菫「おきて、お姉ちゃん」

菫「おきてってば!!」

紬「ふにゅ」

菫「もう…お昼になっちゃうよ、お姉ちゃん!」

紬「……あと10分だけお願い」

菫「本当に後10分だからね!」

紬「菫、大好き愛してるわ……ぐーーぐーー」

菫「もう……」


△じゅっぷんご

菫「お姉ちゃん、10分経ったよー」

紬「もう?」

菫「うん」

紬「あと20分だけ。お願いっ」

菫「だーめっ! 起きて朝ごはん食べよ」

紬「菫、愛してるわ」

菫「うん。私も」

紬「だからあと5分だけ」

菫「そんなこと言っても駄目なんだから!」

紬「いけず~」

菫「ほら、はやくご飯食べにいこうよ」

紬「部屋に持ってきて欲しいの!」

菫「最近お姉ちゃん引きこもり気味だよ。ほら、行こうよ」

紬「持ってきてくれないなら三度寝しちゃいます!」

菫「……」

紬「……」

菫「もう……わかったよ。朝ごはん持ってきてあげるから起きてね」

紬「やったっ!」


紬「うんうん。朝ごはんといえば焼き鮭ね」

菫「屋敷で和食にしてるのお姉ちゃんだけだよ」

紬「いけない?」

菫「いけなくはないけど…」

紬「菫も和食にすればいいのに」

菫「……それは置いといて、そろそろ食べないと冷めちゃうよ」

紬「じゃあ食べさせてくれる?」

菫「えっ」

紬「あ~ん」

菫「口をあけても駄目だよ」

紬「あ~ん」

菫「もっと口を大きく空けても駄目なものは駄目」

紬「あ~ん」

菫「駄目だったら駄目!」

菫「最近お姉ちゃんおかしいよ」

菫「昔はもっとしっかりしてたのに……」

紬「……」

菫「もう……知らない!」

紬「……行っちゃった」


紬(私に弟ができて半年が経った)

紬(そのこと自体はとても嬉しい)

紬(おかげで私が家を継ぐ必要はなくなってしまった)

紬(だけど、そのせいで今の私は宙ぶらりん)

紬(まさにニート状態)

紬(こんなことなら就職活動しておけばよかったかな…)

紬(はぁ…)

紬(最近は毎日ぐーたら状態)

紬(夏季休暇中の菫に甘えすぎて、呆れられるなんて……)

紬(はぁ……)

紬(……)

紬(……)

紬(泣いちゃいそう……)


菫「……お姉ちゃん」

紬「戻ってきてくれたの?」

菫「うん」

紬「ごめんね、菫。甘えすぎて」

菫「ううん。私も言い過ぎたよ。お姉ちゃん色々あったもんね……」

紬「私…どうしたらいいのかしら」

菫「そんなの私にはわからないよ」

紬「……そうね」

菫「……」

紬「……」

菫「……」

紬「朝ごはん食べちゃいましょうか」

菫「…うん」

紬「……」ムシャムシャ

菫「……」ムシャムシャ

紬「……」ムシャムシャ

菫「……」ムシャムシャ

紬「……」

紬「菫のスクランブルエッグちょっと分けてくれる?」

菫「はい」

紬「……」ムシャムシャ

菫「じゃあお姉ちゃんの焼き鮭ちょっと貰うね」サッ

紬「あっ」

紬(一番脂ののった部分をとられちゃった)

菫「どうかした…?」

紬「なんでもないわ」シュン

菫(……むぅ。お姉ちゃん落ち込んでるようです)

菫(鮭を勝手にとったのが悪かったかな)

菫「……」シュ

紬「あっ、私の鮭」

菫「あ~ん」

紬「食べさせてくれるの?」

菫「うん」

紬「あ~ん」パクッ

紬「うん。美味しい」

菫「自分で食べても一緒でしょ」

紬「そんなことないわ!」

菫「……もうこまった二十三歳なんだから」

紬「……」シュン

菫(あっ、地雷ふんじゃった?)

