律「唯に振り回される日」
ガチャ
律「おぃ~っす!」
澪「おはよう。さっきメール来たけど、今日梓来れないって」
律「あぁ、私にもメール来た。唯もおい~っす!」
律「唯?何食ってんの?」
澪「律、ケーキどれが良い?」
律「あれ?ケーキあんの?ムギ居ないのに」
澪「用事が有るからって準備だけしてどっか行っちゃった」
律「ふ~ん……何で全部チョコケーキ?」
澪「ほら、ホワイトデーだから」
律「ホワイトデーはチョコじゃないだろ。別に良いけど」
ダダダダダダ……
律「?」
唯「どーん!」ドムッ
律「うぉぶっ!?」ベチャ
澪「……始まったか……」ハァ
律「……唯?」ワナワナ
唯「あれ?ちょっと、間違えちゃったかな?」テヘ
律「私の背中にドロップキックをかましといて言うセリフがソレか?」
唯「りっちゃん、顔がクリームだらけだよ?面白~い」ケラケラ
律「お前が笑うな!誰の所為でケーキにダイブしたと思ってんだ!」
唯「もったいな~い」ペロッ
律「ほわぁぁぁ!?か、顔を舐めるな!」
唯「あぁんもう、動かないの」ガシッ
律「アホかお前は!何で好き好んで顔を舐められなきゃいかんのだ!」
唯「そうはいかんざき!」
律「やかましい!ちょっとタオルタオル」
唯「ギブアップ?ギブアップNO!」
律「投げる為じゃねぇよ!顔拭くだけだ」
唯「そんな事しちゃケーキがもったいないよ?」
律「あぁもう……じゃあ指で拭って食うからソレで良いだろ?」ヌグイヌグイ
唯「あむっ」パクッ
律「……うん、やると思ったけどさ」ハァ
唯「んむんむうむ」モグモグ
律「なぶるな!」スポンッ
唯「りっちゃんの指って甘いんだね!新発見!」
律「甘いのは指じゃなくてケーキだ!」
唯「甘いのは顔だけじゃないんだね」
律「ソレもケーキだ!」
唯「まるでチョコレートみたいなとろけるスィートフェ~イス」ヒュー
律「みたいじゃなくて本物だ!」
唯「え?りっちゃんの顔ってチョコレートなの?スゴイね」
律「何マジ顔で言ってんだ。顔に付いてるの見りゃわかんだろ?ってか誰のせいだ!」
唯「顔?あらまぁ随分とお髭をたくわえて」
律「だからチョコケーキだ!」
唯「ヤだなりっちゃん、お髭がチョコケーキだなんて何で魅力的。食べちゃいたいくらい」
律「さっき食べたろ!っつうか何なのホント」
唯「なんだかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け」
律「良いご身分だなオイ」
唯「……だが断る!」デデーン
律「よし、その喧嘩買った!」バンッ
唯「じゃあそのケーキで手を打とう!」ズビシッ
律「お断りだ!」
唯「もぅ、そんな怒っちゃやぁよ」ツンッ
律「なんだコレ、なんだコレ」
唯「貴女の心に、シアーハートアタックっ」ビシィッ
律「死ぬわ!」
唯「りっちゃんぎゅ~」ギュー
律「訳わかんねぇ~」
唯「りっちゃん大好き~」ギュー
律「いきなり何だよ!」
唯「……りっちゃんは、私の事、嫌い?」ウルウル
律「いや、嫌いじゃない、けど」アセアセ
唯「でしょ~?」ニヒヒ
律「~~っ!おい澪!」
澪「ん?」
律「さっきから無視してないで助けて!」
澪「良いじゃないかたまには。微笑ましいぞ」
律「イヤどう見ても私のピンチだろ!」
唯「ピンチはチャンス!」
律「やかましい!」
澪「私は去年律の所為で散々だったからな」
律「何がだよ!」
澪「律は初めてだろ?折角だし味わった方がいい」
律「だから何を!?」
澪「嬉しいくせに」
律「そりゃ……まぁ」カァァ
唯「ねぇりっちゃんりっちゃんりっちゃんりっちゃん!!」
律「何々何々!?耳元で騒ぐな!」
唯「あずにゃんはあずにゃんは!?」
律「はぁ……今日は来ないんだろ?」
唯「何で何で何で!?」ペチペチ
律「だから普通の声で喋れって。何でってさっきも」
唯「あ、りっちゃん顔にクリーム付いてるよ」ペロッ
律「……なぁぁ!お前一回マジで離れろ!」ガァァッ
唯「わぁお」ピョン
律「唯、お前ホントに今日変だぞ?」
唯「澪ちゃん澪ちゃん!」テテテ
律「聞けよ!」
澪「ん~?」
唯「ヒゲ!」クイッ
澪「アハハ。唯は可愛いなぁ」ナデナデ
唯「でしょ~?」
