唯「…うわあああああ!?」

和「な、何よ…?どうしてそんなに驚く訳?」



唯「の、和ちゃん…」

いたんだ…
そう口から出そうになったが、そこはぐっと堪えた

和「? 私が何?」

唯「な、なんでもないよ!あはは…」

…しまった、和ちゃんがいたらムギちゃんの悩みごとが聞けないじゃないか
私はこれほど幼馴染の彼女を邪魔に思ったことはない

和「? まぁいいわ、それで話って何かしら?」

紬「そ、それは…何でもないわ」プイ

和「嘘おっしゃい、話があるから唯の家に来たんでしょ
  なのにどうして友達の唯にも話せないの?」

それはあなたがいるからですよ和ちゃん
お願いだから空気読んでよ

和「…あ、もしかして私がいるから話せないのかしら」

その通りです
ていうか、気がついてるなら帰ってよ和ちゃん


唯「あ、あの和ちゃん…今日は悪いけど帰ってくれないかな?
  どうやらムギちゃんは私と二人っきりで話がしたいみたいだしさ」

和「嫌よ、だって唯の友達は私の友達でしょ? なら私にも聞く義務があるわ」

…え?何ですかその理屈
何だか憂といい、和ちゃんといい、いろんな意味で面倒臭いなぁ…

紬「…友達?」

和「そう、あなたと私は友達よ紬さん」

紬「…和さんはこんな私でも友達になってくれるの?」

和「当たり前じゃない、なんたって唯の友達なんだから だから私とあなたも友達よ」

紬「友達……あの!私、琴吹紬っていいます! みんなにはムギって呼ばれています!」

和「そう、よろしくねムギちゃん」

紬「…! はい!」

…あれ?いつの間にか友達になってるよこの二人…
まぁ、ムギちゃんに新しい友達が出来たのはいいことだけどさ…

…あぁ、ムギちゃんが凄い笑顔で私にピースしてるよ

和「それじゃ話を本題に戻しましょうか ムギちゃんの話って言うのは一体何かしら?」

紬「あ、あの…軽音部の二人を仲直りさせるのに、いい考えがあって…」

唯「いい考え?」

紬「うん…あの、もう少しで夏休みでしょ?
  それで、合宿も兼ねてみんなで私の別荘に行かないかと思って…」

唯和「…別荘?」

紬「そう…そこで部員同士の団結力を高めるの…そしてみんな仲良し、なんて思ったり…」

紬「…ダメかな?」

唯「……」

…驚いた、まさかムギちゃんがみんなの為を思っていたなんて…
本当にムギちゃんは変わったんだな…二か月前の彼女が、まるで嘘のようだ

それに、これはムギちゃんの言う通り、部の団結力を高めるいいチャンスかもしれない
ならこの機会を生かさない訳がない

唯「…いいね!私は賛成だよ!」

紬「ほ、本当!?…良かった…」


唯「それじゃ、早速明日にでもみんなに話してみよう!」

紬「うん!…でも、みんな賛成してくれるかな?」

唯「賛成してくれるよ、私が保証する」

少なくとも澪さんは、そういう気持ちをちゃんと汲み取ってくれる人だ
…まぁ、律さんはあれだけど、きっと来てくれる筈

紬「…そうだよね、私達がみんなを信じなくちゃ!」

彼女は本当に変わった
今の彼女を澪さん達にも見せてあげたいなぁ


和「…ふーん…軽音部の合宿ねぇ…」


―そして次の日 部室

澪「へぇ、合宿か!成る程、我が部の士気を高める為にもいいかもしれないな」

唯「でしょ?ムギちゃんが提案したんだよ!」

紬「ゆ、唯ちゃん…!」

澪「ほぅ、あのムギがか!それに唯、お前いつの間にか名前で呼ばれるようになったんだな
  成る程、ムギも大分変わったってことかい」

紬「なっ!?私が変わったですって!?口を慎みなさいこの愚民!」

澪「はははっ!そう照れるなって!」

紬「て、照れてなんか…!///」

澪「んん?その割には顔があけぇぞ?」

紬「う、うるさいうるさい!///」

…そう、これだよこれ。私が求めていた高校生活は。
みんなが仲良しの、まさにこういうものだったんだ
後はこの光景に、律さんが加わってくれれば完璧なんだけど…

…そう言えば彼女は、本当にもう二度と部室に来ないのだろうか?


―そして数時間後

澪「……」

紬「……」

唯「…律さん、来ないね…」

澪「…あの馬鹿、今日も必ず顔見せろって忠告しておいたんだが…」

紬「…彼女、本当にもう二度と来ないのかしら…?」

そんな…このままじゃムギちゃんの折角の計画が台無しになってしまうじゃないか

…そんなこと、私がさせない!


