唯「…ブラ、外してあげようか」

梓の思考を読んだかの様にそう言って、唯が身体を離す。
ゴクリと、梓がのどを鳴らす。

それを肯定と受け取ったのか、唯は、自分の部屋着の背中に手を回し、ブラのホックを外した。

タイト目な部屋着の中で、唯の瑞々しい乳房が、ぽよん、とその存在を主張する。
梓は、その光景を食い入るように見つめている。

肩紐を外し、器用にブラを脱ぎ、服の裾から外したばかりのブラを取り出す。
唯はそのブラを無造作に放ると、胸の膨らみを強調するように、腕を組むような仕草をして、梓を見つめた。

唯先輩。唯先輩のおっぱい。

ぽよん、と、瑞々しい膨らみが、ふかふかの部屋着をその形に盛り上げて…
そして、その双丘の頂点には、うっすらと、でも確かに、その突起が確認できた。

梓、唯のおっぱいをガン見。

唯「くすくす。あずにゃん。見過ぎ」

梓「あ、あ、ご、ごめんなさいです!」

梓、真っ赤になって顔を背ける。

唯「くすくす。…あ~ずにゃん」

そう言って、唯は再び、梓を背中から抱きしめた。

横に並んだ体勢から、身体を乗り出すようにして、その身体に覆い被さる様にして抱きしめる。

梓「…ふあぁ…」

思わず、ため息が出た。

柔らかい。
暖かい。
良いにおい。
気持ちいい。

梓の思考はもう、そんなシンプルな単語しか浮かばないほどに、惚けたようになっていた。

たっぷりと、お互いの身体を堪能したところで、唯は身体を離した。
梓、名残惜しそうにそれに従った。

唯「それじゃ、あずにゃん。さっきの続き。今日は、キスはしないから、舌出してみて?」

梓「え…し、舌ですか?」

唯「うん。ほら、べー、って」

べー、と、見本を見せるように、唯が舌を伸ばす。

ぷるぷるとした唇から、ピンク色のきれいな舌が覗く。
それに習うように、梓も、小さな舌をべー、と伸ばした。

唯「じゃあ、キスはしないからね?舌、そのまま出しててね」

そう言って、梓の顔に自分の顔を近づける。
梓、思わず目をつぶる。

ぺろっ。

梓「!」

舌に、経験したことのない感触があり、梓はびっくりして舌を引っ込め、目を開ける。

唯「ああん、舌、引っ込めちゃだめだよ」

梓「ゆ、唯先輩、今、何しましたか?」

唯、不思議そうに逡巡して、こう返した。

唯「何って、舌、嘗めただけだよ?」

それがどうかしたの?とばかりに、唯はきょとんとしていた。

唯「あのね、唇と唇があたらなければね、キスじゃないんだよ。だからこれはセーフ。ね?」

梓、その言葉を聞いて、ああそうか、なるほど、と思った。
梓はもう、まともな思考を放棄していた。もう完全に、唯のペースだった。

唯「じゃあ続き。はい、べー」

梓「は、はい…べー」

梓の舌を、ねぶるように、ぺろぺろと嘗める。
こぼれそうになる唾液をきれいに嘗め取り、こくりと嚥下する。

つばの臭いが梓の鼻に届き、あ、つば臭い、と一瞬だけ思ったが、瞬時にその嫌悪感は吹き飛んだ。

梓は、ふるふると身体を震わせながら、その倒錯的な光景を見守っていた。

唯「んー…ちゅぱ、ちゅぱ」

梓「ん、あ、はふあぁ…」

梓の舌をついばむ様に、唇でちゅぱちゅぱとしごき始める唯。

ちゅぱちゅぱ。ちゅぱちゅぱ。

唯「ん…ふ…ちゅぱ…ちゅぱ…」

梓「ん…やは…んああ…」

どうしよう。これ、凄く、気持ちいい。

梓の全身から力が抜ける。快感の余り、力が抜け、徐々に舌が口内へ戻されてゆく。

唯「…ほら、あずにゃん。ちゃんと、舌、出してないと、唇当たっちゃうよ?」

舌を促す唯。健気にそれに従う梓。

唯はその肩を支えるようにして掴んで、梓の舌を欲しいがままに堪能した。

ちゅぱちゅぱ。ちゅぱちゅぱ。

唯「…ぷあ…。うふふ、気持ちよかった?」