澪「今ちょっと忙しいから、大好きなりっちゃんと遊んでてな」ポンポン
唯「うん!分かった!」
律「え、何その上手なあしらい方」
唯「イエーイ!りっちゃんイエーイ!」
律「あぁはいはい。いえーい」
唯「もっと大きな声でぇ!」
律「何がしたいんだよ」
唯「唄いなさいよぉ!」
律「何をだよ!?」
唯「何から、話せば、良いのっかっな」ハイ
律「好~きから始めていいかな」
唯「ヤだ、りっちゃんったら大胆」ポッ
律「歌の歌詞だろぉ!?」
澪「良いんじゃないか?」
律「良くねぇよ澪お姉さんよぉ!?」
澪「嬉しいくせに」
律「……いやいや、唯がおかしいの見たら分かるだろ!?」
唯「りっちゃんさっきから声大きいよ?」
律「誰の所為でちょうねぇ~?」
唯「ん~……分かんない」ペカー
律「お前の所為だ!」ゴチンッ
澪「あ」
律「ん?」
唯「……、……ふぐぅうぅ~……」プルプル
澪「それじゃ私、生徒会室行くね」スクッ
律「なんで?」
唯「びえぇぇぇぇぇぇぇんっっ!!」ブワー
律「うえぇ!?」
唯「りっちゃんが叩いたぁぁぁ!」ビエー
律「え、ちょ、何コレ!?」
唯「ぶぇえええっ!!」ウエーン
律「おいちょっと澪!っていねぇ!本当に行っちゃった!?」
唯「りぃっちゃんがあ、りっちゃんがぁぁ」ビエーン
律「えと、あの、と、とりあえず私が悪かったよ。謝るからさ?」
唯「うぶぇ、うぐぅふぐぐ……」ウルウル
律「な?お菓子でも食べるか?」
唯「うぇえぇぇぇんっ!!」ブェーン
律「澪は逃げるしムギも来ないし……」ハァ
唯「ぶぇえぇぇぇぇ!」ビェーン
律「あぁもう!どうしろってんだよ!」
唯「ぴゃぁぁぁぁ!」
律「え~っとえ~っと。と、メール?」パカッ
『律、すまない。そうなった唯はもう頑張ってあやしてくれ』
律「……澪の奴、知ってて逃げたな?」
唯「うわぁぁあぁあああぁん!!」
律「はぁ……あやす、あやすねぇ?」チラッ
唯「うぅうぅぅうううぅ~」シクシク
律「唯、ホントごめん。悪かったよ」ナデナデ
唯「ふぅぅぅ、うううぅぅ」ポロポロ
律「ほら、泣きやんで、な?」ナデナデ
唯「りっちゃん私の事嫌いなんだ……」グスグス
律「そ、そんな事無いぞ!マジで!」
唯「ホント?」
律「ホント!」
唯「……じゃあ、ぎゅって」
律「ん?」
唯「ぎゅって」パッ
律「……しょうがないな」ダキッ
唯「ん」ギュー
律「よしよし」ギュー
唯「りっちゃん大好き」ギュー
律「本当かよ……だったら嬉しいけど」ボソッ
唯「む~」ギュー
律「痛い痛い痛い痛い」
唯「つーん」プイッ
律「なになに?」
唯「私は好きって言ったのに~」
律「はいはい。私も唯の事、だ、大好きだよ」ナデナデ
唯「えへへ~」テレテレ
律「はぁ……可愛いなぁもう」
唯「そだ!りっちゃんりっちゃん!」
律「だから聞こえてるって。すっかり泣きやんじゃって」
唯「こっちこっち!」グイグイ
律「引っ張るなって」テテテ
唯「座って!」
律「うん」ストン
唯「とう!」ポフッ
律「なぜに膝枕……」
唯「恋人には膝枕するもんでしょ!」ベシベシ
律「痛い痛い!てか恋人って」
唯「りっちゃんやらか~い」
律「聞けよ。……ん?何だコレ」ヒョイ
唯「もみもみ」モミモミ
律「やめい、くすぐったい」
唯「うふふふふふふふふ」
律「チョコレートだ。見た事無いなぁ」
唯「ふす~……」
律「『唯先輩へ。友チョコのお返しですからね!』?……あぁ、ホワイトデーのチョコか。いや、だからホワイトデーはチョコじゃないだろ」
唯「す~……」
律「ってかアイツ、バレンタインデーにも渡して無かったか?」
唯「あ~うにゃ……」スースー
律「半分も残ってる……唯にしちゃ珍しいな」
唯「す~……むにゃむにゃ」スヤスヤ
律「人の事振り回すだけ振り回して寝てるし……まぁ良いや、一個貰お」ヒョイパク
唯「うにゅ……」
律「何だこれ、変な味」ヒョイ
唯「す~……」
律「あぁ、お酒入りか。梓もまた大人びたモンを」モグモグ
唯「りっちゃ~んむ……」
律「……ん?酒入りって事はまさか唯、酔ってたの?たったこんなけ食っただけで?」
唯「うむ~……」
律「じゃあ今日の唯は全部ウソって事か?……マジか」ハァ
