和「私だって嫌よ!こんなこと!でも何かが起こってるのは事実で現実なの!あのさわこ先生見たでしょ!?正気とはとても思えなかった!」

唯「……でも」

律「いや、和の言う通りだ。私達は置かれた立場をまるでわかっちゃいない」

唯「りっちゃん…」

律「感染症にしろ何にしろ私達はこんなとこで死ぬわけにはいかないだろ?みんなで最後の学園祭ライブやるんだからさ!」

紬「りっちゃん…」
梓「律先輩…」

澪「パクパク」

律「澪!いい加減現実と向き合え!」

ゆっさゆっさ

澪「……う、うあああああ」ダッダッダッ

律「澪!?」

澪は職員室から飛び出して行った。

律「澪の奴…!私は澪を追いかける。他のみんなは学校に他に誰かいないか放送で呼びかけて見てくれ。私も澪と一緒に行くから」

4人はこくりと静かに頷いた。

律「澪……」

澪「……」ブルブル…

これは夢だ夢なんだ…。

だから怖くない怖くない怖くない怖くない怖くない。

タッ…タッ…タッ…タッ

誰かが歩いてくる、

澪「……律?」

ガン!ガン!ガン!

ウゴォォォ!

澪「律じゃ……ない……。怖いよぉっ……」

女子トイレの一番奥で必死に踞る

澪「助けて……律……」

律「ったく澪のやつどこ行った~」

澪が震えてそうな所と言えば……。

律「トイレくらいしか思い付かないな~」

ガンッ!ガンッ!

律「……」


二階の女子トイレから音がする。

律「こえぇ……、怖い……」

勝気だが律も所詮は一女子高生にしか過ぎない。さっきの一件で律への恐怖心は有り余る程だった。

だが、

律「でも…澪は、私が守らないと」

昔からそうだった。
澪を守って来たのはずっと私で、でも高校を出て大学へ行けば澪にも彼氏ができたりして…それは私の仕事じゃなくなる

だから、今だけは

澪「うぅ……」

いつも私は律に頼りっぱなしだ……。
さっき体育館の申請用紙を出してないだけで怒っていた私が情けない…。

いつもあんなに強気なのにこんな時になるとすぐ律を頼るのは私の悪い癖だ…。

でも…

ガンッガンッガン!

