七月七日、軽音部にて。
律「皆ー、今日は笹を持って来たぞ~!」
ジャジャーン!
唯「おおぅ! さすがりっちゃん隊員ですなっ!」
律「へっへっへー。
だろっ!?」
紬「笹~♪」
澪「こんなのいつの間に物置へ隠してたんだ?」
律「今日は朝早くに来てさ。
さわちゃんに頼んで部室に入れて貰って、な」ドヤッ
梓「はぁ、そこまでやりますか」
紬「そう言えば今日りっちゃん、クラスで一番乗りだったものね~♪」
律「おうっ! 早起きしたおかげで授業中の睡眠がはかどったはかどった☆」
澪「おいおい、駄目じゃないか!」
律「まあまあまあ、七夕の日くらい許してよ」
澪「まったく……
しかし、本当に持ってくるとは思わなかったよ」
唯「ほえ?」
澪「三日前だったか四日前だったかの夜、律と電話してたんだけどな……」
……………………
…………
律『そういや今度、七夕だな~』
澪「ああ。そうだな」
律『──よしっ! 決めた!!』
澪「ぅわッ!? な、何だよ急に大声出すな!」
律『私、部活に笹持って行く!』
澪「はあ?」
律『七夕の日に笹を持ってくぜ!
だから当日は皆で笹を飾って、七夕パーティーしようぜ!』
澪「何言ってるんだお前は」
律『えーっ!? 良いじゃんか、七夕は年に一度なんだぞっ』
澪「それはそうだが、部活を中止しても良い理由にはならないだろ?」
律『中止にはしない。
部活中にやる!』
澪「同じ事だっ!」
律『ちぇー。
澪ちゃんは冷たいわねっ。
七夕っつったら、年に一度織姫と彦星が再開出来るロマンティックな日なのですわよ?』
澪「……ロマンティック」
律『そうでござんすよ。
そりゃあ部活……と言うより練習も大事かもしれない。
でも、私たちがお祝いパーティーをして、そんな儚い恋人たちを祝福する事も大切なんじゃなくて!?』
澪「……まあ一理はある」
律『でしょう!?』
澪「だけど、笹なんてどうやって手に入れるんだ?」
律『それは大丈夫。心当たりがあるから☆』
澪「まあそれなら……
ただしちゃんと持ってこいよ? 他の皆はどう言うかわからないけど、そうしたら私はそのパーティー、賛成するよ」
律『オッケー!』
……………………
…………
澪「──と言う事があったんだ」
唯「へぇ~っ」
梓「でも、この笹……かなりしっかりしてますよね」
紬「素敵ね~♪」
律「だろぉ~?」エッヘン!
澪「正直、探すのや持ってくるのがめんどくさくなったり忘れたりして、持ってこないと思ってたよ」
律「ふっふっふー。
そこは、ところがどっこいりっちゃんよ!」
澪「実際どうやってこんな立派な笹を見付けたんだ?」
律「聡に探して貰った」
澪「」
紬「さとし?」
唯「だあれ?」
律「私の弟だよん。
聡に探させて、今日学校に運んで貰った」
梓「ちょ……ひどいですよ」
律「大丈夫だって。
見付けて貰った後は私も手伝ったし。
もちろん、学校に運ぶのもなー」
紬「あらあらまあまあ、良い弟さんなのね♪」
律「おうっ! 今回だって、尊敬する綺麗な姉に頼み事されて泣いて喜んでたし」
唯「仲良しだねぇ♪」
梓「えっと、律先輩が手伝ったんじゃなくて、弟さんが手伝ってくれた、と言うのが正しいのでは……?」
澪「……聡、大変だったな」ホロリ
律「よし、じゃあそろそろ飾って短冊も付けようぜ~」
唯「わーいっ!」
紬「は~いっ♪」
澪「まあ約束だしな。
私も良いよ」
梓「はい。私もこう言う日くらいなら……」
────────────────────────────
紬「うふふ♪」
梓「ムギ先輩、すっごく楽しそうですね」
紬「うん!
私ね、お友達と笹を飾ったりするの初めてなの~♪」
律「そっか。去年はこう言うのはやらなかったもんな」
澪「確か去年は、ムギが七夕用のお菓子を持って来てくれたんだっけ」
唯「和菓子だったよね。
美味しかったなぁ……」ポワポワ
紬「うふふ。
去年も楽しかったけど、今年はもっと楽しい♪」
律「ふっ! やっぱこのパーティーは大正解だったな!
