2年生教室
純「トンちゃんの誕生日?トンちゃんって、あの亀でしょ」
憂「スッポンモドキだよ」
純「・・・いや、その辺はどうでも良いんだけどさ」
憂「純ちゃんの猫ちゃんは、いつが誕生日?」
純「特に決まってないけど、大抵私の誕生日と一緒にお祝いするかな」
梓「何よ、それ。純だってやってるんじゃない」
純「そ、それはその。・・・だって、可愛いもん」
梓「トンちゃんも可愛いよ」
純「亀、なんだよね」
憂「ま、まあ。その辺はあれだから」
梓(・・・亀を可愛がるのって、もしかして変なのかな)
梓「純は、誕生日に何をプレゼントしてる?」
純「大抵はおもちゃかな。後は、ご馳走だね」
憂「お刺身とか?」
純「そうそう。でも栄養を摂りすぎても良くないから、滅多にあげないけど」
憂「動物は体が小さい分、デリケートだもんね」
梓「だったらトンちゃんも、ご馳走をたくさんあげるのは良くないんだ」
純「私の誕生日には、ご馳走を一杯プレゼントしてくれて良いからね」 ちらっちらっ
梓「唯先輩も、そんな事言ってたな」
梓(それ、私も言った台詞だし。憂、何故か喜んでるし)
放課後、軽音部部室
紬「お茶、入りましたー」
唯「ありがと、ムギちゃん。・・・今日も美味しいね」
律「なんて言うのかな。この一杯のために生きてるって気がするよ」
澪「同感だ」
紬「そう言ってもらえると嬉しいわ♪」
唯「ムギちゃんの分は、私が淹れてあげようか?」
紬「え」 びくっ
律「なんて言うのかな。この一杯のために、生きるか死ぬかって気がするよな」
唯「もう、りっちゃんはー」
澪、紬「あはは」
唯「・・・そう考えてみると、トンちゃんはいつも水ばっかり飲んでるんだよね」
律「確かに、それはその通りだな」
紬「お茶を飲ませてあげたいけれど、多分体には良くないだろうし」
澪「ちょっと可哀想だな」
紬「だからトンちゃんの分も、みんなで飲んであげて」
唯「合点承知。りっちゃんがジョッキでぐい飲みするよ」
律「みんなでって言っただろ」
紬「まあまあ。まずは一献どうぞ」
律「おーっとっと。こぼれるこぼれる」
澪「唯も、ほら」
唯「っとっと。ご返杯、ご返杯」
澪「ムギも座って座って。今日はどんどん行こう」
紬「そんなに飲ませて、一体私をどうする気?」
澪「ば、馬鹿。そんなんじゃないから」
カチャ
梓「済みません、遅れました」
律「なーかーのー」
梓「は?」
澪「座れ」
梓「は、はい」
澪「飲め」 こぽこぽ
梓「い、頂きます」
澪「いける口だな」
梓「はぁ」
澪「お茶は飲んでも飲まれるな」
梓「・・・で、その心は」
澪「何言ってるんだ、梓」
梓(いや。それは私の台詞なんだけど)
唯「あずにゃん。寂しかったよー」 きゅっ
梓「何ですか、急に」
律「なーかーのー」
梓「・・・律先輩も」
紬「ごめんなさいね。みんな、どうかしてるみたい」
梓「何かあったんですか」
紬「・・・今日は、トンちゃんの分も飲んであげて」 こぽこぽ
梓(まさかっ・・・。って、トンちゃん普通にいるし)
紬「トンちゃん、今頃どこで何をしてるのかしら」
梓(裏返って泳いでますよ)
10分後
梓「・・・で、お茶に酔ったと」
律「いやー。面目ない」
紬「昔の人は、玉露でも酔ったらしいわね」
澪「私達の場合は、雰囲気に酔ったって気もするが」
唯「あずにゃーん」 きゅっ
梓「唯先輩は、結局抱きついてくるんですね」
唯「つまりはそれが、私の本質。いついかなる時もぶれない、私の軸なんだよ」
律「結構嫌な話だな」
梓「さっき純達と話してたんですけど、純は猫の誕生日にご馳走をあげるそうです」
律「ご馳走か。亀って、普通何食べるんだ?」
澪「草食系だから、藻とか?」
紬「スッポンモドキは雑食じゃないかしら」
唯「どういう事?」
紬「・・・つまり、色々食べるんだと思うわよ」
梓「そう言えばペットショップだと、色々な物が売ってますよね」
澪「色々って、何?赤とか青とかパステルグリーンとか、そういうメルヘンな事だよな。そうだよなっ」
梓「え、ええ。まあ。そういう事だと思いますよ」
