105 :>>82より分岐 2012/02/04(土) 17:00:02.37 ID:+BVtJ5c7O
律「……梓はいないのか?」
唯「あずにゃんはあれからどこ行ったかわかんないままだよ」
律「……悪いけどみんなで手分けして探してきてくれないか?あ、くれませんか?梓にも謝りたいんです」
唯「合点だよりっちゃん隊長!……あずにゃんのことも心配だしね」
確かに梓ちゃんのことは心配だ。だが、梓ちゃんが人二人を殺した犯人の可能性は色濃く残っているのだ。
憂「手分けして、といっても一人では行動しないほうがいいですよね」
透「僕は一人でいいよ。だから、あとの4人で二人組を作ってくれないか」
憂「じゃあ私は真理さんと組みます」
この提案に、特に異論は出なかった。真理さんならシュプールの勝手をよく知っていて、捜索活動も捗るだろう。
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:01:31.71 ID:+BVtJ5c7O
透「真理、マスターキーを渡してくれないか?犯人がいそうな二階の各部屋は僕が受け持つ。唯ちゃん達の部屋にも入るけど……いいかな?」
こんな事態になってまで、部屋の散らかり具合を恥ずかしがるはずもなかった。
真理「一人で大丈夫?」
透「大丈夫、あそこの掃除用具入れからモップをとってきてから捜索開始するさ」
そう言ってマスターキーを受け取ると、透さんは私達の部屋があるのとは逆方向へ廊下を進む。空き部屋からチェックするらしい。
私達女四人もそれぞれの捜索範囲を決め、階段を降り、梓ちゃん捜しを始めた。
108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:03:02.56 ID:+BVtJ5c7O
私と真理さんに割り当てられたのは、案の定管理人室など、客だけでは勝手がわからない範囲になった。あとの二人が受付や食堂、それに隣接する厨房などを担当している。
真理「私、あっちのキッチンとかバスルームを見てくるから、そこのベッドルームや物置を調べてもらっていい?」
そう言って鍵を渡してくる真理さん。言いなりになってよいものか一瞬悩んだが、結局すんなり受け入れた。
部屋が並ぶ廊下を進む真理さんを尻目に、私は一つ目の部屋に鍵を挿し、ドアを開けた。
憂「梓ちゃーん、いるのー……?」
返事はない。電気をつけ、部屋の中を一通り見る。やはりいない。
私はその部屋を後にし、次の部屋に取り掛かった。
112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:04:31.75 ID:+BVtJ5c7O
どさっ
二番目の部屋から出てきたとき、キッチンのほうから妙な音が聞こえた。真理さんが何かを落としただけかもしれないとも思ったが、なんだか胸騒ぎがした。
私はキッチンへと足を向けた。
憂「真理さーん、どうかしまし――」
キッチンのドアを開けた私の目に飛び込んできたには、喉から血を噴き出して倒れる真理さんの姿だった。
悲鳴をあげそうになった。紬さんのときは事故のようにも見えたし、澪さんは自殺に見えた。だが、今回は違う。明らかな殺意のもとに、人が殺されているのだ。
それでも悲鳴をあげなかったのは、キッチンに隣接するバスルームで、水を使っているらしき音を聞いたからだ。誰かが――おそらく真理さんを殺した人物が――そこにいる。
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:06:02.31 ID:+BVtJ5c7O
幸か不幸か、ここはキッチンだ。私は自らの身を守るべく、包丁を探した。だが、見つかったのは果物ナイフくらいなもので、包丁はなかなか見つからない。
――不意に気配を感じ、恐る恐る振り向いた。
「探し物はなんですか?」
そこには、澪さんのスキーウェアを着込んだ人物がいた。スキーウェアには、真理さんのものであろう鮮血がところどころに散っていた。
「見つけにくいものですか?」
憂「あ……あ……」
さらには、私の探していた包丁、それを右手に握り締めていた。考えてみれば、真理さんは首を切られていたのだ、包丁は犯人が持っていて当然だった。
115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:07:32.06 ID:+BVtJ5c7O
「見られたからには、仕方ないかな」