澪「お、おい唯!何処に行くんだ!」

唯「ちょっと律さんを探してくる!」

紬「…探しても無駄よ、彼女はきっと既に帰ってしまっているわ」

唯「そんなの探してみなくちゃわかんないじゃん!
  このまま、ただ黙って待っているよりマシだよ!」

折角、もう少しで手に入りそうな私の望んだ日常
私はそれをただ黙って見過ごすつもりはない
だから私は迎えに行かなくちゃ……彼女を

がちゃっ

澪「! 律…!」

律「…よう」

唯「律さん…!良かった、本当にもう二度と部室に来ないのかと…」

律「…期待させた様で悪いけど、忘れ物取りに来ただけだから」

唯「え…?」

律さんはそう言うと、自分がいつも座っていた机の中身をごそごそと漁った
忘れ物を取りに来ただけって…それじゃ本当に軽音部を辞めるつもりなの?

律「…お、あったあった。…それじゃ邪魔したな、さようなら」

そう言い放った彼女は誰とも目を合わせず、黙ってドアの方へと歩いていく
ここで律さんを止めなくちゃ…じゃないと、彼女にはもう二度と会えない気がする

唯「まっ…!」

澪「待ちやがれぇ!!!」


律「…何?」

澪「…あのさ律、あたい等、夏休みに合宿しようと思ってるんだ」

律「…それで?」

澪「それでさ…お前もちゃんと来いよ、待ってるからさ」

律「……」

がちゃっ 

ばたん

唯「…行っちゃった」

紬「彼女は来るのかしら…?」

澪「…あいつは来るよ…必ず」

そう言うと、澪さんは悲しそうに顔を伏せた
いつも強気な澪さんのこんな顔、初めて見た…
もし律さんが来なかったら、その時はどうなってしまうのかな?

…いや、馬鹿なことを考えるのは止めよう
今は私も律さんを信じなくちゃ



―そして一週間後

私達はムギちゃんの別荘に行く為、駅で待ち合わせをしました

ムギちゃんの話しによると、どうやら別荘は海が見える素敵な所らしいです
今から楽しみだなぁ、ワクワクしちゃうよ

…でも、

唯「…りっちゃん来ないねぇ…」

澪「……」

紬「彼女はやっぱり、本当に…」

澪「……」

和「そろそろ時間でしょ?なら諦めた方がいいんじゃないかしら?」

澪「…いいや、律は必ず来るさ。だがその前に…」

澪「お前は誰だよ!?部員じゃねえだろうが!」

和「私?私は真鍋和よ」

澪「…おい唯、これは一体どういうことだ? 何故部外者がここにいる?」

唯「…ごめんなさい、どうしても和ちゃんが行きたいって、それで…」

澪「おいおい…これは軽音部の絆を深める為の合宿なんだろ?」

和「いいじゃない、私とも絆を深めましょうよ」

紬「そうよ、彼女はとてもいい人よ」

澪「知るかよ…まぁ今更追い返す訳にもいかねぇからな…」

和「そういうことよ」

澪「……」

…うぜぇ
澪さんは絶対そう思っているだろう

和ちゃん…お願いだから、あまり余計なことはしないでね


―そして数分後

紬「…そろそろ時間ね、残念だけど…」

唯「…律さんは来なかったね」

澪「……あの馬鹿…」

澪さんは悔しそうな顔をして、地面を睨んだ
当然だ、彼女は信じていた律さんに裏切られたんだから

そんな彼女の様子を見た私達は、同じ様に顔を伏せた

今や私達の心は、完全に沈んでしまっていた

―ある一人を除いて

和「何よあなた達、そんな辛気臭い顔しちゃってさ
  折角の旅行なんだもの、もっと明るく行きましょうよ」

お願いです、誰か彼女を黙らせて下さい…

「そうだぜ、もっと明るく行こうや」

唯澪紬「…え?」


聞き覚えのある声に、私達は一斉に顔を上げた

そこにいたのは、私達が待ちに待った…

澪「律!」
唯「律さん!」
紬「りっちゃん!」

律「へへ…悪いな、待たせた」

澪「この馬鹿野郎!本当に来ないかと思ったじゃねえか!」

唯「そうだよ!みんな待ってたんだから!」

紬「まったく、人に迷惑をかけることがどんなに最低なことか自覚しているのかしら?」

律「…ああ、本当に悪かったよ唯、紬
  …それと姉御、この度は本当に申し訳ございやせんでした!」

澪「いいんだよ分かれば。…それとさ律、姉御って言うのはもう…」

和「あなた達、そんなにのんびり話してる暇あるの?」

和ちゃんに言われて、私達は慌てて電車に乗り込んだ
すると暑い外とは対照的に、中はひんやりとした空気で満たされていた

唯「うわー、涼しいねぇ」

紬「外とは大違いね」

私達はなんてことのない会話をしながら、適当に座る席を探しそこに腰をかけた。

唯「ふぅ、一息一息…」

紬「ふふ、唯ちゃんはまるでお年寄りみたいね♪」

律「なぁ紬、そういえば今から行く別荘ってどんなところなんだ?」

唯「あれ?律さん知らないの?」

律「おう、場所までは聞いてないからな」

紬「言ってなかったかしら?…そうね」


紬「こんな感じかしら?」

唯律「で、でけー!」

澪「こりゃたまげたな…」

和「これは…思っていた以上だわ」

なんだかんだで別荘についた私達は、そのあまりの大きさに驚きを隠さずにいられませんでした その大きさと言ったら、私の家が6つ分くらいです。6つですよ6つ、約500坪?まぁ大体そんな感じです

