律「ふう」ジャー

律「10分か、そろそろ戻っても大丈夫かな」

律「ただいま~」ガチャ

律「うわ真っ暗じゃん」

澪「・・・」

律「澪?布団の中か?」

澪「・・・」

律「寝てんのか?」

澪「ん」

律「電気つけていい?」

澪「駄目」

律「お?なんか机の上にあるぞ」

澪「ん」

律「見ていいのか?」

澪「いいよ」

律「暗くてよく見えない・・・あ、ケーキだ」

澪「うん」

律「あとこれは・・・暗くて分かんない」

澪「・・・電気つけていいよ」

律「・・・」

澪「律?」

律「とう」ドサッ

澪「わっ、何してんだよ律」

律「へへへ」

澪「やめろって狭いから」

律「まあまあ」モゾモゾ

澪「ちょ、くっつくなよ」

律「このふにふにした物は何かな~?」

澪「バカやめろ!・・・ッ!」

律「暗くて何も見えないから仕方ない」

澪「何が仕方ないだ、ほら電気つけるから」

律「ああん」

澪「変な声を出すな!」パチ

律「まぶしっ」

律「・・・さて、机の上には」

律「おお、ケーキと・・・これは何の箱だ?」

澪「・・・」

律「開けるぞ?」

澪「ん」

律「あ、これって」

澪「前に店でずっと眺めてたから・・・」

律「ネックレス・・・」

澪「・・・」

律「ははっ」

澪「・・・」

律「ありがとうな、澪」

澪「ああ」

律「付けていいか?」

澪「ん」

律「どう?似合ってる?」

澪「まあまあ」

律「へへっ」

律「ありがと、ホントに嬉しいよ」

澪「いいよ別に」

律「ケーキ食べよっか」

澪「うん」

律「いただきます」

澪「どうぞ」

律「おいしい」モグモグ

澪「そうだな」

澪「ま、ムギのケーキには敵わないけどな」

律「んな事無いよ」

澪「そうかな?普通のケーキだぞ」

律「澪が私の誕生日の為に買ってきてくれたケーキだ」

律「嬉しいから普通よりずっと美味しい」

澪「何言ってんだバカ」

律「こんなんで感動できるバカで良かった」

澪「バカだなホントに」

律「なあ澪」

澪「何?」

律「大人になるってなんだろうな」

澪「なんだ急に」

律「子供の頃は20歳になったら大人になると思ってた」

澪「まあな」

律「でも20歳なんてまだまだ子供だ」

澪「ビールも飲めないしな」

律「うっさい」

澪「ふふ」

律「じゃあいつ大人になるんだ?結婚したらか?」

澪「それは・・・大人っぽいな」

律「でもきっと結婚してもその時にまた同じこと言ってそうな気がする」

澪「うん」

律「子供産んだら大人になるのか?」

澪「それは限りなく大人になるんじゃないか」

律「まあその時も同じ事言うかも知んないけどな」

澪「そんな歌あったよな」

律「ドラえもんの歌だろ」

澪「小さい頃見たなー」

澪「あ~僕は~どうして~大人になるんだろ~」

律「あ~僕は~いつごろ~大人になるんだろ~」

律「澪」

澪「ん」

律「これからも一緒に居ような」

澪「・・・仕方ないから居てやるよ」

律「ありがとな」

澪「・・・こちらこそ」

律「照れちゃって可愛い奴め」

澪「うるさいな」

律「・・・じゃそろそろ帰ろうかな」

澪「そっか」

律「もうこんな時間かー」

澪「久々に夜更かししたよ」

律「こんな可愛い子が歩いてたら襲われちゃうかも」

澪「じゃあ律は安心だな」

律「・・・」

澪「・・・はは」

律「・・・プッ」

澪「あはは」

律「ははは」

律(覚えてろよ)


律「それじゃ」

澪「ああ、一応気をつけて帰れよ」

律「はいはい」

澪「おやすみー」

律「おやすみ」バタン

律「さて帰るか」

律「あ、やべビール忘れた」

律「・・・ま、いっか」

律「さっき可愛くないって言われた分はこれで支払ってもらおう」

律「・・・へへ」

律「このネックレス、ホントは澪に似合うだろうなって思ってずっと眺めてたんだけど」

律「私がつける事になるなんてな」

律「・・・♪」


私の名前は田井中律

N女子大の2年で今日で20歳になった

20歳にはなったけど私はいつ大人になるんだろう

ビールも飲めないし未だに親の世話になってる

いつか私も大人になるんだろうか

大人になったら私は、私の世界はどう変わっていくんだろうか

大人になる事はそんなに大事な事なんだろうか

子供の私には分からない

でも私は、大人になる事より大切な事を知っている

大人になっても今と変わらない大切なもの

大人も子供も関係ない、一番大切な物を持っている



私の幼馴染で、ずっと一緒に過ごしてきた一番の友達

怖がりで、恥ずかしがりで、泣き虫で、すぐ怒って

メルヘンで、真面目で、努力家で、優しくて・・・

澪の事は私が世界で一番理解ってる

今日の事だってそうだし、いままでだってそうだった

そして澪も、私の事を世界で一番理解ってくれてる

そんな友達が居る事が私にはすごく嬉しい

きっと澪に出会えたことが、私にとっては最大のプレゼントだったんだろう


私の名前は田井中律

そして

私の親友の名前は、秋山澪


おしまい



最終更新:2012年08月21日 07:57