春。
新歓ライブに感動した私は今軽音部の部室の前に来ている。
「あの…入部希望なんですけど……」
「唯と一緒だな!」
梓「唯先輩、よろしくお願いします」
唯先輩という人はどうやらスキンシップが好きなようだ。
「梓ちゃんかわい~」
などといってだきついてくる。
最終的には「あずにゃん」などというあだ名までつけられた。
それでもあんな演奏をしていた先輩だ。
きっとすごい人に違いない。
それにしても可愛い人だなぁ
あずにゃんか…意外といいかも♪
ジリリリリリリリ……
梓「……んんっ」
梓「ふわぁ~あ」
眠たい。でもいい夢見れたな。
あの頃に戻れるなら……
もう一度先輩達との日々を過ごせたら……
そしてなにより、私の好きな人
唯先輩ともっと長く一緒にいれたら……
梓「さっ、学校いこ」
そんなこと思ったって仕方が無い。
それよりも今日は学校があるし、まだ先輩達が卒業したわけでも部活を引退したわけでもない。
唯先輩にだって今日も会えるんだ。
そう思うとずいぶん気分が晴れる。
自分でトーストを焼き、それを食べる。
そして、自分の身だしなみを整える。
ふとカレンダーに目をやる。
うん、特に予定は無いかな。
夏祭り、行けそうだ。
梓「いってきます」
今日も返事のない家に向かって声をかける。
ー学校ー
純「あ、梓おはよ。どうしたの?今日遅くない?」
梓「ちゃんと目覚ましで起きたんだけどね、眠たくて時間かかっちゃった…」
憂「梓ちゃんおはよー今日も暑いね」
梓「おはよ、憂。そーだねー夏だもん」
憂「今日は軽音部のみなさんと夏祭りいくの?」
梓「たぶんね」
純「梓また真っ黒になるんじゃない?」
梓「なっ……夜だから大丈夫だもん!」
今日もいつもと変わらぬ朝。
最近この「普通」がいちばん幸せなんだと感じる。
憂「梓ちゃんかばんおいてきなよ。もうすぐ始まっちゃうよ?」
梓「そだね。じゃあまたあとで」
数分して先生が入ってきた。それにしても眠いな……
~~~
はる。
わたしはよーちえんにはいった。
でもお父さんとお母さんはお家にいない日がおおい。
でもお母さんがごはんは作ってくれるから、あとはひとりでもだいじょうぶ。
きょうはお天気がいいな。
おさんぽしよう。
あずさ「いってきまーす!」
へんじがないのがすこしさみしい。
あずさ「ぽかぽかきもちーなぁ」
近くの公園についた。
女の子がひとりでなにかさがしてるみたい。
あずさ「どーしたの?」
?「……ふぇ?」
あずさ「なにさがしてるの?」
?「ういとかくれんぼしてたんだ!」
あずさ「うい?」
?「いもうとだよぉ」
あずさ「そーなんだ。見つかるといいね!ばいばーい」
?「ちょっとまって!」
あずさ「なに?」
?「そこのベンチにすわろ?」
あずさ「いいよ!」
?「名前なんていうの?」
あずさ「あずさだよ」
?「わたしはゆいだよ!あずさちゃんかわいーっ!」だきっ
あずさ「あわわっ」
ゆい「あ、いきなりごめんね」
あずさ「ううん、びっくりしただけだよ」
ゆい「よかったー」
にゃーお
ゆい「あ!ねこちゃんだ~。かーわいーなぁ。あっ、あずさちゃん!ちょっと「にゃあ」っていってみて!」
あずさ「にゃあ?うんわかった。……にゃあ」
ゆい「かわい~!あずにゃんだね!」
あずさ「あずにゃん?」
ゆい「うん、そうだよ!そだ、わたしはゆいちゃんって呼んで!」
あずさ「ゆい…ちゃん」
ゆい「そうそう!これからよろしくね、あずにゃん」
?「おねーちゃんさがしにきてよー」
ゆい「ごめんねうい。あずにゃんとおしゃべりしてて」
この女の子がういちゃんか。
うい「あずにゃん?」
ゆい「あずさちゃんなんだけどね、ねこちゃんみたいでかわいいからあずにゃんなんだよ」
うい「ヘ~。おともだちか~。よろしくねあずさちゃん!」
あずさ「よろしく!ういちゃん!」
ゆい「でもよーちえんちがうよね?しょーがっこうはいっしょがいい!」
うい「でもしょーがっこうもちゅーがっこうもあずさちゃんとはちがうよ?」
あずさ「そうだね。おとなりのがっこうだもんね」
ゆい「じゃあこうこうだよあずにゃん!やくそくだよ?」
あずさ「うんわかった!ゆいちゃんとおんなじこうこういく!」
ゆい「じゃあそのあとあずにゃんのおよめさんになるね!」
あずさ「だめだよー。わたしがおよめさんだよ!」
うい「じゃあ2人ともおよめさんだよ!」
ゆい「ほんとだ~。ねえねえあずにゃん!いっしょにあそぼ?」
あずさ「うん!およめさんだもんね!いっしょじゃないと!」
ゆい「やったー!」
そういってゆいちゃんはわたしの手をにぎってはしりだした。
~~~
……ずさ!………あずさ!!
