唯「最近、あずにゃんのスキンシップが激しすぎる気がするんだけど……」モグモグ

律「んー?何だ、惚気か?余所でやってくれ余所で」

唯「違うよ!」

澪「うん、まあ最近の梓はグイグイ押して行ってるよな……っと、律」ヒョイ

律「おっ、サンキュー。へへ、澪の卵焼きは美味しいんだよなー♪ほい、お返し」ヒョイ

澪「ありがと」

紬(何て自然なお弁当交換……!さすがりっちゃんと澪ちゃんね!)

唯「グイグイ来すぎだよー……」

律「いいじゃん、スキンシップ好きだろ?もともと唯が梓に抱きつきまくってたんじゃん」

唯「そうだけどさ、あれは恥ずかしがるあずにゃんが可愛くて……」

紬「あら?唯ちゃんは積極的な梓ちゃんは嫌いなの?」

唯「そ、そういうわけじゃないけど……」

律「梓も戸惑う唯が面白くてエスカレートしてるのかもな。いっそ梓の攻めを受け入れてみたらどうだ?」

唯「むっ、りっちゃんにしては良い意見だね。あずにゃんを受け入れて、それで……」

紬「にゃんにゃんして、イケるとこまでゴーね!」ウフフ

唯「ダメじゃん!」

澪「……」メモメモ

律「ん?みーお、何書いてんの?」

澪「いや、良い歌詞が浮かびそうな気がしてさ。女の子のアクティブな恋を描く感じで……」

紬「モデルは梓ちゃん?凄い曲が出来そうね!」

唯「……うん、すごい変態ソングが出来る悪寒がするよ……んっ、私ちょっとトイレ行ってくるね」

――――

梓「最近、唯先輩とのスキンシップが足りない気がするんだよね」モグモグ

純「はい?梓いっつも唯先輩にベタベタしてんじゃん」

梓「まだ足りないんだよ。私の唯先輩分はチャージに時間がかかるからね」

純「唯先輩分ってあんた……」

梓「あ~、唯先輩の胸に飛び込んで思いっきりギューってしたいなあ」

憂「あはは、お姉ちゃんあったかくて気持ちいいもんね~」

梓「うんうん、柔らかいしいい匂いするし、最高だよ」

憂「お姉ちゃんに抱きしめられるとホワホワしちゃうよね」

純「何だこの会話」

梓「あーあ、唯先輩の話してたら余計に唯先輩分を補給したくなってきちゃった」

純「放課後まで我慢しなよ発情猫」

梓「放課後までかあ……ん、私ちょっとトイレ行ってくるね」

純「あ、私も行くー」

梓「え?私三年のトイレ行くけど」

純「三年生のトイレ!?何でわざわざそんな遠い所に……」

梓「もしかしたら唯先輩に会えるかもしれないじゃん」

純「梓、そんな涙ぐましい努力を……」

梓「それにもしかしたら、唯先輩と一緒に個室に入れるかもしれないし」

純「そんなことはありえない」

梓「というわけで私は行くね、じゃあまた後で!」ダッ

純「あっ、……行っちゃった。憂、トイレ行かない?もちろん近いとこのね」

憂「うん、行くよ」


唯「あっ」

梓「あっ」

唯「あずにゃんもトイレ?奇遇だねー」

梓「はい、奇遇ですね」

唯「でもここのトイレってあずにゃん達の教室から遠いよね?何でここに……」

梓「決まってるじゃないですか。唯先輩に会うためですよ」キリッ

唯「ふえっ!?……そ、そっかー///」

梓「会えてよかったです」

唯「むむ……あずにゃんも言うようになったねえ」

梓「成長したんです。褒めて下さい。唯先輩分を補給させて下さい」

唯「唯先輩分とやらが何なのかは知らないけど、とりあえずトイレが先だよあずにゃん君」

梓「あ、そうですね。じゃあ一緒に入りましょう」

唯「一緒には入らないよ?」

梓「私って真ん中の個室って何故だか好きじゃないんですよね。奥のほうでいいですよね?」

唯「無視しないであずにゃん!」

……

唯「何だか最近あったかくなってきたね~」

梓「そうですね」スリスリ


梓「……♪」クンカクンカ


梓「はい?」

唯「熱いうえに歩きにくいから、その絡みつくようなくっつき方はやめない?」

梓「え?嫌です」

唯「即答だね」

梓「唯先輩、シャンプー変えました?」スンスン

唯「あと匂い嗅ぐのもやめてね」

梓「わがままですねえ」

唯「あずにゃんには言われたくないよ」

梓「ご存じのとおり、私は唯先輩にくっついてないと死んでしまうんです」

唯「初耳だよそんなこと……ほら、とりあえず離れた離れた」グイー

梓「あう……ゆいせんぱいぃ……」グスッ

唯「何で泣くの!?」

梓「ひっく、ぐす……」

唯「ああもう、じゃあ手!手をつなごう!」ギュッ