菫「あの…お姉ちゃん?」

紬「菫、食べ終わったら膝枕」

菫「えっ」

紬「膝枕」

菫「……うん」

紬「……」ムシャムシャ

菫「……」ムシャムシャ

紬「……」ムシャムシャ

菫「……」ムシャムシャ


△食後
菫「……これでいいかな」

紬「うん」

菫「……」

紬「……」

菫「……」

紬「……」

菫「……」

紬「……」

菫「……」

紬「……ちょっとお茶いれてくるね」

菫「それなら私が」

紬「ううん。私がやるから」


△数分後

菫「……」ゴクッ

紬「…どうかな」

菫「正直に言っていい?」

紬「うん」

菫「腕落ちたね」

紬「……」シュン

菫「でも美味しいよ」

紬「ほんと?」

菫「うん。本当」

紬「膝、いいかな」

菫「うん」

紬「ねぇ、菫」

菫「…なに? お姉ちゃん」

紬「私、お店を始めようかなって思うの」

菫「なんのお店?」

紬「紅茶を出すお店」

菫「紅茶!? うん。とってもいいと思うよー」

紬「そう?」

菫「うん。とっても素敵だよ」

菫「いつからお店開くの?」

紬「そんなにすぐには無理よ」

菫「なんで?」

紬「色々準備が必要でしょ」

菫「でもお姉ちゃん蓄えは十分あるんでしょ?」

紬「……オープンできても赤字垂れ流しじゃ意味無いでしょ」

菫「そっか」

紬「だからね、あの店でバイトさせてもらおうと思うの」

菫「あの店って……お姉ちゃんがいつも紅茶を仕入れてた店?」

紬「うん。そしてお店をやるためのノウハウを掴もうと思うの」

紬「お客さんがどういうところに惹かれてお店にくるのか」

紬「バイトの子をどうやって管理しているのか」

紬「どこから仕入れているのか。どういう茶葉を扱っているのか」

紬「接客に必要なノウハウは何なのか」

紬「その他にも色々!」

菫「……お姉ちゃん」

紬「何?」

菫「お姉ちゃん!」ガバッ


紬「ぐへっ」

菫「…お姉ちゃん?」

紬「……」

菫「……死んでる」

紬「……勝手に殺さないで」



菫「……あれ、何言おうと思ってたんだっけ」

紬「忘れたなら大したことじゃないと思うわ」

菫「そう……んなわけないじゃん!!!」

紬「わっわっ、そんなに激しく動かないで///」

菫「お姉ちゃん! 私感動しちゃった!!」

紬「えっ」

菫「お姉ちゃんがそんなにまじめに将来のこと考えてただなんて」

紬「これくらい当然よ」

菫「ふふ。いつから働くの?」

紬「実はもう話は通してあるの。明日からバイトをはじめるわ」

菫「すぐなんだ」

菫「……」

紬「菫?」

菫「……」

紬「…菫?」

菫「あっ、何?」

紬「どうしたのぼーっとしちゃって」

菫「ねぇ、お姉ちゃん」

紬「なぁに?」

菫「……やっぱりなんでもない」

紬「…変な菫」

菫(お姉ちゃんがもし無事にお店をオープンさせられたら)

菫(私も雇って欲しいって)

菫(言おうかなーって思ったけどやめとこう)

菫(その時になったら言えばいいよね)

紬「菫?」

菫「ねぇ、お姉ちゃん。今日は一緒にお菓子でも作らない?」

紬「一緒にお菓子づくり? やるやる」

菫「じゃあさっそく何を作るか決めよ」

紬「うん!」

菫「ねぇ、お姉ちゃん」

紬「どうかした?」

菫「ううん。なんでもない」


おしまいっ!



最終更新:2012年08月10日 11:06