――――その頃、765プロ事務所
P「それで千早、話っていうのはデュオの件についてか?」
千早「ええ…昨日も言った通り私は
この件是非にでもやらせて欲しいと思っています。
ただ、梓があまり乗り気じゃないのが…
梓も私と同じように感じてくれていると思っていたんですが…」
P「そうだな、お互いの気持ちが離れたまま強行しても、
決して成功はしないだろうからな…」
P「千早には梓の事話しておいた方がいいかもな、
これは本人から聞いた話ではないんだが…」
P「…という事なんだ、さっきも言ったがこれは本人から
聞いた訳でも確証のある話でもない、
俺達の推測も混じっているんだが…」
千早「……そうですか…そんな事が…
でも、少し梓の気持ちがわかった気がします」
P「…そうか」
千早「少し梓と二人で話をさせて貰えませんか?」
P「うん、気のすむまで話し合ってみてくれ、
お前達がどんな結論を出しても、俺はそれを尊重するよ」
―――
梓「それじゃあね、憂、純」
憂「うん、気をつけてね、梓ちゃん」
純「梓、電話してよ~」
梓「わかった、またね」
久しぶりに親友達と話をして、気分が晴れた。だけど答えは未だ見つからず…
♪アルファルファ~
梓「あ、メール…千早からだ…」
千早《あした出勤前に二人で話をしましょう。プロデューサーの許可はとってあります》
梓(千早らしい簡潔なメールだ)
梓(話って、やっぱりデュオの事だろうな…ちょっと気が重い…)
梓(今日は疲れたな、早く帰って寝ようっと)
――――翌日
千早「あっ、梓、こっちよ」
梓「おはよう千早」
千早「ええ、おはよう梓、そこのお店に入りましょうか」
梓「うん、いいよ」
千早「……」
梓「……」
千早「…正直、何から話したらいいのか迷うわね…」
梓「…デュオの事でしょ?」
千早「ええ、そうね…でもその前に、私に弟がいた事は話したかしら?」
梓「(いた?)ううん、初耳…かな」
千早「私にとってとても大切な弟だった…事故で亡くなってしまったんだけど」
梓「っ…」
千早「私が歌を歌い始めたのも、歌い続けているのも…弟がいたからだったの…」
梓「……」
千早「少し前の事なんだけどね、
ある雑誌に弟の事を歪曲して報道されて…
私はそれを見てから歌が歌えなくなってしまったの」
梓「え、でも…」
千早「ええ、今はまた歌える様になったわ、それは前よりも…」
梓(これって今の私と同じ?ううん千早の方がもっと…)
梓「どうして…どうして千早はまた歌える様になったの?」
千早「……そうね、それを話す前に、
梓が今何に悩んでいるのか、聞かせてくれないかしら」
梓「……わかった、話すね…」
千早「ええ、覚えているわ」
梓「平沢唯…唯先輩はね、私の高校の先輩なの」
千早「…そうだったの…」
梓「私は唯先輩に憧れて軽音部に入って、
お茶をしたり練習をしたり、旅行に行ったり…
沢山の時間を一緒に過ごした…」
『唯先輩練習して下さい!』
『え~あずにゃんも一緒に遊ぼうよ~』
『あずにゃん、このコードはどうやって弾くの?』
『ああ、これはですね…』
『はい、あずにゃんお土産!』
『なんですかこれ?ぶ?』
『卒業…しないでよぅ』
『離れても、一緒だよ』
『永遠に、一緒だよ』
梓「ずっと一緒だと思ったけど、先輩達が卒業して、
バンドもいつしか解散になって…」
梓「その頃唯先輩のデビューの話が決まって、
私はそれを聞いた時すぐに自分も芸能界に入る事を決めたの、
少しでも唯先輩の近くにいきたかったから」
梓「高校を卒業して、芸能事務所に入れる事にもなって、
これでまたあの頃の楽しかった毎日が来るんだって思ってた」
梓「私が事務所に入って初めての仕事の時に聞いたの、
唯先輩が病気だって、もう…助からないって…」
梓「すぐに病院に会いに行ったけど、もう面会も許して貰えなかった」
梓「うっ…そして…ゆ…い、先輩…はぁ…」ボロボロ
千早「梓…」ナデナデ
梓「ごめ、んね」ヒックヒック
千早「いいの…辛い事をよく話してくれたわ…」
梓「まだ…全然…話せてない」
千早「ううん、もういいの…」
梓「…でも…後少しだけ話すね…」
梓「先輩が亡くなった後、遺品の中に私宛ての手紙があったって、いただいたの」
