* * *
紬「五分経ったわ。答えを聞かせて」
律「……私は残る。部活の後輩の友人だ、放ってはおけないよ」
澪「私も律と同じく。多分、梓も同じ意見だと思う」
紬「そう。唯ちゃんと憂ちゃんは?」
唯「私達も残るよ。……それでね、皆にお願いがあるの」
唯「いいよね、憂?」
憂「うん」
唯「ありがと」
律「なんだよ、こんな時に勿体ぶる話題なんてあるのか?」
唯「あのね、皆」
唯「絶対に私達のこと、信じてくれる?どんなこと言っても、絶対に」
律「えっ?」
澪「どういうことだ?」
憂「……私達も純ちゃんと同じ、といえばわかりやすいかもしれませんね」
紬「それって、まさか……」
唯「そう」
唯「私と憂は、宇宙人なんだ」
紬「そんな……!」
憂「信じてもらえますか?」
紬「……純ちゃんのことがあるし、私は信じるわ。検証している時間も無いもの」
憂「ありがとうございます」
* * *
律「……で、宇宙人のお二人さんは、何をするつもりだ?」
憂「純ちゃんにモノを凍らせる能力があるように、
私達にもそれなりの能力があります。今回、それを利用します」
憂「ですから、私達二人に任せてください。絶対に純ちゃんを止めてみせます」
律「どうする?任せていいと、思うか?」
澪「私は任せても大丈夫だと思う」
澪「とても危険なことだと思うけど、私達に出来ることもない。
それに二人とも、自信に満ち溢れた顔してるからな」
紬「私も同じ意見ね。きっと二人ならなんとかしてくれると思う」
律「そうか。ん、それなら部長の私は部員の意見を尊重するだけだ」
唯「あれ、りっちゃんって部長だったっけ?」
律「ゆーいー?」
唯「冗談、冗談だって!……ちょっと本気だけど」
律「このやろ……って、今はそれどころじゃないか」
律「帰ってきたら得意技のチョーキングで歓迎してやるから、覚悟してろよ?」
唯「りっちゃん、それを言うならチョップスティックだよ」
憂「それは箸だよ、お姉ちゃん」
唯「あれ?」
澪「お前らだと、いまいち締まらないよな……」
律「まあまあまあ、これが私達らしいってことで」
紬「そうね」
澪「否定できないことが悔しいよ……」
* * *
澪「……さて、二人とも。もう少しで自衛隊の人達が来てしまう」
澪「何としても、純ちゃんを止めるんだ。ここが戦場になる前に!」
唯「りょーかいだよ!」
憂「頑張ります!」
澪「……それじゃあ、行ってらっしゃい!」
唯・憂「行ってきます!」
‐外‐
純「……」
純(……ふふ、もう癖っ毛が戻り始めてる……!
この調子でいけば、あと少しで元のさらさらヘアーに!)
憂「純ちゃん」
純「……あれ、憂と、そのお姉ちゃん?」
唯「やっほー」
純「何しにきたんですか。まさか私を止めに来たとか?」
唯「その通り!」
純「それはそれは……残念です。もう止めるつもりはありませんから」
憂「無理矢理でも止めるって言ったら?」
純「……無理矢理にでも押し通すしかないでしょ。寒い言葉、いくよ」
純「コールドな日には池も“凍るど”!」
唯「“憂”はかわ“うい”!」
「……」
純「……な、何も起きない!?どうして!」
唯「残念だったね」
唯「もし、私達が宇宙人じゃなかったら、純ちゃんは目論見を達成できただろうけど」
純「えっ……」
憂「驚いてるね。そうだよ、私達も宇宙人なんだよ」
純「まさか!?」
憂「そして、純ちゃんの氷結能力と同じく、私達にも人間と違った能力が備わってるの」
純「……どんな能力よ」
憂「それはね」
憂「あらゆるスキルを吸収し、それを即座に応用する能力」
純「それは、つまり……?」
憂「具体的に言うと」
憂「お姉ちゃんがギターの演奏技術をあっという間に手に入れたり。
私があらゆる家事にあっという間に精通していたりってこと」
憂「これらは、この肌で感じ、目で見た“スキル”を吸収したということなんだよ」
憂「……お姉ちゃんは忘れっぽいのがたまに傷だけど」
唯「えへへ~」
唯「そして、今のは純ちゃんの能力を吸収して、応用したんだ」
唯「純ちゃんが“寒い言葉”で“物体を凍らせる”ように、
私達は“温かい言葉”で“物体を温める”能力を手に入れたんだよ」
純「それで私の能力を相殺したというんですか!?」
唯「そういうこと」
純「……以前から平沢姉妹の特異性には目を見張るものがありました。
が、まさかそんな裏事情があるとは思いませんでした」
唯「降参する?」
純「まさか。私の寒い言葉のレパートリーを舐めない方がいいですよ!」
純「“布団”が“ふっとんだ”!」
唯「“初”々しさもかわ“うい”、“憂”!」
純「“屋根”までふっとんだ!“や~ね~”!」
憂「“唯”お姉ちゃんは、とってもかわ“ゆい”!」
純「“家”までふっとんだ!“いえ”ーい!」
憂「コタツとみかん!」
純「って、それダジャレでもなんでもないし!」
唯「勝手にダジャレに制限したのは純ちゃんだよ?」
憂「寒い言葉なんて、ダジャレ以外にもたくさんあるのにね!」
純「……し、しまった……!