梓「あ……えへへ、唯先輩の手あったかいですね」

唯「泣いた子がもう泣きやんだよ」

梓「恋人つなぎってこんな感じでしたっけ?」

唯「わわっ!?指を変なふうに絡ませてくるのはやめてあずにゃん!」

梓「ふふふ、唯先輩をねっとりと絡めとってあげます」

唯「変な言い方もしないの!もーっ!」


紬「梓ちゃん、ついに泣き落しまで会得したというの……!?」

律「振り回されてるなあ唯のやつ」

澪「……」

律「ん?澪、どうかしたのか?」

澪「い、いや、何でもない……」

紬「あらあら?唯ちゃん達を見て、りっちゃんと手をつないで帰りたくなっちゃったとか?」ワクワク

澪「ぅえっ!?ち、ちが……っ!///」

紬「もう、澪ちゃんってば素直じゃないんだから!ほらほらりっちゃん、澪ちゃんをエスコートしてあげないと!」

律「ええっ!?え、えーと、その……んっ///」ギュッ

澪「り、りつ……えへへっ」ニコッ

紬「こういう初々しいのもいいわあ……」ウットリ


……

梓「むう……」

唯「ん?どうしたのあずにゃん、唸ったりして」

梓「あ、唯先輩。実は進路のことでちょっと……」ペラッ

唯「進路調査票かあ。あずにゃんもそろそろ将来について考える時期なんだねえ」

梓「はい。色々考えてはいるんですが、何故か先生に書き直せって言われちゃいまして……」

唯「ああ、あるある!私もミュージシャンって書いて、さわちゃんに呆れられちゃったんだよね~」

梓「先生たちは頭が固いんですよ」

唯「でもあずにゃんって成績良いし普通に進学じゃないの?どれどれ、何て書いて……」

唯「……」

梓「どうして固まってるんですか唯先輩」

唯「いや、あずにゃん?」

梓「はい?」

唯「私の目に狂いがなければ、この調査票には『お嫁さん』って書いてあるように見えるんだけど……」

梓「書いてありますね」

唯「しかも、『唯先輩の』っていう修飾語までついてるし……」

梓「唯先輩のお嫁さんを希望しているんですから当たり前でしょう」

唯「……」

梓「……」

唯「ああもう、ちゃんと書き直しなさい!こんなの通るわけないじゃん!」

梓「えー」

唯「えー、じゃないの!もうっ!ご丁寧に名前欄が『平沢梓』になってるし!」

梓「中野唯のほうがいいですかね?」

唯「いや、そういう問題じゃなくてね……」

梓「私的には唯先輩のお嫁さん的ポジションが良いので、平沢姓を推したいところなのですが……」

唯「はあ……何かあずにゃんと話してるとたまに凄く疲れるよ……」

梓「私は唯先輩と話してると凄く元気になりますよ?」

唯「うん、それはいいからとにかく書き直し!ほらほら、ペンを持って!」

梓「むう……」ブー

唯「むくれないの。ほら、ちゃんと大学進学って書いて」

梓「……」

唯「あずにゃん?」

梓「……唯先輩と、一緒の、大学っと」カキカキ

唯「……まあそれくらいならいっか。みんなでバンド出来るし、ね」

梓「はい。ずっと一緒にいたいです……」

唯「あずにゃんは甘えんぼさんだねえ」ナデナデ

梓「えへへ……結婚はとりあえず大学に行ってからですかね」

唯「はいはい」

……

唯「ふわああ……眠いぃ……」フラフラ

梓「ほら、しっかりして下さいよ唯先輩。危ないですよ」サワサワ

唯「……体を支えるフリして変なとこ触るのはやめようね、あずにゃん」

梓「ちっ」

唯「それにしても今日は疲れたねえ」

梓「久しぶりにいっぱい練習しましたからね」

唯「すっかり暗くなっちゃったねえ……早く帰らないと」

梓「そうですね……あっ」

唯「ほえ?」

キラッ

梓「……流れ星ですよ、唯先輩」

唯「わあ……」

梓「綺麗ですねえ。唯先輩ほどじゃありませんけど」

唯「そうだねえ」

梓「せっかく誉めたのにスルーですか。顔を赤らめて慌てて否定しちゃうとか、そういう可愛い反応を見たかったんですが」

唯「流石に使い古された言葉でそんな過剰反応はしないよ」

梓「むう……」

唯「ところであずにゃん、流れ星って見ている時に三回願い事をすると叶うっていうよね?」

梓「ああ、言いますね」

唯「私あれ成功したことないんだよね~」

梓「そうなんですか?まあ普通にやっても無理な気はしますが……あっ」

唯「え?あっ、また流れ星!」

キラッ

唯「えっとえっと、ギターがもっと上手く……いや、美味しいものをもっといっぱい……あれえ」ワタワタ

梓(唯唯唯)

