ピンポーン・・・
ガチャ
唯「和ちゃああん!!」ギュウウ
和「唯、あけましておめd」唯「憂ー! 和ちゃん! 和ちゃんきたよぉー!」
トタトタトタ
憂「和ちゃぁぁん、あけましておめでとう!」ダキッ
和「わっぷ、もぉ・・・おめでと、今年もよろしくね、唯、憂」ナデナデ
唯「おめでと、さ、はやく入って入って~」グイグイ
和「ちょっとちょっと。落ち着きなさいあなたたち」
和「はいこれ、つまらないものだけど、東京のお土産よ」
憂「ありがとう和ちゃん・・えへぇ~」ニコニコ
唯「ふふふぅ~」ニコニコ
和「ちょっと、ふたりとも、何そんなに人の顔見てるのよ」
憂「だって、久しぶりの和ちゃんだもん♪」ニコニコ
唯「そうだよそうだよ、ホンモノの和ちゃんだよぉ♪」ニコニコ
和「憂はともかく、唯は先週東京で会ったでしょ」
唯「えへへぇ、銀座でオトナのデートしちゃったもんね、和ちゃぁん」
憂「おねえちゃんだけ、ずるいなぁ」
和「ふふっ、あんなのがデートと言えるのかしらね」
唯「刺激的だったよ、銀座ってお洒落で高級なイメージだったけど」
唯「それだけじゃなかったんだね」
和「そうね、あれもまた銀座の一面ね」
憂「和ちゃん、外寒かったでしょ、お雑煮あるけど食べない?」
憂「お正月料理は、食べ飽きちゃってるかな?」
和「そうね、ぜひいただくわ。久しぶりの憂のお料理だもの」
唯「憂のお雑煮はおいしいよ、特製なんだよ~」
憂「おまたせしましたー。『マシュマロ豆乳雑煮・おねえちゃんスペシャル』です!」
和「・・・マシュマロ?」
憂「あ、ホントはマシュマロ入ってないんだよ!?」
憂「おねえちゃんみたいなふわふわのお雑煮なんだぁ。えへへ」
和「それでマシュマロってわけね?」
唯「私のリクエストで憂が作ってくれたんだよ、マシュマロ豆乳雑煮!」
和「豆乳は入ってるんだ・・・あら何これ、美味しい!」ズズッ
唯「でしょでしょ~、憂のお雑煮だもん」フンス!
憂「よかったぁ」ニコニコ
和「よく練られてなめらかな豆乳・・・まるでクリームシチューね」
和「それを薄口しょうゆと昆布出汁で味を調えて和風に。さすが憂ね」
唯「えへへ//」
和「なんで唯が照れてるのよ」
唯「憂がほめられるとうれしいんだよぉ」テレテレ
憂「ううん、おねえちゃんのアイデアだもん。ありがとうおねえちゃん」ニコニコ
唯「うーいー♪」ピョンピョン
憂「おねえちゃんっ♪」ピョンピョン
和(喜んでる喜んでる♪)
和「相変わらずね、あなたたち」
唯「ねぇねぇ和ちゃん、東京の大学はどうなの?」
和「どうって、そうね。仲のいい友人もできたし、順調よ」
唯「もぉ、そういうんじゃなくてさー、もっと何かないの?」
和「どういうのよ? そういう唯はどうなの? ちゃんと勉強してるの?」
唯「えぇ~、いきなり勉強のこと?」
和「唯のことだし、寮生活は澪やムギに面倒見てもらってるんでしょ?」
唯「そ、そんなことないよ! 澪ちゃんたちだけじゃなくて・・・」
唯「りっちゃんにも、晶ちゃんにも、菖ちゃんや幸ちゃんにも面倒見てもらってるよ!」
唯「人は1人では生きていけない。私はみんなに支えられて生きているんだよ」キラキラ
憂「おねえちゃん、大人になったなぁ」ウルウル
和「・・・唯に振り回される人間が増えてるのね」
唯「えーっ。和ちゃんのいじわるっ! 私だって成長してるんだから」
和「へえ、たとえば?」
唯「えーと、えーと・・・今度、みんなでクルマ買うんだよ?」
和「え、クルマ? すごいわね・・・まさかムギに出して貰う訳じゃないわよね?」
唯「うん、それはないよぉ。ちゃんとみんなでバイトして買うんだよ?」
和「そうよね、安心したわ」
唯「えへへ、まだ教習所に通ってるんだけどね」
唯「5月の連休には、和ちゃんのところに遊びに行こうかな」
和「あら、それは楽しみね」ニコッ
唯「最初のドライブは、憂と行く予定なんだけどねー。ねぇ憂♪」
憂「うん、おねえちゃん♪」ニコニコ
唯「ふふっ、和ちゃんも行きたい?」
和「そうね。どこに行くかはもう決めたの?」
憂「うーん・・・それを今、悩んでるんだぁ」
唯「むっ、流された!」
憂「和ちゃん、どこか一泊か二泊くらいで手頃なところないかな?」
和「いつ頃行くのかにもよるでしょうけど、春頃なら」
和「福島県の大内宿。江戸時代からの賑いの残る宿場町よ。蕎麦処としても有名ね」
憂「福島県かぁ・・・」
唯「お蕎麦、お蕎麦! 憂の特製年越し蕎麦、おいしかったなぁ」ぽわぽわ
