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私を見るあずにゃん

店員「……バレてます?」

唯「そうですね」

瞬間、店員さんが破顔しました

店員「すみません。お嬢様が是非と」

唯「やっぱり……」

通りで話がうますぎると思いました

梓「お嬢様……?」

失礼しますね、と言って店員さんは側の電話に向かい、何かを話していました

しばらくして、受話器を片手に

店員「お嬢様からです」

受話器を受け取って

紬『あ、唯ちゃん?』

唯「むぎちゃん。こんにちわー」

あずにゃんに口元だけで「むぎちゃんから」と伝えます

紬『ごめんなさいね。驚いた?』

唯「驚いたよー。これ、むぎちゃんが?」

紬『うん。唯ちゃん達がお部屋探ししてたから、私もちょっと色々動いてみたの』

唯「それは助かるけど。でもいいの?二万円とか……」

紬『ああ、それはいいわよ。管理人は私だもの』

唯「へ?」

紬『父に相談したの。友達が部屋を探してるから、何か安いとこないかって』

唯「うん」

紬『そうしたら、女性向けのマンション始めるから、そこを管理してみなさいって言われて』

唯「スケール大きいね……」

紬『勉強になるからってね。家賃とかも父の了解済みだから心配しないで』

唯「そっか。ありがとうね」

紬『ううん。――それに、父もありがとうと言ってたわ』

唯「へ?何かしたっけ」

紬『軽音部に誘ってくれて。それで、大学まで同じにしてくれて。友達になってくれてありがとうって』

唯「な、なんか照れるね!改まって言われると」

紬『本当に嬉しかったのよ。同じ大学に行こうってみんなが言ってくれて。だから、これは恩返しかな』

唯「恩返しなんて、そんな。私達は、みんな一緒に居たいもん」

紬『気に入ってくれた?お部屋』

唯「うん。最高だったよ」

紬『そ、それじゃ……!』

唯「うん。ここに決める。あずにゃんも」

ちらっとあずにゃんに目を向けます

あずにゃんは口元だけで「おっけーです」と言っていました

唯「あずにゃんも、ここがいいって」

紬『良かった。恋人同士のお部屋探しだから、少し遠慮してたの。自分達で色々決めたいだろうし……』

唯「二人で色々探し回ったんだけど、なかなか見つからなくて。だから、助かったよ」

紬『本当に良かった……』

唯「憂と和ちゃんもここにするんでしょ?」

紬『うん。二人はもう昨日、ここに決めたって』

唯「むぎちゃんも一緒だよね?」

紬『うん。その……同棲するって言うために、今さわちゃんと私の実家に居るの』

唯「え!?あ、ごめん、邪魔しちゃった!?」

紬『ううん。大丈夫よ。今はもう私もさわちゃんも私の部屋に上がっちゃったし』

唯「ど、どうだった?オッケーしてくれた……?」

紬『元々知ってたらしいの。だから、順調だったわ。……さわちゃんは、なんか緊張し過ぎたらしくて』


紬『私のベッドで寝てる』

ほっとしました

どうやら、むぎちゃんも両親の了解が取れたようです

唯「良かったね。おめでとう、むぎちゃん!」

紬『ありがとう、唯ちゃん。――で、お部屋はどうする?明日にでも入れるけど』

唯「んー。家具も選ばなきゃいけないし、三日後くらいじゃないかな」

紬『わかったわ。じゃあ一応、お部屋だけは見ておいてね。頼んでおくから』

唯「うん。わかった」

紬『澪ちゃん達も今そっちに向かってるみたいだから』

唯「あ、そうなの?」

やっぱり澪ちゃん達も良い部屋見つからなかったんだ

唯「じゃあ、澪ちゃん達もここに決めると思うから。だから、四人でお部屋見に行くよ」

紬『……いいなぁ。私も行きたい』

唯「待ってようか?」

紬『……さわちゃんが寝てるから、やっぱり遠慮するわ』

