さわ子「私達『放課後ティータイム』の…武道館公演が決定したのよ!」
和「えっ!?」
憂「和さん!!!やりましたね!!!」
夢にまで見た武道館に、たどりついていた。
―武道館
律「すげぇ…。私達、ここで演奏するんだ…」
澪「流石に広いな…。人はどれくらい入るんだろう」
紬「武道館には、最大で1万人以上入れるらしいわよ」
憂「1万人!?そんな大人数の前で、私達演奏するんですね…」
律「流石に緊張するなぁ…。和はボーカルだから特に緊張しそうだな」
和「……大丈夫よ。ここまで来たんだから…大丈夫…」
律「……の~どか!」ぎゅっ
和「きゃっ!?な、なにするのよ急に!」
律「安心しろよ。お前一人でステージに立つんじゃない。みんなで立つんだろ?」
和「…ありがとう律。わかってるわ…」
…そう、わかっている。分かっているんだけど…怖くて怖くてたまらない…。
もし失敗したら?ここでのチャンスは一度きりなんだ。失敗なんかできない。
失敗したら、私は唯の夢を潰すことになるんだ。絶対に成功させなきゃ…。
…でも、不安な気持ちが頭から離れてくれない。
―武道館 ライヴ前日
スタッフA「今日の練習はこれで終わりです。お疲れ様でした」
スタッフB「皆さん!明日のライヴ頑張ってください!」
律「はい!皆さんお疲れ様です!…さて、私達はこれからどうする?」
さわ子「この後の予定はないわよ?あなた達の好きにしなさい」
澪「明日の為にホテルに帰って休んだ方がいいんじゃないか?」
紬「私もその方がいいと思います」
律「そうすっか。それじゃみんな、帰ろうぜー」
和「…ごめんなさい。私、行きたいところがあるの」
律「そうなのか?ならみんなで行くか」
和「ごめんなさい。…憂ちゃんと二人きりで行きたいの」
憂「え…?」
澪「そうなのか。明日は本番だぞ?二人ともあまり遅くまで出歩くなよ」
和「わかってるわ、ごめんなさい。それじゃ憂ちゃん、行きましょう」
憂「は、はい!」
―平沢家
チーン…
和「………」
…唯。私ね、とうとうやったよ。
唯が夢にまで見た武道館に…私達はたどりついたんだ。
明日のライヴ…絶対に成功させるから…。
唯も見守っていてね。
でも…、本当はね。怖くてたまらないのよ…。
もし私が、明日のライヴを失敗しても…唯は私の友達でいてくれる?
憂「和さん。ありがとうございます」
和「ありがとうって…。私は無理やり来たんだもの。お礼を言うのはこっちの方だわ」
憂「いえ…。お姉ちゃんはきっと喜んでくれています」
和「そうよね…。後は唯の為にライヴを成功させるだけね」
憂「はい!明日、頑張りましょう!」
和「ええ、頑張りましょう」
―武道館 ライブ当日
律「とうとうこの日が来たか…」
澪「ああ…ここまで来たら後はやるだけだな」
紬「緊張するわね…」
憂「和さん…。大丈夫ですか?」
和「ええ…。大丈夫よ」
律「和。今日の出だし頼んだぞ」
和「……ええ、任せて」
律「よし!それじゃあみんな!!!いっちょかましてくるか!!!」
…大丈夫。きっと成功する。
ワーワー!!!
キャー!!!
澪ちゃーん!!!りっちゃーん!!!ムギちゃーん!!!憂ちゃーん!!!和ちゃーん!!!
律「す…すげぇ…!なんつう人の数だ…」
澪「よくよく考えると…私達ってすごいところに立ってるんだな…」
紬「…今まで実感がなかったわね」
憂「…和さん…そろそろ…」
和「………」
律「和…?」
和「………」
澪「和…!早くしゃべって…!」
和「…あ……あ…」
紬「和ちゃん…!」
憂「和さん…」
ざわざわ…
…あれ?まだはじまんねーの?
