こんにちは、
中野梓と申します、18歳です。
高校を卒業後、憧れの先輩の後を追って芸能界に入った私ですが、
鳴かず飛ばずというか…来るのは地下アイドルみたいな仕事ばかり…
はぁ…唯先輩…
亜美「ねぇねぇ社長ー、亜美達の給料あげてよ→」テクテク
真美「真美達の給料じゃ欲しいゲームが買えないんだよ→」テクテク
社長「はっはっはっ、そうだなぁ…、ん?あれは…」
亜美「なにかやってるね、行ってみよ、真美!」タタタ
真美「あっ、待ってよ亜美!」タタタ
梓「みんなー、今日は集まってくれてありがとうにゃーん!
梓、一生懸命歌ったにゃん!」
おまえら(4~5人)「梓ちゃーーん!!」
亜美「あー、もうおわっちゃったかー」
真美「でもあのお姉ちゃんかわいいね!にゃーんだって」
社長「ふむ…ティンときた!」
――――数日後
P「今日は珍しく皆が事務所に揃ってるから紹介するが、
これからうちの事務所で一緒に活動してくれる事になった、
中野梓さんだ」
梓「な、中野梓です、よろしくお願いします」
亜美「あー!この前のお姉ちゃんだ!!」
真美「ほんとにうちに来る事になったんだ…」
亜美「んっふっふっ~、社長必死に口説いてたもんね→」
春香「亜美真美、もう会った事あるの?」
真美「うん!この前秋葉でね…」
春香「へぇ~、それでうちの事務所に…
これからよろしくね、梓ちゃん!」
梓「よ、よろしく」
亜美「ねぇねぇお姉ちゃん、あれやってよ、この前やってたあれ!」
梓「?」
真美「あ!真美も見たい!にゃーんってやつ!」
梓「え、あ、あれは…」
亜美真美「お願いだよぉ→」
梓「う…にゃ、にゃぁん…」ネコノテ
亜美真美「おぉーーー」
千早(か、かわいい…)
亜美「でも梓お姉ちゃんだと
あずさお姉ちゃんとかぶっちゃって紛らわしいね」
P「それは確かに…」
あずさ「あらあら、なんだか面白いわね~」
真美「見た目は全然違うけどね!」
あずさ「あらあら」ドタプーン
梓「う……」ツルペターン
亜美「そうだ、亜美達がお姉ちゃんの呼び方を考えてあげよ→」
真美「真美も思った!うーん、やっぱり猫ちゃんのイメージで…」
亜美「名前が梓だから…」
亜美真美「あずにゃん!!」
梓「!!」
梓「…………」ポロポロ
春香「あ、あれ?」
亜美「そんなにいやだった…?ごめんね…」
真美「ごめんね、お姉ちゃん…」
梓「ぐすっ、…ううん…ちょっと頭を冷やしてきます」タタタ
亜美真美「お姉ちゃん…」
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―――――――
唯「あずにゃん、これおいし~よ~」
唯「あっずにゃ~ん!」ダキッ
―――――――
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梓「唯先輩……」グスグス
ガチャッ
千早「屋上にいたのね、中野さん」
梓「あなたは…如月千早さん…」ゴシゴシ
梓「ごっ、ごめんね、いきなり出ていったりして…私…」グシグシ
千早「……私からは何も聞かないわ、皆色々あるもの」
梓「如月さん…」
千早「千早でいいわ。それより中野さん、
ギターが上手なんですってね、今度私の歌と合わせて貰えないかしら」
梓「そんな、全然上手なんかじゃ…でもわかった、
明日ギター持ってくるね」
千早「お願いするわ」
―――
真美「あっ、いた…」
亜美「兄ちゃーん、こっちこっち!」
P「はあはあ…ここにいたのか、梓」
梓「すいません!初日からご迷惑をかけて…」
P「その様子じゃ大丈夫みたいだな、
まだ残ってるやつらもいるから事務所に戻って顔合わせの続きをやろう」
梓「は、はい!」
千早「私はこのまま現場に向かいます、中野さん、またね」
P(千早が何か言ってくれたのかな…
珍しいな、千早から積極的に他人に係わっていくとは
…なにか感じる物があったんだろうか)
P「ただいまー」ガチャ
春香「あっ、戻ってきた」
梓「ごめんなさい、急に飛び出したりして…」
春香「あはは、こちらこそごめんなさい、
亜美と真美はみんなにあだ名をつけてるの」
亜美「ごめんね、変なあだ名つけちゃって…」
梓「う、ううん、あだ名が嫌だった訳じゃないの、
ただ大好きな人がつけてくれた呼び方と同じだったから、
色々思い出しちゃって…むしろ変なあだ名なんていわないで欲しいな」
真美「じゃあ…あずにゃんて、呼んでいいの?」
梓「…うん、ちょっと恥ずかしいけど…」
雪歩「よかったぁ、仲良くなれたみたいで…」
真「へへー、僕は菊地真!こっちは萩原雪歩!よろしく!」
雪歩「よ、よろしくお願いしますぅ」
梓「こちらこそよろしく、男の子のアイドルもいるんですね」
P「い、いや、真は…な」
真「……いいんです、馴れてますから」
梓「えっ、ええ?」
P「他の皆は現場やレッスンに向かったからまた改めて紹介するとして、
今日の所はこれで帰っていいぞ、また明日同じ時間に来てくれ」
梓「わっ、わかりました、これからよろしくお願いします!」
亜美真美「ばいばいあずにゃん!」
梓「う、うん、ばいばい、それじゃあ失礼します」バタン
春香「ふぅ、さっきはびっくりしちゃったけど、かわいい子だよね、梓ちゃん」
P「おいおい、梓はあれでも春香より年上だぞ」
春香「えっ、ええ、それは聞きましたけど…
中野さんとか梓さんって感じじゃないんですよね」
真「ああ、わかるわかる、でもほんとかわいいよなぁ梓、
女の子って感じで…僕もあんな風になれたらなぁ」
雪歩「………」
亜美「んっふっふっ~、ないものねだりはダメだよまこちん」
真「なにをー!」
P「ほらほら、いつまでもくっちゃべってないで、仕事に行った行った」
一同「はーい」
P(ほんと、一時はどうなるかと思ったけど、
取り敢えずうまくやってけそうだな)
―――
梓(はあ…いきなりやっちゃったな…)
梓(でも急に『あずにゃん』って呼ばれるなんて…唯先輩…)ウル
梓「駄目だ駄目だ!気分転換に純にでも電話しよっと」prrrr
純「もしもーし、梓?」
梓「もしもし、純学校終わった?」
純「んー?今日は自主休講」
梓「もう、ちゃんと行きなよ…」
純「別にいいじゃんかー、それより梓今日から
新しい事務所に行ったんでしょ、どうだった?」
梓「うん、まだちょっとしか話してないけど、皆いい子そうだったよ」
純「でもさー、わたしはよく知らないんだけど、
765プロって女の子だけのアイドル事務所なんでしょ?
