35 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 01:28:47.21 ID:t/eSe3Aw0
→E:「だ、だね……早く帰ろう!」
……まあ、いっか。皆と楽しく帰ろうっと。
気を取り直し、唯は皆の言葉に従った。
まだちょっとした不安は残ってはいたが、それ以上にだんだん勢いが強くなっていく雨模様が心配だったのだ。
雨にあたらないよう、ギー太を抱えるようにして持ち、腕に力を込める。
時折音を鳴らして吹く風が、唯の肌を冷たくしていく。
隣で寒そうにしている澪と同じように、唯もぶるりと体を震わせた。
律「よっし、じゃあ家まで競歩だ、競歩!」
梓「わっ!? ちょっと跳ねましたよ律先輩!」
紬「うふふふ。なんだか楽しいわね~」
澪「た、楽しい……か? まあ、皆いるし恐くは無いけど……」
唯が震えを我慢している間に、スピードを上げて歩き始めた四人との距離が少しあいてしまったようだ。
慌てて唯が追いかけようとすると、固まって進んでいた四色の傘が唯の方に向き直った。
律「唯も早くいくぞー!」
梓「唯先輩、また濡れないでくださいね……?」
澪「どうした? 寒いのか?」
紬「まあまあ……大丈夫、唯ちゃん?」
心配そうな四人の視線に、唯は心が温かくなるのを感じた。
鳥肌が立っている手は見ないことにして、「大丈夫だよー!」と元気よく叫んだ。
それから急ぎ足で四人に追いつくと、笑い合って、家路を急いだ。
36 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 01:29:15.22 ID:t/eSe3Aw0
やっとの思いで家にたどり着き、震える手でインターフォンを押す。
すると、ドアの向こうから急ぐような音が聞こえ、数秒のちに扉が開いた。
憂「おかえり、おねえちゃん……ってうわっ!」
唯「た、ただいまぁ……うい……」
憂「どうしたのお姉ちゃん!? ちょっと濡れてる……足下とか」
ドアから出てきた憂は、どこか疲れたような姉の姿を見て、目を白黒とさせる。
すぐに二人は家の中に入り、タオルやら着替えやらを用意し始めた。
憂「……お姉ちゃん、どうして濡れちゃったの? 秘策があるって朝に言っていたのに……」
唯「……うう、ちょっと皆とね……競争を……」
憂「(……軽音部の皆さんって一体……)」
思いもよらない答えに唖然としていると、唯がくしゅん、という音と共に、体を震わせた。
憂は眉をハの字にしながら、唯の足を拭き取っていたタオルをそっと取り上げる。
憂「お姉ちゃん、お風呂入ってきたら? というより、入ってきた方がいいよお姉ちゃん」
唯「ええ……だいじょうぶだよぉ、結構乾いたし……そこまで濡れてないし」
憂「めっ! ……風邪ひいちゃうよ、お姉ちゃん」
憂が親指を立てた手を突き出し、唯に注意した。
陰もなく、元気だったころの面影が残る仕草に、唯は小さく笑みをこぼした。
なぜか嬉しそうな唯の様子に、憂は怪訝な表情を見せる。
憂「……どうしたの、お姉ちゃん? 入ってこなくちゃだめだよ?」
唯「うふふ……うん、分かったよ憂」
憂「?? うん、そのほうがいいよ。……じゃあ私、その間にご飯作っておくね」
唯「うんっ! お願いねっ」
憂「??? ……う、うん」
37 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 01:29:41.81 ID:t/eSe3Aw0
その場のタオルなどをひとまず片付け、エプロン姿で台所へと向かう憂。
その背中を見て、唯は優しげに微笑んだ。
唯(ずっと憂が心配だったけど……少し元気になったみたいでよかったなぁ)
唯(最近、私に対してちょっと遠慮がちなところがあったけど……気のせい、なのかな?)
唯(……なんだかんだいって、やっぱり憂は私の自慢の妹だよ!)
妹の頼もしさに改めて笑顔になると、唯は憂の言いつけ通り、風呂場へと向かった。
*選択肢*
A:「ういー。お風呂入ったよー?」
お風呂からあがってぽっかぽか! 次はどうすればいいかな? 憂の指示を待つ。
B:「ふう、あったかかった~。でもまだちょっと寒いかなぁ……?」
そうだ、こんなときはこれだね! 律からもらった使い捨てカイロで温まる。
C:「うい~。憂も一緒に入るー?」
お風呂から呼びかけてみるよ! たまには家族風呂もいいよね?
D:「すっきりしたけど……なんかちょっと疲れたかも……うーん」
疲れがたまっているのかな? とりあえず部屋に戻ってベッドにダイブ!
