不安げな声が律の意識を呼び戻した。
律「あ…ごめん。」
欲情していたのは自覚している。
もしかしたら怯えさせてしまっただろうか。
律は澪を不安にさせないために彼女の手を握って、恋人同士がするように深く指を絡める。
澪は一度驚いたように腕を震わせたが、すぐに安心した様子で目を細めた。
律「かわいい…。」
するりと律の唇の隙間から流れた言葉に、澪は頬を染めた。
もう一度二人はキスを交わし、何度も何度も深く舌を絡め合う。
舌が疲れてくる頃には二人の身体はすっかり熱くなっていた。
律「指、入れるから痛かったら言って…。」
いつもの元気な様子ではなく、優しくて弱気な声色。
澪は返事をする代わりに律の背中に手を回し、その華奢な体を抱きしめた。
それを合図に律の手が澪の体を撫でた。
胸の辺りから始まり、下腹部を通って太ももから内側に指が伝う。
澪「ん…っ。」
律の指先が澪の中心に到達すると、耳元で澪の吐息が漏れた。
律は入り口に指を当ててほんの少しだけ割り込ませて独り言の様に呟いた。
律「澪の中、あったかいな…。」
予想以上に濡れた粘膜の感触を楽しむようにくりくりと指先で撫でていると澪の身体がピクンと震えた。
澪「り…つ、だめ…。」
澪がかすれた声をあげた。
律「あ、ごめん…。痛かったか?」
指を引き抜いて澪の顔を覗き込む。
彼女の赤い頬は恥ずかしがるというよりは、火照っているようにも見えた。
澪「…早く…して…。」
澪を気遣う優しさがかえって彼女の身体に熱を持たせていた。
見た事のない幼馴染の艶かしさに急激に鼓動が高鳴る。
乾いた口の中を唾液が広がり、こくりとそれを飲み下すと律の思考は全て本能に委ねられた。
さらに濡れた中心にもう一度手を触れ、ゆっくりと差し込む。
澪「はっ…ぅ…んんっ…。」
耐えるような息遣いと強張った体。
空いた手の指を澪の指に絡める。
律「…痛い?」
返事が出来ないのか澪は律の手を強く握り返すだけだった。
律は澪に口付け、舌を入れて口内を優しくてなぞる。
痛みのせいでキスに無反応だった澪が次第に舌の動きを返してくる。
澪「ふ…ん…ぁっく…。」
澪の中が緩んで来たのを確認すると律は指を奥に入れていった。
溢れ出た愛液が手のひらを伝う。
澪「あっ、ん、はっ…ぁ…っ。」
短く声を上げる澪の様子を確かめながら何度か指を往復させ、手を止めた。
律「痛くない…?」
そっと聞くとすぐには返事はなく、澪は息を整えて小さな声でつぶやいた。
澪「さっきよりは…。変な感じ…するけど、大丈夫…。」
お腹の奥の異物感が不快にも感じたが、それが律の指だと思うとだんだんと違う感覚に変わっていった。
律が自分の身体を見て興奮している。
触られているのは自分なのに、律の息は荒く、つないだ手には力が入っている。
澪は律の手を握ったまま、自分の胸に移動させた。
律「澪…?」
澪「触って…。」
律は澪に促されるままに胸を撫でた。
先ほどのように優しく表面だけを触るようなものではなく、欲情をぶつけるように強く揉みしだいた。
それだけでは足りずに硬く膨らんだ先を咥え込み、舌でくにくにと弄ぶ。
澪「はぁんっ…!」
高い嬌声が響き、澪の身体がびくりと大きくはねた。
澪が感じていると分かった途端、律の行為がさらに激しくなった。
両方の胸を指先と舌で転がし、もう片方の手は澪の奥深くをかき混ぜている。
澪「あんっ、あっ、あっ、ゃ…っ、んんっ…!」
痛い。
優しかった律の指が荒々しく肉壁をこする。
唇が全身を這う。
澪「り、つ…っ、ぅ…あっ!」
背筋にぞくぞくとした感覚が走り、自分の中心から聞こえる水音にさらに興奮を覚えた。
初めての行為に対する戸惑いが体をこわばらせていたが、律が目の前にいる事で緊張はほぐれていく。
快感が増してきた頃、乱暴な指使いはいつの間にか落ち着いていて、律が澪の顔をじっと見つめていた。