ああいう世界って凄いんじゃないの?足の引っ張りあいとか…」
梓「そんな事…ないと思うけど…」
純「とにかくさ、つらい事あったらいつでもこっちに帰っておいでよ、
もうゆ…んっ、んん、いつも憂とも話してるんだから」
梓「…うん、ありがとう、純」
純「じゃ、またいつでも電話してきなよね」
梓「うん、じゃあね」
純「はーい、ばいばい」
純も気を使ってくれたんだろうが、
憂の顔を見ると思い出してしまって辛いとは、とても言い出せなかった。
――――翌日
P「お、梓来てるな、ちょっとこっちに来てくれるか?」
梓「は…」
あずさ「は~い、何ですか~プロデューサーさん」
P「……あずささん、わざとやってるでしょう…」
あずさ「うふふ、ごめんなさいね、梓ちゃん、ちょっと羨ましくって」
梓「? い、いえ」
P「んん、それじゃこっちに」
梓「はい」
P「それで話ってのは、梓のこれからの売り出し方についてなんだが…」
梓「は、はあ」
P「聞いた所だとこれまで梓は路上ライブやエキストラ
なんかの仕事がメインだったそうだな」
梓「そうですね、あとはデパートのイベントとか…」
P「ふむ…梓はそれらの仕事にやりがいを感じていたか?」
梓「…は、はい!貰った仕事は一生懸命やってきました!」
P「そうか…それは素晴らしい姿勢だ。
ただな、社長がこう言っていたんだ、
梓は素晴らしい光を持っているのに、輝かせて貰っていない、
うちの事務所で本来の輝きを発揮させてあげたいって」
P「梓の本当にやりたい事って別にあるんじゃないのか?」
梓(こんなに私の事考えてくれるんだ…
前の事務所ではたまに入った仕事を事務的に伝えられるだけだったのに…)ジーン
梓「わ、私高校時代バンドをやってたんです!大好きな先輩達と…」
P「ほう」
梓「ずっとその仲間でバンドをやって、
お喋りしたり演奏したりしていきたい、
していけると思っていました」
P「……」
梓「でも、先輩達にも事情や…どうにもならない事があって…」
梓「それでも私、音楽が好きで…音楽に関わる仕事がしていきたいです…」
P「…わかった、俺は皆をプロデュースするにあたって
なるべく本人の意向を尊重していきたいと思ってる。
もちろんすべて希望通りとはいかないが」
梓「は、はい!よろしくお願いします!」
とっさに唯先輩の事は伏せてしまった。
言わない方がいいと思った訳ではなく、
なぜか言い出せなかった。
――――PM9:00
P「……」カタカタ
律子「……」カタカタ
P「…ふぅ、もうこんな時間か、一息いれないか?」
律子「そうですね、お茶でもいれます」
P「悪い」
律子「どうぞ」カチャ
P「サンキュー」
律子「…それで、どうですか、新しく入った中野さんは?」
P「うん…ビジュアルもいいし、やる気もあるんだが、
もうひとつ心を開いてくれないというか…」
律子「ひっかかる物があると?」
P「うーん、はっきりそうだと言い切れる訳じゃないんだが…」
律子「……プロデューサー、
平沢唯って知ってます?」
P「ああ、確かデビュー曲がそこそこヒットして、その後…」
律子「急性の白血病で亡くなった、
悲運のアーティストとして亡くなってからの方が大きく扱われましたね、
よくある話ですけど」
P「その平沢唯がどうかしたのか?」
律子「中野さん、平沢唯の高校の後輩だったらしいです。
一緒にバンドを組んでいて、かなり親しかったみたいですね」
P「そうだったのか…どうして律子はそれを?」
律子「平沢唯は今でも一部に熱狂的なファンがいますからね、
そのファン達の間で平沢唯の後輩がアイドルをやっているって噂
になってたんですよ、私はネットで知ったんですけど」
P「ふーむ…」
律子「これは私の想像ですけど、プロデューサーが
中野さんに対してひっかかる部分って、
平沢唯の死が影響を及ぼしているんじゃないかと」
P「…そうかも知れないな…ありがとう、律子」
P(身近な人間の死…音楽へのこだわり…
梓は千早と少し似た所があるのかもしれないな)
最終更新:2012年03月24日 19:39