初めてのキスに戸惑う唯は憂の手を握り締め、じっとりと汗をにじませ目を瞑っている。
憂はくちゅくちゅと水気を帯びた音を立て、舌を尖らせ唯の頬の裏を弄り大きな円を描く。
そして、唯の歯の1本1本を形を確かめるかのようになぞり、
もう片方の頬も同じように弄んだ。
ねりゅっ… ちゅむっちゅぷ…
今度は自分の舌を唯の舌の上で踊らせ、こちょこちょと唾液腺をくすぐる。
二人の唾液はこんこんと湧き上がり、スキマから漏れた露は唯の喉に水道を生み出した。
ちゅる… …っぷ
唯「んんんっ! …ふぁ… んはぁ…」
憂「ふぅ…」
締めというべきか、粘膜の絡む音は激しく響き、部屋に熱気と湿気が漂い始めた。
最後を飾るには十分な強いキス。
それは唯の水分と酸素を全て吸収するような勢いである。
しばらくして離れた唇は二人のトロッとした唾液の線で繋がっていた。
まるでクモの糸の様に繊細で光沢を帯びている。
…
肩で呼吸をし、二人はギュッと強く抱き合った。
唯「はぁ… はぁ…キスってこんな疲れるんだね?」
憂「う…ん、ファーストキスがお姉ちゃんでよかった♪」
ギュッと唯の頭を引き込み、自分のふくよかな胸元へ埋めた。
唯「むぐっ…うーいー… くるしい…」
ひと段落した後、憂いはカーテンへ視線を送り、アイコンタクトで澪の役目が終わったことを告げる。 胸を撫で下ろした澪ははらりとカーテンを除け、徐々に姿を現した。
あまりの濃厚なキスシーンに澪はバツが悪そうに頭を掻き、笑いながら歩いて来る。
ふと唯は彼女の下半身にしっとりと染みができていることに気が付き、首をかしげた。
唯「澪ちゃん~? …おもらし?」
ゆっくりと自分のソコを見る澪…
視覚でようやく自分が濡れていることに気が付いた。
澪「これはだな!えと、アレだ! …アレだよな憂ちゃん!?」
(憂ちゃん、おねがい…話をあわせてっ!)
憂「あー…やっちゃったんですね。」
アセアセし憂に話を振るも、見事に切られ…完全に詰んだ。
彼女の冷静な瞳が"だめだ、コイツ…"と全てを物語っている。
澪「… …っ!」
(いいもんっ!家に帰ったらあずにゃんと…
もとい、あずにゃんでにゃんにゃんするもん!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!あずにゃんあずにゃぁん!!!!)
ガチャッ!ダダダッ…
唯「あ…澪ちゃん泣いて行っちゃったね…おもらしで冷えちゃわないかなぁ?」
憂「うん、澪さんなら大丈夫だよ♪きっとホカホカだよ」
(二つの意味でイっちゃったって、お姉ちゃんのギャグのセンスもなかなか♪)
唯「?」
―日曜日―
リーンゴーン!
普通の家とは違う呼び鈴を鳴らし、琴吹邸の門をくぐる。
紬「いらっしゃい、澪ちゃん♪
あら?そのパペット、ずいぶん気に入ってくれたみたいね?
ここに来るまでずっと着けていたの?」
澪の手には"あずにゃん"が必死でバッグを持っている。
澪「ああ、最近寒いからな…ちょっと手袋代わりにしているんだ」
(あずにゃんの膣あったかいナリ~♪
わたしの指先で感じて、カバン落としたらお仕置きだにゃー♪)
"あずにゃん"では無い方の手が、虫のようにわきわきと動き出す。
ときたま吹くからっ風は"あずにゃん"を煽り、ほんのり酸味がかった匂いが紬の欲を誘う。
紬「うふふ… あらあら♪」
紬はパペットから何かを感じ取り、嬉しそうに眉尻を下げ琴吹邸の中へ入っていった。
120平米はあるだろうか、家2件分ぐらい広さがある茶室に澪は案内された。
千 利休様も「らめぇぇぇっ!」と声を上げるくらいに広い。
中央には炉畳があり、コトコトと湯が沸いている。
澪はスッっと携帯電話とペンを差し出し、紬は封筒を差し出し交換した。
…
澪・紬「・・・プッ!」
内容を確認した二人は衝撃を受け、共に鼻血を噴出し握手を交わす。
澪「わたしたち、ずっと友達だよな!?」
紬「わたしたち、ずっと友達だよね!?」
澪(濡れた白のワンピースあずにゃん!汗で桃色の乳首の形が解るうぅ…
しかも、乳首が少し硬くなってツンってなっているよぅ!
あとの2枚も白のワンピースだけど、全身水びだしでボディラインがくっきりにゃ!
これはネガを没収して、A0サイズに伸ばして壁に張り付けの刑にゃー!
あずにゃんにゃん!!)
