ようやく和が紬邸についた頃、辺りは真っ暗になっていた。
雷も酷くとても出歩く状態ではない
和「早くむぎの家に入って暖まりたいわね…」
しかし立派な建物ね、アメリカのS.T.A.R.S.本部並じゃないのよ
開けてもらう為にインターホンを押すが、反応がない。
和「あれ?どうなってるの?」
鳴って出ないならまだ納得も出来る、いやそれはそれで怖いものがあるが音さえ鳴らないのはどの様な用件か。
和「もしかして…」
ピカッ…
ゴロゴロ…!
和「雷でブレーカーが落ちたとかかしら」
この時和は5分前に紬邸に来ただけで状況など全く知らない、予想する以前の問題である。
和「みんながブレーカーを上げてくれるまで待つしかないか…さすがにこの壁の高さは越えられないし…」
和「はあ…」
バイクにうつ伏せになる和。
和「(さすがに色々ありすぎて疲れたわ…眠りたい…)」
ん…
ボヤッと遠くに人の輪郭が浮かび上がる。
ゾンビかしら…
チャキン…
いつでも対応出来るように刀の柄を親指で少しだけ押し上げて抜く。
ゾンビ…いや、違う…しっかり直立歩行している…。
なら……生存者……
「フリーズ!!」
和「!?」
よくは見えないが拳銃を持っているのか何かをこっちに構えつつ前進してくる。
和「(喋れるってことはとりあえずゾンビではないみたいね…)私はゾンビじゃありません。銃を下ろしてください」
「……それは悪かった。すまない、許してくれ」
銃を下げこっちへ向かって歩いてくる。
男の人のようだ。
「少し雨宿り出来るところで話さないか?俺はレオン・S・ケネディ」
和は今日二度目の自己紹介を口にした
むぎの家の向かいにあるマンションの階段に腰かける二人
レオン「君はどうしてここに?」
和「私はこの街の学校の生徒で友達と一緒に逃げていたのですが途中ではぐれてしまって。で、あの家が友達の家でもしかしたらいるかなと思って来たんです。」
レオン「なるほど、大変だったな君も」
和「レオンさんは?」
レオン「君と似たような理由さ。日本の警察を勉強する為にって何週間かこっちの警察にお世話になる予定だったんだけどね。今日初日でこの有り様さ」
和「それは…ついてませんね」
レオン「あぁ、泣けるぜ…」
レオン「良ければ君達の脱出を協力しよう。か弱い女の子達だけ残して男の俺だけ脱出するわけにも行かない」
和「ありがとうございます。けど私達なら大丈夫ですよ。」
そう言いながら刀を見せる。
レオン「まあここまで生き残ってる時点でただ者じゃないとは薄々思ってたがな。」
和「それにレオンさんも他にやることがあるんじゃないですか?」
レオン「……」
和「あんな雨の中を歩き回ってまでやりたいことが」
レオン「君は本当にただの女子高生じゃないみたいだ。ちょっとこの街で知り合ったエイダと言う女性を探していた」
和「エイダさんですか……知りませんね…。(まだ生存者がいるなんて…と言うか…)」
和「あの、変なこと聞くようで悪いんですが気分が悪くなったり体が痒かったりしませんか?」
レオン「いや、特にはないな。雨で濡れ続けていたから肌寒いのは寒いが」
和「そう…ですか」
雨でウイルスが弱まってるのかしら…。でもどのみち予備はもうないし…
和「あ、あの。またまた変なこと聞きますけど何かワクチンみたいなものうちました?」
レオン「いや、うってないな。本当に変なこと聞くな君」
和「(何なのこの人…)」
和「(まあ今まで発症してないってことはこの人がTウイルスに対して抗体が出来ているとしか考えようがないわね…。S.T.A.R.S.にほしいわ…)」
レオン「じゃあ俺はそろそろ行く。お互い無事にここを脱出しよう」
握手を求めて来たレオンに快く応じ握り返す和。
和「一つだけ頼めますか?」
レオン「あぁ、何でも言ってくれ」
和「そのエイダさんが見つかって脱出に困ったらここへ来てください。きっと力になれると思います」
レオン「その時は頼む。じゃあな」
再び雨の中を走って行くレオン。
和「世の中には色々な人がいるわね。」
さて、そろそろブレーカーを上げてくれてる筈
さっさと合流して色々話さないとね
───────。
ピンポーン
和「あ、鳴った。」
「……」
和「出ないわね…」
ガチャ
「ギイィィィ」
ガチャ
和「何あの鳴き声。……本当に大丈夫かしら…」
ウゥゥゥ
和「でも開いたからからいいか」
中に進む和。
和「ゾンビとかはいないわね…」