律「澪…、かわいい…。」
感じて、よがっている姿を見られていると改めて自覚すると恥ずかしくて死んでしまいそうだった。
澪「や…だ…。」
潤んだ瞳で律を見上げる。
律「やばい…。」
律はたまらなくなって、澪の一番深いところまで指を突き入れた。
澪「あぁぁああっ!やぁ…っ!だ、め…ふぁぁあっ!!」
脚の間に体を割り込ませ、自分の腿で澪の脚を下から支える。
すると澪の大事な部分が律から丸見えになった。
濡れた局部。
指の出し入れが全て見えている。
澪「や…だっ…!りつ…、見な…あぁんっ!!」
律「澪の身体、ほんとエロいな…。」
粘膜から溢れる愛液は手首まで流れてきている。
律「いっぱい出てる…。気持ちいいの?」
空気と粘液が混ざる音が漏れる。
澪「や…っ、ぁ…!恥ず…か…ぅんんっ!」
律「みーお。答えて。気持ちいい?」
わざと指の出し入れを素早くし、澪の身体を弄ぶ。
澪「あっ、あっ、あっ、はぁっ…ぅあっ、あぁっ…りつぅ…!」
澪の手が律の肩を弱々しく掴んだ。
律「澪?」
澪「も…無理…。」
刺激を与えすぎたせいで澪の身体が疲れ切っている事に気が付いた。
律「大丈夫…?」
指を引き抜き、ベッドにぐったりと体を預けている澪を覗き込む。
澪「ばか…。」
律「ごめん…。」
力のない声に、力のない声を返す。
無理をさせた事もそうだが、何より根本的にこの行為自体に問題があるという事を思い出した。
律「…痛い…?」
怒鳴られるんじゃないかと、恐る恐る聞いてみる。
澪「何回目だよ…。」
怒鳴るような体力もない澪は小さくつぶやき、同じセリフにため息をついた。
律は何度も体を気遣ってくれた。
優しく触ってくれた。
最後に理性を飛ばしていたけど、あれは澪の反応を見ての事。
最初から最後まで律の頭は澪でいっぱいだった。
律「澪…?」
律の姿は飼い主のご機嫌を窺う子犬みたいだった。
澪「…痛い。」
律を困らせてみたくなった。
でも痛いのは嘘じゃなくて、お腹の奥の異物感はまだ鈍い痛みと共に残っているし、まぶたを閉じれば眠ってしまいそうなくらい疲労している。
律「い、痛かったのか…?ごめん…。なんか最後の方、わけわかんなくて…。出血してないか?」
言いながら律は自分の手を見た。
さっきまで自分の中にあった細く小さな指。
澪「い、今すぐ洗ってきて…!!」
律「え、あー…、あぁ…うん。」
突然顔を真っ赤にして怒鳴り出す澪に驚き、一瞬気圧される。
近くに落ちている服を拾う前に律はテーブルの上のティッシュペーパーを何枚か手に取った。
その様子をなんの気なしに黙って見ていた澪だったが、その直後に悲鳴を上げた。
澪「律っ、どこ触ってるんだよ!」
律「え、だって拭かないとベタベタで気持ち悪くない?」
律は澪の股の間に手を差し込み、その後の処理をしていた。
澪「や、やだよ…!そんなとこ…っ。」
律「いやいや。さっき散々触ったでしょーに。」
律は澪が嫌がるのを無視して濡れた部分を拭いていった。
終わってから澪の顔を見てみると、すっかり拗ねてしまっていた。
澪「律もさっさと手を洗って来い…。」
律「はいはい。」
散らばった服を取り、それを着ると律は飄々とした態度で部屋を出て行った。
澪は律の足音が遠ざかって行くのを確認してから大きなため息をついた。
澪「こういうの、好きな人としかやっちゃダメなんだよな…。」
自分のお腹に手を当てて、まだ残る痛みと違和感を意識する。
澪「律は女の子だよ…。」
勢いだった。
夢の内容にちょっと興味があって、それを聞きたかっただけなのに。
律が真面目な顔なんてするから、その場の流れでこういう結果になってしまった。
澪「違う…。」
止めてと言えば律はいつもの人懐っこい笑顔を見せて、冗談だよ、と言っただろう。