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/10/03(月) 01:31:20.49 ID:LnhTZjuDO
Cだな
46 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 02:39:15.04 ID:t/eSe3Aw0
→C:「うい~。憂も一緒に入るー?」
お風呂から呼びかけてみるよ! たまには家族風呂もいいよね?
唯「……ふー……」
浴室の中、唯は湯船から出した腕に顔をのせながら、のんびりと湯につかっていた。
ぶるりと震えるほどだった寒さが嘘のように、じんわりとした熱が体を覆っている。
唯は目を細めて、しばしの極楽気分を味わっていた。
唯「ふいー……しあわせー……憂のいうこと聞いてよかったよ」
ふにゃりと体から力を抜きながら、浴室のドアの向こうから聞こえてくる夕食の準備の音に耳を傾ける。
てきぱきと無駄なく作業を進める様子が伝わってきて、唯はにんまりとした。
唯「憂はえらいねぇ……何作ってくれているんだろう……」
思わず眠ってしまいそうになるほどの心地よさを感じながら、妹について思いを巡らせる。
少しは本調子に戻ったように思えるが、ここ数日の憂の様子を考えると、やはり心配だった。
修学旅行のときの憂の取り乱しぶりも相まって、唯はいっそう不安を募らせる。
唯「……なにがあったんだろうなぁ……」
考えつつも、ちょうどよい湯の温度が思考の邪魔をする。
のぼせそうになるのにもかかわらず、唯はぼんやりとつかり続けていた。
ふとあることを思い付き、ざばりと湯船から身を乗り出した。
ドア越しでも聞こえるように、すう、と大きく息を吸って口を開く。
唯「うーいー! 憂も一緒にはいろー?」
一瞬の沈黙ののち、がたがたっと何かを派手に落としたような音が聞こえてきた。
唯が思わず飛び上がると、慌てたような憂の声が耳に届いた。
47 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 02:39:41.55 ID:t/eSe3Aw0
憂「は、はははははいるって……お、お姉ちゃん!?」
唯「うんー! たまには一緒にはいろうよー!」
憂「で、でも私夕飯作んなくちゃ……」
唯「少しだけでも入ろうよー。気持ちいいよー?」
憂「お、お姉ちゃんと入るの……ちょ、ちょっと恥ずかしいかも……」
唯「大丈夫だよー! 姉妹だし普通だよ! ね、ちょっとだけ」
憂「ううううぅぅぅ……」
憂の葛藤するような唸り声が聞こえてきて、唯はほんの少し苦笑いした。
少し時間がたっても何の気配もしないので、諦めて上がろうとしたそのとき。きい、と遠慮がちにドアが開けられ、そっと人影が入り込んできた。
唯はその姿を認めて満足げな顔をすると、また体を湯船に沈めて温まり始めた。
唯「えへへ……なんかやっぱり照れるね」
憂「う、うん……」
憂は少し頬を染めながら、すらりとした体にタオルを巻き付け、慎重に湯船に歩み寄る。
唯「よかったぁ……憂、やっぱり嫌なのかなって思っちゃったよ」
憂「そ、そんなことないよ……ちょっと恥ずかしかっただけで……」
唯「久しぶりに憂と入れて嬉しいよぉ」
憂「うっ、うん! 私もっ! 嬉しい!」
ピンク色の頬の憂の言葉に唯はさらに笑みを深くする。
すると照れくさくなったのか、憂があちらこちらに視線を漂わせ始めた。
それを見て、唯は安心させるように声をかける。
48 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/03(月) 02:40:10.56 ID:t/eSe3Aw0
唯「そうだそうだ、ほら、ここにおいで憂」
憂「えっ、あ、あう、でも」
唯「そんなところに立ってたら風邪ひいちゃうよー? ってさっき憂がいってました!」
憂「ふふ……そうだね……じゃ、じゃあっ、おじゃま……します」
唯が湯船のスペースをあけると、憂はおそるおそる湯船に足をいれる。
二人分の余裕がないため、ぴったりと唯に寄り添うようにして湯につかる形となった。
そっくりな顔を見合わせると、照れのためか、思わず笑いあった。
*選択肢*
A:「うーん……いい湯ですなぁ……」
憂とお風呂に入りながらのんびりと。たまにはこんな時間も必要だよね。
B:「まだ外は雨が降っているみたいだねえ……」
まだザーザーと聞こえてくる雨音。なんだか二人であの歌を歌いたくなっちゃうね?