その人物がこちらに近寄る。せめてさっき見つけた果物ナイフを確保していれば、少しは応戦できたかも……いや、腰が抜けてろくに動けないんじゃあ結果は同じだっただろう。それほど、その人の普段からは想像もつかない威圧感を受けていた。
「じゃあ、ばいばい」
右手に握られた包丁は、私の顔へ急速に接近し、顔より少し下、喉へと深く突き刺さった。
お姉ちゃんには手を出さないで――言葉にならず、喉から血がごぼごぼと溢れるだけだった。
それから少しだけ、私の意識はあった。犯人が顔についた血をバスルームで洗い流す様子、そして……。
終 血まみれのスキーウェア
117 :>>82より分岐 2012/02/04(土) 17:09:02.28 ID:+BVtJ5c7O
律「……梓はいないのか?」
唯「あずにゃんはあれからどこ行ったかわかんないままだよ」
律「……悪いけどみんなで手分けして探してきてくれないか?あ、くれませんか?梓にも謝りたいんです」
唯「合点だよりっちゃん隊長!……あずにゃんのことも心配だしね」
確かに梓ちゃんのことは心配だ。だが、梓ちゃんが人二人を殺した犯人の可能性は色濃く残っているのだ。
憂「手分けして、といっても一人では行動しないほうがいいですよね」
透「僕は一人でいいよ。だから、あとの4人で二人組を作ってくれないか」
憂「じゃあ私は和さんと組みます」
この提案に、特に異論は出なかった。私のことを信じてくれると言った和さんを、私も信じることにしよう。
120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:10:32.29 ID:+BVtJ5c7O
透「真理、マスターキーを渡してくれないか?犯人がいそうな二階の各部屋は僕が受け持つ。唯ちゃん達の部屋にも入るけど……いいかな?」
こんな事態になってまで、部屋の散らかり具合を恥ずかしがるはずもなかった。
真理「一人で大丈夫?」
透「大丈夫、あそこの掃除用具入れからモップをとってきてから捜索開始するさ」
そう言ってマスターキーを受け取ると、透さんは私達の部屋があるのとは逆方向へ廊下を進む。空き部屋からチェックするらしい。
私達女四人もそれぞれの捜索範囲を決め、階段を降り、梓ちゃん捜しを始めた。
121 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:12:02.25 ID:+BVtJ5c7O
私と和さんに割り当てられたのは、受付や食堂、それに隣接する厨房など、ある程度勝手がわかるところだった。あとの二人が管理人室などを担当している。
憂「梓ちゃ~ん、かくれんぼはもう終わりにしようよ~」
受付カウンターの下や書類棚の脇など、小さな体が入れそうなスペースは全て確認し、食堂へ移動する。和さんも周りに注意しているらしく、二人合わせて死角ができないように気を配り、咄嗟の事態に備えている。
和「もしかして食堂にいるのかしら?それとも厨房?どちらにしろ随分食いしん坊ね」
どちらにもいないほうがいいのでは、などという思考が浮かび、すぐさま掻き消すように首を振る。私はまだ友達を疑っている、それが心苦しかった。
そして同時に頭に浮かんだのは、梓ちゃんも既に殺されているのでは、という不吉なものだった。
結局食堂にも厨房にも梓ちゃんの姿はなかった。
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:13:31.92 ID:+BVtJ5c7O
和「ねぇ、憂」
食堂を出ようとしたところで、突然話しかけられた。
和「あなたはこの事件、どう思う?私達が探す彼女こそが犯人だと思ってるのかしら」
憂「それは……」
思っていないと言えば嘘になる。だが、梓ちゃん犯人説を肯定するほどでもない。
正直に今の気持ちを言うことにしよう。
憂「全く疑ってないわけじゃないですけど、でも梓ちゃんがそんなことするはずがないし、どちらとも言えません」
和「……そう」
和さんはなんとも言いがたい表情で、目線を逸らした。
123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:15:01.77 ID:+BVtJ5c7O
逆に和さんは、今回の事件についてどう思ってるんだろう。聞いてみることにした。
和「そうね……あの二人を殺すほどの動機を持った人がいるとは思えない」
憂「それってどういう――」
イヤアアァァァッ!
