こんにちは、琴吹紬です

私はひそかに日記をつけているのですが、今日はその中から数ページだけ皆さんに見せちゃおうと思います

笑ったりしないで下さいね?

・・・それじゃ始めます!


初めまして

私は琴吹家の執事で斎藤と申します

紬お嬢様の前に少しだけ私の日記を紹介します

紬お嬢様の成長日記

私の宝物です



1991年7月2日


奥様が無事出産

とても可愛らしい女の子だ

名前は「紬」という

紬お嬢様、奥様

お二人とも本当に嬉しそうに笑っていた

私は琴吹家に仕える事が出来て幸せだ


旦那さまから大事なお話があった

私はクビだそうだ

いままで琴吹の家に仕えてきたがそれも今日でお役御免

もう私は必要ないらしい

・・・これからは琴吹家ではなく、紬お嬢様専用の執事だ

紬お嬢様をお守りするのがこれからの私の役目

この身が朽ち果てるまでお仕えしよう

紬お嬢様、これからよろしくお願いします



1992年7月2日


紬お嬢様の1歳の誕生日

旦那さまは別荘を

奥様はピアノをプレゼントされていた

その他にも方々から数えきれないプレゼントをいただいたが、お嬢様はその事を理解しているのだろうか?

私は絵本を買ってあげた

寝る前に読んで差し上げた所とても喜んでいた

・・・紬お嬢様ももう1歳になったのか

時が経つのは早いものだ



1993年7月2日


紬お嬢様2歳の誕生日

盛大なパーティーが開かれた

紬お嬢さまは綺麗なドレスを着て笑っていた

ピアノの発表もあったのだが・・・やはり2歳の子供には早かったようだ

しかしあんなに楽しそうに弾いていたのだ、紬お嬢さまも満足だろう

私にはどんな高貴な音色より美しく思えた

・・・お嬢様専用の執事も随分増えた

私はその長としてこれからもお嬢様の笑顔を守っていかねばなるまい



1994年7月2日


紬お嬢様3歳の誕生日

昨年同様豪華なパーティーで誕生日が祝われた

プレゼントもどんどん高価になっていく

私は毎年些細なものしか送れない

しかしそれでも喜んでくれるお嬢様には本当に感謝している


今年は私にも娘が産まれた

「菫」と名付けた

初めて子供が出来たというのにあまり感動しなかった

・・・私はいつのまにか紬お嬢様を我が子同然のように思っていたのだ

妊娠の知らせを聞いた時は、お嬢様に妹が出来たと本気で思ってしまった

いかんいかん、まだボケるには早い

これからもしっかりお仕えしなくては



1995年7月2日


紬お嬢さまも4歳になった

今年は幼稚園の御友人も招いてのパーティ

お嬢様も御友人と一緒でとても楽しそうだ

今年は菫からもプレゼントを渡した

お嬢様の似顔絵のようだった

粗末なものだったがお嬢様は喜んでくれた

菫もそれを見て笑っていた

・・・本当に、姉妹のようだ

しかし菫もいずれお嬢様にお仕えする身

いつかはこんな関係ではいられなくなるのかと思うと少しさびしかった



1996年7月2日


紬お嬢様5歳の誕生日

今年は幼稚園の御友人とあまり話していなかった

少し寂しそうだったが菫と遊んで笑顔になったので大丈夫だろう

・・・お嬢様の御友人は、きっと親御さんから言われているのだろうな

失礼の無いようにとか、機嫌を損ねるなとか

それで溝が出来てしまっているのかも知れない

お嬢様の悲しい顔は見たくないのだが・・・私に何が出来るのだろう

琴吹の家に生まれたこと、それを後悔する事だけはしてほしくない



1997年7月2日


お嬢様も6歳、幼稚園も今年で卒業だ

パーティーは毎年開かれる

しかしお嬢様は相変わらず御友人と距離があるようだ

これから小学校中学校と上がっていくにつれこの傾向は強くなる

家では気丈に振舞っているが、寂しいはずだ

菫にもそろそろお嬢様への気遣いを教えた方がいいのだろうか?

いつまでもこんな馴れ馴れしい関係でいられるわけがないのだから

私は一体どうすればいいのだろう



1998年7月2日


お嬢様は7歳になった

小学校もある程度慣れてきたように見える

・・・しかし相変わらず御友人とは壁があるようだ

菫にも紬お嬢さまへの接し方などを教え始めた

「お姉ちゃん」と呼ぶ菫を見ると少し心が痛む


・・・今年は紬お嬢さまに日記をプレゼントした

お嬢様が欲しがっていた鍵付きの物だ



1998年7月2日


にっきをもらいました

さいとうがくれました

ほしかったのでうれしいです

これからまい日わたしのきもちをかきます

わたしはさいとうとすみれがすきです

お父さまとお母さまもすきです

おわり




紬お嬢さまが日記をつけ始めたのがこの日から


・・・私の日記はここまでとしましょう





1999年7月2日


8さいになりました

お父さまはほう石をくれました

お母さまはふくをくれました

さいとうは本をいっぱいくれました

すみれはまんがをくれました

あと色んなものをもらいましたが、あまりうれしくありませんでした

すみれのほかにも友だちがいればなーと思いました

みんなわたしとあまりあそんでくれません

パーティーには来てくれるのになんでなんだろう



2000年7月2日


9さいになりました

わたしの家はお金持ちだから、みんなこわがっているのかな?