梓「そこには震える字で、こう書いてあった…
『あずにゃん、デビューおめでとう、あずにゃんが
私と同じ世界に来てくれて、とっても嬉しいよ!でもね、
せっかく来てくれたのに、ちょっと近くにはいられな
くなっちゃうかもしれないんだ。
でも、離れててもずっと一緒だよ』って」
梓「正直唯先輩が亡くなってから、もう芸能界の事はどうでもよくなってた…」
梓「だけどこの手紙を読んだら、唯先輩が喜んでくれた、
唯先輩がいた世界に私もいなきゃって思う様になって…」
梓「それからは、業界にいる事が自体が目的みたいになってて…」
梓「弾き出されないように…もらった仕事をこなして…」
梓「でも、765プロに誘って貰って、みんなと出会ってから、
そしてこの前千早と仕事をさせて貰ってから…」
梓「多分自分でも気づいちゃったんだ、こんなのおかしいって」
梓「それを楽しかった高校の頃と比べて…
勝手に今が悪いみたいに思いこんで…」
梓「演奏してドキドキしないのは…歌が響いてこないのは…
全部…自分のせいだったんだね…」
千早「梓…ありがとう…」
梓「はあ…千早、顔ぼろぼろだよ」
千早「梓の方こそ、ひどい顔してるわ、お互い様ね」
梓「ふふ」
千早「ふふふ」
梓「あーあ、全部話したらすっきりしちゃったかも…」
千早「そう…最後にこれだけ言っておくわ」
千早「さっき話した様に、歌えなくなった私は、
もう自暴自棄になって、すべてがどうでもよくなってた」
千早「歌が…歌だけが私のすべてだと思ってたから…」
千早「でも…そうじゃなかった」
千早「私には仲間が…春香や、みんながいてくれたから、
また歌えるようになったの」
千早「間違いに気づいてからは、前よりも強く…」
梓「…私も…私もそんな風になれるかな…」
千早「…ええ、必ず…だってあなたには私がいるもの、もちろん他のみんなも」
梓「千早…ありがとう」
千早「いいえ…少しトイレで顔を洗ってきましょうか、私も恥ずかしいわ…」
梓「そ、そうだね…」
梓「わっ…本当にひどい顔だ…まぶたが3倍位になっちゃってる…」
千早「私もだわ…」
梓「これ…もう事務所行けないね」
千早「そうね…さぼっちゃいましょうか」
梓「…そうしよっか」
千早からさぼろうって言い出すとは少し意外だった。
私もそのつもりだったけど…
でもやっぱり一応とプロデューサーに電話すると、
一言「わかった」と言ってくれた。
それから二人でたくさんたくさんおしゃべりをした。
音楽の事、友達の事、高校の頃の事、
そしてこれからの事…
――――翌日
梓「おはようございます…」ガチャ
P「お、来たか」
梓「あの…プロデューサー、千早とのデュオの件ですけど…」
P「…うん」
梓「私…やりたいです…やらせて下さい!」
P「そうか、わかった、一緒に頑張って行こう」
響「あっ!にゃん子!心配したんだぞ!元気だったかー?」グリグリ
亜美「あー!ひびきんずるい!亜美も!」グリグリ
千早「……」ウズウズ
梓「ちょ、どこさわって…やっ…やめて!」モガモガ
亜美「あずにゃん、やめてほしいにゃんって言ってみてよ→」
梓「言うかー!!」ウガーー
唯先輩…高校の頃、あの頃は楽しかったですよね。
毎日お茶をして、おしゃべりして…
私、練習しない唯先輩を怒ってばかりだったけど、
そんな時間もたまらなく愛しかった…
でも私、今も楽しいです!
唯先輩はいつも先に行っちゃうけど、
唯先輩はどうせサボってばかりだから、
きっとすぐに私追いついちゃいます!
その時は、また…あの頃みたいに……何でもないです!
とにかく私、これからも頑張ります!
――――いつか…どこかにて…
唯「あっずにゃーーん」ダキッ
梓「唯先輩!抱きつかないで……もうちょっとだけ…」
唯「あずにゃん、頑張ったんだねぇ」ナデナデ
梓「唯先輩…」
千早「梓、よかったわね…」
梓「唯先輩、この子が千早で…ちょっ、キスはやめて!」
唯「あずにゃーん」ムチュチュー
梓「ぎゃーー」バチン
おわり
もっと色々構想はあったんだけど、だらだら続けるのもきついんで終わらせた
物足りないと思う部分は脳内保管でよろ→
最終更新:2012年03月24日 19:41