憂「あったかいうちにどうぞ」
さわ子「そうね」
さわ子「おいしいわ~」
憂「ありがとうございます」
唯「憂の料理はほんとにおいしいんだよ!」
さわ子「今までも何回かご馳走になってるけど、やっぱり憂ちゃんの料理は最高ね」
憂「そんな、大したことないですよ」
さわ子「一人暮らしだと食生活乱れちゃうのよね~」
憂「大変なんですね」
さわ子「まあね」
唯「大人って大変なんだね」
さわ子「憂ちゃんは大丈夫だけど唯ちゃんは大人になるの苦労しそうね」
唯「そうかな?」
憂「お姉ちゃんはやる時はやる子ですから」
唯「そうだよね、私頑張るよ!」
さわ子「憂ちゃんお母さんみたいね」
憂「先生は過大評価しすぎですよ」
憂「私だってまだまだ子供です」
さわ子「自分の事を子供だと思えるのは大人の証拠よ」
唯「子供が大人?大人が子供?なんだかよく分かんないや」
さわ子「唯ちゃんはまだそんな感じでいいと思うわ」
―――
唯「おいしかった~」
さわ子「ご馳走様でした」
憂「おそまつさまでした」
唯「さわちゃん次は何して遊ぶ?」
さわ子「勉強しなさい」
唯「え~」
さわ子「え~じゃないの、私もあんまりお邪魔してるわけにはいかないもの」
唯「なんで?」
さわ子「仕事よ仕事」
唯「ふ~ん、忙しいんだねさわちゃん」
さわ子「そうよ、教師がこんなに忙しいとは思わなかったわ」
唯「じゃあもう帰っちゃうの?」
さわ子「そうね、ぼちぼち」
唯「つまんな~い」
憂「お姉ちゃん無理言わないの、先生にも都合があるんだよ」
唯「そうなのか~」
さわ子「私だって本音を言えば遊びたいわよ」
唯「じゃあいいじゃん」
さわ子「やらなきゃいけない事をほったらかしには出来ないの」
唯「大人だから?」
さわ子「そ、大人だから」
唯「そっか~・・・」
さわ子「唯ちゃんは勉強頑張って大学に入って」
唯「うん」
さわ子「それで大人になれば今の私の気持ちが分かる時が来るわ」
唯「そうかな」
さわ子「そうよ」
憂「ほらお姉ちゃん、先生を困らせちゃ駄目だよ」
唯「はーい」
さわ子「じゃあ帰るわね」
憂「はい」
唯「またね」
さわ子「ちゃんと勉強するのよ」
唯「分かってるよ」
さわ子「もう受験まで何日も無いんだから」
唯「はいはい」
憂「お姉ちゃんの受験日は・・・」
唯「確かカレンダーにマル付けてたような」
唯「えっと・・・」
唯「今日は1月31日だから」
さわ子(1月31日?)
さわ子(あれ?もしかして今日って)
唯「あ!今日さわちゃんの誕生日!」
さわ子「えっ」
唯「朝からなんか引っかかってたんだよね、そっか誕生日か!」
さわ子「え?なんで唯ちゃんが知ってるの?」
唯「確か前に誰かに聞いたんだよ」
さわ子「あー私も前に誰かに聞かれて教えたような」
唯「それで何となく覚えてたんだけど、当日になって忘れちゃったんだね」
さわ子「そっか今日私誕生日だったんだ」
憂「先生誕生日だったんですか、おめでとうございます!」
唯「おめでとうさわちゃん!」
さわ子「あはは、ありがと」
唯「それで何歳に」ムギュ
唯「んーんー」
憂「あはは」
さわ子「・・・」
さわ子「ありがと、唯ちゃん憂ちゃん」
さわ子「それじゃ今度こそ帰るわ」
唯「うん」
憂「またいらしてください」
さわ子「ええ、ごちそうさま」
憂「はい」
さわ子「それじゃあね」ガチャ
唯「ばいばーい」
憂「さようならー」
さわ子(誕生日・・・か)
さわ子(誰かに誕生日を祝ってもらうなんて久しぶりだったわね)
さわ子(この歳になると誕生日とかどうでもよくなってきて)
さわ子(忘れることも多くなってきた)
さわ子(自分の年齢もぱっと出てこないもの)
さわ子(・・・そっか、今日は私の誕生日なんだ)
さわ子(昔は誕生日パーティーとかやったりして楽しかったな)
さわ子(もう大人になっちゃったんだ、私)
さわ子(・・・)
さわ子(でも)
さわ子(なんだか今年の誕生日は楽しかったわ)
さわ子(まさか教え子に祝ってもらう事になるなんてね)
さわ子(・・・素敵な誕生日プレゼントじゃないの)
さわ子(大人になって、昔の事を思い出して寂しくなったりもするけど)
さわ子(大人だから感じる事の出来る気持ちもあるのね)
さわ子(私は幸せ者だわ)
さわ子(唯ちゃん達だけじゃなく、クラスみんないい子で)
さわ子(こんなにいい子たちに囲まれて仕事出来るなんて)
さわ子(・・・)
さわ子(ありがとう、みんな)
さわ子(ハッピーバースデー私)
さわ子「よーし、明日からまた頑張ろ!」
さわ子「あ、せっかくだから隣の神社でお願いごとして行こうかな」
さわ子「何お願いしよう」
さわ子「えーっと」
さわ子「彼氏が欲しいです」
さわ子「なんちゃって、今のは無しでお願いしますね」
さわ子「お賽銭は・・・」
さわ子「あら、一万円札しか無いわ」
さわ子「・・・ま、いっか!」ヒョイ
さわ子「あの子たちが全員志望校に合格しますように!」パンパン
さわ子「一万円入れたんだから絶対叶えてよね神様!」
さわ子「駄目だったら承知しないから!」
さわ子「・・・さてと」
さわ子「今度こそ帰ろ」
翌朝
さわ子「おはようございます」
掘込「おはようございます、おや?」
さわ子「何か?」
掘込「教師の貫禄が出てきたな」
さわ子「えっ」
掘込「ま、まだ学生みたいな顔だが」
さわ子(嬉しいような悲しいような)
掘込「しっかりやれよ」
さわ子「・・・はい、ありがとうございます」
教室
和「登校する子も大分減ってきたわね」
風子「そうだね」
唯「和ちゃん風子ちゃんおはよー」ガラッ
和「おはよう、唯」
風子「おはよう」
唯「あのね、昨日さ」
和「あ、もう席について」
唯「えー」
和「ギリギリに来るから」
唯「そうだけどさー」
さわ子「みんなおはよう」ガラッ
唯「おはよー」
さわ子「ほら席について」
唯「はーい」
さわ子(さて、今日も頑張ろ!)
和「起立、礼、着席」ガタガタ
さわ子「それじゃホームルームを始めます」
おしまい
最終更新:2012年01月31日 08:02