律「その辺は私も、あまり突っ込みたくないな・・・」
澪「・・・ご馳走以外で、トンちゃんが喜ぶ物を考えよう」
唯「えーと、あれ。登れるような岩なんてどうかな。ずっと泳いでばかりだと、疲れちゃうよね」
律「そう言われてみればそうか」
梓「いえ。スッポンモドキはずっと水の中で暮らしてるので、そういう場所は必要無いそうです」
澪「それに環境を変えるのも、あまり良くないよな
唯「住み慣れた家が一番って事?」
紬「狭いながらも楽しい我が家って、唯ちゃんも言ってたじゃない。私もそう思うわ♪」
唯、紬「ねー♪」
律、澪、梓(いやいやいや)
律「それなら、物以外ってのはどうだ」
唯「例えば、どんなの?」
律「水槽を掃除するとか」
梓「この間したばかりですよ」
律「じゃあ澪が、お背中流しまーす♪とか」
澪「やらないんだ。大体、環境を変えるのは良くないって言ったばかりだろ」
律「トンちゃんが駄目なら、私の背中を流してくれよ」
澪「どうして私が」
紬「だったら、私が代わりに流しましょうか♪」 にぎにぎ
梓(どう考えても、揉む手付きなんだけど)
カチャ
さわ子「あー、疲れた。ムギちゃん、濃い緑茶をお願い」
紬「ただ今お持ちしまーす」
唯「さわちゃんは、トンちゃんのプレゼント何が良いと思う?」
さわ子「美容液とかバッグとか旅行券とか」
律「トンちゃんのって言っただろ」
さわ子「冗談よ、冗談。でも急にプレゼントって、どういう訳?」
梓「あの。トンちゃんの誕生日がいつかって話になって。だったらプレゼントをと思いまして」
さわ子「相変わらず夢見がちというか、なんというか」
澪「それで、何か良いアイディアはありますか?」
さわ子「肩たたき券なんて良いんじゃない?」
律「真っ先にボツになるアイディアだろ、それ」
さわ子「だから冗談だってば」
梓「さっき出たアイディアとしては、別なスッポンモドキを飼おうかとも思ったんですけど」
さわ子「止めた方が良いわよ」
澪「水槽の中が子供でぎっちぎちになって、部室中に卵が溢れるって事ですか?」
さわ子「・・・あのね。大抵ケンカしちゃうからよ。それにスッポンモドキの繁殖は難しくて、日本の水族館で唯一繁殖例があるだけなの」
紬「詳しいですね、さわ子先生」
さわ子「一応は私がスポンサーだし、なんと言っても教師だから。そのくらいは知っていて当然よ」
律「亀の甲より年の功とも言うしな。だははー」
さわ子「・・・浦島太郎の来ない亀より悲惨な目に遭わせるぞ、このデコッパチ」
律「あー、ひどい目に遭った」
澪「自業自得だ。それにしても、いざ考えてみると難しいな」
紬「結局トンちゃんは、何が一番嬉しいのかしら」
梓「何でしょうね。唯先輩は、どう思いますか」
唯「・・・何もしないのが一番じゃないかな」
梓「はい?」
澪「分かるか?」
律「全然分からん。唯の言う事は、いつも分からん」
紬「まあまあ。唯ちゃん、どういう事?」
唯「つまり普段通り過ごすって事だよ」
梓「それって」
唯「トンちゃんは、私達の仲間だよね」
澪「・・・ああ。大切な、大切な仲間だ」
律「私達にとって、みんなが普段通りに過ごしてると嬉しいみたいに」
紬「トンちゃんも、私達が普段通りに過ごしているのが一番嬉しい」
梓「だから何もしないのが一番って事ですか」
唯「・・・ち、違うかな」
律、澪、紬、梓「違わないっ♪」
律「唯にしては上出来な答えだったな」
唯「もう、りっちゃんはー」
律「冗談だよ、冗談。それにしても、普段通りか」
澪「私達が、一番得意な事だな」
紬「私、お茶淹れるわね♪」
梓「はいですっ」
唯「お茶、美味しい」
律「お菓子、うめー」
澪「今日も幸せだ」
梓「はいですっ」
紬「うふふ♪」
唯、律、澪、紬、梓「そうだよね、トンちゃん♪」
終わり
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
テーマとしては「トンちゃん」ですね。
本物のスッポンモドキは厳ついイメージがあるので、初めてトンちゃんを見た時は別種と思ってました。
最終更新:2012年02月25日 23:18