ただの寒い言葉でもいいということを、忘れてた!」
唯「そして、それはこっちも同様なんだよね」
唯「……純ちゃん、終わりだよ」
唯・憂「……あったか、あったか!!」
純「あ、」
純「あったかああああああああああ!」
* * *
「……ちゃん。純ちゃん」
純「はっ!」
憂「起きた、純ちゃん?」
純「……」
憂「……」
純「……私、負けたんだよね」
憂「そうだね」
純「はあ……町も気温も、髪までも元通りになってるね……」
憂「これがあるべき姿なんだよ」
純「……私の髪以外、そうかもね」
憂「ふふ、そうかもしれないね」
純「なんだよう。私の気持ちわかってくれるなら、止めないでよう」
憂「でも私、純ちゃんのその髪が大好きだから」
純「へっ?」
憂「もふもふ~」
純「さ、触るなー!」
唯「もふもふ~」
純「唯先輩いつの間に!?って、二人とも離れろー!」
唯・憂「もふもふ~!」
* * *
純「……疲れた」
唯「ごめんごめん」
憂「あまりに気持ち良かったから」
純「もういいよ。私が悪いことしたんだし、その罪滅ぼしだと思えば何とかなるし」
唯「じゃあもうちょっと」
純「これ以上は超過料金が発生しますよ」
唯「けちー」
* * *
律「唯~!」
唯「みんな!」
律「おいおい、本当にやってくれるとはな!
というわけで約束の空手チョップ食らいやがれ!うりゃあ!」
唯「痛!?」
澪「律、それも多分違うと思うぞ」
律「ん、そうだったか?」
紬「攻撃的な面は当たってると思うけど……」
紬「まあ、それは置いといて。二人ともお疲れ様」
憂「ありがとうございます」
唯「本当に疲れたよー。痛みのほうが酷いけど」
律「すまん」
紬「そう言ってくると思ったから、疲れも吹っ飛ぶ美味しいケーキを用意したわ~」
律「よっしゃ」
澪「お前じゃない」
紬「……さて、純ちゃん」
純「ごめんなさい」
紬「純ちゃんは反省よ?」
純「はい……」
紬「反省し終わったら、一緒にケーキね?」
純「……はい!」
憂「純ちゃん、元気になるの早すぎない?」
純「だってムギ先輩のケーキだよ!?軽音部の根幹にあると云われてる、高級ケーキ!」
澪「……云われちゃってるのか」
紬「ふふっ、いいじゃない。これで私達の“日常”が戻ったのだと思えば」
澪「誇れることじゃないけど……、まあ、それはそれでアリかもしれないな」
律「しっかし、まあ……。本当にお日様も元気なようで。快晴ってやつだな」
憂「本当に気持ちのいい天気ですね。夏真っ盛りのはずなんですけど」
純「ふふん、私のおかげだね」
紬「本当に反省してる?」
純「ゴメンナサイ」
憂「大丈夫だよ、純ちゃん。そんなに縮こまらなくても、紬さんはとても優しい人だから」
唯「そうそう、ムギちゃんだもん」
唯「……それにしてもだよ、憂」
憂「どうしたのお姉ちゃん?」
唯「今日は本当にあったか、あったかだね!」
憂「……うん!」
* * *
「えー、お天気です。
今年の夏は、非常に厳しい冷夏となる模様でしたが」
「突然、発生源不明の冷たい空気が消え」
「今度は関東地方を中心に、大変暖かい空気が日本中を包み込んでいます」
「現在関東地方全体の気温の平均は20度。大変過ごしやすい気温で、
今日一日は快晴ということもあり、絶好の外出日和といえそうです―――」
* * *
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‐琴吹宅・解凍室‐
梓「……」
梓「……外から、なにやら賑やかな声が聞こえるなあ」
梓「いつの間にか、お日様も出てるみたいだし」
梓「……」
梓「あれ、まさか私のこと忘れられてる?」
梓「……」
梓「……お日様が出ていても全部が明るいわけじゃないんだよ!?」
‐お し ま い‐
最終更新:2012年08月14日 03:04