和「お邪魔します。」
…相変わらず奇妙な動作をする律と唯を見て…
和「何してるの?あの二人」
澪「あ~あれ?いつもの事の延長だよ」
和「あっそ、じゃあいいわ」
紬「和ちゃんがこの時期に来るのは珍しいわね?」
澪「なんか不始末があったのか?」
和「今日は軽音部の話じゃなくて、クラスの方の話なのよ。」
澪「へ?クラスの話?」
紬「私達、クラスでなんか悪い事でもしたの?」
和「そうじゃなくて、学園祭のクラスの催し物の事よ」
紬・澪「学園祭?」
和「3年生って優先的にコーラスとか劇とかができるじゃない?」
和「もしコーラスに決まったら軽音部に指導してもらおうかな?って思って」
澪「なーんだ」
紬「良かったぁ~」
澪「そんなことはお安い御用だよ。」
紬「コーラスだけじゃなく、劇とかでも協力するわ!!」
和「ありがとう。それを聞いて安心したわ。」
和「正直、私たちのクラスは運動系が多いから学園祭での催し物って不安だったんだけど、最後なんだからみんなの思い出にしたいのよ。」
和「体育祭は信代や姫子達にお願いしているから、学園祭は引っ張ってね。」
澪・紬「了解!!」
梓(…あっ?先輩達っていいなぁ~。私も来年は憂や純と一緒のクラスになって同じようなこと言われたいなぁ…)
律「えっ?和が来てたの?」
梓「気が付かなかったんですか?」
唯「いやぁ~、律ちゃんがタルトが小さいって文句を言ってくるからさぁ~」
唯「大きさでケチをつけられたら負けられないでしょ!!」
梓(ムギ先輩!!想像どおりでしたね)笑
澪「でも私達にできることとしてはコーラスの指導程度かな?」
律「まぁ、まだ先のことだし、決まってから考えればいいんじゃない?」
唯「そうそう」
唯「でさぁ?」
唯「私たちの『秘すれば花』ってどうだった?」
梓「えっ?」
律「名演技だっただろ?」
梓「そ、それは…」
紬「良かったわよ!!まるで手に取るようにタルトの大きさ争いがわかったもの!!」
梓「そ、そうです!!そうです!!律先輩は欲張り過ぎで、唯先輩はもっとコストを意識するべきです!!」
唯「そっかぁ~、私がお菓子屋さんには向かないのかな?」
唯「お菓子は食べる方が良いよね!!」
律「そうそうお菓子は食べるものであって、売るものじゃない!!」
澪「でも、今の二人を見てて思ったんだけどさぁ、日本には本当にいろいろな演技があるんだなぁ~って思ったよ。」
梓「落語は一人芝居ですね。」
律「能は仮面劇だし。」
澪「狂言は喜劇だし。」
紬「歌舞伎なんか、男性が女性役をやっているのに全然気持ち悪くないし。」
紬「逆に、女性よりも女性らしい人もたくさんいるし。」
唯「そう考えると、日本ならコーラスなんかよりも劇の方が圧倒的に歴史があるってこと?」
紬「そうねぇ。今の合唱は明治以降だし。」
律「でも歴史のある芸能って男性だけじゃないか?」
律「たとえば能にしても歌舞伎にしても舞台にあがれるのは男性だけだし…」
澪「でも歌舞伎の始まりは『出雲の阿国』って女性だろ?」
律「だとしても、実際には歌舞伎では男性しかいないじゃん!!」
唯「おいしいところは男性が持っていくって事?」
澪「うーん…どうなんだろ?」
澪「やっぱり女性ってさぁ、出産で中断が発生するから仕方ないところがあるんじゃないかな?」
唯「え~!!それって差別じゃないの?」
澪「差別かどうかなんてわからないよ。だって私は結婚もしたいし、子供も欲しいし、子供を育てるって大変だと思うし…」
律「男性も出産すべし!!」
梓「そんな無茶苦茶な!!」
紬「あら?そんなことはないわよ。」
紬「今の幹細胞技術を応用すれば男性も妊娠出産できるようになるのよ!!」
澪「それって冗談?それとも本気?」
紬「もちろん後者よ。琴吹コンツェルンのとある研究所を訪れたら、子供を産むオスのマウスがたくさんいるわよ。」
律「それは見たくない!!」
澪「右に同じ」
唯「私も同じ」
梓「私も」
紬「ねぇ~。女の子の特権を男の子に取られたら悔しいじゃない!!」
紬「でも、市場的には結構需要があるんで研究してるんだって」
紬「ともあれ、話を戻しましょ!!」
紬「歌舞伎が凄いのは男性しか舞台にあがらないことなの。」
紬「世界で唯一じゃないかしら?琴吹家が呼ぶ海外のVIPは大抵『歌舞伎』を観てみたいっていうそうよ」
澪「でも歌舞伎って日本人でもそうそう観ないんじゃないか?」
梓「私は観た事ありません。」
律「同じく」
唯「同じく」
澪「私も…同じく」
紬「じゃあ。一度観る?招待してあげる。」
澪「でも、服装とかいろいろと格式があるんじゃないのか?」
紬「高校生なら高校生で観ればいいのよ。ちょっと座席は舞台から離れるけど制服で大丈夫よ。」
律・唯「決定!!」
梓「私もいいですか?」
紬「もちろん!!」
…観劇後…
唯「なんだろね?」
律「うん。なんだったんだろ。」
