放課後 軽音部部室
カチャ
梓「・・・済みません、遅れました」
律「うーっす」
紬「きねー」
澪「それはもういいんだ」
唯「あずにゃん、お菓子あるよ。あーんして、あーん」
梓(確かに甘やかされてる、のかな)
律「甘いな、甘い。唯、お前甘いよ」
梓(えっ) びくっ
唯「りっちゃん、どういう事?」
紬「分かったわ。梓ちゃーん、ごろにゃーん♪みたいな事?」
律「おう、その通りだ。澪、やってみろ」
澪「何で私が、そこまで・・・。梓ちゃーん、ごろにゃーん♪食べてにゃーん♪」
梓(やっちゃってるし、アドリブ効かせてるし)
律「それだ、澪っ」
唯「うーん、軽音部の道は厳しいねー」
梓(軽音部の要素、一切ないし)
5分後
律「上下関係か。それこそ、私達のノリじゃないだろ」
唯「あずにゃんは、そういうのに憧れてるの?」
梓「そういう訳じゃないですけど。私軽音部で、後輩らしい事をしていないので。それはどうかなと思いまして」
澪「確かにある程度のけじめは必要だ。だた、そんな深刻に考えなくても良いんじゃないかな」
紬「うん、うん」
律「まあ私は部長だから、別格だけどな」
澪「お前こそ、肩書きだけだろ」 ぽふ
紬「・・・いえ。時には厳しく接するのも大切よ」
律「ムギ?」
紬「梓ちゃんっ」
梓「は、はいっ」
紬「このお茶、美味しいから飲みなさいっ」
梓「は、はい」
紬「こっちのシュークリームも美味しいから食べなさいっ。それと、明日は何が食べたいか言いなさいっ」
梓「ザ、ザッハトルテをお願いします」
紬「分かったわっ。明日を楽しみに待ってなさいっ」
律「それって単に、田舎のお祖母ちゃんだろ」
紬「・・・ごめんなさい、梓ちゃん。私、こういうの苦手みたい」 しょんぼり
梓「いえ、そんな。私こそ済みませんでした」
律「まあ、ムギからは一番遠いキャラだったからな」
澪「誰かに厳しくするって事は、自分も厳しく律するって事だ。これはなかなかに難しいぞ」
律「真面目な奴め。どっちにしろ、私達の中にはいないタイプだな」
唯「りっちゃん、りっちゃん。一人忘れてるよ」
律「お前は、初めから計算外なんだよ」 ぽふ
唯「ちぇー。りっちゃんだって、自分には甘い癖に」
律「自分に甘く、他人にも甘く。これが軽音部唯一の掟だ」
澪「言い切るなよ。・・・あながち、間違ってるとも思えないが」
紬「でもそれって、素敵な事よね」
澪「そうか?どうも、ぬるま湯って気もするぞ」
唯「温かいお風呂、最高じゃない」
梓「そういう意味じゃありませんよ」
唯「そかな。ぬるま湯だったら、みんなでいつまでも入っていられるよ。それって、最高な事だと思わない?」
梓「ま、まあ。そういう意味ならぬるま湯でも良いですけど」
澪「・・・本当に良いのか?」
紬「勿論。一緒に入れるなんて、最高な事だと思うわよ♪」
律「ムギこそ、違う意味で捉えてないか」
さわ子「あー、疲れた。ムギちゃん、ホットチョコレートお願い」
紬「はい、ただ今-」
唯「いつにもましてお疲れだね、さわちゃん」
さわ子「担任ともなると、あれやこれやと仕事が増えるのよ。授業が終われば放課後ティータイム、なんてのんきに過ごせないんだから」
律「だったら、どうしてここにいるんだよ」
さわ子「私はここへ、潤いを求めに来てる訳。私にとっては大切な憩いの場、言わば聖域なのよ。そして活力を得て、また学校という名の戦場に赴くの」
梓(疲れてるな、色々と)
紬「ホットチョコレート、お待たせにゃん♪」
さわ子「良いわねー、そういうノリ。あなた達若いんだから、そういう部分を伸ばしていかないと」
澪「伸ばす場所が違う気もするんですが」
さわ子「もう、澪ちゃんは真面目なんだから。ホットチョコレート美味しいにゃん♪、とか言ってみなさいよ」
澪「い、いや。それはさすがに」
梓「は、はい。確かに」
唯「人として、大切な物を失う気がするよ」
さわ子「ムギちゃんは良くて、私は駄目って訳?それって、一体どういう訳」
律「言うまでも無いだろ、そんな事。年甲斐もなく、そういう真似は止めてくれよな。だははー」
さわ子「だったらお前の寿命を頂くぞ、このデコッパチ」
律「あー、ひどい目に遭った」
澪「自業自得だ。とにかく、もう「にゃん」は禁止だからな」
唯「えー。だったらあずにゃんは、どうやって呼べばいいの?」
紬「あずあず?」
律「あっちゃん?それとも、あずちゃんか?」
澪「あずわんでも良いんじゃないのか」
律「なんか、オビ・ワンみたいだな」
唯「フォース?フォース出ちゃう?」
紬「コーホー、コーホー」
律「それ、ちょっと違うだろ」
唯、澪「あはは」