紬の家なら衛星電話とかあるかも…さすがにそれは期待し過ぎか
すんなり中に入れて安心してると入った瞬間緑の体の怪物が襲いかかってきた。
「ギイィィィ!」
和「さっき受け答えしてたのってハンターだったのね…」
右腕を突き出す様に飛びかかってくるハンターの左側に走り込みすれ違い様に斬りつける。
「ギ、ギイィィィ…」
和「ふぅ、タイラントに比べるとやっぱり劣るわね。」
さて、唯達は…
近くの部屋などを探してみたが見つからない。
和「ブレーカーを上げに行ったまま戻ってないのかしら…」
まあ敵にやられたってのはなさそうね。
銃痕にまみれた死体のハンターを見てそれは確信していた
和「まさか本当に衛星電話があるなんて…凄いわね」
ピッポッパ
プルルル、プルルル
クリス「どうした?何かあったのか?」
和「私よ。クリス、状況を的確に教えて」
クリス「おぉ居てくれたか。K市だからもしかしたらと思ったが。今は上の許可が出ないのと天候からそっちに行けずにいる」
和「なるほど…俺から聞いた通りね」
クリス「あのバカと会ったのか?」
和「えぇ。今は救助者を守ってもらってるわ」
クリス「帰って来たら覚悟しておけと伝えておいてくれ」
和「ふふ、わかったわ」
和「私はこれから友達…救助者と合流してあなた達が来るのを待つわ」
クリス「澪達のことよろしく頼む。後「俺」のこともな」
和「澪達も電話したのね。わかったわ。」
クリス「爆撃までには必ず迎えに行く」
和「爆撃?!どう言うこと?」
クリス「軍お得意の殲滅作戦だろう。今から数時間後に行われるらしい」
和「大丈夫なの?」
クリス「生存者がいるのは報告したから多少は猶予をくれるだろう。俺を信じてくれ」
和「……わかったわ、リーダー。あ、この電話したのは澪達には内緒ね」
クリス「あぁ、わかった」
ガチャ
和「さて、唯達の元に行こうかな」
しかしどこがどうなってるのか……
和「あっ、パソコンがあるじゃない。この屋敷の見取図とかあるかも…」
ウィィン
和「これも衛星…恐るべし」
え~と見取図…見取図…
ん?
『琴吹の研究結果によりネメシス型の…』
和「何このファイル…。…ロックかけられてるのがますます怪しい…」
思いつくパスワードを片っ端から叩き込む
和「駄目ね…数字だけじゃなくアルファベットも入ってるのは解読不能に近いわ…。て言うか琴吹って紬の名字…。そう言えば日本のアンブレラ社の代表社長は琴吹だった筈…」
まさか…ね
和「……この琴吹って言うのが紬のお父さんだとすると……」
パスワード
TSUMUGI
和「解けた……。」
そこに書かれていたことは信じられないほど残酷な内容だった
ネメシスの人体実験による結果報告
Gウイルスについて
T103の改良型の計画
など…
和「まさかむぎの父親が日本のアンブレラの親玉とはね…」
でもむぎが悪いわけじゃない…。これで彼女を攻めるのは余りにも酷だ
和「尚更早く合流しないと…」
見取図に目を通しブレーカーのある電気室を目指す
和「参ったわね…まさか電気室にいないなんて…」
宛もなく途方にさまよっていると…
「……んな……に……」
和「声が聞こえる…。唯?」
声が近づく方へ行く。
和「ようやく合流出来るわけね…」
その声がする部屋へ入ろうとした時だった────。
唯「死のう?」
和「えっ……」
壁越しに絶句する…さっきのは間違いなく唯の声だった
その唯が、死のうって…
紬「唯ちゃん……」
唯「私には無理だよ…このままゾンビになる憂を見るのも…それを殺して生きるのも」
何言ってるの……唯
あなたがそんな……こと言うなんて
唯「憂とはね…ずっと一緒だったの。うちはお母さんやお父さんがよく出掛けたり単身赴任したりするから家で二人のことが多かったの。一緒に泣いたり笑ったり…アイス食べたり…」
和「(憂ちゃんが…発症したの…?)」
でも研究所があるここなら治せるはず…
むぎも知ってるはずなのに…何で黙ってるの?
唯「憂のこと…誰よりも大好きだからぁ…。」
どうして!
唯「ういが死んじゃう゛なん゛て…やだよぉ…」
むぎ……!ギリッ
和「そう…そう言うつもりなの…紬」
なら私も容赦はしない。
唯が悲しいことは私も悲しい…から
扉に手をかける、
この状況を打破するための情報を私は持っている……
「らしくないわね、あなたたちがこんなお通夜みたいな空気出すなんて」
唯は、私が守る
そうして表と裏は繋がった──────
最終更新:2010年02月01日 23:10