皆、私の事は律部長サマと呼んでくれて構わんぞっ!」
澪「調子に乗るなっ」
唯「あははっ!」
紬「うふふ♪
……うん、それもあるけど……
また皆とこうして七夕を楽しめるから、って言うのが一番かな」
澪「ムギ……」
紬「皆と一緒じゃなかったら、こうやって笹や短冊を準備してても楽しさは半減すると思うし……
──それに、今年は」
唯「あずにゃんも居るもんね☆」ダキッ
梓「にゃっ!」
紬「うふふ、そうそう♪」ダキッ
梓「わわわ、ムギ先輩までっ!」
澪「ふふっ。
放課後ティータイムは……私たちは、去年よりちゃんと前に進んでるんだな」
律「おうっ!」
────────────────────────────
唯「さあー! 短冊も飾るぞぉーっ!」フンス
紬「はいっ!」フンス
律「梓、お前は何書いたんだ?」
梓「り、律先輩ダメです!
皆いっせーので付け始めるから、その時まで何を書いたかは秘密にするって決めたじゃないですか!」
律「ちぇー」
澪「ほらほら、早くやるぞ」
律「はーい!」
梓「あっ、待って下さいっ」
律「うっし、じゃあ1、2、3で始めるぞぉ!」
紬・唯『どんとこいですっ』
澪「ああ」
梓「はいです」
律「……1、2、3!」
バッ!
唯・紬・澪・律・梓『あっ……』
『ずっと皆と一緒に頑張って、いつか必ず武道館に行きたいです・・・
琴吹紬』
『少しでも憧れのアーティストに近付いて、将来私たち全員で武道館で演奏したい・・・
秋山澪』
『誰よりもギターが上手くなって、先輩方と武道館でライブ!・・・
中野梓』
『放課後ティータイム、世界を制して武道館ライブ決行だぁーーーーーーー!!!・・・
田井中律』
梓「皆……同じような事書いてますね」
律「へへっ、そうだな」
澪「うん」
唯「なんでだろ。
私、これしか思いつかなかったんだ」
紬「私もそうよ」
澪「やっぱり、私たち軽音部の……
放課後ティータイムの願い事って言ったらこれしか無いと思って」
梓「はい。
私たちの目標ですもんね」
律「おう」
紬「……うふふっ」
唯「えへへっ」
澪「──短冊、付けようか」
律「そうだな!」
梓「はいです!」
────────────────────────────
律「付け終わったぜ~!」
唯「ムギ、お茶をいれてくれぃ」フンスフンス
紬「はーい、あなた~♪」テテテ
澪「私たちも座ろっか」
梓「はい」
律「へへっ。この笹、最高だな!」
唯「うむうむ。
ずっと飾っていたいなぁ」
澪「うん……
でも、さすがにそれはな」
梓「こればかりは仕方ないですよね……」
…………………………
紬「皆、お待たせ♪」
唯「おおおっ! こりゃまた美味しそうだっ!」
澪「本当、いつもありがとうな」
紬「良いのよ~♪」
律「……うっしゃ! じゃあこれ食って練習しようぜ!」
唯「おーっ!」
紬「お~っ!」
澪・梓『!』
律「?
どうした二人共、驚いた顔して」
梓「い、いえ、ムギ先輩はともかくとして……」
澪「律と唯が練習をやる気になるなんて……」
律「何だよそれー。澪ちゃんも梓ちゃんも失礼な子っ!」
梓「す、すみません」
澪「ごめん。
でも今日は七夕パーティーをするって言ってたからさ」
律「うん。だから……
練習もパーティーの内の一つにしようぜ」
澪・梓『!』
唯「そうだね。
ギー太も一緒に七夕するぞーっ!」
紬「うふふ。
織姫さんと彦星さんに、私たちの演奏を届けましょ♪」
澪「……ああ。
ああ、そうだな」
梓「はいっ!」
律「それで今日の帰りにさ、この笹をどこか広い所に流しに行こうよ。
その時織姫と彦星に、私たちの願い事、必ず『叶えます』って誓おうぜ」
唯「それと、それとっ……
『今年もまた、再会出来てよかったね』って言うの!」
紬「『私たちにも楽しい一日をありがとう』とも伝えたいな」
梓「それ……良いですね」
澪「うん。そうするか」
律「──でもま、とりあえずは焦らずお茶とお菓子だ」パクパク
唯「たまらんですな、りっちゃん隊員っ」パクー
澪「はははっ、そうだな。
まずはしっかり頂こう」
梓「はいです!」
紬「皆、まだまだあるから沢山食べてね~♪」
おしまい。
最終更新:2012年07月07日 21:02