梓(というか、普通に梓と読んで下さいよ)
澪「さてと、ベースの調整をするか」
紬「調子悪いの?」
澪「音が少し、ビビり気味なんだ。ネックが反ってるのかもしれない」
唯「反る?あんな固いのに?」
梓「日本は湿度が高いですからね。ネックは木製ですから、結構反ったりしますよ」
唯「澪ちゃんは、自分で直せるの?」
澪「少し反ってるくらいなら。でも本当は、お店に持ち込んだ方が良いとは思うぞ」
梓「唯先輩も、ギー太を大切に手入れしてやって下さいよ」
唯「でもネックの反りを直すなんて、絶対壊しそうで怖いんだけど」
澪「え」
律「思いっきり、ビビッたな」
30分後
澪「・・・大体、こんな所かな」 ぼろーん
唯「音、合ってるよ」
紬「改めてすごいわね、絶対音感って」
梓「唯先輩は手入れもですけど、そういう才能も大切にして下さい」
唯「私、使いどころが分からないんだよね。音が分かっても、その通りに弾くのは難しいし」
梓「だから、その分練習をするんです」
澪「梓の言う通りだ」
唯「才能があるって、結構負担になるんだね」
律「言いたい事は分かるが、結構イラっとくるな」
澪「よし、練習するぞ」
律「たまには、ゆっくりまったりしてようぜ」
澪「それは毎日練習をしてから言え。唯も早く準備しろよ」
唯「いやー。それが、ギー太もネックが反っちゃっててね」
澪「ネックが反る事も知らなかったのに、どうして分かるんだ」
唯「うっ。ソーリー、ソーリー」
律「一周回っても、イラッと来るな」
紬「うふふ。もう一杯だけお茶を飲んでから練習しましょうか。りっちゃんも唯ちゃんも、それで良いわよね」
律「しゃーないな。あんまり練習しないと、澪が泣いちゃうからな」
唯「澪ちゃんを泣かせる訳にはいかないよね。私、一所懸命練習するよ」
澪「唯は優しいな。それに比べて律と来たら」
律「いや。澪は泣いてなんぼ。いじられてなんぼのキャラだ。唯、甘やかすなよ」
澪「なんだと」
紬「まあまあ。みんな、お茶が入ったわよ」
梓(本当、なんだんだといって仲が良いよな。これが私より、1年間早く一緒に過ごしてきた事の証なのかな)
30分後
紬「野良猫ー、ザッハトルテー」 ピラリラー
梓「あっ」 びびーん
紬「梓ちゃん、どうかした?」
梓「済みません、一小節飛ばしちゃいました」
律「細かい事気にするな。フィーリングだフィーリング。なんか適当に音を出しとけよ」
澪「それか、唯がフォローすれば良いんだけどな」
唯「そんな時は来ないと思うよ。だって私は、一生あずにゃんに頼っていくからね」
律「いや。真顔で言う事じゃないから」
澪、紬「あはは」
梓「・・・甘やかさないで下さいっ」
唯「え?」
梓「私は後輩で、皆さんは先輩です。だからもっと叱って下さい。本気になって怒って下さいっ。本気で・・・」
律「梓っ」 ばんっ
梓「は、はいっ」 びくっ
律「もうっ、可愛すぎるぞっ♪」 きゅっ
梓「え」
紬「うふふ♪」 きゅっ
梓「あ、あの」
澪「よしよし♪」 きゅっ
梓「ええ?」
唯「あずにゃーんー♪」 きゅっ
梓(えー、どういう事ー♪) くんかくんか
5分後
梓「・・・済みませんでした。皆さんの仲が良いので、少し寂しいというか。何というか」
澪「だから本気って事か。でも私達だって、本気で梓と付き合ってるぞ」
律「澪が言う通りだ」
梓「はぁ」
紬「私達は同い年だから遠慮なく突っ込みあうけれど、梓ちゃんはつい可愛がりたくなるのよね」
梓「え」
澪「大切な可愛い後輩だから、全力で可愛がる。それが私達の本気って事さ」
澪「唯は、ちょっと可愛がりすぎだけどな」
唯「だって可愛いんだから、可愛がって当然でしょ」
律「可愛いもんな」
紬「可愛い可愛い。梓ちゃんは、本当に可愛いから」
梓「も、もういいですよっ」
律「後輩だ先輩だって言っても、1才しか違わないんだ。そういう小さい事は気にするな」
紬「そうそう。私達はみんな、軽音部の大切な仲間なんだから」
澪「これからも遠慮せず、どんどん私達に意見してくれ」
梓「はいですっ」
唯「あずにゃんは気楽に、「田井中、お茶買ってこい」なんて言えば良いんだよ」
律「親しき仲にも礼儀あり、だ」 ぽふ
澪、紬、梓「あはは」
終わり
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
テーマとしては、「本音で付き合える大切な仲間」みたいな所ですね。
雰囲気としては「天使に触れたよ」をイメージ。
思いっきり、映画に影響されました。
ただ歌詩の内容的には、「放課後ティータイム(曲の方)」ですね。
最終更新:2012年01月30日 00:32