紬「梓ちゃん」

梓「は、はい!」

紬「ちょっと冷めてて不味いけど、唯ちゃんが飲んだミルクティーを飲んでくれる?」

梓「は、はい」ゴクッ

紬「どう?味は?」

梓「いや、普通ですけど……」

紬「じゃあ次は律ちゃんが飲んだのを飲んでみて」

梓「はい」ゴクッ

梓「……あれ?」



律「な、なんだよ!」

梓「さっきのより……甘い」

律「甘い?」

紬「そう……実はね。唯ちゃんが飲むミルクティーは、いつもみんなのより甘くしてあるの」

梓「でも、これ律先輩の……あ!」

紬「そう、いつもと味が違うのに何も言わないわけがない!」

律「いや、ちょっと甘いなーって……」

紬「律ちゃんじゃない!唯ちゃんがよ!」

唯「……へ?私?」

紬「そう、入部したてのころ……」

ポワポワポワーン…

紬『はい、みなさん。ミルクティーですよー』

律『うめー』

澪『ムギがいれるミルクティーは最高だな』

紬『ふふ、ありがとう』

唯『』ゴクゴク

唯『!!』

唯『苦い!!これスゴい苦いよムギちゃーん!!』

紬『えっ!?』

澪『どれどれ?』ゴクッ

澪『……普通じゃないか』

唯『でも苦いよー』

紬『じゃあ唯ちゃんのだけお砂糖多めにしますね』


澪「た、確かにそんなこともあったな」

紬「そう、あんなに大騒ぎした唯ちゃんが黙っているハズがない!」

澪「どうなんだ?唯?」

唯「え……えーと……」

梓「唯先輩!」

唯「えーと……えーと……」

律「あ!あれだよな!きっと唯もこの一年で大人になったんだよ!」

唯「!」

唯「そ……そう!私もおとなになったんだ!私たち入れ替わってなんかないよ!」


澪「………」
梓「………」
紬「………」


唯「……あれ?」


唯「ど、どうしたの?みんな?」

澪「あ、いやー……その主張が通っちゃうと……」

梓「やっぱ服を脱がしたのは唯先輩、ってことに……」

唯「……え?ちち違うよ!私、澪ちゃんの服脱がしてないもん!」

澪「じゃあやっぱり入れ替わって……」

唯「いや、入れ替わってもないよ!」

梓「いったいどっちなんですか!」

紬「……やれやれ」




紬「あまりこれは使いたくなかったのですが、しょうがないわ」

律「そ、それは……?」

紬「ボイスレコーダーよ」

唯「ぼいすりこぉだぁ?」

紬「リコーダーじゃないわ、レコーダー。会話の内容を保存できるものね」

澪「それがなんだって……」

紬「その前に、梓ちゃん」

梓「はい(また?)」

紬「一つ確認だけど、私が他の場所を探す、って出て行ったあと、この二人はトイレに行ったわね」

梓「は、はい」

紬「そう、よかった。声だけじゃ確証が持てなかったものでね」

律「……!ま、まさか……」

紬「そう、これにはトイレでの二人の会話が入ってるわ……律ちゃん、分かってるわね」

律「………やめろ」

紬「ここには……全てが入っているわ、そう、この事件の全てが……」

唯「………」

律「……やめろおぉぉぉ!!」

紬「澪ちゃん、律ちゃんのこと押さえてて!」

澪「うん!」

紬「じゃあ……再生するわよ……」

律「やめろおぉぉぉぉぉ!!!!」

ガチャ

ピーーー

『りっちゃん!澪ちゃんに何かしたでしょ!』

『あぁ、ちょっとな』

『話が違うじゃん!最初は私がドラム叩けてりっちゃんがギター弾けてスゴーイ、ってなるんじゃなかったの!?』

『それもあとでやるさー』

『何やったか分かんないけど私……澪ちゃんに言ってくる!!』

『止めた方がいいぜ。そんな話信じないよ』

『そ…そんな……』


『とりあえず、今は私の言うとおりにしといた方がいいぜ』

『わ、わかったよ……でもなんで澪ちゃんを虐めるの?』

『ほら、最近梓が入ってきてさ、先輩面して部長の私の立場がないじゃん?だからちょっと仕返しだよ』

『りっちゃんって意外と根暗だね……』

