菫「私たち斉藤家の一族は、ある日突然『超能力』に目覚めました」
菫「同時に、私達が神としてあがめるべき存在…お嬢様のことを知りました」
菫「なぜか、と聞かれたら、わかってしまうのだから仕方ない、としかいいようがありません」
菫「その日から、私達は琴吹家に仕え、グループの発展に尽力してきたんです」
菫「幼かった私は、お嬢様と姉妹のように育ちましたが、なんとなくお嬢様が特別な存在であることは感じていました」
菫「そして、お嬢様の持つ能力…神にも等しい能力のことを教わりました」
菫「お嬢様には、思ったことを無意識に実現してしまう能力があるんです」
憂「紬さんが神としてあがめられてるって話は聞いてたけど…そんな能力があったなんて」
純「何でも叶えるって…ウソでしょ? 今までそんなことあったの?」
梓「うーん、あったのかなあ…そんなマジックみたいなこと先輩がしたのは見たことないや」
菫「お嬢様は能力のことを知らされてないんです…だから発現してても気づかないと思います」
憂「梓ちゃん、今まで紬さんが何かを言ってその通りになったことってある?」
梓「えーっと…なんだろう」
菫「お嬢様が高校に入ってからは、そんなに能力は発動してないと思います」
純「なんで? あ、楽しかったから満足してたのか」
菫「はい。…お嬢様は高校に入ってから変わられました」
菫「お嬢様は、中学時代まではごく普通のおしとやかなお嬢様だったんです、外向きは」
菫「でも本当は今のおねえちゃ…今のお嬢様と同じでいろんなことに好奇心を持ってて…」
菫「ご両親に禁止されていた漫画を私に極秘に買ってこさせて読んだりしていました」
菫「それでも、お嬢様として過ごすことにストレスを感じていたみたいで…よく『閉鎖空間』が発生していました」
純「閉鎖空間?」
菫「それは見てもらったほうが早いと思います。ちょっと来てもらえますか?」
憂「うん」
梓「菫の…『超能力』と関係あるの?」
菫「はい。みなさん、私につかまってください…直ちゃんも、ほら」
直「…いい」カタカタ
菫「?」
菫「目をつぶってください…行きますよ」スーッ
・・・・・・
梓「……!? 何、ここ。部室だけど…」
憂「なんか、暗くなってる…」
純「うわ、外もなんか暗いや! …スミーレがやったの?」
菫「いえ、私はみなさんをここにお連れしただけです。ここが『閉鎖空間』です」
憂「でも…じゃあほんとにスミーレちゃんは『超能力者』なんだ」
梓「ほんとうにこんなことあるんだ…驚いた」
菫「いえ、お嬢様に比べれば全然私なんて…それより、見てください。この世界には、今は誰もいません」
純「確かに、人気がなくて不気味…」
菫「この世界は、定期的に発生します。そして、お嬢様のストレスがたまっていると…『神人』という巨人が現れて、暴れるんです」
菫「『神人』はお嬢様の分身のようなもので、ここで暴れることでストレスを発散させていたんだと思います」
菫「でも、そのまま放置しておくとこの世界がどんどん広がっていって…最終的には私達の世界と入れ替わってしまう」
菫「それを防ぐために、私達はここで『神人』と戦い続けてきました」
梓「菫にそんな過去が…」
純「じゃあ、スミーレは世界を守るために戦ってきたってこと?へー、かっこいい!」
憂「がんばったね、スミーレちゃん」
菫「そんな…使命ですから」
過去
斉藤執事「菫、閉鎖空間が発生したぞ!」
菫「は、はいっ!」
神人『グォォォォ!!』
斉藤「くっ、手ごわいな…お嬢様はこんなにもストレスを感じておられるのか。まだまだ我々の努力が足りぬようだ…はあっ!」ゴォォ
菫(違う…お姉ちゃんは自由になりたいだけ。私達のお世話が足りないからじゃない、お姉ちゃんはそんなわがままな人じゃない)ゴォォ
……
梓「そんな激しい戦いが…」
菫「でも、おね…お嬢様が高校に入ってから、神人の発生する頻度は減っていきました」
憂「…軽音部に入ったから、かな?」
菫「はい。思えば、お嬢様がご両親の反対を押し切ってまで桜高に入れたのは、無意識のうちに能力を使ったからなのかもしれません」
梓「…ふふ。ムギ先輩、楽しそうだったもんね」
純「うんうん、それは見ててもわかったよ。最期の文化祭とか、しゃべるときすんごいテンション高かったよね」
憂「…でも、じゃあ何で今閉鎖空間がまた発生してるのかな?」
菫「それは…あ、一旦戻りましょうか。つかまってください」
部室
直「…」カタカタ
純「ふー、戻ってきたー。やっぱ明るいほうがいいね!」
菫「えーと、話の続きですが…まず、『鍵』について説明します」
憂「鍵?」
菫「おね…お嬢様が」
憂「うふふ、もういいよ、菫ちゃん」
菫「う…はい。お姉ちゃんが高校に入ってから急に安定になり始めた原因を私達は探したんですが、当然ながら軽音部のおかげだろうという結論になりました」
菫「特に、その軽音部のメンバー…憂先輩のお姉さんの唯先輩、律先輩、澪先輩、そして梓先輩のことを、私達は『鍵』と呼ぶことにしたんです」
梓「鍵だなんて、おおげさな…あはは」
菫「でも、お姉ちゃんにとってはとても重要な人たちなんです」
菫「そして、今…」
純「わかった! …梓だけが足りないってことでしょ?」
菫「…はい、そうなんです!」
憂「そっか…今、お姉ちゃんたちの大学では放課後ティータイムは四人だもんね」
菫「はい。それが少しずつですがストレスになってるみたいで、閉鎖空間が発生してるみたいなんです」
菫「神人が出るほどには今のところ至ってませんが…もしかしたらこれから頻度が増えるかもしれません」
梓「ムギ先輩が…私がいないから…?」
純「よっ、梓、必要とされてんじゃん!」
梓「ちょっ、いや、私なんか…」
憂「放課後ティータイムはやっぱり五人じゃないとね♪」
菫「はい。お姉ちゃんもそれを望んでいます。それが閉鎖空間として現れているんだと思います」
梓「…もう。プレッシャーかけないでよ…これじゃ何がなんでもN女に入るしかないじゃん」
純「にやけてるぞ~、梓?」
梓「う、うるさい!」
憂「がんばってね、梓ちゃん」
梓「ああ、もう! がんばります…ふふ」
純「よっし! そうと決まれば勉強だー!」
憂「おー♪」
梓「…おー!」
菫「…がんばって下さい!!」
菫(お姉ちゃん…梓先輩なら、きっとやってくれると思います。安心して待っててね…)
直「…」カタカタ
直(『機関』による
中野梓に対する激励を確認。中野梓がN女子大学に進学し『鍵』が揃う確率が12.3%上昇。
琴吹紬による大規模な情報フレアが観測される可能性は大きく減少した。これにより急進派の活動の活発化を予想。
対策を打つべき)カタカタ
直(…紅茶に砂糖二つ)カタカタ
菫「あ、はーい」
おわり!!
最終更新:2012年03月10日 22:58