唯「待って澪ちゃん!」

澪「平沢さん、離して・・・!」

唯「きっとあるはずだよ!何か方法が!」

澪「・・・もう無理だよ!」

澪「こうするしかないんだ!」

唯「やだ!」

唯「私も夢を見てた時、すごくつらくて!すごく怖くて!」

唯「誰にも相談できなくて!一人で悩んで!」

澪「・・・」

唯「・・・寂しくて、悲しくて」

唯「でも・・・消える扉を選ぶしかなかった・・・」

唯「でも今は違う」

唯「一人じゃない」

唯「どんなに怖くても、一人じゃないから」

唯「なんとかなるって思える」

唯「澪ちゃんも私を信じて」

唯「きっと正解はあるよ」

澪「・・・」

澪「私だって・・・」

澪「ほんとは皆と一緒にいたい・・・」

澪「消えたくない・・・」

澪「でもこうするしか・・・」

澪「こうするしかないだろ・・・」

澪「・・・うわぁ~・・・わぁ~ん」ボロボロ

澪「うわぁ~・・・あ~ん」ボロボロ

唯「澪ちゃん・・・」

唯(一番つらいのは澪ちゃんなんだよね・・・)

唯「・・・」

唯「・・・?」

唯「・・・!」

唯「澪ちゃん!」

澪「えっ・・・?」グスグス

唯「ちょっと静かにしてて」

澪「えっ・・・何?」

唯「・・・っ!」

唯「わーーーーーーー!!!!」

澪「うわっ!」

唯「・・・」ワー

唯「・・・」

唯「・・・」ワー

唯「・・・やっぱり」

澪「ど、どうしたんだ?」

唯「この空間に」

唯「あるんだよ」

唯「扉がもうひとつ」

澪「!!」

澪「でもなんでそんな事が・・・」

唯「私耳だけは良くてね」

唯「さっきの叫び声が、この部屋のどこかで反射して返ってきたんだ」

澪「やまびことか、こだまみたいな感じか・・・」

唯「それはもちろんこの二つの扉からじゃない、もっと遠くから返ってきた」

澪「でもこの空間は360度真っ白でこの二つの扉以外何もないし・・・」

唯「でもあるんだよ、もうひとつ」

澪「まさかそんな・・・」

唯「こっちだよ!」

澪「う、うん」

唯「わーーーーー!!」

唯「・・・」

唯「こっち!」

唯「・・・」

唯(あるんだ、もう一つ)

唯(もうすぐそこに)

唯「いてっ」ゴチン

唯「え?何もないのにぶつかった・・・」

唯「あ・・・」

澪「これは・・・」

唯「扉だ・・・」

澪「裏から見ると透明だけど」

唯「こっちからは見える・・・!」

澪「この角度からしか見えないようになってたのか・・・!」

唯「そっか・・・」

唯「『目の前の扉を開ける』か『隠し扉を開ける』・・・」

澪「これが本当の『二つの選択』・・・!」

唯「でもこの扉」

唯「何も書いてない・・・」

澪「そんな・・・」

澪「それじゃこの扉を開けたらどうなるか分からないって事?」

澪「ひどい・・・せっかくここまで来たのに」

澪「これじゃ開けたくても開けられない・・・!」

澪「どうして・・・最後の最後で・・・」

澪「うう・・・」

唯「・・・」

澪「どうすれば・・・」

唯「でも」

唯「もうこの扉に賭けるしかないよ」

唯「私たちはもうこの扉を信じるしかないんだよ」

澪「・・・」

唯「確かに不安だけど」

唯「きっと大丈夫」

唯「・・・行こう」


澪(この扉がほんとに正解なのか?)

澪(この扉を開けたら)

澪(消えた人も元に戻らないで、私も平沢さんも消えちゃう・・・)

澪(そんな最悪の結末だってあるんじゃないのか?)

