律「そっか、あれからもう十年近く経ってるんだな」
梓「次の月食はいつなのかな」
律「さあ、また十年後か二十年後か」
梓「そんなに先の話なんですか?」
律「そういうもんだ」
梓「ざんねん」シュン
律「……」
律(十年後、か。私は一体どうなってるんだろ)
梓「どうしたんですか、急に黙り込んで」
律「別に、何でもないよ」
梓「ふぅん」
律「……」
梓「ねぇ、律先輩」
律「んー」
梓「何年後になるか分からないけど」
梓「次の月食も、一緒に見ましょう!」
律「……」
梓「ね、こんな感じで二人して」
律「うん。そうだな」
梓「やったぁ」ニコニコ
律「……」
梓「その時までには、もう少し広い所に引っ越したいですね」
律「私はここで十分だけど」
梓「狭くないですか?」
律「二人で暮らすなら広すぎるくらいだろ」
梓「それはそうですけど」
律「まあ、私はどっちでもいいよ」
梓「ほんとっ?」
律「お前と一緒だったら」
梓「……」
律「あずさ?」
梓「不意打ちは卑怯ですっ」
律「何でだよ」
梓「なんか誤魔化されたみたいで……」
律「んなこと言われても」
梓「……」
律「……」
梓「わ、私もその」
律「……何?」
梓「律先輩と、一緒にいたいです」
律「そっか」
梓「……」モジモジ
律「ありがと」
梓「あ、あの」
律「うん?」
梓「キス、していいですか?」
律「聞くなよ、いちいち」
梓「……」
律「いーよ」
梓「」ドキドキ
律(相変わらず、きれいな瞳だな)
律(髪と同じ真っ黒で、じっと見てると吸い込まれそう)
梓「……っ」
チュッ
律「んっ」
梓「……んっ……っふぅ……」
律「っ……」チュウ
梓「……ぷはっ」
律「もういいの?」
梓「……」
律「私もいいか?」
梓「……聞かないでください、いちいち」
律「いいんだな」
梓「……」コクリ
律「ん、それじゃ」
梓「……」
律「目、つぶれよ」
梓「そ、そうですね」ギュッ
律「いや、そんな強くつぶらなくても」
梓「は、はい」キュッ
律「……」
梓「あの、律先ぱ」
チュッ
梓「んっ!」
律「ちゅっ……んぅっ……」
梓「ん~~っ……」
律「っん……ちゅうっ……」
梓「んぅっ……んっ……ふぁっ……」
律「……」
梓「……」
律「ぷはっ」
梓「はぁ、はぁ」
律「大丈夫か、梓」
梓「……」
律「おい、梓」
梓「……」ボー
律「惚けてるし」
梓「……」
律「あーずさ」
梓「……」ポケー
ギュッ
律「……」
律(やっぱ梓、あったかいな)
ナデナデ
梓「……」
ギュウ
梓「……」
律「……」
梓「りつ、せんぱい?」
律「気がついた?」
梓「はい」
律「ごめ、強引すぎた」
梓「いえ、そんなこと」
律「……」ナデナデ
梓「……」
梓「あの、律先輩」
律「なーに」
梓「月が、きれいですね」
律「うん、きれいだな」
梓「……」
律「それがどした」
梓「……さっきのお返しですよ」
律「!」
律「なんだ、知ってんじゃん」
梓「乙女の常識です。むしろ律先輩が知ってたのがびっくり」
律「どういう意味だそれ」
梓「くすっ」
梓「律せんぱい」
律「んー?」
梓「大好き」
律「……」
梓「律先輩は?」
律「はっきり言ったら、月に想いを託した意味ねーじゃん」
梓「キザ」
律「んだと」
梓「普段あまり言ってくれないのに」
律「だからさっき言っただろ」
梓「はっきり言ってくださいよ」
律「やだよ、恥ずかしい」
梓「シンプルな言葉でも、ちゃんと言ってもらえる方が嬉しいものですよ」
律「……」
梓「律先輩は嬉しくありませんか?」
律「へっ」
梓「大好き」ニコニコ
律「……」
梓「言ってくれないんですか?」
律「いつか、気が向いたらな」
梓「……いつかっていつ」ムー
律「こうやって、また一緒に月食を見る時とか」
梓「それって大分先の話だって言ったじゃないですか」
律「そうだな。十年後か二十年後か」
梓「けちんぼ」
律「何とでも言え」
梓「胸無し」
律「お前が言うなぁっ」ギリギリ
梓「きゃー♪」
梓「……」
律「……」
梓「もうすっかり月食終わっちゃいましたね」
律「きれいな満月に元通りってか」
梓「でも、今日は星もすごくきれい」
律「雲一つない、よく澄んだ夜空だな」
梓「……」
律「……」
梓「私、また一つ増えました」
律「何が?」
梓「思い出」
律「……」
梓「いつかまた律先輩と月食見たときに、今夜のこと話したいです」
律「……」
梓「その時は、ちゃんと言ってもらいますからね」
律「うん、多分な」
梓「多分じゃダメです、約束してください!」
律「へーへー、約束」
梓「指切り」
律「ん」
梓「」律 キュッ
梓「えへへ。今から楽しみ」
律「……」
律「……」
律(十年後、自分が何してるかなんて知らないけど)
律(とりあえず、こいつと一緒にいたいことは確かだ)
律(十年後、二十年後なんて言わず、その先もずっと……)
梓「りーつせーんぱい」ゴロン
律「もたれるな、重いだろ」
梓「いいじゃないですか」
律「この甘えんぼ」
梓「えへへー」
律(幸せそうな顔しちゃって)
律(……大好きだよ)
End
短いですがここで終わりとします
余談ですが、次の皆既月食は三年後になるそうです
ただ、今回のような素晴らしい月食が見られるのはもっと先になるんじゃないかと思います
月食ネタで書き始めて早十日・・・
相変わらずの遅筆ですが、できれば年末までにもう一本書きたいです
次回作、また読んでいただけると嬉しいです
ここまでありがとうございました
最終更新:2011年12月22日 22:09