」

律「それだと婚約指輪じゃん」

澪「えぇ…でもプロポーズって言ったらさ…指輪ケース開けたらダイヤのついた指輪が一つ輝いててみたいな…」

律「ダイヤか!ダイヤが目当てか!?」

澪「ち、違う!」

律「婚約がしたいんじゃなくて私は澪が指輪受け取ったらもう結婚のつもりで指輪選んだんだもん」

澪「あ、そっか。結婚指輪だもんな」

律「悪かったな、ダイヤなしで」フンッ

澪「ご、ごめん…」

律「ふん…」グスッ

澪「ごめんって…」

律「…指輪あげるのやめようかな」

澪「え!?」

律「ダイヤついてなきゃ嫌みたいだし…」

澪「違う!そんなことない!」

律「…ほしい?」

澪「ほしいよ…それがなきゃ律と結婚したことにならないんでしょ…?」

律「そうだよ」

澪「ほしい…」

律「どうしても?」

澪「どうしても」

律「じゃあ…ここに判子お願いします」ンッ

澪「…婚姻届の代わり?」

律「うん」

澪「いらないんじゃなかったっけ?」

律「普通のはね。私達のは私達専用の特別なやつ」

澪「そっか…」クスッ

律「…ほら、待ってるのも恥ずかしいんだから早く」

澪「わ、私だって恥ずかしいよ…」

律「じゃあ判子なしでいいっすかー…?」

澪「わぁ!する!するから!」

律「ん」パチッ

澪「………」ドキドキ

律「………」ドキドキ

澪「……幸せにしてください」

─────ちゅっ

律「…ん」

澪「…」カァッ

律(私が言ったとはいえ…澪が自分から…しかも外で…)ジーン

律「澪」

澪「な…なに…?」ドキドキ

律「手出して」

澪「あ…うん」

律「…幸せにします」スッ

澪「う…」カァァァッ

律「…私にも」

澪「う、うん…」スッ

律「…えへへ。なんか照れるな」カァ

澪「でも…うれしい…」

律「私も…」

澪「あっ」

律「え?」

澪「律のことも、私がちゃんと幸せにするから」

律「あ…はい」カァ

澪(う…かわいい…)カァッ

律「日本帰ったら澪ママに挨拶しなきゃ」

澪「結婚しましたって?」

律「うん」

澪「事後報告って」クスッ

律「笑ってるけど澪だって私の親に言わなきゃいけないんだぞ?」

澪「え…」サーッ

澪「や、やだ!無理!」

律「おい」

澪「結婚やめ…!」

律「あ?」

澪「すいません…」

律「……ダイヤじゃないからか…」

澪「律ぅ!」

律「ごめんな…甲斐性なしで…」

澪「する!ちゃんと報告するから!」

律「約束ね」ニカッ

澪「うっ…(嵌められた…)」

律「そろそろホテル戻ろっか」

澪「そうだな、明日もあるし」

律「眠れそう?」

澪「いや…無理かも…さっきより興奮してるし…」ドキドキ

律「興奮だなんていやーん!」クネクネ

澪「なっ!?バカ違う!」カァッ

律「犯されるー!」ダッ

澪「バカ!なんてこと叫ぶんだ!…って待ってよ!律!置いてかないでー!」ダッ


翌日。

ムギが物凄い勢いで私達の薬指に気付き、堂々とする暇もなくバレた。

唯は「よかったねぇー!」と純粋に祝福してくれた。「でもりっちゃんに恋人なんておかしいよ…」と言ったのは聞かなかったことにしてやろう。

梓はすごい驚きようで引いてるのかと思ったら顔を真っ赤にしたりと、よく分からない反応だった。でも「おめでとうございます」と言ってくれたので一応は祝福してくれたみたいだ。

ムギは…言うまでもないだろう。

その翌日、いるはずのないロンドンで出会ったさわちゃんも私達の薬指にすぐに気付き「まさか生徒に先を越されるなんて…」とかなり落ち込んでいた。女同士だということには一切突っ込まず、良くも悪くもさわちゃんらしいといえばらしかった。


そして…



日本

澪「……」ドキドキドキドキ

律「なーにきょどってんだよ」

澪「だ、だって…」

律「ほら、手離すな」ギュッ

澪「う…」カァッ

律「堂々とするって言っただろ?」

澪「で、でもこんな見せ付けるようなマネ」

律「澪が日本でも手繋ぎたいって言ったんじゃないかよー」ブーブー

澪「そうだけど…」

律「これから挨拶に行くのにそんなことでどうするんだよ」

澪「や、やっぱり今日はやめにしないか?」

律「だーめ」

澪「あぁー!そういえば今日はママ出かけるって言ってたなぁー!」

律「演技下手すぎだろ」

澪「え、演技じゃありませーん…」キョドキョド

律「ふぅん…じゃあ今日はやめにするか」

澪「本当か!?」パァッ

律「先に私の親に挨拶に行こう。今日は全員揃ってるから」

澪「」

律「よし、行くか」クルッ

澪「むりっ!うそっ!今日ママもパパもいるから!」グイグイ

律「覚悟できた?」

澪「……はい」

律「よし、行くぞ」グイッ

澪「ううっ…」

澪(律はよく平気だな…私なんか自分の親ですら逃げ出したいぐらいドキドキするのに…相手の親に言う方が勇気いるだろうに…)

律「……………」

澪(…………あれ?そういえば律の手妙に汗ばんでるな…今日こんなに寒いのに…)

澪(もしかして…)

澪「律も緊張してる…?」

律「…」ビクッ

律「し、してねーし!臆病な澪しゃんと違ってりっちゃんはこんなの全然平気だもーん!」

澪「………」

澪(そうだ…うちの親に挨拶ってことはどう考えたって律のが緊張するはず…それなのに私がびくびくしてるから…)

律「ぜーんぜん!これっぽっちも!緊張なん…」

澪「律」ギュッ

律「え?」

澪「私も…がんばるよ…」

律「………うん」

律が言うように誰に恥じるわけもなく堂々と、というのは私にはまだまだ時間がかかるかもしれない。

けれど、不安も、悲しみも、恐怖も、喜びも、楽しみも…愛しさも。繋がれた手の温もりと、左手の薬指に光る指輪が律と分け合っていることを教えてくれるから。

お互い指で確かな証として輝いているから。

だからこの日本でも堂々と歩こう。手を繋いで。律を愛することを誰にも恥じずに。

律と、いつまでも二人で。


澪「あと手汗酷くてちょっとぬるぬるしてきた」

律「おいー!」


──おしまい──








最終更新:2011年12月20日 19:23