澪(怖い・・・怖いよ)

澪(せっかく平沢さんと友達になれたのに)

澪(ここでお別れになっちゃうかも知れない)

澪(それに・・・)

澪(またりっちゃんに会えるかも、って思ったら)

澪(消えたくないって気持ちがこんなに強くなるなんて)

澪(いやだ・・・)

澪(平沢さん・・・怖くないの?)

澪「平沢さん・・・」

唯「・・・唯でいいよ!」

唯「私、すでに澪ちゃんの事澪ちゃんって呼んでるし!」

澪(・・・)

澪(なんだろう・・・)

澪(記憶にないはずの、思い出せないはずの言葉が)

澪(なんでか分からないけどとっても懐かしい気がする)

澪(もう・・・)

澪(・・・大丈夫)

澪「・・・ゆ、唯」

唯「うん!」

澪「・・・私、唯と出会えて良かった」

澪「ちょっとの間だったけど、友達になれて・・・心強かった」

唯「私も澪ちゃんに出会えて良かったよ!」

唯「現実世界でも、夢の世界でも出会えて良かった!」

澪「この先に何があっても、ずっと友達でいてくれる?」

唯「うん!ずっと友達だよ!」

澪「・・・ありがとう」

唯「こちらこそ!」

唯「・・・それじゃいい?」

澪「・・・うん!」

唯澪「・・・」

唯澪「私たちの選択は―――」

ギィィィィィ・・・


いつもと変わらない朝

でも今日はちょっと特別な日

12月25日、今日はクリスマスだ

憂「ふわぁ・・・ご飯作らなきゃ」

憂「クリスマス・・・か」

憂(小学校3年生の時だっけ)

憂(お母さんが、ほんとはサンタさんはいないって教えてくれたの)

憂(あの時は泣いちゃったんだよね)

憂(サンタさんか・・・)

憂(でもサンタさんがいない、なんてほんとは誰にも分からないよね)

憂(いない、って勝手に思ってるだけで)

憂(ほんとはちゃんといて)

憂(私たちの知らない間にプレゼントをくれてるのかも)

憂(誰も気づかない、誰にも気づかれないけど)

憂(誰も知らないところで素敵なプレゼントを―――)

憂(ってちょっとメルヘンだったかな)

憂(それに)

憂(私の、私にとってのサンタさんは)

憂(今までいろんなプレゼントをくれたもん!)

憂「ふふ・・・」


学校

憂「おはよう、今日も寒いね」

梓「うん・・・」

憂「梓ちゃんどうしたの?」

純「先輩たちの受験が心配で眠れない夜が続いてるんだってさ」

梓「そ、そんなことないもん!」

梓「・・・ちょっと寝不足なだけで」

憂「そっか、実は私もちょっと・・・」

純「梓も憂も心配性なんだから」

梓「中でも特に心配な先輩が・・・」

憂「え、誰の事?」

梓「え?いやいや別に・・・」

純「あはは」

――――


紬「おはよ~」

律「今日はクリスマスだなー」

和「受験なんだから今年くらいは勉強しなさいよ」

律「分かってるって」

さわ子「はいみんな席についてー」

ガタガタ

タッタッタッタ・・・

ガラッ

澪「すみません、遅れました」

律「お、澪が遅刻か」

澪「間に合っただろ!」

紬「澪ちゃんおはよ~」

澪「あ、おはよう」

和「ほら早く席に・・・」

さわ子「まったく」

澪「す、すいませ」

タッタッタッタ・・・

澪「・・・」

さわ子「やれやれ、やっと来たわね最後の一人が」

律「ったく」

紬「うふふ」

和「いつまでたっても・・・」

ガラッ

唯「はあ・・・はあ・・・」

澪「・・・」

澪「唯」

唯「あ、澪ちゃん!」

澪「・・・おはよう!」

唯「うん!」

唯「おはよう!」

何一つ欠けていない世界

今度こそ本当に

いつもと変わらない朝が来た









最終更新:2011年12月25日 21:35