純「あーー、おなか減った!」

梓「ふふっ。純も頑張ったね」

憂「二人ともホントにありがとう! ケーキ作ってきたから、食べてね」

純「おぉ、待ってました、ティータイム!」

憂「今日のお菓子は、バナナチョコシフォンケーキだよ♪」ジャーン

純「うわぁっ、美味しそう~。いやぁ、軽音部、って感じするよねぇ」

梓「す、すごいね、憂・・・ムギ先輩のお菓子に負けてないかも」

憂「えへへ、二人に喜んで貰おうと思って、頑張ったんだぁ」

純「おいしい! ココアとチョコがベストマッチ」パクパク

梓「バナナの中にもチョコチップが・・・なにこれ、お、おいしい!」モグモグ

憂「・・・ほ、ほんと? 味付け変じゃない?」

純「バナナのモチモチした食感に、サクサクのチョコチップ。もう最高だよー!」

梓「うん、舌がとろけそう」

憂「純ちゃんは甘いものが大好き、梓ちゃんはバナナが大好きだから」ニコニコ

梓「憂・・・私たち二人の好みに合わせて作ったんだ・・・」

純「・・・ねえ、憂~」

憂「なあに?純ちゃん」

純「今週末、憂の家に泊まりに行っていい? うち両親出かけてていないんだー」

憂「もちろん! 大歓迎だよ、純ちゃん」

純「・・・何かおいしいもの食べたいなぁ、なんて」テヘッ

憂「分かった! 考えておくね」ニコニコ

梓「はぁ・・・純、憂に甘えるのもいい加減にしなさいよ」

純「梓は来ないの?」

梓「え? 私がなんで・・・」

憂「・・・梓ちゃん、来てくれないの?」ウルウル

梓「う・・・お邪魔、します」

純「ふふん、それでよろしい」

憂「わぁい、ありがとう!」

梓「なんで純が威張るのよ。憂も、お礼言うところ!?」

・・・

#週末:平沢家


ピンポーン

憂「いらっしゃい、梓ちゃん! 純ちゃん!」

梓「お邪魔します。憂、これ、プリン。私と純からだよ」

憂「わあ、ありがとう! ごはん終わったら、みんなで食べようね」

純「おお、さすが憂、片付いてるねー、うちとは大違い」

憂「純ちゃんは、掃除しないの?」

純「うち? あー、汚れたらする、よ?」

梓「純の部屋が目に浮かぶ・・・」

純「それよりさー、今日の晩ごはんだけど」

憂「うん! 純ちゃんのリクエストに応えて、お鍋の用意してあるよ」

純「おぉ、さすが憂!」

梓「もう春なのに、お鍋って」

純「梓は分かってないなー。親睦を深めるには、お鍋がいちばんなの!」

梓「純が食べたいだけでしょ」

純「梓ー、目閉じて」

梓「?」

純「ほら! グツグツ煮えるお鍋の音。お肉と野菜のおいしそうな香りのハーモニー」

梓「!?」

純「耳元で憂のあまーいささやきが・・・『梓ちゃん、お鍋できたよ~(はぁと)』」

憂「ちょ、純ちゃん!?」

梓「ぐっ・・・!」

純「ほらぁ。梓は食べたくないのー?」

梓「たっ・・・食べたいっ・・・よ」

憂「ふふっ。春ならではのお鍋にしたから、きっと楽しめると思うよ」

・・・

純「うわっ・・・何これ? シチュー?」

憂「ううん、豆乳鍋にしてみたんだぁ」

梓「も、もしかして、マシュマロ豆乳鍋!?」

純「な、何それ?」

梓「軽音部の黒歴史、唯先輩のご所望品だよ・・・」

憂「あはは、今日のは、湯葉とキャベツの豆乳鍋だよ」

梓「・・・ほっ」

憂「マシュマロ豆乳鍋は、まだ甘さの重ね方に工夫の余地があるんだよね・・・」ブツブツ

梓「研究してらっしゃる!?」

純「よく分からないけど、早く食べたいっ!」