梓「正直、予備知識がなかったらさっぱりでした。」
澪「そうだな、でも流れはきれいだったよな。」
唯「それに女優さんが綺麗だった!!」
梓「あの~歌舞伎は全員男ですよ。」
唯「え~!!あれだけ綺麗なのに男性なの?」
澪「女性よりも女性らしいってところが凄いなぁ~」
一同「うーん」
唯「でもさぁ」
唯「感動したよね?」
唯「話はよくわからなかったけど感動したよね?」
律「そうそう!!なんでかわからないんだけど感動したした!!」
澪「大げさな動きなのに、心情が細かく描かれてるって私は感じたよ。」
梓「たぶん、女性役の人が男性だからこそ、私たちが気が付かないことを演技で表現してたんじゃないでしょうか?」
澪「歌舞伎かぁ~」
唯「放課後曽根崎心中!!」
梓「もうそのパターンは良いです。」
唯「歌舞伎って良かったよね~」
律「うん!!もう放課後○○○は卒業して放課後団十郎にしようぜ!!」
梓「それはちょっと…」
澪「でも、感動したよな。ムギに感謝だよ。」
紬「そこまで喜んでもらったら光栄だわ。」
紬「でも、この前観た歌舞伎は元々人間ですらない人形で上演したものなのよ。」
紬「人形ですら評判になったんだから人間が演じたらってことから始まったようなの。」
唯「でもさぁ~」
唯「男の人しか舞台に居ないのに、なんでそれを感じなかったんだろ?」
唯「なんか男の人の方が得な気がして悔しいよ…」
紬「唯ちゃん!!」
紬「確かに歌舞伎はそうだけど、女性だけの特権も今の日本にはあるわよ。」
澪「それって、あれか?」
紬「そう!!あれあれっ!!」
梓「宝塚?」
紬「正解!!」
紬「歌舞伎ほどの伝統はないけど、宝塚歌劇は女性だけの舞台!!」
唯「聞いたことはあるけど、観たことはないや」
紬「歌舞伎ほどの格式はないけど、熱狂度で言えば宝塚の方が凄いんじゃないかな?」
梓(…実は私…塚ファンなんだ…)
紬「今度は宝塚を観てみない?」
梓「はいっ!!」
…観劇後…
梓(ムギ先輩ありがとうございます!!、眼福そのものでした)
唯「ねぇねぇ、本当に女性だけなの?」
紬「えぇそうよ!!」
律「歌舞伎と違って話もわかりやすかったし、ウチらにはちょうどいいって感じだったな?」
澪「そうだな…それに男役の人の色気って凄かったなぁ~」
紬「女性が演じる男性って、魔性そのものよね?」
紬「澪ちゃんにはそれがあると思うわ。」
梓「そうです。澪先輩にはあります!!」
紬「あと8センチ背が高ければ、澪ちゃんは宝塚の大スターよ!!」
澪(…真っ赤に照れて…)
…実は HTT 以外にも招待されていた人が…
和「今日はムギに感謝しないとね!!」
憂「そうだね。和ちゃんと宝塚を観るのはずーっと夢だったんだから!!」
和「でも、不思議よねえ塚ファンが身近に二人も居るのに唯は無関心だったんだから…」
憂「でも、おねぇちゃんはそれでいいのよ。「ちょっと憧れの男役」っぽいおねーちゃんが私の大好きなおねーちゃんだし」
和「うふふ、憂らしいわね。」
和「でも、これで悩み事が1つ減ったかな?」
憂「和ちゃんなにか悩んでたの?」
和「うーん…深刻じゃないけど学園祭の催し物の事。」
和「コーラスか劇がって悩んでたけど、やっぱり劇にするわ!!」
憂「宝塚みたいな劇?」
和「だって女子高だもん」
憂「だったら澪さんが男役のトップになって欲しいなぁ~」
和「それは当然でしょ。」
憂「でも娘役は…」
和「残念ながら唯はなれないわね」
憂「だよね~」
憂「澪さんの相手は紬さんか律さん!!」
憂「和ちゃんもいいけど、和ちゃんはまとめ役だもんね。」
和「そうなのよ。でも私も男役トップを演じたい気持ちはあるわよ!!」
憂「わかってるよ。でも無理なんだよね。」
憂「無理が通るなら、娘役は絶対に私だよ!!おねぇちゃんにも譲らない!!」
和「うふふっ!!わかってるわよ。私の相手は唯じゃなくて憂!!」
憂「わぁい!!」
憂「でも澪さんの相手って難しいね。」
和「そうなのよ。幼馴染も含めて律が良いんだけど。」
和「見た目のバランスだと…」
憂「紬さんですよね?」
和「でもムギは絶対にフロントには立たないのよ。」
憂「紬さんらしいですよね。」
和「まぁ、私の政治力ってところかしら…」
憂「和ちゃんなら、みんな納得できるところに落ち着くんじゃない?」
和「そうねぇ。」
和「とりあえずムギを裏方に回せば万事うまくいくんじゃないかな?」
憂「紬さんは別格としても、律さんよりも綺麗な人もいるけど…大丈夫?」
和「憂の言うとおりだけど、みんな運動系クラブなんで、体育祭で頑張ってもらうから大丈夫!!」
憂「そっか!!さすが和ちゃんだね。」
…数か月後…
律「おーい。澪!!頑張れよ」
…
世の中、なにがどう作用するなんてだれもわかりません。
終わり
最終更新:2012年07月22日 00:44