紬「最初から」

律「最初からって…」

紬「高校1年生の頃から」

律「え”っ」

紬「今年で八年目」

律「ずっと私のことを好きだったんだ…」

律「……なんでいままで黙ってたの?」

紬「私が告白しちゃったら、HTTの空気が壊れちゃうかと思ったの」

律「……」

紬「それに、付き合わなくても一緒にいられるだけで幸せだったから」

律「そうなんだ」

紬「……本当のことを言うと、今日はりっちゃんに告白するためにきたの」

律「……」

紬「最近全然りっちゃんに会えなくて寂しくて」

紬「気づいたら、お店の子に頼んで、ヤマト便で送ってもらっちゃってた」

律「おいおいおい」

紬「ねぇ、りっちゃん。りっちゃんの気持ちを聞かせて」

律「……」

紬「……」

律「……ファーストキスだったんだぞ」

紬「えっ」

律「ファーストキスだったんだ」

紬「あっ、うん」

律「……」

紬「……」

律「わかれよ」

紬「……どういうこと?」

律「責任とれってこと」チュ

紬「えっ、りっちゃん。それって」

律「正直、自分でもムギのことが好きなのかどうか分からないけど」

律「告白されて悪い気はしなかった」

紬「うん」

律「だから付き合ってもいいなーって思ったんだ」

紬「女の子同士だけどいいの?」

律「ムギがそれを言うか」

紬「……うれしい」

律「なぁ、ムギもファーストキスだったのか?」

紬「……」

律「……つむぎさん?」

紬「えーっと実は…」

律「……飲み会で酔った女の子にキスされたと」

紬「職場の子なんだけどね。油断が過ぎたわ」

律「……なんかムカつく」

紬「嫉妬?」

律「そうかも」

紬「え”っ」

律「…? 何かおかしなこと言ったか?」

紬「……うん。だってりっちゃん私のことを好きかどうかわからないんでしょ」

律「それでもムカツクんだ」

紬「……そうなんだ。じゃあさ」

律「なに?」

紬「舌いれてキスしよ。それはやったことないから」

律「……うん」


――――

梓(今日は律先輩の誕生日)

梓(澪先輩とムギ先輩が企画立案した誕生パーティーが行われる予定です)

梓(私は今、律先輩がちゃんと家にいるか確認するために、律先輩のアパート前にいます)

梓(……あれっ、鍵が空いてる。無用心ですね…)

梓(入ってみよ)

梓(あっ、律先輩いたいた。横にいるのはムギ先輩?)

梓(……えっ)

くちゅ、ちゅぱっ、ちゅっ、くちゅっ…

梓(……)

梓(……)

梓(……)

梓(なんでふたりがディープキスしてるの~~!)

紬「あっ、梓ちゃん」

律「え”っ」


―――

律(それから色々あった)

律(梓が唯や澪にキスの件を触れ回ったせいで、随分と追求された)

律(恩那組やわかばのメンバーも集まり、狭い部屋でパーティーは盛大に催された)

律(皿や食材はムギの店が提供してくれたそうだ)

律(持ってきてくれたのは直だ。今はムギの店で働いているらしい)

律(沢山の酒が振舞われ、数時間後にはみなダウンしてしまった)

律(素面のナオがムギ以外の全員を送り届け、最後にムギだけが残った)


紬「直ちゃんいい子でしょ。私のところで働いてくれてるのよ」

律「なぁ、ムギ?」

紬「なぁに、りっちゃん?」

律「ひょっとして、酔ってムギにキスしたのって直のやつか?」

紬「……」

律「おいっ」

紬「きっと菫と間違えたのよ。ほら、同じ金髪だし」

律「あの二人付き合ってるの?」

紬「そうじゃないけど……」

律「なぁ、ムギ。ちょっと考えてることがあるんだ」

紬「なぁに?」

律「さっき言ってたじゃん。私が働けば客が増えるって」

紬「うん。言ったわ」

律「パーティーの間中考えてたんだ」

律「私達さ……付き合ったとしても、ほとんど逢う時間がないわけじゃん」

律「それならさ、いっそムギの店で働かせてもらうのも悪くないかなって」

律「それにさ、今日のムギを見てて私、気づいたんだ」

律「働いてるムギを見るのが自分は好きなんだって」


律「…ムギ?」

紬「それは…やめたほうがいいと思う」

律「なんでだ?」

紬「さっき仕事がきついって言ってたりっちゃん、楽しそうな顔してたから」

律「そんな顔してたか?」

紬「仕事が大変だ―大変だ―って言ってるお父さんの顔、してたよ」

律「どんな顔だよ!」

紬「とってもいい顔」

律「……そうだな。今の仕事から逃げるのは私も嫌だし。でもそれだとムギと――」

紬「ねぇ、この近くにいいアパートがあるの」

紬「私とりっちゃんの職場の中間あたりにあるアパートなんだけどね」

紬「一人で住むにはちょっとだけ高いの」

律「いくらだ?」

紬「月13万円」

律「微妙だ」

紬「でね」

律「言わなくてもわかってるよ」

紬「もうっ、大好き」

律「それもわかってる」

紬「りっちゃん」

律「なんだ?」

紬「生まれてきてくれてありがとう」

おしまいっ!


りっちゃあああああああん!!!!
たんじょうびおめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!



最終更新:2012年08月21日 02:37