いつもとは違う律の剣幕…ツッコミ役である澪もこれ以上は口を挟むことができない。
澪はしぶしぶと音楽室を後にした。
また、険悪な空気に耐えられなくなった紬、唯も順に音楽室を後にした。

梓(なんでこんなことになったんだろう…私、何か悪いことをしたのかな…)


ガチャリ

律は外部から人が入ってこれぬようドアにカギをかけると、
音に反応した梓は体を跳ね上がらせる。

これから何が起こるか解らない不安の中にいる梓。
律の行動ひとつひとつに敏感になっているようだ。

律「さて…と、あ~ずにゃん…何して遊ぼうかな?」

梓「あっあのっ… あのっ!!」
 (昨日のこと、昨日のことを聞かなくちゃ…)

梓はいつもの気丈さを表に出すことはできず、どもっている。
結局言い出せずにいると、律はなにやらゴソゴソと用意しはじめた。

律「今日は、あずにゃんの為に…色々用意してきたんだぞ?
  首輪に遊び道具に超硬めのネコ用ツメ研ぎ、あとはあずにゃん専用のトイレ…
  砂はこれから校庭まで一緒にとりに行こうな?」
 (澪は私がもらう… 私は澪のイチバン…)

梓「ひっ!律先輩…何言っているんですか!? おかしいですよ!」

恐怖も限界に近づくと、悪あがきをするようになるらしい。
梓は助かるために…最悪、時間稼ぎをするために言葉を発した。

律「んー…おかしいとは思わないな~。だって、私は…私は澪が欲しいんだもん。」

梓(もしかして…昨日のこと…?)


梓「…律先輩、もしかして…昨日のこと誤解してませんか?
  私が澪先輩とホテルに入ったところとか…」

律「誤解…?」

律は梓の意外な発言にぼー然とした…。
苦し紛れの言い訳にしてはバレバレだが、
ランジェリーショップから出てきたところからホテルに入るまでの行動は、
澪と愛し合った証拠としては十分だ。

律は荒々しく椅子にかけ昨日の記憶を掘り返し、梓の発言が真実かどうか考えた。
しかし、今の精神状態の律からは悪い方向へしか結果を導くことができない。

1時間…2時間は経過しただろうか…未だ結論は導き出せていない。

律「澪…呼ぶか…」

律は携帯電話を取り出し、澪に連絡をした。

prrrr…

律「澪?あの…だな、今梓と音楽室にいるんだが…」

ガチャガチャガチャッ!
突然音楽室のドアが鳴り始めた。
人為的なものだろうが、ポルターガイストを彷彿とさせる勢いである。

澪「りーつーっ!あーーけーろーーっ!」

律「はやっ!」

澪の怒り交じりの声に反応し、律はカギを開けた。

ドタンッ!

ドアを破壊せんばかりの勢いで開いたと同時に、
澪が修羅の様な形相で入ってきた。

そして、梓の安否を確認したかと思うと、修羅の形相を律へ向けた。

澪「律っ!どういうことか説明してもらおうかっ!」
 (こんな時間まであずにゃんを拘束するなんて、なんてうらやましいことをしているんだ!
  律の独占欲はハンパないな…まったく。わたしと共有すべきだっ!)



澪「正座」

律「はい…」

律の頭には既に大きなタンコブができている。
そして、彼女が正座することで質疑応答が始まった…。

澪「それじゃ…律、なんで梓をこんな目に合わせたのか教えてもらおうか?」
 (むしろ、こんな楽しみを考えた律は最高だにゃ♪)

律「…それよりも…なんで、澪と梓はその…ホテルに入ったんだ?」

澪「!?」
 (あずにゃんをオカズにナニする為…だなんて言えないっ!)

いずれ聞かれると思ってはいたものの、いざ聞かれるとなると返答に困惑する。
澪の目は視点が合わず、音楽室の四方を見回している。

律「言えないのか?」

トーンを下げ、再度澪に問いかけると…梓からのフォローが入った。

梓「その質問は…律先輩が私たちを尾行していたかどうか?…その返答を先にください」

律「尾行していたよ…楽器店の向かいにある、ランジェリーショップからずっと…」

澪「えっ!?そんなところからか…?」
 (もしかして、わたしのクマさんぱんちゅ…バレたのかな?)

律「ホテルに着く前、姿を出そうとしたら…
  二人してダッシュで逃げるから泣きそうになったぞ…」

梓「澪先輩とわたしは、不審者に追いかけられていると思って…ずっと逃げていたんです。
  本当に怖かったんですよ?」

律「でも…ランジェリーショップから澪と梓が一緒に出てきたのは…なぜだ?」

その言葉を耳にした梓は、すっ…と立ち上がり澪へ歩み寄る。
突然の梓の行動を澪は察したのか、少しおびえ始めた。
梓の口元が少しニヤついている…。

それに澪が気づいたときには遅かった。

バサッ!!