和「そこから北上して宮城県は仙台市。言わずと知れた杜の都」
和「市内の至るところ、年中とっておきの緑の風景が見られるわ」
和「年末は仙台光のページェントっていうイベントをやっていたのよ。私も行きたかったわ」
唯「イルミネーションきれいだろうねえ」
憂「宮城県・・・」
和「最後は、世界遺産に登録された平泉の歴史文化を巡ってはどうかしら」
和「本当は、何日かかけて、ゆっくり見てみたいところだけど」
唯「世界遺産かぁ。なんだかドキドキするよ」
憂「岩手県・・・」
唯「さすが和ちゃんだね、すごく行きたくなってきたよ、東北」
憂「和ちゃん、東北地方のこと詳しいんだね」
和「9月に一度行ったのよ。その時は観光じゃなかったけれどね」
唯「え、いいなー旅行してきたんだ、和ちゃん!」
憂「和ちゃん、あの・・・」
和「どうしたの?憂」
憂「福島県、宮城県、岩手県って、震災の被害が大きかったところだよね」
和「そうね。私が9月に行ったのは、大学のボランティア派遣なのよ」
唯「え、そうなの!? 和ちゃんすごいね」
憂「やっぱりそうなんだ・・・」
和「ええ、ボランティア派遣はきちんと組織されてるから、安全よ」
唯「でも9月だったら、もう震災から半年だよね。そんなに時間が経っても、お手伝いすることあるの?」
和「そうね、9月にはもう仙台空港の復旧とか、
ニュースでは復興が進む様子ばかりだったわね」
和「ちょうど唯たちにも見てほしくて、その時の写真を持ってきてるのよ」ガサゴソ
和「これが、『完全復旧した仙台空港』にある建物のひとつよ」
唯「こ、これ・・・」
憂「ぐちゃぐちゃだね」
和「確かに空港の機能は復旧していたけど、周囲は瓦礫の山で、とてもそうは思えなかったわ」
和「こっちは、仙台市からお隣の塩竃市への道筋で撮った写真」
和「私たちは塩竃の近くで作業したの。その拠点となったベースキャンプにも、津波の爪痕があったわ」
唯「建物のなかも、汚れてるね」
憂「和ちゃん、このカレンダー、女の人の足下にある泥って・・・」
和「横線に沿って泥がついてるでしょう? その高さまで、津波に吞まれたの」
和「水も電気も復旧したけど、ベースキャンプも、一部ではトイレも使えないまま」
唯「こわいね・・・この写真」ブルッ
憂「おねえちゃん・・・」ギュッ
唯「ね。和ちゃんは、どんなお手伝いをしたの?」
和「そうね。残念ながらお天気が悪くて、あまり作業できなかったの」
和「だから、側溝の泥だしとかの軽作業、あとは復旧活動の記録をまとめるお手伝いをしていたわ」
憂「泊まるところは、お風呂とかトイレとかちゃんとあったの?」
和「えぇ、宿泊施設は仙台市内の被害もそれほど大きくなかった場所よ」
和「それでも、壁には震災の時刻に止まった時計がそのままだったけれど」
和「トイレやお風呂も、震災直後こそ苦労してたみたいだけど、この時期は何の問題もなかったわ」
唯「ごはんはどうしてたの?」
和「そうね、朝と昼は作業もあるからお弁当」
和「夜は、毎晩市内の飲食店に全員で出かけてたわ。成人してる先輩方は、毎日お酒も飲んでらしたし」
唯「え、それっていいの? ボランティアで行ってるのに」
和「そうね、そこが大事なところね」
和「唯は、ボランティアって何をするべきだと思う?」
唯「それは、やっぱり瓦礫を片付けたりとか、道路を直したりとか・・・」
和「そうね、それは何のためにやってるのかしら」
憂「・・・被災地の人たちの生活を、元に戻すため、かな?」
和「そう、そこが大事よね。元通りの生活にするには、道路や家がきれいになるだけでは駄目」
和「仕事も含めた生活サイクルそのものが、以前と同じにならなければいけないわ」
和「道路やお店がきれいになっても、お客さんがこなければ意味がないもの」
唯「あ・・・そっか。そうだよね。」
憂「震災の直後は、自粛ムードで消費が冷え込んで、それで余計に不景気になったって言われてたよね」
和「そうね・・・。ボランティアも含めて、復興の目的は被災地に活力を与えること」
和「そのためには、経済もうまく回るようにしないとね」
唯「自粛自粛って言ってるのは駄目なんだねー」
和「もちろん被災地の人への配慮も忘れちゃいけないわよ?」
憂「被災地の方は、どう思ってるのかな?」
和「それも、一言で言えば人それぞれ」
和「最初は、ボランティアも含めて、余所から人が来ることを嫌がる人もいたそうよ」
和「被災地を物見遊山に来るような心ない人たちも一部にはいたそうだし・・・」
唯「ひどいね、許せないよそんなの!」