律になら何をされてもいいと思った。
ずっと律が大好きだった。
恋とか友情とかそんな境界はなくて、ただ大好きだった。
律に押し倒された時には、その行為がおかしいなんて思わなかった。
律が相手なんだから。
今は律の事を考えるだけでドキドキする。
彼女をとても可愛いと思う。
恋が始まって初めてこれがおかしい事だと気付いた。
さっきまであんなに近くにいた律がこれからは遠くなってしまうと思うと、真っ黒い渦に飲み込まれるような気持ちになる。
澪「りつぅ…。」
外気に冷える身体は、律のぬくもりを失ったみたいだった。
―――
律「あー…私、殺されるかもしんね…。」
洗面所で手を洗いながら部屋に戻ったあとの澪の反応を想像して恐怖に身震いする。
律「しかし可愛かったなー。」
あの時は夢中だったけれど、澪の表情や声を思い出すと口元がにやけてしまう。
律「とりあえずは平謝りかな…。いやむしろ謝らないって手も…。強引な感じで、嫁に来いって態度の方がいいかな…。」
ぶつぶつと作戦を呟きながら階段を上る。
部屋の前に立つと足を止め、大きく息を吸った。
律「澪ー。」
緊張は隠して、声をかけると同時に扉を開く。
律「あのさ…、って、澪?」
服も着ないまま座って顔を伏せている澪に近寄る。
ベッドの横に座り、圧迫感を与えないように下から視線を送る。
澪「…っ。」
鼻をすする音が聞こえてきた。
律「泣いてるのか…?」
澪は返事をしない。
律「…あの…、あ、服、着ろよ。」
言うつもりだった大事なことは言えずに律は澪から目を逸らした。
律「ほら。制服じゃ窮屈だろ。」
自分の部屋着を取り出し、澪を見ないまま、ぽんっとそちらに放り投げる。
服を受け取り、もぞもぞと袖を通す音が律の耳に届いた。
着替えの音が消える頃まで待ったのち、
律「…澪は嫌でも、私は澪をそばに置いておきたいんだよ…。」
視線を逸らす理由を着替えのせいにして、律は弱気に口を開いた。
澪「え…。」
聞き返す澪の声はかすれている。
律「あ、いや、そういう、物みたいな言い方は良くないんだけど、結局自分勝手だからさ…私は…。」
澪「なんで私が嫌がってることになってるんだ…?」
慌てる律をよそに、澪は赤い目を上げ、鼻の詰まった声で言った。
律「んん…?」
律は振り向くと怪訝な顔で首を傾げた。
律「だって泣いてたじゃん。」
澪「それは、律が私のこと好きでもないのにって思ったから…!」
口調が強くなる澪に対抗して、律は「はぁ?」と声を荒げた。
律「最初に好きだって言ったじゃん!」
澪「いやあれはそういう事するための方便かと…。」
律「お、おまっ、方便だと思ってたのにやったのか!?」
澪「なな、生々しい言い方をするな!…それは、」
かぶせ気味に言い合っていたテンポが急に落ちた。
澪「…律だからいいと思ったんだよ…。」
恥ずかしそうにしている澪を見て律の頬もわずかに染まった。
律「それは、その、恋ですか?」
澪「してる時はわかんなかったけど、終わってから好きになった…。」
期待していた律の首の力ががくっと抜けた。
律「いやもう素で驚くわ…。そういうのうるさそうなのに…。お付き合いは成人してからとか…。」
澪「なにか勘違いしてるだろ!律じゃなきゃあんな事…!!」
澪は真っ赤になった顔を布団に押し付け、頭を抱えた。
律はそれを照れながらも嬉しそうに見つめる。
律「じゃあさ。…私と付き合ってください。」
普段ではあまり聞けない真剣な声。
澪は顔を上げ、律の真面目な顔に視線を返した。
澪「…はい…。」
返事をすると涙が溢れてきて、もう一度布団に顔を伏せる前に律が澪を強く抱きしめる。
そのまま時間を忘れるくらいに抱き合って、今までは当たり前に感じていたお互いの匂いとぬくもりがどこまでも愛しいと思った。
おわれ
最終更新:2012年03月19日 07:52