…これってなんかの演出?
…おい、はやくはじめろよ…
澪「まずい…観客がざわめき始めてる…!律…!お前がバンド紹介を…」
律「………」
澪「律…!お前リーダーだろ…!?」
律「……私達をここまで導いてくれたのは和だ」
澪「………」
律「あいつがあの日、武道館に行こうって言わなきゃ、私達は今ここに立ってねぇよ…」
律「…だから和がこのバンドの、本当のリーダーだよ。あいつなら大丈夫だって信じてる…」
澪「………」
律「…頑張れ和…。ここまで来たんだ。後は声を出すだけだぞ…」
なんてことだ…。話すタイミングを見失ってしまった。
…どうしよう。何を話せばいいんだっけ?頭の中が真っ白だ。
ざわざわ…
…どうしたの?なんで始まらないの?
…ふざけんなよ!なにもしないんなら金返せ!
周りの声が聞こえる。みんな怒ってるんだ。
当たり前だよね…。私がなにも喋らないんだから。それでもなにか…
ざわざわ…
…いい加減にしろ!ひっこめ!
…馬鹿らしい。帰ろうかな
…もう駄目だ…。今更しゃべったって遅い。
みんなごめん。私のせいで、今日のライヴ失敗しちゃったよ。
唯もごめん…。結局夢を叶えられなかった…。
本当に…ごめん…。
唯「和ちゃん」
和「唯…?」
唯「そうだよ。和ちゃん」
和「唯…。私ね…、頑張ったよ…頑張ってここまで来たんだよ…?」ぽろぽろ
唯「しってるよ…。ずっと見てたもん」
和「ごめんね唯…。私…、唯の夢…叶えられそうにないよ…」ぽろぽろ
唯「………」
和「ごめんなさい…ごめんなさい…!」ぽろぽろ
唯「…前を見てよ和ちゃん。みんな、待ってるよ」
和「え…?」
唯「和ちゃんが喋るのをみんなが待ってるんだよ…」
和「………」
唯「和ちゃんは今、みんなに夢を見せるためにここにいるんだよ」
唯「だからみんなにも見せてあげようよ。私達の夢を」
和「唯…」
そうだ…。私は何の為にここまで来た?
唯「がんばって。和ちゃん…」
唯の夢を叶える為だ。その為にみんなでここに来た。
唯「……」
そして、その夢をここに来てくれた人達に…今度は見せてあげなくちゃならない。
唯「……」
そうやって、夢や意思は受け継がれていくから。
唯「……」
しっかりしろ
真鍋和…。まだ、大事な仕事が残っているだろ。
和「ほら…しっかりしなさい」
…私はもう迷わない。
唯「……」にこ
和「…みなさん!お騒がせしてすみません!放課後ティータイムです!」
澪「和…!」
紬「和ちゃん…!」
憂「和さん…!」
律「…やっぱり、私の言ったとおりだったな」
和「…ライヴの前に、皆さんにお話ししたいことがあります!」
和「…私の友達に、ずっと武道館を目指していた人がいました。
その人はとても演奏が上手で、私は彼女ならきっと…と思っていました」
和「でも…その友達は、…事故で亡くなってしまいました」
憂「………」
和「私は、彼女を失ってからずっと何もしない日々を過ごしてきました。
そして高校に入ってから、私はHTTのメンバーと運命的な出会いを果たしました」
澪「………」
和「リーダーの律は、廃部の危機の為、ギターも何も弾けなかった私を勧誘し、
私は、軽音部に入部することになりました。」
和「その時、律がいったんです。武道館を目指しているって。
私はその時に、亡くなった友達のことを思い出しました。彼女の夢も同じだったからです」
律「………」
和「それから私達は、武道館に行く為にひたすら努力してきました。
ライヴハウスで演奏してみたり、休みの日にみんなで練習したり…」
紬「………」
和「そして…その努力が実ったんです。私達はここに立つことができました。それはなぜか…
いっぱい努力をしたから?…それもあります。でも一番の理由は…」
和「私達が夢を諦めなかったからです」
和「だから皆さんも自分の夢を信じてください」
和「だって…叶わない夢はないんですから!」
ワーワー!