和「でもね、最初はそう言ってた人の中にも、今では見に来てほしい、って言う人もいるの」
唯「どうして?」
和「被災地はニュースで流れるとおり、どんどん復旧しているのも事実よ」
和「でも、そのスピードの中で、個人の生活は簡単に元通りにはならない」
和「殆どの人が、身内の誰かしらを亡くしてるんだもの、戻りようがない」
憂「そんな・・・」
和「精神的に何も立ち直っていないのに周囲の環境ばかり復旧していくと、取り残されたような気分になるでしょうね」
和「だから、表面的な復旧ではなく、現実の自分たちの生活をその目で見てほしい、という想いもあるのかもしれない」
唯「・・・難しいね」
和「それぞれ置かれている立場も考え方も違うもの。想いも異なるのは当然よね」
唯「うん。私、募金はしたんだけど、それだけだよ・・・なんだか震災のことは、考えるのも怖かったんだ」
憂「和ちゃんは、どうしてボランティアに参加しようと思ったの?」
和「そうね。私も行く前には葛藤があったわ」
和「現地へ行っても、出来ることなんて高がしれてる。ボランティアの安全を守るための経費も馬鹿にならない」
和「それなら、いっそのお金を全部寄付した方が、震災復興の役に立つんじゃないか、って」
和「でもね、今は行って良かったと思ってるの」
和「現地の様子や、被災地の人の思いを、こうして唯たちにも伝えることができる」
和「それは真実のほんの一部分だけれど、実際に私が見て、聞いて、肌で感じたことだからこそ伝えられるのよ」
唯「うん・・・」
憂「テレビのニュースと違って、生きた声だよね・・・」
和「現地の様子を見て、話を聞いて、想いを知る。それが、『痛みの共有』よ」
唯「それって、お金を出すだけでは出来ないことだよね」
和「それこそが、現地へ人が行くことの意味なんじゃないかしら」
和「それとね、もうひとつ大事なこと」
和「災害はどこでも起きる可能性があるわ。その時に、自分にできることの可能性を少しでも増やしたかった」
和「自分に後悔しないためよ」
和「大切な人を守りたいのに、守れなかった人がたくさんいるの」
和「私はまだ、守れる可能性があるんだもの。その可能性を少しでも増やしたい」
唯「・・・和ちゃん」
唯「ねぇ、和ちゃん。今からでも、私にも何かできないかな?」
憂「そうだよね。私も、何かできることをしたい」
和「そうねぇ。現地の復旧活動は、仕事を失った人を雇用して次の段階に入っているから、実作業で出来ることは少ないけど・・・」
和「あるわよ、誰にでもできることが」
憂「なんだろう・・・私たちにできること?」
唯「! 和ちゃん、もしかしてそれってさっきの・・・」
和「えぇ。それが、東北観光よ」
憂「そうか! 現地を見て、話を聞いて、想いを知る」
唯「・・・被災地を見て回るの?」
和「いいえ、その必要はないわよ。さっき名前の出た、大内宿、仙台、平泉」
和「東北のあちこちにある観光名所でも、以前の元気を取り戻そうと頑張ってるわ」
和「そんな土地へ足を運んで、その土地の人と話をすること」
和「東北のおいしいものを食べること」
和「東北のお土産を買うことも、宿に泊まることも」
和「そして、帰ってきて東北の魅力を伝えることも、ぜんぶ支援につながるわよ」
憂「おねえちゃん・・・」
唯「憂・・・」
憂「行きたいところ、決まったね」
唯「うん!」
和「ふふ、楽しんできなさい2人とも。そして、楽しいお土産話をk」
唯「もぉ、何言ってるの和ちゃん!」ジリッ
憂「のーどーかーちゃん♪」ジリリッ
和「憂まで、ちょ、ちょっと待ちなさい」
憂「えへへー、のどかちゃぁぁんっ!」ぎゅーーーーっ
和「わあぁっ、何なのよいきなり//」
唯「・・・」キラーン☆
和「ゆ、唯はやめなさい。いい子ね。ね?」
唯「の ど か ちゃ あ ~ ~ ん !」ドドドッ
和「だぁぁーーーーっ」ドサッ
唯「んぅぅーーーっ」ぎゅっ
憂「んふぅーーーっ」ぎゅぎゅっ
和「もう! あんたたち、昔っから変わらないんだから」
唯「えへへ。和ちゃんも昔から変わらないよね」
憂「遊びに行くときは、いつも3人いっしょだったよね?」
和「唯、憂・・・」
唯「これからだって、ずうっと一緒だよ、和ちゃん」キラキラ
憂「和ちゃん、一緒に行こう?」ウルウル
和「も、もう・・・仕方ないわね//」
唯「のどかちゃん照れてる、かわいー!」
【おしまい】
※>>1は関係者ではありません。
最終更新:2012年01月06日 02:10