梓「………ん?」
純「ん?じゃないよ。何回起こしたとおもってるの?」
梓「ああごめん。」
どうやら夢をみていたらしい。
夢の内容はなんとなくしかわかんないや。
昔のことだもんなぁ。意外と忘れるもんなんだな。
憂「ふふっ。梓ちゃんよく眠ってたね」
梓「ごめんねういちゃん」
憂純「…え?」
梓「はい?……!!」
梓「いや、なんでもないよ。それよりあと3時間授業がんばろ!ささっ、席着いて」
たった今すべてを思い出した。
憂は何かに気づいた様子だ。
メール打ってるみたいだけど誰にだろ?
まあいいや、はやく昼休みにならないかな。
あっ、そのまえに私もメールしとかないと……
ー昼休みー
梓「はやいですね」
唯「ダッシュできたからね!りっちゃんになにか言われた気がしたんだけど、気にせず走ってきちゃった」
梓「そうですか…」
唯「それよりどうしたのあずにゃん?部室によびだしてさ」
梓「今日夏祭りですよね?行きますか?」
唯「うん!みんなもいくよ」
梓「そうですか……」
唯「どうしたのあずにゃん?」
梓「ちょっと2人で花火みたいなー、なんて…」
唯「あずにゃん!!うん、もちろんいいよ!あ、でもどうすればいいんだろ…」
ブルルル…
唯「あ、りっちゃんからメールだ!ちょっとまっててねあずにゃん。さっきのことかなぁ?」
唯「……あずにゃん!2人でいけるよ!」
梓「どうしたんですか?」
唯「えっとね、憂と純ちゃんも一緒に行くらしいし人が多くなるからグループ分けしたんだって!」
唯「そのグループが私とあずにゃんの2人なんだよ!」
憂、ありがとう。
メールはそういうことだったんだね。
律先輩もありがとうございます。
ほんといい人達に恵まれたな。
梓「それは良かったです!では学校終わったらまた」
唯「うん、じゃあねあずにゃん」
ー放課後、平沢家ー
梓「唯せんぱーい!いきましょー」
唯「ごめんごめん。じゃ、行こっか」
そういって歩く私達。
憂はもう家を出たらしい。
ほんとに憂には頭が上がらない。
しばらく無言で歩く私を唯先輩が不思議そうに覗き込んできた。
唯「大丈夫?あずにゃん?」
梓「だ、大丈夫ですよ!なんでもありません!」
きっと私の頬は真っ赤だろう。
恥ずかしくなって顔をそらしてしまった。
……あ。
顔をそらした先に……
梓「唯先輩!まずあそこいきましょ」
唯「ん?いーよ」
梓「ありがとうございます」
……着いた。すべてがはじまった公園だ。
唯「なつかしいなぁ」
どきっ
唯「よくここに遊びにきたよ。あずにゃんきたことある?」
梓「…あり……ます」
覚えてる訳なんてないよね。
梓「そこのベンチに座りません?」
唯「うん、わかった」
私達は座る。あの時と同じように。
どうしよう、なにもしゃべれないや……
唯「あずにゃん泣かないで」
いつのまにか私の頬には涙が伝っていた。
唯先輩はあの時と同じように、いや
あの時よりも優しく私を抱きしめてくれた。
梓「すみません」ぐすっ
唯「悩みなら聞くよ?ね?」
ちがうんです。でも私にはそんな勇気ないんです。
唯「しばらくこのままでもいっか」
まるで私のこころが分かったように唯先輩はそうつぶやいた。
しばらくして唯先輩が私に言った。
唯「ねえあずにゃん、私の悩みきいてくれる?」
梓「…はい」
そう答えることしかできない。
唯「あずにゃんは女の子を好きになるってどう思う?」
梓「…え?」
頭が真っ白になった。
唯「あ、ごめんね困らせて」
唯先輩には好きな人がいる?しかも同性で?