和「話が長くなってしまいすみません…」
和「それじゃあ早速聞いてください!」
和「ふわふわ時間!」
おしまい
―番外編
和「ふわふわ時間!」
~~~♪
すごい…。やっぱりHTTは歌もうまいし演奏も上手だ。
私もいつか武道館に…。
?「すごいね純ちゃん…」
純「うん…!すごい…」
?「私達もいつかここに立とうね…」
純「うん!絶対に立とう。私、明日からもっとベース頑張る…」
?「私も…ギター頑張る」
―中学校 軽音部
がちゃっ
?「お邪魔します」
純「いいよそんなかしこまんなくたって。どうせ私達二人だけだし」
?「…悲しいこと言わないでよ」
純「でも本当のことでしょー?」
?「たしかに…このままじゃ武道館行くどころか一回もバンド組めないで終っちゃいそうだね」
純「もう中学のうちでは無理じゃない?」
?「そうだね…。純ちゃんはどこの高校に行くの?」
純「○○高校だよ」
?「え~!?私と一緒に桜高行こうよ!」
純「それこそ、え~!?だよ!家からだと結構遠いよ?」
?「それは…頑張って通うもん」
純「そもそもなんで桜高?どうせHTTの出身校だからでしょ?」
?「そうだよ。悪い?」
純「影響されすぎ…」
―1年後
純「…まさか本当に桜高に入学することになるとはね…」
?「純ちゃんもなんだかんだで桜高に来たんだね」
純「はぁ!?それはあんたが行こう行こうってしつこいから…」
?「はいはい…純ちゃん、ありがとね」
純「…はぁ。あんたがここまで連れてきたんだから。必ず武道館に行くよ?」
?「うん!まずは軽音部に行こう!」
「柔道部に入りませんか~?」
「オカルト研究部!一緒に不思議を探しましょう!」
?「すいません通してください!私は軽音部に行きたいんです!」
「軽音部?あの廃部寸前の?」
純「え…?それ本当ですか!?」
「ああ…部員が足りないんだとか…」
?「まさか…私はここでも音楽を満足にできないの?」
純「…せっかく桜高まで来たのにね。とりあえず行ってみようか」
―音楽室前
?「…中からまったく声がしない。やっぱり部員が…」
純「今からでも遅くないよ。別の部にしない?入部したら最後だよ」
?「…いや、私は軽音部に入部するんだ。そして…武道館にいく!」
がちゃっ!
?「武道館だって!?」
純「ひっ!?き…急に中から人が…」
?「おどろかしちゃってごめんねぇ」
?「キミも武道館目指してるの?」
?「キミもってことは…先輩方もですか!?」
?「そうだよ♪目指すは武道館!なんだ♪」
?「やっぱり…思ってた通りだよ純ちゃん!私を入部させてください!」
純「ちょっと!?」
?「入部…ほんとに…?」
?「はい!私も一緒に武道館目指したいです!」
?「…やった。やったー!大歓迎だよ!一緒に頑張ろうね♪ええっと…」
?「あ…申し遅れました!私、
中野梓って言います!」
梓「これからもよろしくお願いします!先輩方!」
?「梓…あずにゃん…。そうだ!今日から君はあずにゃんね!あずにゃ~ん!」だきっ
梓「わっ!?ち、ちょっと…!急に抱きつかないでください!ええ~っと…」
?「あ…私の名前もまだだったね。私の名前は…」
和達の与えた夢は、確かに生き続けている。
夢は途絶えることはないだろう。これからもずっと…。
本当におしまい
最終更新:2010年01月28日 03:26