澪「やっぱり怖いよ…律……」


「いつも言ってるだろ?澪は私が守るって」

澪「えっ……」

律「どりゃああああ!」

考えなしにただ突っ走る。
構えた鉄のドラムスティックを掲げ、
澪を襲う化物に一発くれてやる───。


女子トイレの一番奥の扉の前にその化物はいた。

それは前は私達の顧問で面白くて綺麗なさわこ先生……だった。

でも今は違う、目も白目で肌から肉が覗き足首は明後日の方向にねじ曲がっている

躊躇なくドラムスティックを延髄に叩き込む

「ウグゥ……」

さすがのゾンビでもこれは利いたのか前のめりになって倒れ込む。

律「澪!いるんだろ!早く!」
ガチャッ……

澪「う、うん」

澪「律……なんで…」

律に手をひかれながら聞いた。

律「澪センサーが反応したんだよ。な~んてな」

澪「ばか…」

そうじゃない…聞きたいのは私が何であそこにいたのがわかったとか…そんな表面上なことじゃないんだ

澪「律…なんでいつも私を…」

律「言わなくても澪が言いたいことはわかるよ。でもそれはわざわざ聞くことじゃないよ」

澪「えっ……」

律「澪は私が守るって私が決めたことだから。ずっと昔からね。私自身が決めてることだから」

澪「りつぅ……」

『ピーピー、あーあーマイクのテスト中。』

律「この声は唯か」

澪「走ってる最中に気の抜けた唯の声が聴こえると安心するな」

律「全くだ」

『りっちゃん澪ちゃん無事~?こっちはみんな無事だよ~。後他に誰か学校にいたら放送室まで来てください。以上で~す。ぴんぽんぱんぽ~ん』

『唯、それは放送終われば勝手に流れるわよ』

『そおなんだ~私放送って初めてだよぉ~』

『あのぉ~私も何かメッセージいい?』

『ええ良いわよ』

『りっちゃん澪ちゃん~放送室でとりあえずお茶にしましょう』

律「むぎも相変わらずだなっ」

澪「だな。あの……律。さっきはごめんな。申請用紙忘れたくらいであんなに怒鳴って」

律「な~に言ってんだよ。私が悪いんだから澪は叱ってくれていいんだよ。その方が私も落ち着くし。私の方こそごめん……和とのこと悪く言ったりして」

澪「いいんだ。でも何であんな言い方したんだ?和のこと嫌い…ってわけじゃないよね?」

律「澪の一番は私だって…気持ちが…その、」

澪「ヤキモチか」

律「う、うるさいぞっ」

澪「ふふ、そんなこと言わなくてもわかってるだろ。ずっと律が一番だよ」

律「ば、バカ何言ってんだ」

澪「ふふっ」

和「全く唯は余計なことしゃべりすぎよ」

唯「えへへ//」

和「(この状況下でこののんきさ…さすがと言うかなんと言うか…)」

ガチャッ

律「へいおまちっ」

澪「……みんな…心配かけてごめん」

梓「澪先輩!無事で何よりです」

唯「澪ちゅわ~ん」ぎゅっぎゅっ

澪「こ、こらっ」

紬「わぁ……うふふ……」ポターリ

和「ともかくこれで誰か来てくれるかもね」

律「さて……来てくれるのがちゃんとした人であることを祈りたいな」

紬「とりあえずお茶にしましょう。放送室にティーセットがあるなんてラッキーよね」

律「しかしこうしてお茶してると今の置かれている状況を忘れそうだな」

唯「全くだね~」

梓「二人とも緊張感なさすぎです!」

澪「でも具体的にこれからどうしたらいいんだろう…。やっぱりこう言うのって警察かな」

和「そうね…。私もそう思ってさっき携帯でかけてみたんだけど繋がらなくってさ…。」

澪「そう……」

紬「……。」

一同が重苦しい雰囲気になっていたとこだった

トントン

律「ん?」

トントン

唯「誰か来たんじゃない?!」

トントン

和「この普通のノックなら普通の人っぽいわね……。私が開けるわ」

トントン

和「は~い今開けますよ」

ガチャッ

ガバッ

和「!!?」

律「まさか!」

唯「和ちゃん?!」

少し離れた放送室のドアの前に走る一同。

和「大丈夫よ。」

「ぐすん……お姉ちゃん……」
唯「憂…?」
憂「お姉ちゃあああん!」抱きっぎゅぅっ
和「ちょ、私はちが」憂「グスン……」
和「……」
泣きじゃくる憂を優しく撫でる和
和「(妹も悪くないわね……)」

紬「じゅるり…」

唯「うい~良かったよぉ無事で。私てっきりもう家に帰ってるのかと思ってたよぉ」

憂「掃除当番で残ってて……何か学校の様子が変だからお姉ちゃんの所にいこうとしたら…さわこ先生が…」

律「さわこ先生ばっかりだな会うの。やっぱりさわこ先生のコスプレなんじゃ…」

和「私思い切り殴っちゃったわよ」

律「私なんか脛椎鉄の棒で殴っちゃった」

紬「それはないわ…目が……普通の人ではないもの」

澪「……」

梓「これからどうします…?」

和「とりあえず安全な場所に避難したいことろね」

紬「私の家とか……どう?」

律澪唯「それだ!」

梓憂和「?」


律「むぎの家なら軍隊が攻めて来たって籠城出来そうだよな!」

紬「それはちょっと言い過ぎじゃ…」

澪「何にしてもここにいるのは危険だ。さっきのさわ…いや、ゾンビがまた襲って来ないとも限らない」

唯「うん…さわちゃん…」

律「唯……。悲しいのはみんな一緒だよ。さわちゃんだって私達を襲いたくて襲ってるんじゃないんだ。全部感染症のせいだ。私達はまだ生きている。だからやれることをやろう?な?」

唯「……うん!」

律「よ~し決まり。」



F3放送室前
和「とりあえず今のうちにさっさとここを出ましょう。またゾンビに出くわすと困るしね」

澪「道順的にはここからA階段を使って降りるのが早いけど…」

憂「さっきこの下の女子トイレ付近にいました…」

律「ゾンビだけあって不死身ってわけか。迂回していこう。奥のB階段で降りて一階の下駄箱を目指そうぜ」

和「方円の陣で行くわよ」

方円の陣とは、敵が八方から攻めてきても対応出来るように円を描いた陣形で陣形八陣のひとつである

澪「和って本当物知りだな…」

ありがつ

和「何とか辿りついたわね」

梓「普通に走って来た方が早かったんじゃ…」

唯「私はみんなで手を繋いで歩いて楽しかったよ!ねーう~い」ぎゅむ

憂「うん♪」
お姉ちゃんといるとぽかぽかするなぁ~

紬「私も…」

澪「ともかく早くここを…」

ガチャッ、

澪「あれ、」

律「どしたー澪?」

澪「開かない。鍵かけられてる…」

和「えっ…そんな。一体誰が…」

律「しゃ~ない。パンツ見えちゃうけど隣の窓から出ようぜ」

そうして律が窓を開けた瞬間だった

律「……おい…」

澪「ん~どうした?」

律「澪!止まれ!そこから動くんじゃないぞ?」

澪「えっ、うん…」

律「和、来てくれ…早く」

その表情で真剣さを読み取ったのか和は駆け足で律の元へ向かう。

和「……。何よ……これ」

────────。

ウゴォォォ!

ウーヒャオッ!

ガァァ……

グォォ……

その目に映るものは、
校庭を埋め尽くすほどの、生徒や教師達のゾンビだった

和「今まで反対側の窓しか見てなかったから気づかなかったわけね……」

律「のんきにお茶すすってる場合じゃなかったってわけだ」

二人の様子を伺っていた紬が駆け寄る

紬「二人ともどうしたの?」

律「問題発生だ。正面のルートは使い物にならなくなった。他を探そう」

律は静かに窓を閉め告げる。下駄箱の窓はすりガラスになっており開けない限りは見えない。
みんなのことをパニックにしない為の律なりの考慮であった

和「ゾンビがちょっと校庭にいてね。危ないから他の場所から出ようって話してたの」

律「(さすが和だな…)」

和に話したのはさっきからの腰の据わり方があったからだ。案の定和はすぐに理解しパニックも起こさず律の考えを瞬時に読み取っている。

律「(さすがに生徒会は伊達じゃないっ)」

梓「……。なら裏の体育館から出たらどうですか?あそこからならすぐ国道に出られますし。そこでタクシーか何かを拾えば」

律「そうするか。」

澪「律……」

律「大丈夫だよ澪。みんな部長の私が責任もって守ってみせるよ」

澪「律…」

唯「じゃあまたあれだね和ちゃん!」

和「そうね。方円の陣、いっとく?」

憂「ほら梓ちゃん♪」ぎゅっ

梓「う、うい…」

紬「わ、私も…」

律「(誰一人として欠けさせるものか…この最高のメンバーを。)」

例え私が死んだって守ってみせる


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最終更新:2010年02月01日 22:48