梓「…あはは、きにしないでください」
唯「…うん」
唯先輩……
今伝えなくちゃ、ほんとに伝えられなくなっちゃう
なんとなくそんな気がした。
唯「ほんとにごめんn」
梓「…」がばっ
唯先輩の言葉が終わらないうちに私は唯先輩を抱きしめていた。
今までやってもらっていたように優しく、でも強く。
唯「あずにゃん…?」
もう後悔はしない。
梓「好きです。唯先輩。」
違う。
梓「すきだよ、ゆいちゃん」

ふと唯先輩の顔を見る
驚いているようだ。
そりゃそうだよね、いきなりゆいちゃんとかいっちゃったんだもん。
唯「あずにゃん、もしかして…」
どうやら驚いていたのは思い出したからのようだ。
唯「ううん、関係ないや。あずにゃんきいて?」
梓「…はい。」
つらい。わかっているのに…
思い出したからってなにも変わらないのに…
唯「私は今も昔も、あずにゃんが大好きだよ!」
唯先輩は目に涙をためながら
精一杯の笑顔でそういった。
今度は私が驚く番のようだ。
梓「え、じゃあ…」
唯「これからよろしくね、あずにゃん」
唯先輩はいつかと同じセリフを言った。
梓「片想い期間長かったんですからね?それくらいは付き合ってもらいますよ!」
唯「ありゃりゃ15年くらいだっけ?」
梓「どうしたんです?無理なんですか?」
唯「いや…短いなぁと思って。私達はずっと一緒だよ?」
唯先輩……
どどーん!
唯「あ、あずにゃん!花火はじまっちゃったよ!早くいこっ」
そう言って唯先輩は私の手を握って走り出した。
ー1年半後ー
春。
新歓ライブに感動した私は今軽音部の部室の前に来ている。
「あの…入部希望なんですけど……」
梓「中野梓です。パートはギターで…」
「唯と一緒だな!」
梓「唯先輩、よろしくお願いします」
唯先輩という人はどうやらスキンシップが好きなようだ。
「梓ちゃんかわい~」
などといってだきついてくる。
最終的には「あずにゃん」などというあだ名までつけられた。
それでもあんな演奏をしていた先輩だ。
きっとすごい人に違いない。
それにしても可愛い人だなぁ
あずにゃんか…意外といいかも♪
唯「ねえねえあずにゃん。久しぶりだね。元気にしてた?」
ジリリリリリリリ……
梓「……んんっ」
梓「ふわぁ~あ」
眠たい。でもいい夢見れたな。
そういえば去年の夏もこんな夢見たな。
夢の内容が違う気もするけど。
梓「さっ、学校いこ」
そんなこと思ったって仕方が無い。
それよりも今日は先輩方と同じ大学に受かった私の入学式があるんだ。
自分でトーストを焼き、それを食べる。
そして、自分の身だしなみを整える。
大学に入り実家を離れたが、それ以外なにも変わらない朝。
ふとカレンダーに目をやる。
うん、今日は講義は無いみたいだね。
今日は遊びに行けそうだ。
梓「いってきます」
ただひとつ違うとすれば、それは…
「いってらっしゃ~い」
おっと起こしちゃったみたい。
それは家から返事が返ってくるってとこかな。
梓「うん、行ってくるねゆいちゃん!」
おしまい
最終更新:2012年04月13日 20:30