憂「泊まるところは、お風呂とかトイレとかちゃんとあったの?」

和「えぇ、宿泊施設は仙台市内の被害もそれほど大きくなかった場所よ」

和「それでも、壁には震災の時刻に止まった時計がそのままだったけれど」


和「トイレやお風呂も、震災直後こそ苦労してたみたいだけど、この時期は何の問題もなかったわ」

唯「ごはんはどうしてたの?」

和「そうね、朝と昼は作業もあるからお弁当」

和「夜は、毎晩市内の飲食店に全員で出かけてたわ。成人してる先輩方は、毎日お酒も飲んでらしたし」

唯「え、それっていいの? ボランティアで行ってるのに」

和「そうね、そこが大事なところね」

和「唯は、ボランティアって何をするべきだと思う?」

唯「それは、やっぱり瓦礫を片付けたりとか、道路を直したりとか・・・」

和「そうね、それは何のためにやってるのかしら」

憂「・・・被災地の人たちの生活を、元に戻すため、かな?」

和「そう、そこが大事よね。元通りの生活にするには、道路や家がきれいになるだけでは駄目」

和「仕事も含めた生活サイクルそのものが、以前と同じにならなければいけないわ」

和「道路やお店がきれいになっても、お客さんがこなければ意味がないもの」

唯「あ・・・そっか。そうだよね。」

憂「震災の直後は、自粛ムードで消費が冷え込んで、それで余計に不景気になったって言われてたよね」

和「そうね・・・。ボランティアも含めて、復興の目的は被災地に活力を与えること」

和「そのためには、経済もうまく回るようにしないとね」

唯「自粛自粛って言ってるのは駄目なんだねー」

和「もちろん被災地の人への配慮も忘れちゃいけないわよ?」

憂「被災地の方は、どう思ってるのかな?」

和「それも、一言で言えば人それぞれ」

和「最初は、ボランティアも含めて、余所から人が来ることを嫌がる人もいたそうよ」

和「被災地を物見遊山に来るような心ない人たちも一部にはいたそうだし・・・」

唯「ひどいね、許せないよそんなの!」

和「でもね、最初はそう言ってた人の中にも、今では見に来てほしい、って言う人もいるの」

唯「どうして?」

和「被災地はニュースで流れるとおり、どんどん復旧しているのも事実よ」

和「でも、そのスピードの中で、個人の生活は簡単に元通りにはならない」

和「殆どの人が、身内の誰かしらを亡くしてるんだもの、戻りようがない」

憂「そんな・・・」

和「精神的に何も立ち直っていないのに周囲の環境ばかり復旧していくと、取り残されたような気分になるでしょうね」

和「だから、表面的な復旧ではなく、現実の自分たちの生活をその目で見てほしい、という想いもあるのかもしれない」

唯「・・・難しいね」

和「それぞれ置かれている立場も考え方も違うもの。想いも異なるのは当然よね」

唯「うん。私、募金はしたんだけど、それだけだよ・・・なんだか震災のことは、考えるのも怖かったんだ」

憂「和ちゃんは、どうしてボランティアに参加しようと思ったの?」

和「そうね。私も行く前には葛藤があったわ」

和「現地へ行っても、出来ることなんて高がしれてる。ボランティアの安全を守るための経費も馬鹿にならない」

和「それなら、いっそのお金を全部寄付した方が、震災復興の役に立つんじゃないか、って」

和「でもね、今は行って良かったと思ってるの」

和「現地の様子や、被災地の人の思いを、こうして唯たちにも伝えることができる」

和「それは真実のほんの一部分だけれど、実際に私が見て、聞いて、肌で感じたことだからこそ伝えられるのよ」

唯「うん・・・」

憂「テレビのニュースと違って、生きた声だよね・・・」

和「現地の様子を見て、話を聞いて、想いを知る。それが、『痛みの共有』よ」

唯「それって、お金を出すだけでは出来ないことだよね」

和「それこそが、現地へ人が行くことの意味なんじゃないかしら」

和「それとね、もうひとつ大事なこと」

和「災害はどこでも起きる可能性があるわ。その時に、自分にできることの可能性を少しでも増やしたかった」

和「自分に後悔しないためよ」

和「大切な人を守りたいのに、守れなかった人がたくさんいるの」

和「私はまだ、守れる可能性があるんだもの。その可能性を少しでも増やしたい」

唯「・・・和ちゃん」

唯「ねぇ、和ちゃん。今からでも、私にも何かできないかな?」

憂「そうだよね。私も、何かできることをしたい」

和「そうねぇ。現地の復旧活動は、仕事を失った人を雇用して次の段階に入っているから、実作業で出来ることは少ないけど・・・」

和「あるわよ、誰にでもできることが」

憂「なんだろう・・・私たちにできること?」

唯「! 和ちゃん、もしかしてそれってさっきの・・・」

和「えぇ。それが、東北観光よ」

憂「そうか! 現地を見て、話を聞いて、想いを知る」

唯「・・・被災地を見て回るの?」

和「いいえ、その必要はないわよ。さっき名前の出た、大内宿、仙台、平泉」

和「東北のあちこちにある観光名所でも、以前の元気を取り戻そうと頑張ってるわ」

和「そんな土地へ足を運んで、その土地の人と話をすること」

和「東北のおいしいものを食べること」

和「東北のお土産を買うことも、宿に泊まることも」

和「そして、帰ってきて東北の魅力を伝えることも、ぜんぶ支援につながるわよ」

憂「おねえちゃん・・・」

唯「憂・・・」

憂「行きたいところ、決まったね」

唯「うん!」

和「ふふ、楽しんできなさい2人とも。そして、楽しいお土産話をk」

唯「もぉ、何言ってるの和ちゃん!」ジリッ

憂「のーどーかーちゃん♪」ジリリッ

和「憂まで、ちょ、ちょっと待ちなさい」

憂「えへへー、のどかちゃぁぁんっ!」ぎゅーーーーっ

和「わあぁっ、何なのよいきなり//」

唯「・・・」キラーン☆

和「ゆ、唯はやめなさい。いい子ね。ね?」

唯「の ど か ちゃ あ ~ ~ ん !」ドドドッ

和「だぁぁーーーーっ」ドサッ

唯「んぅぅーーーっ」ぎゅっ

憂「んふぅーーーっ」ぎゅぎゅっ

和「もう! あんたたち、昔っから変わらないんだから」

唯「えへへ。和ちゃんも昔から変わらないよね」

憂「遊びに行くときは、いつも3人いっしょだったよね?」

和「唯、憂・・・」

唯「これからだって、ずうっと一緒だよ、和ちゃん」キラキラ


憂「和ちゃん、一緒に行こう?」ウルウル

和「も、もう・・・仕方ないわね//」

唯「のどかちゃん照れてる、かわいー!」

【おしまい】


東北観光復興ポータルサイト 
http://www.tohokukanko-fukkou.jp/

※>>1は関係者ではありません。



最終更新:2012年01月06日 02:32