憂「はーい。まずは、湯葉を豆乳で煮込みます」グツグツグツ

憂「お待たせしましたー、お塩とオリーブ油で食べてね」コトッ

純「はふっ、はふっ。これうまぁぁああ」

梓「湯葉、トロトロだね」

憂「えへへ。そしたら、だし汁を加えて・・・」

憂「鶏肉と春キャベツをたっぷり加えて煮えたら、お好みの薬味でどうぞ♪」

純「おぉぉ、一度で二回楽しめる鍋だよ、これ」

梓「憂、すごすぎでしょ」

憂「それで、最後の〆は、おうどん用意してあるんだけど・・・」

純「おおっ、いいねー鍋の〆はうどんだよね、さすが憂分かってる!」

憂「その前に・・・」

憂「ね、今日の私の味付け、どうかな・・・おかしくない?」

純「・・・」

梓「味付け? おいしかったよ?」

憂「えっと、もっと詳しく」ジィー

梓「憂、もしかしてこのあいだの卵焼きのこと、まだ気にしてるの?」

憂「できたらお願い!」

純「ん~、まぁ強いて言うなら、私はもうちょっと辛いほうが好みかな」

憂「あ、そっか・・・」シュン

純「・・・」

梓「え、え、落ち込むところ? 好みでしょそんなの」

憂「ご、ごめん、何でもないの。おうどん、味付けしちゃうね」

純「ちょっと待った!」

憂梓「?」

純「その味付け、私にやらせて、憂」

憂「え、う、うん。わかった」

梓「純の味付け?・・・不安しか感じないよ」

純「失礼な。こういうのは豪快でいいの!」パパッ

梓「あ!そんなに唐辛子入れたら」

純「さ、憂、味見してみて」

憂「う、うん・・・」パク

純「それ、どう? 思った通りでいいから言ってみて?」

憂「ごめん。ちょっと辛いかも」

純「そこだぁ!」ビシィ!

梓「まーたなんか始まった」

純「私の味付けは、憂には辛い。辛いと思ったのが憂の舌で、憂の味なの」

憂「純ちゃん・・・」

純「お弁当。いつもより少ーし、薄味だったね?」

憂「うん、なんだかわからなくなっちゃったの・・・」

憂「今までは、お姉ちゃんが喜んでくれる味にしようって考えてたけど・・・」

憂「私の好きな味って、どんな味なんだろう・・・」

純「気にしすぎないの」デコピン!

憂「あいたぁ」

純「お姉ちゃんや、私たちの好きな味に合わせるのもいいよ」

純「おいしいって言われたら、嬉しいだろうさ」

純「だけど、憂はもっと、憂自身の個性も、好みも、大切にしてよね」


まったく妬けるなぁ。
いや、世話は焼けない憂だけど、どんだけお姉ちゃん好きなのよ。
少なくとも、優等生で、まじめで、いつも他人を思いやって明るく元気に振る舞う憂だけど、
そのリズムを微妙に狂わせてしまうくらいには、お姉ちゃんっ子なんだ。


純「憂・・・お姉ちゃんがいなくて寂しいなら、私たちをもっと頼ってよ」

憂「純ちゃん・・・」

純「頼りないかもしれないけどさ、寂しいときにそばにいてあげることくらい、出来るから」


目に涙をいっぱい湛えて私を見る憂、可愛すぎでしょ。
それにしても、憂のお姉ちゃんなんなの?
この子に自分を好きになる魔法でもかけたんじゃないだろうか。

純「はぁ・・・まいった、降参」

純「私たちじゃ、やっぱりね、唯先輩にはなれない。すごいよね」

梓「純・・・」

純「だってさ。しっかり者の憂のお弁当の味付けが、ガタガタ揺れ出しちゃうんだよ? すごいよ」

純「だけどっ」

純「それでも、憂が自分の味を見失うのは、私は悲しいし・・・」

純「私は寂しい! 私は憂の友達だっ!」ビシッ!