お友達もたん生日プレゼントはくれるけど、目を合わせてくれない

そんなにこわがらないで

もっとふつうに遊んだりしたいよ

学校では一人ぼっちでさびしい


すみれはみんながいる時は「おじょう様」って呼ぶけど、二人の時は「お姉ちゃん」って呼んでくれるからうれしい

すみれしか遊んでくれる子がいない



2001年7月2日


今日で10才です

パーティーにはえらい人がたくさん来ました

学校のお友達も来ましたがいつもといっしょです

わたしは特別なんかじゃないのに

みんなにこにこしてるけど本当はわたしの事がきらいなのです

楽しい事もあるけど、かなしい事の方が多いです


パーティーが終わってすみれと一緒にやったテレビゲームが楽しかったです



2002年7月2日


11才になりました

今年のパーティーには学校でなかよくなった友達が来てくれてうれしかったです

その子はわたしと同じくらいお金持ちなのできっとこわがらないでくれるんだと思います

すみれいがいで初めて親友が出来たのでパーティーの間その子とずっと遊んでいました

これからもなかよくしていきたいです



2002年10月1日


今日は悲しい事がありました

わたしの親友の○○ちゃんが私とあんまり口をきいてくれなくなりました

最初は理由を教えてくれなかったけど、何回も聞いたら内緒だよって言って教えてくれました

私と気軽に遊んじゃだめだって言われたらしいです

どうして?

私の事をおこらせたらお父様が仕返しすると思っているの?

そんなわけないのに

どうして・・・



2003年7月2日


12才です

今年はじゅけんなので勉強すると言ってパーティーには出ませんでした

さいとうもお父様も心配してたけれど、もういいの

私にはどうせ誕生日を祝ってくれる友達はいないんだから


夜、すみれがまんがを持ってきてくれました

それを読んでたら主人公には友達がいっぱいいました



2004年7月2日


13才になりました

・・・もう日記をつけるのはやめようかと思います

とくに書くことも無いので必要ないと感じました

ごめんね斎藤、私もうこんな意味の無い事したくないの



2006年12月5日


日記を書くのはいつ以来かな

決心した事があるのでここに書きます

私は自分の決めた高校に行く

いままで私に友達が出来なかったのはお父様のせいでも家のせいでもない

私が何もしなかったから

だからこれからは自分でやりたいようにやるの

明日お父様を説得しようと思います



2006年12月6日


お父様には猛反対された

今まで通りお父様が決めた学校に行けって

でも別にいいの

何を言われても勝手にそこ受けるんだから

桜ケ丘高校

私はそこで変わるって決めたの



2007年2月1日


桜ケ丘高校を受験してきた

最後の最後まで反対されたけど、斎藤がお父様を説得してくれた

菫も応援してくれた

嬉しい

高校生になったら何しようかな?

電車通学とか!

あ、部活もやらなきゃね



2007年4月2日


私も今日から高校生です

周りには私の家の事を知ってる子はいない・・・はず

これなら友達も出来るよね!

とりあえず部活見学とかに行ってみたい!



2007年7月2日


16歳になりました

今年はいつもの誕生日パーティーとはちょっと違います

部活の友達がお祝いしてくれると言うので、初めてよそのお家にお邪魔しました

ちょっと小さい家だったけど、とってもいい雰囲気でした

いつも貰っているような高価なプレゼントじゃないけれど、今までで一番嬉しかったです

あ、一番は菫のかな?迷うわ


貰ったのはティーセット

「ムギちゃんがいつも使ってるのに比べたら安物だけど」って言いながら

値段なんて関係ないのよ、「あなたたちがくれたティーセット」はこの世にひとつしかないの

ずっと大切にするね!



2008年7月2日


17歳になっちゃった

私も歳をとったものね、なんて

今年の誕生日パーティーは唯ちゃんの家でやってもらいました

梓ちゃんが猫耳つけたり、澪ちゃんとりっちゃんが仲良かったり

あとさわ子先生が酔っぱらったり憂ちゃんがケーキつくってくれたり

まだまだいっぱいあって書ききれない!

えっとえっと・・・



2009年7月2日


紬「・・・」

紬「初めてね、日記に目を通すのって」

紬「こんなに書いてたんだ私」

紬「・・・昔の私はやっぱり誰かのせいにして逃げてただけ」

紬「自分から行動しないと何も起こらない」

紬「逃げてたから寂しかっただけなのにね」

紬「でも」

紬「変われた」

紬「戦ったから」

紬「・・・だから毎日こんなに楽しいのね」

紬「皆に出会えて良かった」

紬「菫と斎藤がいてくれて良かった」

紬「ありがとう、皆」

紬「18歳おめでとう、私」

紬「今日までよく頑張りました」

紬「どういたしまして」

紬「これからもがんばってね」

紬「・・・」

紬「さてと、そろそろ学校行かないと」


斎藤「もう出られるのですか?」

紬「ええ」

斎藤「・・・お嬢様、18歳の誕生日おめでとうございます」

菫「おめでとうお姉ちゃん」ヒョコ

斎藤「こら菫」

菫「今日くらいいいでしょ」

斎藤「全く」

紬「・・・ありがとう、二人とも!」

紬「行ってきます!」


―――

唯「ムギちゃんおはよ~!」

紬「おはよ~」

律「あ、今日ムギのt」

澪「おい律!」ガシッ

律「ふぐぐ」

澪「サプライズでやるって言ったろ!」ヒソヒソ

律「わりーわりー」ヒソヒソ

紬(去年とおんなじ事してるわ)クスクス

和「ほら席ついて」

唯澪律「はーい」

紬(さ、今日も一日頑張ろ!)




2009年7月2日


今年も誕生日パーティーをしてもらった

皆と過ごせる誕生日が何よりの宝物だって思う




2009年7月2日


お嬢様の18歳の誕生日

とても楽しそうで生き生きとしておられる

そんなお嬢様を見ることが出来て私も幸せだ



菫「おしまい!」



最終更新:2012年07月02日 23:37