突如響き渡る悲鳴。私にはその声の主がわかった。お姉ちゃんだ。
憂「お姉ちゃんっ!」
和「唯っ!」
私達は食堂を飛び出し、お姉ちゃん達が捜索活動をしているはずの廊下に面した部屋のドアを、片っ端から調べていった。そのどれもに鍵がかかっており、行き着いた従業員用キッチンの入口で、へたり込むお姉ちゃんを見つけた。
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:16:32.14 ID:+BVtJ5c7O
透「唯ちゃん!憂ちゃん!和ちゃん!」
突然の呼び掛けに心臓が跳ね上がる。透さんが廊下の向こうから走ってやってきていた。お姉ちゃんの悲鳴が聞こえたのだろう。
透「いったい何があったんだい?三人とも無事なようだけど」
唯「あ……あ……ま……」
お姉ちゃんは指をぶるぶると震わせながらキッチンのドアを指差す。そんなお姉ちゃんを一歩下がらせ、モップを強く握り締めた透さんがドアを開けた。
透「――真理?真理っ!」
ドアはそのまま開け放たれ、透さんをキッチンへ招き入れるとともに、私の視界におぞましい光景を見せつけた。
そこには、喉から血を噴き出して倒れる真理さんの姿があった。
126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:18:02.32 ID:+BVtJ5c7O
きゃああっ――さすがに私も悲鳴をあげてしまった。紬さんのときは事故のようにも見えたし、澪さんは自殺に見えた。だが、今回は違う。明らかな殺意のもとに、人が殺されているのだ。
律「唯っ、和っ、憂ちゃんっ、大丈夫か!?」
後方から律さんが走り寄ってきた。私達の悲鳴を聞いて、部屋から出てきたらしい。律さんはキッチンの中の様子――透さんが血濡れの真理さんを抱きかかえている――を確認すると、私達に向かって声をかけた。
律「まだ犯人が近くに潜んでるかもしれない。唯と憂ちゃんはあっちを探してきてくれ、私と和でこっちを探す」
和「ちょ、ちょっと!」
言うが早いか、律さんは和さんの手を引いてキッチンに入って行った。私達にはさっき調べたばかりの食堂や厨房を探せということらしい。まあ、死体から離れられるのは精神衛生上ありがたい。
128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:19:31.97 ID:+BVtJ5c7O
お姉ちゃんと二人で食堂をざっくり探したが、人の気配はやはりない。続いて厨房に入ったところで、先ほどは気にも留めなかった包丁が目についた。切る食材ごとに包丁を変えているのか、一本だけではない。
憂「護身用に、一応持っとこっか」
包丁を二本手にとり、一本をお姉ちゃんに渡す。お互い包丁を持ったままうろうろする経験など当然ないので、いやに緊張する。
唯「りっちゃん達大丈夫かな……」
憂「キッチンのほうに戻ってみよっか」
結局武器を入手しに来ただけのような形になったが、私達は厨房、食堂をあとにした。
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:21:02.51 ID:+BVtJ5c7O
キッチンに向かう廊下に差し掛かったとき、異変に気付いた。ドアの向こうから、血濡れの手が伸びていたのだ。
唯「りっちゃん!和ちゃん!」
お姉ちゃんが駆け出す。慌てて私もついて行く。
お姉ちゃんがドアを全開にすると、倒れていたのは律さんだった。頭から血を流しているが、まだ動いている、生きているのだ。
そしてその向こうで、透さんがモップを振り上げていた。
唯「危ないっ!」
透さんが律さん目掛けてモップを振り下ろす。だがそれより早くお姉ちゃんが透さんへ突進し、透さんともども倒れ込む。
唯「あ……あ……」
お姉ちゃんが起き上がり、呆然とした顔で一点を見つめる。その目線を追うと、透さんの胸から包丁の柄が生えていた。
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:22:31.80 ID:+BVtJ5c7O
唯「わ、私……人をこ、殺しちゃった……。っ!」
お姉ちゃんは急に険しく表情を変え、透さんの胸から包丁を引き抜く。傷口からはごぼっという音とともに血が溢れ出た。
唯「憂……ごめんね。お姉ちゃん、人殺しになっちゃった」
それだけ言うと、お姉ちゃんは包丁の刃先を自分の胸に向け――
憂「お姉ちゃんっ!」
律「や……め……」
――突き刺した。
134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:24:01.62 ID:+BVtJ5c7O
嘘だ。
お姉ちゃんが、死んでしまった。
嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だうそだウソダ――
律「あの……馬鹿……」
律さんの声で正気に戻る。そうだ和さんは――そう思って部屋の中を眺めると、部屋の隅で、血にまみれて横たわっていた。
憂「律さん、何があったんですか」