梓の手により、荒々しく捲れあがるスカート。
その中から、絵本に出てくる様なかわいらしいクマの絵柄があらわになった。
しかも、フロントにプリントされているという大胆なつくりである。

澪「うおわぁぁぁぁっ!」
 (あずにゃんとおそろいのぱんちゅがぁぁぁっ!)

突然の出来事に澪は顔を真っ赤にし、女の子らしからぬ声を上げる。

梓「このパンツを代理で買わされていました…
  澪先輩ったら、このパンツが欲しいからって、
  代わりに買ってくるように命令するんですよ…。」

律「へ…?」

あっけない結末に、律は目を点にし澪の方向へ視線を送ると、
澪は恥ずかしさのあまり必死に顔を隠し、コクコクと頷いている…これは真実のようだ。

澪にとって一番知られたくなかったことだったのであろう。
捲れ上がったままのスカートに気づいておらず、クマさんパンツは丸出しのままだ。

律「あはは、そういうことだったのか…
  しかし、澪がそんなパンツ穿いているなんてな、意外だ…」

澪「うぅ…うるさいっ!」

ゴスンッ!

律「ナンデナグルノデスカ…」



律「で…問題は、ホテルの中でしたことだな…梓は何をしたんだ?」

梓「SFCのマリオカートと、カラオケやっていましたよ」

律「…???」

部屋の中がどうなっているのかさっぱりイメージできず、
律は頭上にハテナマークを浮かべた。

律「で…澪は何をしたんだ??」

話題を振ると、澪は俯きブツブツとある単語を呟いた。
それは自分から言い出すにはとても恥ずかしい単語。

澪「…ニー」

律「??」

澪「…ナニー…」

律「み…澪っ!?」

何度か呟いた後、緊張の糸と理性の糸が切れたのか、澪の口からとんでもない言葉が出てきた。

澪「わたしはホテルでオナニーしてましたっ!!」

梓「!?」

律「!?」


澪の大声で…空気は凍りつき時間が止まったようだった。
熱くなっていた律もさすがに冷めたのか…よそよそしく澪に質問する。

律「あの…澪さん?ソレって、アレのこと…?」

澪「…」

言葉を濁しながら、今すぐにでも悶え苦しみそうな澪に、ホテルでの行動を確認した。
コレも真実だったようで、澪は涙を溜めながらコクリと頷いた。
澪にとって、もはや羞恥プレイ以外の何物でもない。

律「あー…はっはっは… 澪、ごめん…」

笑い混じりに謝ったが、澪は糸が切れたマリオネットのようにガクリと喪失感に襲われており、放心状態に陥っている。
初めて澪に生理が来たあの日と同じだ…

そんなことはさておき、律の悪ガキ精神に火がともる!

律「コホン… それじゃ、オカズと道具は何を使ったんだ?」

澪「あずにゃんと…ローションと…指」

梓の体はビクンと強く跳ね上がり、身の毛がよだつように震えた。
澪に対して強い嫌悪感を抱いている…。

梓(私がマリオカートやっていた頃、そんなことしていたなんて…)


律「あとは、持っているパンツの絵柄は?」

澪「ウサギさん、パンダさん、ネコさん、わんこ…」

律「あはははっ、澪のパンツってかわいいのばっかりなんだなぁ…あ?」

ゴスンッ!

どうやら、早くもシラフに戻ったようで感想の返答は、澪のこぶしであった。

律「痛たたたっ…でも、コレで全て解決…私も変な間違いを未然に防げてよかった」

梓(私はこれから澪先輩をどういう目で見ればいいんだろう…)

澪「それじゃ、梓…一緒に帰るか…ん?」
 (あずにゃんと夜道を歩いて帰るときに、痴漢ごっこでもするにゃぁ!)

澪が問いかけたその瞬間、梓の姿は既に無かった…。
小動物特有の危険信号を察知したらしい。
そんな梓に振られガッカリしている澪に、律は言葉をかけた。

律「それじゃ、澪…一緒に帰るか」



律「なんだかんだで、冷めちまったなぁ…」

今まで澪のことを片思いながら愛していた律だが、
尾行したあの一件を知ってから澪への愛情は一気に冷めてしまった。

律「そういえば、結局こっちから質問責めで終わったな。
  あの時、"何で尾行していたのか?"なんて先手を取られていたら、
  きっと澪みたいにテンパって告白していたかもしれないなぁ」

そう乾いた笑いをしていると、ツインテールの少女が律に近づいてきた。

梓「あの…律先輩?澪先輩のことで、お話…よろしいでしょうか?」

律「?」

梓「あの一件から、澪先輩を避け続けていたら…
  最近、リスカ画像送ってくるようになりました、どうにかしてください…」

真っ赤な瞳で切実に懇願してくる梓、どうやら澪に好かれるとこんな目に合うらしい。
その風貌からは精神がボロボロになっていることがわかる。

律「ふぅ…澪と付き合うの大変そうだな…人は外見でなく中身とよく言ったもんだ。
  さてと、梓…かまってちゃんの澪のところへ行くか。」

律はしばらく、この微妙な関係からは抜け出せなさそうだ。


【おわり】



最終更新:2010年01月27日 03:06