長らく、それを続けて、ようやく梓の舌を開放し、「どうだった?」とばかりにいたずらっぽい笑みを向ける唯。

梓「…」

放心したように、コクコクとうなずく梓。
唯、それを見て満足そうな表情を浮かべる。

唯「じゃあ、交代。はい、べー」

梓「あ、あ、えと…どうやって」

戸惑う梓。
唯、「ん、ん」と、舌を梓に伸ばして行為を促す。
梓、観念したように、その顔を近づけ、行為を始める。

梓「し、失礼します…」

ちろちろ、と、戸惑いながら、おっかなびっくり、その舌を触れるように嘗め始める。

ぺろぺろ、ちろちろ、と、慣れない舌の動きで舌を刺激され、唯は却ってもどかしいような、じんじんするような快感を得ていた。

唯「…うふふ、上手だね、あずにゃん。じゃあ、次は、唇でして」

べー、と、再び舌を出す唯。
梓、促されるままに、その舌を唇でついばんだ。

ちゅぽ。ちゅぽ。ちゅぽ。ちゅぽ。

無心で、その行為に没頭する梓。
暫く続けるうちに、行為に慣れてきたのか、口の動きがスムーズになり、貪欲に唯の舌を求めてついばみ続けた。

唯「…ぷは…。うふふ。あずにゃん、上手。じゃあ、交代」

梓「は、はいです…べー」

何回も、何回も、交代交代にその行為を続けた。

続けるうちに、隣り合って座っているのがもどかしくなり、唯に促されるままに、梓は唯の膝の上に腰掛け、向かい合ってその行為を続けた。

何度も続けるうちに、たまに唇が触れ合い…いや、でも、これはちょっと当たっただけだから、セーフ。
…またちょっと触れて…今度はちょっと長い時間だったけど、それでもこれはキスじゃない。セーフ。
もっともっと、続けて、…これはもう、唇と唇で、お互いの唇をついばみ合っていて、…ああ、でも、これは、キスじゃない。キスじゃない。だから、セーフ。

そうして、たっぷりと、ねっとりと、二人は長い時間ディープキスを交わしていた。
部屋には、ちゅぱちゅぱと淫靡な音だけが響いていた。

…こうして、梓も、唯の手中に落ちた。後は時間の問題。

梓の身体と精神は、余すところなく唯の言いなりになるだろう。

事実上、梓は最早、憂と同様、唯のペットとなっていた。


唯「おーす。りっちゃんおーす」

律「おー、唯。おつかれさん」

あれから数週間後。
その日、部室に行くと、珍しく律が一人で机に腰掛けていた。

二人きりで、部室で向き合う。

唯はいつもと変わらない。
ただ、律は、いつもより少し、険しい表情で、唯を見つめていた。

唯、そのただならぬ雰囲気に、一瞬気圧される。

律「あのさあ唯。なんか隠してることない?」

唯、いきなりの問いかけに、意表を突かれて逡巡する。

唯「えー、なんだろ?どうしたの、いきなり?」

心当たりがあるのかないのか。
唯は、そんな絶妙な態度で律に応じる。
律は、その態度から、唯が本当の事を言っているのか、嘘をついているのか、全く判断できなかった。

律「…あのさ、唯。最近梓様子変だろ。お前なんかしただろ」

その言葉に、唯は何一つわかりやすい反応を示さない。
「え?」という表情で、全く心当たりがない、と言わんばかりの表情。

唯は内心、焦っていた。

これは一体、どういうことだろうか。
唯は今まで、みんなが不審に思わないよう、最低限の対策はしてきたつもりだった。

梓との過度な接触は控え、抱きついた際も以前のように拒絶するように指示し、そして、呼びつけたら速やかに密やかに自宅へ来るよう、入念に躾けていた。

その甲斐あって、最近は、ちょっと前にあったような微妙な空気が払拭されていたのだ。
少なくとも唯はそう判断していた。

唯「何かって何?」

どうしよう。

律「何かは何かだろ」

律は、明らかに何かに気づいている。

多分これは、律だけ。
紬も、澪も、何も気づいていない。いないはずだ。

いっそもう、律にだけは正直に話してしまうか。
でも、何て?

