梓「要するに、どっちも甲乙つけがたくて悩んでるんですか?」

唯「そうなんだよ~。どうしようか?」

律「どっちでもいいわい」

唯「よくないよ~!」

梓「はぁ……まったくもう……」

澪「それで、律」

律「うん?」

澪「一応出揃ったけど、これでどうするんだ?」

律「え、いやー……あー」

澪「何も考えてなかったのか……」

律「あははは……と、とりあえず転がそうか」

梓「え!? そんな、折角作ったのに」

紬「さんせ~い」

梓「えぇ!?」

唯「まぁ、仕方ないよね。どっちのあずにゃんも私にとっては大切な宝物だよ!」

梓「何かいい話にしようとしてるけど、おかしいですって!」

澪「じゃあ転がすぞ、せーのっ」

唯律澪紬「えいっ」ゴロゴロゴロゴロ

梓「えっ、ええぇっ!」ゴロゴロゴロゴロ

唯「お~、今宵のだるまはよく転がる転がる」

梓「な、何で私の方に転がすんですかー!」

律「お、当たりそうだな」

紬「私、一回人間ボーリングしてみたかったの~」

梓「わああああぁぁぁ~!――」

~~~


梓「――はっ!」

梓「考えながら歩いてたら、木にぶつかって埋もれてた……」

梓「もっと注意して歩こう」

梓「…………」

梓「…………」

梓「うぅ……」

梓「くじけそう……」

梓「雪だるまとか考えるからよくなかったんだ」

梓「もっとあったかくなれる事を考えよう」

梓「えっとえっと――」


~~~

梓「――ムギ先輩、どこに行くんですか」

紬「あ、梓ちゃん」

梓「そんなに着込んで……外に出るんですか?」

紬「うん、かまくら作ろうと思って」

梓「まぁ、これだけ雪があれば大きいのも作れそうですね」

紬「でしょう。私、かまくらの中でお餅焼いて食べたかったの~」

梓「ムギ先輩、そういうの好きそうですもんね」

紬「うん、大好き! じゃあ行って来ま~す」

梓「ちょちょ、ちょっとムギ先輩!」

紬「え? なぁに」

梓「まさか一人で行くつもりですか!?」

紬「そ、そうだけど」

梓「どんな大きさのを作るのかわかりませんが、一人だと大変ですよ」

紬「えっと、大体部室位の大きさにしたいかな?」

梓「でかっ! じゃなくて、それを一人でっていうのが難しい話ですよ」

紬「そうかしら……でも、みんなも何かしら忙しそうだし」

梓「……わかりました」

紬「?」

梓「私も手伝いますよ」

紬「えっ、いいの?」

梓「はい。ムギ先輩の事ですから完成するまで帰ってこないでしょうし」

紬「梓ちゃん……」

梓「氷漬けのムギ先輩なんか見たくないですしね」

紬「梓ちゃん……ありがとう!」

梓「お礼は完成してからで結構ですよ。さぁ行きましょう」

紬「は~い――」


紬「――出来ました~」

梓「……」

紬「どうしたの、梓ちゃん?」

梓「いやー……思いの外早かったなぁ、って」

紬「それは梓ちゃんが手伝ってくれたお陰よ~」

梓「いやいや、私は全体の五分の一もやってないですから」

紬「そ、そう?」

梓「一人でも簡単に出来そうでしたね」

紬「ま、まぁ、何はともあれ完成したから! 早速入ってみましょう」

梓「あ、はい」

梓「はぁー……暖かいですね」

紬「作った甲斐があったわ~」

梓「ふふっ」

紬「うん? 何かおかしかった?」

梓「あ、いえ! そんなんじゃないです!」

梓(さすがにはしゃいでるムギ先輩が可愛くて、なんて言えないよ)

紬「梓ちゃん?」

梓「あ、あぁ、ほら、ムギ先輩! 中でお餅焼くんでしょう!」

紬「う、うん」

梓「あれ? ムギ先輩、お餅はどこに置いてあるんですか?」

紬「よいしょ……っと、はい」ドン

梓「臼と杵……? ま、まさか」

紬「そして、はい、餅米」

梓「これ、まさか今からつくんですか!?」

紬「そうよ~、私、餅つきも一回やってみたかったの!」

梓「え、えーっと、ムギ先輩」

紬「あぁ、大丈夫よ。梓ちゃんは返しをやってくれたらいいから」

梓「いや、そうじゃなくてですね」

紬「はい、蒸し完了~。それじゃあ、つきま~す!」

梓「いつの間に!? というか、かまくらの中でやるんですか!?」

紬「そ~れ~」ブンッガツッ

紬梓「あ」

梓「あわわわわ」ガラガラガラガラ

紬「梓ちゃん、ごめ~ん。勢い付けすぎて天井に杵をぶつけちゃったぁ」ガラガラガラガラ

梓「そ、そんな悠長に謝ってる場合じゃないですよ! 早く逃げないと……!」

紬「う~ん、手遅れじゃないかしら」

梓「あぁ……そんなあああぁぁぁぁぁぁ…………――」

~~~


梓「――…………ああぁぁぁぁ」

梓「…………はっ!」ガバッ

梓「い、いけないいけない」

梓「変なこと考えてたせいか、軽く生き埋めになってた」

梓「途中までは楽しかったのに……」

梓「ううぅ、冷えてきたなぁ」

梓「かまくらー、暖炉ー、こたつー」

梓「寒いよぉー……」

梓「もっともっとあったまる、楽しいこと考えないと」

梓「えーっと――」