律「透さんが……真理さんを殺したのはお前かって……襲ってきて……」
憂「和さんは透さんに殺されたってことですか」
律「和は……私の盾に……いや、私、が…」
憂「……律さん?」
それ以上、律さんが言葉を発することはなかった。
135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:25:33.96 ID:+BVtJ5c7O
後ろで微かに物音がした。とっさに振り向くと、そこにいたのはスキーのストックを持った梓ちゃんだった。
憂「大変だよ……みんな、みんな死んじゃって……うぅ」
涙がこぼれた。律さんまでもが死んだとき、私はこの建物に一人になったのではと思ったが、まだ梓ちゃんが生きていてくれたのだ。
梓「この……」
梓ちゃんが口を開く。反射的に顔を上げる。
梓「人殺し!」
ストックが私の喉に突き刺さる。
梓「どうして!こんな凄惨な事件になるはずじゃなかったはずなのに!」
梓ちゃんは泣いていた。その涙と発言の意図を掴むには、私には時間がなさ過ぎた。
終 ~梓にストックで~
137 :>>33より分岐 2012/02/04(土) 17:27:02.21 ID:+BVtJ5c7O
律「さっき部屋に帰ったら、入ってすぐのとこにこんな紙が落ちてたんだ」
そう言って差し出された紙には、赤い筆ペンのようなもので、こう書かれていた。
コワイ オモイヲ サセヨウ
アイテハ ダレデモ イイ
シンデ シマッテモ イイ
ナグルモ ケルモ サスモ ジユウ
アラタナ イケニエニ カンパイ
私とお姉ちゃんは同時に読み終わると、揃って律さんを見た。
律「こんなイタズラしたのは唯か?憂ちゃんじゃなさそうだし」
唯「ふぇっ?知らないよこんなの」
もちろん私も知らない。だが、どういうことかはわかった。
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:28:31.87 ID:+BVtJ5c7O
梓「私の感想としては、澪先輩を怖がらせるために律さんがしたものだと」
律「だったら澪の部屋に直接置くさ。ま、結局私がここで澪に披露してるんだから、疑いは晴れないだろうけど」
確かに一番ありえそうな展開ではある。しかし律さんは本当に何も知らなそうなので、この紙を仕掛けた人物は一人に特定される。
和「ところで、ムギはほんとにここに来てるのよね?私はまだ姿を見てないのに、そんなもの見せられたら……」
憂「心配いりません。紬さんはきっと無事です」
みんなの視線が一気に集まる。数秒沈黙の後、和さんが口を開いた。
和「どういうことなの?この紙を誰が置いたかわかるの?」
143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:30:02.06 ID:+BVtJ5c7O
律「まさか、意外にも憂ちゃんが?」
憂「私はそんなことしませんよ。それより律さん」
私に言葉を返され、律さんの体が一瞬強張る。
律「な、なんだよ、私じゃないって言ってるだろ」
憂「その点は信じてますよ。ただ、携帯を見せてもらっていいですか?待受画面だけでいいので」
律「なんでそんなことしなきゃいけないのさ。携帯圏外だから部屋に置きっぱなんだけど」
この発言により、私の思考が間違っていないことが確認された。
梓「憂、さっきからどうしたの?ムギ先輩はほんとに無事なの?」
148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:31:31.77 ID:+BVtJ5c7O
私は梓ちゃんの言葉を聞かず、話を続けることにする。この注目を浴びる感じが、なんとも気持ちいいので長引かせたいのだ。
憂「圏外なのは私の携帯だけじゃないんですね。でも、律さんさっき言いましたよね?――紬さんからメールで連絡がきた、って」
律「あっ……!」
律さんがしまった、といった顔を一瞬見せた。
憂「圏外なのにメールで連絡をとれるはずがありません。では、どうやって連絡をとったのか。そして、何故嘘をついたのか」
律「あのぉー憂しゃん。そりゃ確かに私はムギとグルになって澪を驚かそうとしたけど、あの紙は全く……」
憂「あぁもうそれも私が言いたかったのに!」
全てわかってますよ感を出したかったのに、途中で自白が入ると複雑な気分になる。
憂「そうです、律さんは紬さんと一緒に澪さんを驚かす計画を立てていたのです」
150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:33:01.92 ID:+BVtJ5c7O
澪「おい、律ぅ?」
律「ご、ごめんって」
外野の声は気にしない。
憂「その計画ではおそらく、律さんが姿をくらまし、紬さんが不安を煽るという形だったんでしょう。そして、姿を隠している間も連絡を取るために、トランシーバーか何かを用意していた。」
律「おっしゃるとおり」
唯「でもりっちゃんはここにいるよ?」
お姉ちゃんの合いの手はばっちりだ。
憂「そう、この計画は紬さんによって変更されたんです。紬さん自身が身を隠し、律さんまでをも不安がらせるというように」
