梓「いい感じじゃない?」

純「そうだね、失敗とかもしてないし」

梓「じゃあそろそろ憂呼ぼっか」

純「私メールするよ」

梓「うん・・・あ、待って」

純「?」

梓「誕生日パーティーの事を悟られちゃまずいからね、私が送るよ」

純「それもそうだね」

梓「『もう来ても大丈夫だよ、待ってるね』と」

純「あれ?私にも来たよ」

梓「純も同時に呼んだって事にするためだよ、送信者一覧とか見るかも知れないし」

純「なるほど」

梓「あ、返信来たよ」

純「なんて?」

梓「今から来るって」

純「じゃあ早く仕上げないと」

梓「そうだね」

純「憂どんな顔するかな?」

梓「きっと喜んでくれるよ」


平沢家

憂「さて、行こうかな」

憂「じゃあ行ってきまーす」

憂「・・・」

憂「あったかいな~・・・このマフラー・・・」

憂「・・・」

憂「・・・」テクテク

憂「楽しみだな」テクテク

憂「梓ちゃんがご飯作ってくれてるのかな」テクテク

憂「・・・」

憂「なんだろう」

憂「なんなんだろう、この気持ち」

憂「・・・考えてもわかんないや」

ピンポーン

梓「あ、憂来たかな」

純「私出るよ」

梓「うん」

純「いらっしゃい」ガチャ

憂「あ、純ちゃんの方が早かったんだ」

純「え?あー・・・うん私も今着いた所だよ」

憂「そっか」

純「ほら、中入って」

憂「おじゃましまーす」

梓「いらっしゃい」

憂「おじゃまします」

純「・・・」

憂「?」

純(どのタイミングで言うの?)コソコソ

梓(あ、えっと)コソコソ

純(じゃあいっせーのーでで言おう)コソコソ

梓(うん)コソコソ

憂「?」

梓純(いっせーのーで)

梓純「憂誕生日おめでとう!」

憂「えっ?」

梓「今日は憂の誕生日パーティーです!」

純「サプライズだよサプライズ!」

憂「あ、今日って2月22日・・・」

純「やっぱり忘れてたんだ」

梓「憂らしいと言えば憂らしいね」

憂「そっか、今日私の誕生日だったんだ」

憂「・・・」


―――うい、誕生日おめでとう!


憂「!?」

梓「どうしたの?」

憂「え?」

純「?」

憂「あ、ううん何でもないよ」

憂(今何か聴こえたような気が・・・)

憂(気のせい・・・だよね)

梓「ほらほら座って!」

純「今日の主役は憂なんだから!」

憂「あ、ありがとう」

憂「本当にありがとう、梓ちゃん。純ちゃん」

梓「ほら、憂のために色々作ったんだよ!」

純「憂には敵わないけどね」

憂「ううん、とっても美味しそう!」

梓「料理だけじゃなくケーキも作ったんだよ!」

純「すごいでしょ!」

憂「うん!すごいよ二人とも!」

梓「ほらほらコート脱いで、マフラーも取って」

純「前から思ってたんだけどさ、そのマフラー可愛いけど憂が買いそうな柄じゃないよね」

憂「そんなことないよ~これ気にいってるんだよ?」

憂「・・・」

憂「うん、このマフラー気にいってるんだ」

梓「?」

純(なんで2回言ったの?)

梓「さ、どんどん食べて!」

憂「ありがとう梓ちゃん」

純「今日はとことん付き合ってあげる!」

憂「ありがとう純ちゃん」

憂「・・・」

憂(なんでだろう)

憂(嬉しいはずなのに)

憂(・・・感情が心に留まらない)

憂(・・・心の中に風穴が開いてるみたい)

憂(口から出る言葉も本心のはずなのに)

憂(心の底から声が出ない・・・)

憂(どうして・・・?)

梓「それでね・・・」

純「うそー?・・・」

憂「あはは・・・」

憂(話が頭に入ってこない・・・)

憂(なんで?梓ちゃんと純ちゃんと一緒に誕生日パーティーしてるんだよ?)

憂(楽しいはずなのに、嬉しいはずなのに)

憂(どうしちゃったんだろ、私)

梓「あ、もうこんな時間」

純「明日も学校だしそろそろ片付けよっか」

憂「・・・」

梓「憂?」

憂「・・・あ、そうだね」

純「楽しくて時間忘れちゃった?」

憂「う、うん。ごめんね」

梓「いいのいいの」

純「それじゃ梓片付けよろしく」

梓「純もやるの!」

純「やっぱり?」

憂「私やるよ」

梓「駄目!憂はゆっくりしてて」

純「そうそう、誕生日くらい休んでてよ」

憂「それじゃお言葉に甘えて・・・」

梓「うん」

純「私もお言葉に甘えたいんだけど」

梓「駄目」

純「この扱いの差は何?」

梓「ほら早く」

純「はいはい」

憂「・・・」

憂(ごめんね梓ちゃん純ちゃん)

憂(せっかくお祝いしてくれたのに、私全然楽しんでなかった)

憂(楽しみたかったな・・・)

憂(・・・)

梓「ふう、終わったね」

純「じゃあそろそろ帰ろっか」

憂「・・・うん」

梓「憂、今日は来てくれてありがとね」

憂「え?そんなお礼を言うのはこっちだよ」

純「そんなことないよ、いつもお世話になってるし」

梓「そうそう」

憂「・・・ありがとう」

梓「謙虚だね憂は」チラッ

純「なんで私の方を見るの」

梓「いや別に」

憂(ほんとはごめんなさいって言わなきゃ駄目なのに)

憂(ごめんね・・・)

純「それじゃあね」

梓「うん」

憂「・・・今日はとっても楽しかったよ」

梓「こっちこそ、すごく楽しかったよ」

純「またやろうね!」

梓「そうだね」

憂「じゃあおやすみ」

梓「おやすみー」

純「ばいばーい」

純「それじゃまた明日ね」

憂「うん、気をつけてね」

純「憂もねー」

憂「・・・」

憂「・・・」テクテク

憂「なんなんだろう、この気持ち」

憂「悲しい訳じゃないんだよね」

憂「何だろう」

憂「体の一部分が無くなっちゃったみたいな感覚」

憂「・・・」

憂「どうして・・・」

憂「どうして泣いてるんだろう私・・・」ポロポロ

憂「悲しくも嬉しくもないのにどうして・・・」ポロポロ


―――憂、大好きだよ


憂「・・・」

憂「・・・帰ろう」

誰かの声が聴こえたような気がしたが、憂にはそれが誰の声か分からなかった

自分はどうしてしまったのか

何故こんな気持ちになるのか

いくら考えても分かる事はない

この世界に平沢唯はいないのだから


私の名前は平沢憂です
桜が丘高校に通う2年生で、部活には入っていません

仲のいい友達と毎日楽しく過ごしています

でもどんなに笑いあっても、語らいあっても

私は何も感じないのです

そうしていつしか私はこう思うようになりました

私は世界でひとりきり、と


おしまい




それから


平沢家

憂「う~ん、よく寝た」

憂「さてとご飯支度しなくちゃ」

憂「~♪」

憂「よし、出来た」

憂「お弁当もよし、と」

憂「さてと」

憂「入るよー?」コンコン

憂「・・・」

憂「ほら起きて!お姉ちゃん!」ガチャ


今日も平沢憂の一日が始まる


おしまい





最終更新:2012年02月23日 20:50