唯「ううぅ~ん……」グーグー
律「そいえば去年唯にウイスキーボンボン渡した次の日、澪に怒られたっけ……」
唯「りっちゃ~ん……だいすき……」モニュモニュ
律「……いやでもまぁ、梓には感謝だな」ナデナデ
唯「……りっちゃ~ん……?」スヤスヤ
律「私も好きだよ、唯」
唯「えへへぇ……」スヤスヤ
律「取り敢えずこのチョコは処理しとこう」ヒョイパクヒョイパク
****
ごしごし……
律「……ん?」パチクリ
唯「あ、起きた?」
律「ん、寝ちゃってたか」ノビー
唯「うん。起きたらりっちゃんが顔ケーキまみれのままで膝枕してくれてるんだもん。ビックリだよ」
律「……覚えて無いかぁ」ハァ
唯「うん?」
律「いや、良いの良いの」
唯「はい、りっちゃんの顔キレイになりました~」
律「あ、ありがと」
唯「アレ?あずにゃんから貰ったチョコが空になってる」
律「あ、えと、全部食べたんだろ?」
唯「そだっけ?半分くらいまでしか食べて無かったと思うんだけどなぁ~」
律「ぎくっ」
唯「う~ん……まぁ良っか」
律「良いのかよ」ホッ
唯「無いって事は食べちゃったって事だろうしね」
律「まぁ、独りでに歩きだしたりはしないわな」
唯「だねぇ」
律「さて、と」
律「へ?あ、もうこんな時間」
唯「澪ちゃんもムギちゃんも先に帰っちゃったよ」
律「……さてはムギも知ってたな」
唯「何が?」
律「いや、何でもない」
唯「……ねぇりっちゃん」
律「何だ?」スクッ
唯「えっとね……って」パッ
律「うん?」
唯「だから、その……て」
律「何だ?」
唯「んと……ぎゅって」
律「ぎゅって?」
唯「ぎゅって」ウン
律「はぁぁ!?」ガタタッ
唯「……そんなに嫌がらなくてもいいじゃん」ジワァ
律「いや違う違う。嫌なんじゃなくて」アセアセ
唯「じゃなくて?」
律「え?覚えてるの?」
唯「やっぱり夢じゃなかったんだ」
律「夢?」
唯「うん。何かふわふわしててね、りっちゃんにぎゅってしてもらって」
律「……おう」
唯「でも何か夢っぽいけど夢っぽくなくて、夢じゃなきゃ良いなって思って」
律「そりゃ、酔ってたからな……」ボソッ
唯「だから、夢じゃないならもう一回」
律「もう一回って……」カァァ
唯「私もちゃんと言いたいもん」
律「ちゃんと?」
唯「あんな言い方じゃ、りっちゃんに伝わったかも分かんないもん」
律「……そっか、そうなんだ。じゃあ」スッ
唯「ん」ダキッ
律「これで良い?」ギュッ
唯「うん……」ギュー
律「そか」
唯「……」
律「……唯?」
唯「……よし」
律「おう」
唯「りっちゃん」
律「おう」
唯「大好き」
律「うん」
唯「うんじゃないでしょ」
律「そうだな」
唯「大好き」
律「私も唯の事、大好きだよ」
唯「本当?」
律「そんな嘘つく訳無いだろ?」
唯「えへへ~」テレテレ
律「可愛いなぁコイツ」
唯「良かった~、夢じゃなくって」
律「私も良かったよ、唯が忘れてなくて」
唯「でも何でりっちゃんの顔がケーキまみれだったの?」
律「あぁ、ソコは覚えてない」
唯「うん」
律「ソレは説明させないで……めんどくさくなるから」ハァ
唯「んぅ?」
律「気にするな!帰ろう帰ろう!」
唯「う、うん」
律「今の私は機嫌が良いからな!唯が何したって許しちゃうぞ!」
唯「本当!?」
律「おう!」
唯「じゃあ」
チュッ
律「うぉわぁっ!?」
唯「えへへ~」ダキッ
律「そ、そんなガッチリ腕組まれたら歩きにくいって」
唯「良いじゃん良いじゃん」
律「まぁ良っか、言っちゃったし」
唯「じゃありっちゃん!アイス食べに行こうよ!」グイグイ
律「はいはい、引っ張るなって」ハァ
唯「あ、りっちゃんタメ息ついた」
律「ん、結局唯には振り回されるんだなって思って」
唯「ゴメン……」シュン
律「良いの良いの」
唯「良いの?」
律「うん、ソレが嬉しいんだからさ」
唯「りっちゃん……」キュン
律「唯……」
唯「分かったよりっちゃん!私、これからも一生懸命りっちゃんの事振り回すね!」フンス
律「いや、その決意表明は止めてくれ……」
END
以上です。
ありがとうございました。
最終更新:2012年03月28日 21:10