~~~

律「――それでは、今から雪合戦を行いたいと思いまーす!」

澪「また唐突に……」

梓「中学生じゃないんですから、そんなの誰が喜んで――」

紬「わぁ~、私一度やってみたかったの!」

唯「チーム分けどうしよう、チーム分け!」

梓「――やってます……ね」

澪「多数決って怖いな……」

律「えーっと、それじゃあ唯・梓チームと、澪・ムギチームに決まりましたー」

澪「律はどうするんだよ」

律「私は審判でーす」

澪「……腑に落ちないところはあるけど、人数足りないから仕方ないか」

律「そうそう」

紬「澪ちゃん、頑張ろう!」

澪「凄いやる気だな……」

唯「あずにゃん、私たちも頑張るよ!」

梓「その頑張りをいつもの練習でもお願いしますよ」

唯「あぁ~ん、それは言わないでぇ~」

梓「まったくもう……でも」

唯「うん?」

梓「やるからには勝ちに行きますよ!」

唯「お、おぉ~」

律「陣地と雪玉の準備はできたなー? 始めるぞー」

唯澪紬梓「は~い」

梓「雪玉は私が投げますから、唯先輩はこの雪壁に隠れてて下さい」

唯「それであずにゃんに玉を補給しつつ渡せばいいんだね。まっかせてよ~」

梓「では速攻で行きますよ……それっ――」ヒュッボカーン

梓「――な、何今の……石の塊……? 唯先輩……」クルッ

唯「あ、あずにゃん……」

梓「唯先輩!? これはひどい……致命傷だ」

澪「よし、ムギ。その調子だ」

紬「よ~し、次は梓ちゃんね」

梓「タイム! ちょっとタイムです!」

律「なーんだよ。勝手にルール作るなよな」

梓「いやいや、明らかにおかしいでしょう、ムギ先輩の雪玉!」

澪「え、そうか?」

紬「普通に握って投げただけだけど……」

梓「雪の壁で作ったバリケード貫通したんですよ!」

澪「そういう事もたまにはあるんじゃないか?」

梓「直撃した唯先輩が昏倒してるんですよ!? 絶対おかしいです! 異議有りです!」

律「あーわかったわかった、神経質だなぁ。ムギ、悪いけど玉割って見せてくれよ」

紬「構わないけど……えいっ」バガァン!

澪「……ほら梓、何の変哲もない普通の雪玉だろ?」

梓「普通の雪玉はそんな音で割れませんよ!」

律「これで満足したろ? じゃー再開でー」

梓「ちょっ、まだ解決して――」

紬「投げま~す」ビュオッ

梓「わああぁ! ち、近いです!」

澪「ムギ、私も攻撃に参加するぞ」ヒュッ

梓「痛っ、いたたっ」

律「ついでに私も参加しちゃいまーす」ヒュッ

梓「痛い! な、何で律先輩も……」

唯「あずにゃん覚悟~!」ヒュッ

梓「ど、どうして唯先輩まで敵になってるんですかー!」

澪「あっ、逃げたぞ」

律「集中砲火だ! 火力を一点に集中しろー!」

紬「あいあいさ~」

唯「ふんす!」

梓「あ、あの、これは本当に、シャレにならな……あうっ」

梓(あぁ……意識が朦朧と――)

~~~


梓「――痛い痛いっ! 本当に痛い!」

梓「いつの間にか霰が降ってるし!」

梓「痛っ! もう雹じゃないの!?」

梓「ううぅ、顔面に命中しちゃったよ」

梓「とりあえずどこかに身を隠さないと」

梓「あっ、あんなとこに明かりが」

梓「小屋か何かかな?」

梓「とにかくお邪魔させてもらおう」

梓「すみませーん……って、あれ?」

梓「ここって……脱衣所? じゃあ……」

梓「見つけたのかも、伝説の秘湯」

梓「これでやっとミッション達成かぁ……あれ、でも」

梓「秘湯の割に先客が、えっと一、二……四人も」

梓「しかもどこかで見た服……」

梓「……これは!?」

梓「み、澪先輩の下着……!」

梓「という事は、私は律先輩に一杯食わされたって事か」

梓「けど、なんだろう」

梓「この状況、すごーく嫌な予感が――」ガラガラ


唯「――あ~、いいお湯だった~」

澪「そうだな」

紬「でも、梓ちゃんに悪い事しちゃったわね」

律「まさか本気にするとはなぁ……あれ?」

唯「あずにゃん?」

梓「律先輩、勘弁して下さいよ。死ぬかと思いましたよ!」


律「……」

澪「」

紬「わあぁ……」

梓「ど、どうしたんですか、皆さん」

律「いやぁ……どうしたっていうか」

唯「それ……」

梓「え……あっ」

澪「わ、私の、パ、パ、パ」

梓「いや! これはそのそういうつもりじゃ!」

紬「梓ちゃん……鼻血」

律「梓……そこまでに達していたか……」

澪「」

梓「あああああのその、これもその違うんです! そういうんじゃないんです! さっきぶつけちゃって……」

唯律澪紬「…………」

梓「あ……あああぁぁぁ!!!」バタン!

唯「あ、逃げた」

律「お、おーい梓!」

澪「梓ぁ! わ、私の……ぱんつ返してくれえぇぇぇぇ!」

梓「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいぃぃぃぃぃぃ!!」

梓「あっ」ガツッ

梓「ああああぁぁぁ……」ゴロゴロ

唯「転げ落ちた」

律「こりゃあ……」

紬「雪だるま~」

澪「…………ぱんつ」




おしまい!






最終更新:2012年02月25日 22:15