暫く考えて見たが、やはりここは、しらを切り通すしかないだろう。唯はそう判断した。

唯「ごめんりっちゃん。何言ってるのか分からない」

律「そっか。なんもしてないんだな」

唯「うん。もちろん」

唯「秘密を暴露させるボタンを使って、憂とあずにゃんを陥れてペットにしている。三人の関係は極めて良好。二人は一生私の物」

唯「えっ」

律「やっぱな」

ぎょっとした。
自分の意思とは無関係に、勝手に自分がしゃべり出した。

しかもその内容は、今正に秘匿しようとしている、重大な秘密ごとだった。
その内容を喋り終えた後で、唯は、ぎょっとして、自らが発した言葉の意味を反芻して、ようやく今の状況に気がづいた。

律を見やる唯。
その手には、唯が拾った物と同じストラップが掲げられていた。

驚いた。まさか、同じ物が二つあるなんて。
そして、それを、こんなにも身近な人間が持っていたなんて。

律「嘘つき」

唯「…」

唯は警戒した。
下手に返答はできない。今は律の出方を待つしか無かった。

律「お前、以外と腹黒いよな」

唯「…そんなんじゃないよー」

しばし、熟考して、唯はそう答えた。
事実、唯のメンタルは、腹黒いとは少し異なっていた。

良く言えば純真無垢。
悪く言えば、小学生くらいの頃の、残酷な童心をそのまま引きずった、大人としては余りに不完全な精神構造が、唯の一見腹黒く見えるメンタルの正体だった。

唯「で、りっちゃん、何それ?」

律「言うまでもないだろ。お前が持ってるのと同じ物だよ」

唯「悪用してるんだ。私と同じように」

律「してねーよそんなん」

律「秘密を暴露させるボタンを使って、澪を言いなりにしている。澪は最早完全に私に依存している。一生一緒にいさせる」

律、ぎょっとして自分の口を塞ぐ。
唯、にやりと顔を歪める。

唯「へー。りっちゃん、そんな事してるんだ」

律「ちっ」

次は唯の番だった。
ポケットから取り出したストラップを、ふりふりと掲げて見せる。

唯「人のこと言えないじゃん。腹黒いね、りっちゃん」

律「てめ」

目に見えて、澱んで行く空気。
緊張感。敵愾心。

緊迫した空気。張り詰める緊張の糸。

そして、二人は。

同時にそれを向け、お互いに押下した。

…その時だった。

夕暮れの空を、まばゆいばかりの閃光が覆った。


そこから、意識がとんで、ふわふわとした感覚の中で、私はぼんやりと天井を眺めていました。

唯「…」

始め、何が起こったのか、状況がよく分かりませんでした。

何か、大切な事を忘れていて、今すぐ何かをしなければいけないような、妙な焦燥感。

そして、それに逆らうように、私の身体をベッドに縛り付ける、強烈な倦怠感。

唯「…」

暗闇の中で、瞬きを繰り返す。呼吸を繰り返す。

徐々に、まとまりを帯び始めた意識が、徐々に覚醒に近づいて行きました。

チッ チッ チッ

時計の音。微かに、エアコンの音。

唯「…うわ…うわわわ…」

私は、徐々に、状況を把握していました。

唯「こ、この感じは…この感覚は…まさか…!」

私は、ようやく、状況を把握しました。

唯「夢オチかよ!」


終わり





最終更新:2012年05月06日 23:34