唯「うう、やっぱり無理だったよ……見えなくなるの早いよお」

梓「ふっふっふ、私はたぶん成功しましたよ?」

唯「ええっ、本当に!?あずにゃんすごーい!」

梓「えっへん。褒め称えて下さい、ハグして下さい」

唯「もう、あずにゃんはそればっかり……おめでとう♪」ギュウッ

梓「……♪」

唯「ところで何をお願いしたの?」

梓「ふふ、秘密にしときます」

唯「え~?あずにゃんのけち~」

梓「でもまあ、叶えてもらえそうではありますよ?」

唯「へえ、いいなー」

梓「というか、現在進行形で叶ってるのかも」ボソッ

唯「あずにゃん、何か言った?」

梓「いえいえ。早く帰りましょう、唯先輩」グイッ

唯「わわわっ、急に引っ張らないでよ~!」


……

梓「……」

唯「ふんふん♪」

梓「……」

唯「らんらん♪」

梓(唯先輩が、構ってくれない……私以外の子に夢中になってる……)

唯「えーっと、確か替えがこの中に……」ゴソゴソ

梓(唯先輩……)グスン

唯「あれー?どこに入れたんだっけ?」

梓(あずにゃんはここですよ。もっと構って下さい……)ウルウル

唯「う~ん……」ゴソゴソ

梓(ゆい、せんぱいぃ……)

唯「あっ!ここにあったのか~」

梓(ううう……私から唯先輩を奪う、憎き存在……)

唯「待たせてごめんね。今すぐ取り替えてあげるからね~♪」ナデナデ

梓(唯先輩を夢中にさせ、あのしなやかな指にいつも優しく触られてるあの子……)

唯「よーし、行くぞ~……」プルプル

梓(私だって唯先輩といつも一緒にいたいのに!あんなことやこんなことをしたいのに!)

唯「とりゃー!」パチンッパチンッ

梓(許せないよ……)

唯「ふい~、一仕事終了!次はっと……」

梓「許せないよギー太!唯先輩をかけて勝負だ!」ガタッ

唯「こらこら、無機物に嫉妬しないの」ペチン

梓「あう」

唯「まったくあずにゃんは……」

梓「唯せんぱぁい……」グスッ

唯「もう、ギー太の弦を張りかえたら一緒に練習するんでしょ?それまでおとなしく待ってなさい」ナデナデ

梓「にゃあ……」


律「平和だなー……」ズズー

澪「そうだな」

紬「……」

律「どうしたムギ、黙り込んじゃって」

紬「ううん、りっちゃんは澪ちゃんのエリザベスに嫉妬したりしないのかなあって」

律「はあっ!?す、するわけないだろー!」

紬「そうなの……?澪ちゃんはどう?りっちゃんがドラムにかかりっきりで寂しくなっちゃったりしない?」

澪「いや、別にそういうのはないな」

紬「ふむ……」

紬(自分がお互いの一番だと理解し合っている故の正妻の余裕という感じかしら……?)

紬「それもまたよし!」フンス!


……

梓「……」

唯「あれ?あずにゃん、どうしたの?」

梓「あ、唯先輩。見て下さい、雨ですよ雨」

ザー…

唯「あー、今日は夕方から降るかもって言ってたからねえ」

梓「……唯先輩、傘持ってきてます?」

唯「うん!憂が持たせてくれたんだ~♪」

梓「そうですか……」

唯「もしかしてあずにゃんは持ってきてないの?」

梓「はい、うっかりしてました」

唯「おおう、しっかり者のあずにゃんにしては珍しいミスだねえ」

梓「そうですね……あの、」

唯「じゃあ一緒に入ってく?あんまり大きい傘じゃないけど」

梓「……はい、お願いします!」パアアッ

パシャパシャ

梓「えへへ……相合い傘ですね」

唯「そうだねー。あずにゃん、肩濡れたりしてない?」

梓「大丈夫ですよ、唯先輩にしっかりくっついてますし」ギュー

唯「……ちょっとくっつき過ぎな気がするなあ」

梓「濡れちゃわないようにするためですよ。唯先輩ももっと私にくっついて下さい」ギュー

唯「……まあいっか」


憂「あれ?梓ちゃんは折りたたみ傘を持ってたような……」

和「ふふ、唯と相合い傘をしたくて嘘をついちゃったのかしら?可愛いわね」

憂「……」

和「どうしたの?」

憂「えっと、傘忘れちゃったから……和ちゃんのに入れてくれないかな?」モジモジ

和「え?でも憂も……」

憂「……ダメ?」ウルウル

和「……はいはい。一緒に帰りましょ」

憂「えへへ、ありがとう!」





最終更新:2012年08月12日 01:32