唯紬(紬唯)


唯「ねえねえ、ムギちゃんはコーヒーって飲める?」

紬「コーヒー? うん、一応飲めるけど、唯ちゃんは?」

唯「私は全然ダメなんだ~。砂糖とミルクたっぷり入れても、どうしても苦くって」

紬「そっかぁ。確かに、苦味全部は消えてくれないものね」

唯「そうなんだよねぇ……でもやっぱり、それがコーヒーの味なんだよね」

紬「唯ちゃん、コーヒー飲めるようになりたいの?」

唯「いや~そういうわけじゃないんだけど、なんかお父さんがおいしそうに飲んでたから、
  ちょっと羨ましくなっちゃって」

紬「唯ちゃんのお父さんは、コーヒー飲むのね」

唯「うん、朝によく新聞読みながら飲んでるよ。……う~ん、匂いはけっこう好きなんだけどなぁ」

紬「コーヒー、良い香りするものね~」

唯「……やっぱり、おいしく飲めるようになりたいなぁ、コーヒー」

紬「ふふ、そっか♪」

唯「ねえムギちゃん、なにか良い方法ないかな?」

紬「コーヒーをおいしく飲む方法?」

唯「うん。例えばムギちゃんは、普段どうやって飲んでるの?」

紬「私は普通にミルクとか砂糖だけど……でも、それだけだと」

唯「まだ飲めないんだよねぇ……」

紬「う~ん……そうなると、あとは何か――あっ」

唯「! ムギちゃん、なにか思いついたの?」

紬「あ……えっと、思いついたといえば、そうなんだけど……」

唯「おぉ~、さすがはムギちゃん! それで、どういうのなの?」

紬「え、え~っと……」

唯「うんうん!」




紬「……口移し、なんだけど」




唯「――へ? 口移し?」

紬「うん……」

唯「口移しだと、コーヒー飲めるようになるの?」

紬「え、えっとね? 前にちょっと、そんなお話を読んだなあって……」

唯「へぇ~、そうなんだぁ。それじゃあ、今日さっそく試してみるよ!」

紬「あっ、待って唯ちゃん!」

唯「? なあに、ムギちゃん?」

紬「その……私もお話で読んだだけだから、本当に飲めるようになるかはわからないの……」

唯「へ? そうなの?」

紬「うん……それに、口移しは協力してくれる人が必要だし……」

唯「あ、そっか……う~ん、むずかしいね」

紬「ごめんね、あんまり役に立てなくて」

唯「ううん、考えてくれてくれただけでも嬉しいよ! ありがとね、ムギちゃん」

紬「そ、そんな、お礼を言われるようなことは、私……」

唯「遠慮しなくても大丈夫だよ、ムギちゃん。だって私、嬉しかったんだから!」

紬「!! ――うん、それじゃあ、どういたしまして♪」

唯「えへへ~。あ、そうだ! ねえねえムギちゃん、今日部活終わった後、時間ある?」

紬「? うん、大丈夫よ」

唯「じゃあさ、今日の帰りに、試してみようよ!」

紬「試すって、何を?」

唯「もちろん、口移し!」

紬「!! えっ!?」

唯「私たちでさ、本当なのかどうか、確かめてみよ?」

紬「え、えっと……私と、なの?」

唯「うん! ……あ、もしかして、イヤだった?」

紬「ううんっ、嫌なんかじゃない!! ……けど」

唯「?」

紬「その……唯ちゃんは、私でいいの?」

唯「うん! だって私、ムギちゃんのこと大好きだもん!」

紬「え!? だ、大好きって……」

唯「それに、女の子同士だから、多分ノーカンだよね?」

紬「え? あ……そっか。うん、普通そうよね」

唯「? どうかしたの、ムギちゃん?」

紬「ううん、なんでもないの。それじゃあ、私でよければ、喜んで♪」

唯「あはは、ムギちゃん、それだとなんか私が告白したみたいだよ~」

紬「だって、唯ちゃん大好きって言ったもーん」

唯「ほほう、言いますなあ~? それじゃあ、OKしたムギちゃんは私の恋人だね!」

紬「ふふ、そうかも」

唯「えへへ、ムギちゃんだ~いすき!」

紬「私も大好きよ、唯ちゃん♪」


終わり





最終更新:2012年06月30日 20:31