『うるさい、とりあえず今私たちがやることは入れ替わったことと私が澪にしたことを隠し通すんだ』

『もし、破ったら?』

『唯に何があっても責任はとれないなー。ひょっとしたら澪……唯のこと殺しちゃうかも』

『や、やだ……死にたくないよ』

『じゃあ私の言うこと聞けよ!よし、じゃあ元に戻ろう!私は律で唯は唯に!』

『う、うん……』


ガチャ

ピーーー

澪「………」
梓「………」
唯「………」
律「………」

紬「まぁ、そういうことよ」

澪「ふざけんなバカ律っ!誰のせいでこんな恥ずかしいことに……」

唯「ごべーん!み゛お゛ぢゃぁぁぁぁん!ヒック…わだじのぜいでー!ウワーン!」

澪「あ、いや、唯のせいじゃない……いやちょっとは唯のせいだけど……」

律「………」

紬「……律ちゃん?」

律「……………」

梓「律先輩?」

律「…………………」

澪「り…律?」


律「てへっ!バレちゃあぐラグべャあまゎ!!」


律「そ…そんなに思いっきり殴んなくてもいーだろ!」

澪「お前私にこんなことしといてよく、てへっ!とか言えるな!」

律「あー!?知らねぇよ!ちょっと後輩に好かれたからって調子乗りやがって!第一そういう先輩ってカスばっかなんだよ!」

澪「それは律が部長としてしっかりしてないからだろうが!」

律「部長がしっかりしてなきゃ部長気取っていいのかよ!?この元文芸部志望が!!」

澪「文芸部が悪いのかよ!?」

律「悪ぃよ!根暗!オタク!いいか!?私が軽音部の部長なんだバカヤロぉぉ!!文句あるやつは出てけ!!」

唯「わだじのぜいで……ごべんなざーい!ウワーン!」


梓「………やっ………」

梓「やめてくださーい!!」

律「あ…梓」

梓「……ヒック……私、先輩たちのそんな醜い争い見たくないです……」

唯「あずびゃん…ヒック…」

梓「また……いつもみたいに……一緒に楽しく演奏しましょうよ……一緒に楽しくお茶しましょうよ!」

澪「梓……」

紬「みんな、梓ちゃんの言うとおりよ。ほら、たまってたことも出せたし、またいつものように演奏しよう!」

唯「……うん!」


唯「じゃあ、ふわふわ時間!いっくよー」

ジャラジャラジャン
ジャラジャラジャンジャラジャラ

律『あれ……なんだろ……』

澪『さっきまで不満とか怒りとかで一杯だったのに……』

律澪『今は……楽しい!』

律『……ごめんな澪……別に本心で思ったワケじゃないよ。ただ……先輩としてしっかりやっている澪が羨ましかったんだ』

澪『ううん。私も律がそんなふうに考えてたなんて……気づかなくてごめんな』

律『私こそ本当にごめん。また一緒に武道館目指そう!』

澪『……うん!』


梓『先輩たち……仲直りしたみたいですね……』

紬『えぇ、よかったわ……』

唯『ガリガリ君食べたいなー』


ジャジャッジャジャッジャーン!


律「……みんな、迷惑かけてごめんな」

梓「大丈夫です!また明日からがんばりましょう!」

唯「ふぅ、演奏したら喉乾いちゃった!ムギちゃんミルクティー!お砂糖たっぷりね!」

紬「はいはい、ちょっと待っててね」

澪(ふふ……さっきまでケンカしてたとは思えないな……)

澪(もう大丈夫だよね。だって私たちは友情だけでなく、音楽でも繋がってるんだから!)


紬「澪ちゃーん!ミルクティー入ったわよ!」

澪「あぁ、今行くー!」

こうして、桜高軽音部は
元通りの関係になった。
ケンカしても大丈夫!
きっとまた、音楽があれば仲直りできると信じて……





律「そういえば澪……」モグモグ

澪「なんだ律?」

律「いつまで全裸なんだ?」

澪「へっ?」

唯「あ、ホントだ」モグモグ

澪「………」

紬「あらあらまぁまぁ」

澪「……いっ……いっ……」



『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』




おしまい




最終更新:2010年01月28日 02:16