憂「純ちゃん・・・」

純「ねぇ、梓はどう?」

梓「・・・憂。憂は、お姉ちゃんが自分を置いて行っちゃったって思ってる?」

憂「そんなこと・・・お姉ちゃんはいつだって私を見守ってくれるし、私に力をくれてるよ」

梓「うん。唯先輩も今、憂と離れて1人で頑張ってるんだよね。・・・憂は、唯先輩のこと心配?」

憂「ううん。軽音部の皆さんが一緒だから・・・」

憂「皆さんのこと信じてる。だから、お姉ちゃんはだいじょうぶだって」

梓「憂・・・唯先輩に、澪先輩や律先輩、ムギ先輩がいるように」ギュッ

梓「憂には私たちがいるよ」ギューッ

憂「梓ちゃん・・・」

純「そうだ、憂。もっと私たちを頼れっ!」ギューッ

純「唯先輩にはなれないけど、もしも憂が迷ってたら、いくらでもブーブー言ってあげる」

梓「私と純だって、憂を支えられる・・・ううん。絶対絶対、支えるから!」

純「だから、憂は、もっと自分を信じてあげてよね」

憂「じゅ、じゅんちゃ・・・あずざちゃあ・・・」グスッ

梓「えぇっ? う、憂、泣かないで!」

憂「だ、だって、二人とも、私のために演奏してくれて」

憂「今日もまた、だいじなことを教えてくれて。ふえぇ・・・」

純「やばぃ、梓手伝え。よしよし憂」ギュー

梓「う、憂、ほらっ//」ギュー

憂「純ちゃ~ん、梓ちゃ~ん」グスグス


唯先輩だって、きっと寂しさに耐えてる。
たぶん、それを他の先輩方が支えてるんだ・・・。
憂のことだって、私と純が支えるから・・・唯先輩、安心しててください。


ヴヴヴヴヴ!


純「ケータイ・・・誰の?」

梓「私じゃないよ?」

憂「あ、私の・・・! お姉ちゃんからメールだ」

憂「・・・・・・」パァアアア

純「お姉ちゃん、なんて?」

憂「・・・はい」スッ

梓「いいの? ・・・えぇと」


唯『ういー、元気? ういのごはんが食べたいよー!(泣) こんどの連休には帰るね。 ゆい』


梓「はぁ・・・唯先輩。こういう人だった」ガクッ

憂「えへへぇ」ニコニコ

純「んもう、私と梓の努力を返せっ! 何この仲良し姉妹!?」

憂「ふふっ、二人とも、だーいすきだよ!」ギュギュー


お姉ちゃんがいなくって、やっぱり少し寂しい毎日です。
だけど、私には、お姉ちゃんの魔法と・・・大切な友達がいるから、だいじょうぶ。
私のなんということのない日々は、笑顔の宝箱。
一緒に探したいな。みんなで見つけたいな。笑顔になること。分けあう素敵なものを。


【おわり】



#エピローグ(はじまり)


ゆい「・・・」スゥスゥ

ガタンッ

ゆい「・・・んん・・・うい?」

うい「・・・おねえちゃ」

ゆい「ねむれないの?」

うい「うん・・・」

ゆい「ん、おいで?」

ゆい「よしよし」ギュー

ゆい「ふふ、もうだいじょうぶだからね~」ナデナデ

ゆい「だいじょうぶ♪」

ゆい「だいじょうぶったら、だいじょうぶ♪」

ゆい「だいじょうぶったら、だいじょうぶ♪」

ゆい「だいじょうぶったら、だいじょうぶだよ~♪」

ゆい「だいじょうぶ~」

ゆい「だいじょーぶ・・・」

うい「・・・」スウスウ

ゆい「えへ・・・ふわぁぁ」

ゆいうい「・・・」スウスウ

【おしまい】


読んでくれてありがとうございました。
憂ちゃん、誕生日おめでとう!



最終更新:2012年02月22日 22:37