151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:34:30.46 ID:+BVtJ5c7O
みんな納得したようなしてないような顔をしている。またもや和さんが口を開く。
和「確かにその可能性もあるけれど、もし違ったらムギが危ないんじゃない?」
透「そうだね、どっちにしろみんなで捜したほうが……」
憂「ですから、その必要はありません」
和「憂、あんたね……」
和さんが呆れたような目をしている。しかし私が次に発した言葉により、その目は色を変えるはずだ。
憂「紬さんの居場所は、その手紙に書いてあるんです。暗号として」
唯「あんごー?」
154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:35:51.64 ID:+BVtJ5c7O
憂「そう。みなさん、その紙の二文字目を、縦に読んでみてください」
私の言葉に、律さんが持つ紙をみんなが覗き込んだ。
コワイ
アイテハ
シンデ
ナグルモ
アラタナ
透「ワ・イ・ン・グ・ラ、――ワイン蔵か!」
憂「そうです。透さん、このペンションにあるワイン蔵へ案内してください」
透「あ、あぁ。そこの地下室に続く階段からいけるよ。けど、鍵がかかってるはずだ」
157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:37:21.24 ID:+BVtJ5c7O
憂「鍵がかかってるから入れない。それは、ここが見知らぬペンションならそうかもしれませんね」
真理「もしかして紬ちゃん……」
真理さんは気付いたようだ。他にも何人かがはっとした表情を浮かべている。
憂「ここは琴吹グループのペンションです。ならば、紬さんは地下室へ向かう鍵を、管理人室から、あるいは事前に合い鍵を、手に入れることはできるはずです」
「ご名答よ」
談話室の集まりの外から聞こえた。声のしたほうを向くと、おそらく地下室へ続くのであろうドアから、紬さんが姿を現していた。
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:38:54.18 ID:+BVtJ5c7O
紬「一応トランシーバーを取りに戻ろうとしたら、憂ちゃんが推理を展開してたもんだからドアの向こうで聞いてたの。さすが憂ちゃんの洞察力はすごいわね」
律「ムギ、心配させるようなことするなよー」
律さんがほっとした様子で声をかけた。
紬「あら、最初に澪ちゃんに心配させようとしたのは誰だったかしら?」
律「そりゃまぁ、その、悪かったけど」
澪「全く……ま、ムギが無事でなによりだ」
これにて一件落着、というやつだ。ただ、せっかく考えたイタズラ計画を、勝手な判断で無駄にしてしまったのは申し訳ない気もする。
その点を一応謝ろうかと思い紬さんのほうを見ると、逆にあちらが口を開いた。
161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:40:11.57 ID:+BVtJ5c7O
紬「それにしても憂ちゃんすごいわ。まるで探偵さんみたい」
私が、探偵……?
律「確かにな。私がメール云々言ったのが嘘だって気付けるあたり、してやられた感じだ」
澪「暗号をさらっと読み取っちゃうあたりもすごいよ、私は紙を見るのも嫌だったのに」
梓「澪先輩は怖がりですからね。でも私だって多少怖かったのに、憂は落ち着いてた」
和「ムギの計画は狂ったみたいだけど、いいもの見せてもらったわ」
真理「そうね、透なんかよりよっぽど頭が冴えてるんじゃない?」
透「そこで僕を引き合いに出さないでよ。でも、そうかもしれない」
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:41:07.01 ID:+BVtJ5c7O
みんなが口々に私を褒める。なんだか、本当に探偵としての素質がある気すらしてきてしまう。
だが、肝心のお姉ちゃんがまだ何も言ってくれてないのが気になった。
憂「あの、お、お姉ちゃんはどう思う……かな?」
お姉ちゃんははっとした様子で、目を輝かせてこう言った。
唯「すごいよ憂!憂にこんな才能があるなんて知らなかった!ねぇ、帰ったら私を助手として雇ってください!」
じょ、助手!?
紬「憂ちゃんが探偵事務所を開設するのなら、私も資金援助させてもらうわ」
164 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/02/04(土) 17:42:03.94 ID:+BVtJ5c7O
私が、お姉ちゃんを助手にして、探偵になる……。
なんとも楽しそうな話じゃないか!
憂「やってやるです!」
梓「よく言った憂、やっちまえー」
それからシュプールの中は、私の開業決心を祝う宴会場となり、朝まで飲めや歌えやの騒ぎとなった。
シュプールから帰ったら、私の新しい人生が始まる。それはまた、別のお話…………。
完 ~大団円~