紬(澪ちゃんって大胆なのね…音も画像もとても生々しくて鮮明だわ… しかし…
濡れる前に鼻血なんて、私も何だかベタですわね♪)
共に欲求を抑えきれず、内股をもぞもぞさせ始める。
広く静かな部屋に声は無く、湧きあがった湯が奏でる茶釜の音と布の擦れる音が響く。
二人とも忙しなく落ち着きが無い。
澪「ムギ… ちょっとお手洗い借りてもいいか?」
紬「え!…ええ…場所は…と、ドアを出て…階段下りて…えとえと…」
紬は興奮して思った様に言葉を発することが出来ない。
パッと記憶の底から込み上げてきたキャラクター。
そのコマンドが丁度、お手洗いの位置と一致した。
紬「覇王至高拳のコマンド!」
澪「わかった!ありがとう!!」
澪は"あずにゃん"と写真を手にし、ぱたぱたとお手洗いへ向かう。
そして…各々にコトを済ませ、充実した笑みを浮かべた。
澪「ふぅ…」
紬「ふぅ…」
―月曜日―
♪~音楽室~♪
ガチャッ
ドアを開けるといつもの光景だった。
既に梓・律・紬が既にお茶を始めている。
律「おー、澪、唯と憂ちゃんの様子どうだった?」
澪「あ… あぁ…普通だったぞ?なんか、私たちは先走った考えをしていたみたいだな。」
律「ふーん、つまんねぇの…」
「あっ」
目を泳がせながら報告をしていると、誰かが何かに気づいたような声を出した。
梓「わたしのパペット…今日1日ずっとつけていたんですか?」
とてとてと澪に近づき"あずにゃん"を手に取ると、
頭部はスポンジケーキのようにしっとりとしており、少し甘い香りを放っていることに気が付いた。
くんくん…
梓「あ、何かいい香り… かも?」
澪(あずにゃんがわたしの匂いをくんくんしてるー!
そのまま、あずにゃん同士で"ぺろぺろちゅちゅちゅ"してもいいんだよ!?)
澪はいかがわしい妄想をし、少しずつ息が上がっていく。
ガチャッ
再度音楽室のドアが開いた。
唯「やっほぉ~♪えへへ、おそくなっちったー…
…あれ?テーブルの上に、わたしたちの人形が置いてある。」
律「おー、そういえば唯は初見だったな…ムギとさわちゃんで作ったんだってさ」
唯と憂のパペットに手を伸ばし、律はゴソゴソと両手に着けた。
律「ほらほら~、唯、見てみろ~ えいっ!」
軽くパペットの頭部を重ね、キスシーンを表現し唯に見せ付けた。
律「どうだ!唯が憂ちゃんとキスしちゃったぞ~♪」
唯「…りっちゃん、それキスじゃないよ?」
律の行動に、唯はヤレヤレと首を振り呆れた声で答える。
唯「ちょっとあずにゃんの"あずにゃん"借りるね♪」
ひょいと"あずにゃん"を取り上げ片手にはめ、空いてる手に澪のパペットをはめた。
唯「キスっていうのはね…」
今まで見たことのない真面目な表情をし、両手を絡み出した。
澪のパペットで、"あずにゃん"の首筋をなぞり頬に軽くキスをする。
そして両手の先を合わせ、左手は右手を、右手は左手を執拗に絡ませキスを表現した。
唯「むちゅっ… ちゅむ…ぷ ぷはぁ」
(たしかこんな感じの音出していたよね?)
唾液が溢れる音を口で再現し、溜息と共に両手を離した。
澪「うわっ!うわわっ!! うわぁぁぁぁ…」
(私とあずにゃんがキスしちゃったぁ!)
あまりの生々しい光景を目にし、全員ポッと顔を赤らめ音楽室は静まり返る…
唯「たしか、こんな感じだったよね?澪ちゃん♪」
人形劇だけで気絶寸前になっている澪に問いかけるも返事は無いが、
別の人物からの返事が聞こえた。
律「おい…」
顔を俯かせ、肩をわなわなさせている律…目は笑っておらず、
顔のいたるところをピクつかせている。
律「おんどりゃぁぁぁ!澪と何があったぁぁぁ!!」
ガタッ!と椅子を倒し、ものすごい剣幕で唯に向かって歩み寄り、襟首を掴んだ…。
そして、ギリギリと締め上げる。
唯「ぐぅっ…! り…ちゃん… くるし… 」
あまりのショックに、唯はぼろぼろと涙を流す。
すると…案の定、もの勢いでドアが開いた!
ドタンッ!!
衝撃で窓ガラスは割れんばかりにビリビリと振動している。
梓「早っ!」
憂「お姉ちゃん!? …律さん?」
ストストと慎ましく唯と律のもとへ歩み寄り、律に微笑みかけた。
憂「うふふ… 律さん♪」
ピンッ …ドサッ
律「」
憂は律にデコピンをしたその瞬間、律は膝から崩れ落ちた。
唯「げほっ… ごほごほっ… うーいーぃ…」
唯を助け出し無事を確認した後、憂はボロボロ泣いている唯の頭を自分の胸元に引き込み、
背中を何回かポンポンと叩いて落ち着かせた。
憂「お姉ちゃん、大丈夫だった?」
唯「ぐすっ…うーいー…」
憂「もう、目を赤くして泣いちゃって…みんな見てるよ?」
そう言うと、彼女は唯の顎先を指で軽く持ち上げ、キスをする。
…ちゅっ
澪「うわゎっ…」
梓「わぁ…」
紬「まぁ♪」
律「」
それは唯が表現したディープキスではなく、簡単なソフトキス。
憂はキタナイ物を見つめるような濁った瞳で気絶した律を見下ろした。
憂「…律さんもあんな感じだから、今日は一緒に帰ろうか♪」
バタンッ
ギュッと手を繋ぎ、二人は軽やかに音楽室を出て行った…。
梓「澪先輩、ほんとにあの二人は普通だったんですか?
何かいつもに増して仲が良いというか、恋人みたいですよ?」
澪に問いかけるも彼女は放心状態である。
澪(はぁ、私とあずにゃんのパペット…持って行かれちゃった…)
紬「あらあら、これは再調査が必要ですわね♪」
【おしまい】
最終更新:2010年01月27日 02:56