紬「ふふん、この別荘は全世界に約600件あるうちの、その中でも一番小さい別荘にすぎないわ」

唯澪律和「600件!?」

あぁ…流石お嬢様…
やっぱり私達とは住む世界が違うんだね…

紬「まあ立ち話もなんだし、早速中に入りましょう」

そういうとムギちゃんは玄関?っていうか門?を開け私達を家の中へと招き入れた

そして別荘の中に入った私達は更に驚愕することになる

唯「な、何これ…?」

まず真っ先に目に飛び込んできたもの、それは動物の剥製だった
鹿とかならテレビでもよく見るが、ここに並んでいるのは知らない動物ばかりのだ
それも今にも動き出しそうな…

紬「ああ、これはお父様の趣味なの」

唯「へ、へぇ~そうなんだ…」

紬「それより早く部屋に移動しましょう、斎藤!」

斎藤「お呼びでしょうかお嬢様」

唯「うわぁ!?誰!?」

紬「彼は斎藤、我が琴吹家に仕える執事よ」

へぇ、ならメェ~って鳴くんだ
おかしいね、どう見たって人間なのにね

和「羊じゃないわ、執事よ」

唯「ああそっか…ってなんで私の考えてることが分かったの?」

和「何年あんたの幼馴染やってると思ってるのよ」

幼馴染を何年もやってるくらいで、相手の考えって分かるものなのかな?

! もしかして和ちゃんって…!

和「超能力者じゃないわよ」

唯「あはは、だよねぇ…って、ええっ!?」

紬「そこ、何馬鹿やってるのよ。斎藤、彼女達を部屋まで案内して
  荷物を置いたらここに集合よ」


斎藤「どうぞこの部屋をお使いください」

唯「あ、ありがとうございます…」

うわぁ…思っていた通り部屋も広いな…
どれだけ広いかっていうと、私の部屋の6(ry

斎藤「…平沢様」

唯「は、はい!何でしょうか?」

斉藤「…お嬢様とお友達になって頂いて、どうもありがとうございます」

唯「そ、そんな滅相もない!」

斉藤「高校に入ってあなたと出会ってから、お嬢様は本当にお変りになられました
    あんなに生き生きしたお嬢様の顔を見れて、私は非常に嬉しく思います」

唯「…そうですね、それは私も同じ気持ちです」

斉藤「そうですか、出来ればこれからもお嬢様と仲良くして頂けたらと思います」

唯「はい!勿論そのつもりです!」

斉藤「…本当に、ありがとうございます。では私はこれで…失礼いたします」

唯「…よし、荷物も置いたし玄関に急ごう」

…それにしても、ありがとうか…いい言葉だな、心が暖かくなる
私も誰かにこの思いを伝えたい、まだ心が暖かいうちに

唯「ありがとう…ありがとう♪」

実は伝える相手はもう決まっていた
この素晴らしい別荘に招待してくれた彼女、ムギちゃんにこの思いを伝えよう

ムギちゃん、ありがとう…と、そう伝えるんだ

唯「ふんふふ~ん♪」

私は上機嫌で部屋を飛び出した
それはこれから見ることのできる、彼女の最高の笑顔が頭に浮かぶから

私の親友の、最高の笑顔が


唯「ムーギちゃん♪」

紬「あら唯ちゃん、随分早かったのね まだ誰も来てないわよ」

唯「そうなんだ、えへへ♪」

紬「? どうしたの?何かいいことでもあったの?」

唯「うん♪あのねムギちゃん…」



唯「ありがとう♪」



              _,...---、_________          ______
                           /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ    /           \
                          /,   i   .:..:.:.::.:.:.:.:.:.:ヽ\.   |   第二部 完  |
                        /.:.::i.:.ニ/!.:.:.:.:.:.::ト、.:.:.:.:.:.:.:.::.ヽ.:ヽ ヽ、          ノ
                          /.:.:.:::i.:ニ/ V.:.:.:.:.:| ヽ.:.:.:.:.:.::.:ハ.:::.ト、   ̄ ̄ノ´ ̄ ̄ ̄
                       /.:.:.:.:.:.:V   V\.:::!⌒ヽ.:.:.:..:.:.:i.}.:. :l `ー'
                      ,'.:.:.:.:.:.:.:/  __ \!\!__  ヽ.:.::::i:リ.:.:: |
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最終更新:2010年01月27日 02:20