柔らかく微笑むむぎちゃんの顔が目に浮かびました

紬『じゃあ、細かいことは店員さんに聞いてね。――あ、それとね』

唯「ん?」

紬『唯ちゃん達を対応したそのお姉さん。桜高のOGよ。――そこで結婚式も挙げてる』

唯「え、それじゃ」

紬『あれからずっと幸せだって。本当みたいね、伝説』

唯「えへへ」

じゃあまたね、と言って電話は切れました

受話器を店員さんに返して、あずにゃんの隣に戻ります

梓「むぎ先輩のおかげですか?」

唯「うん。手配してくれたみたい」

梓「ありがたいですね」

唯「むぎちゃんも、ありがとうって言ってたよ」

梓「え?」

あずにゃんも同じ大学ってこと、むぎちゃんも嬉しいんだよ

店員「で、どうされますか?」

笑顔で聞いてくる先輩

あずにゃんを見て、あずにゃんが頷いて

唯「はい。ここにします!」

書類を受け取って席を立つと同時に、自動ドアが開きました

澪「あれ?」

律「唯と梓じゃん」

入ってきたのは澪ちゃんとりっちゃん

澪ちゃんの手には、私達がもらったのと同じ柄の手紙

梓「こんにちわ」

唯「ラブラブだねー、二人とも」

ぱっと、繋いでいた手を離す二人

もう、遠慮しなくていいのに

澪「それよりも、どうしてここに?」

唯「ここでお部屋決めたんだよ」

梓「はい。良いお部屋が見つかりまして」

律「え、もしかして私達、間に合わなかった?」

残念そうに言うりっちゃん

大丈夫だよ。もう二人は予約済みだし

唯「店員さん。私達、二人と一緒にお部屋を見に行きますから待っててもいいですか?」

店員「はい。ではそこのテーブル席でお待ちください。今お茶を煎れますね」

澪「え?どういうこと?」

律「え?」

唯「たぶんここで決まるよ。待ってるからね」

梓「最高のお部屋ですよ」

私達と入れ替わりにカウンター席に座る二人

テーブル席に腰掛けた私達は、そんな二人の背中を眺めながらお茶を飲みます

唯「ねえ、あずにゃん」

梓「はい?」

唯「お部屋の下見終わったらさ。そのまま家具を買いに行かない?」

梓「いいですけど……でも唯先輩疲れてるんじゃないですか?」

歩き回ってたし、と私の顔を覗き込むあずにゃん

唯「大丈夫だよ。お部屋は明日にでも入れるっていうから。早くあずにゃんと暮らしたい」

梓「そ、そういうことなら。そうですね。家具、買いに行きましょうか」

唯「えへへ。お金、一年バイトして結構貯まったんだよ?」

梓「あ、そのことなんですけど。私の親もお金出すって言ってますし、私も今までのお年玉貯金がありますから」

唯「いいよいいよ。この日のために頑張って貯めたんだからさ」

でも、と不満気なあずにゃん

勿体ないよ。あずにゃんのお年玉貯金なんて

家具代まで、お義父さんにまで頼るわけにもいかないし

唯「あずにゃんは、お部屋に合いそうな家具を選んでよ。私、そういうセンス無いしさ」

梓「……まあ、そこら辺はお店に行ってから考えましょうか」

微笑むあずにゃんに、どこかくすぐったくなります

お部屋も決まって、家具を買いに行って

新しい生活がどんどん形になっていきます

目の前で、柔らかく微笑む女の子と

大好きな女の子と共に歩く、最初の一歩

唯「幸せにするからね、あずにゃん」

梓「私だって、唯先輩を幸せにしてみせます」

えへへ、と二人で笑います

あ、そうだ、と

あずにゃんが呟いて、私にこっそり耳打ちしました

唯「どうしたの?」

梓「家具買いに行ったら、写真立て買いましょうよ」

少しだけ考えて、その意味もわかって

唯「そうだね。えへへ」

梓「はい」

唯「どっちも大事な思い出だから」

だから、写真立てを二つ、あずにゃんと選ぼう


終わり






最終更新:2012年02月27日 22:20