C:「憂……やっぱりおっぱい大きいなぁ」
妹の体をちらり。むむむ、羨ましい! 姉の威厳が……。
D:「私と憂ってそっくりだよねえ……さすが姉妹!」
やっぱり髪をおろしていると似ているかもね。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) 2011/10/03(月) 06:14:49.86 ID:uyyGtmlLo
乙!
やっぱ平沢姉妹は和むね
B
68 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/04(火) 01:37:43.17 ID:u1KEPGXP0
→B:「まだ外は雨が降っているみたいだねえ……」
まだザーザーと聞こえてくる雨音。なんだか二人であの歌を歌いたくなっちゃうね?
二人は湯につかりながら、まったりと時間を過ごしていた。
時折触れる肌から、お互いの体温が伝わってくる。
少し温くなった湯を手で軽くすくいながら、唯がぽつりと呟くように言った。
唯「……そういえば、昔はこうやって毎日憂と一緒にお風呂に入ってたなぁ……」
呟きとも呼びかけともとれる姉の言葉に、憂は隣の姉をちらと窺った。
昔の頃のことを想い浮かべているのか、唯はじっと天井を仰ぎみていた。
しばし虚空を見上げたのちに、とても穏やかな表情でゆっくりと息をついた。
その柔らかな仕草に憂は思わず見入ってしまう。
憂「(……なんて優しい表情なんだろう)」
何も言わず、ただそっと唯を見つめていると、不意に唯が顔を向けた。
二人の視線が合い、なんとなくもどかしい気持ちになって、目を逸らす。
少しの間沈黙が流れた後、唯が静かに口を開く。
唯「まだ雨が降っているみたいだね……」
憂「……あっ、う、うん! そうだね……」
耳をすませるまでもなく、勢いよく降り続ける雨音が響いてくる。
唯「ねえういー……」
憂「……なあに、お姉ちゃん」
唯「私、雨の日って苦手だよう……」
憂「……うふふっ、いうと思った」
唯「髪ごわごわするし……濡れるし……寒いんだもん」
憂「うーん……そうかもね」
憂は苦笑しながら、とりとめのない姉の話に耳を傾ける。
唯「……でもね、うい」
憂「うん……?」
唯「こうやって、久しぶりに憂と一緒にゆっくりできるなら……雨も悪くないなぁ」
憂「……おねえ、ちゃん……」
唯「……えへへへっ」
69 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/04(火) 01:39:02.80 ID:u1KEPGXP0
唯が頭をかきながら笑うと、その声が浴室中に響いた。
唯は天井を見上げながら目をぱちくりとさせる。
唯「わあ……お風呂場ってこんなに音が響くんだねえ」
憂「……ひっ……ぐすっ…………ふっ……」
唯「……憂?」
憂「ぐすぐすっ……うんっ、そうだね、音が反響しているんだよね」
唯「音楽室の中にいるみたいな感じかな?」
憂「……う、うん多分……」
唯「なるほど……よぉーしっ! ではっ!」
突然意気込んだかと思うと、大きく息を吸い込みはじめた唯。
憂はそれを見ると、慌てて唯を制止にかかる。
憂「ど、どうしたの? お姉ちゃん」
唯「えへへ……ここで歌ったらさぞ気持ちいいだろうと……」
憂「あんまり響くと外に聞こえちゃうかもしれないよ……?」
唯「こんなにざーざー降ってるから、多分聞こえないよ~」
憂「うーん……そうだね」
なぜか目が赤いままの憂の了解を得ると、唯はいよいよ深呼吸した。
それを一気にはきだすようにして、懐かしいリズムに声をのせていく。
唯「あっめあっめ♪ ふっれふっれ♪」
そこまで歌うと、唯が残念そうな顔をして憂を見やる。
憂はきょとんとしながら姉の表情を探っていたが、唯は再び前に向き直り、また口を開く。
70 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/04(火) 01:39:30.96 ID:u1KEPGXP0
唯「あっめあっめ……」
またちらりと唯が視線を寄こす。
そこで憂は閃き、思わず笑顔になる。
憂「ふっれふっれ……」
同時に顔を向き合わせ、満面の笑みを浮かべ合い、二人は深呼吸した。
唯憂「「かーあさんが~♪」」
浴室は、幸せそうな二人の歌声が一杯に響き渡っていた。
憂(……うれしい……すっごくうれしかった……)
憂(なんて幸せな時間だったんだろう……)
憂(おねえちゃんが、あんな風に思ってくれていたなんて……私……)
憂(……でも……もしかしたら、純ちゃんにもあんな優しい顔を見せるのかな……)
憂(…………)
憂(でも…………)
憂(例えお姉ちゃんに純ちゃんが、誰かがいたとしても……)
憂(お姉ちゃんと一緒にいられる時間を嬉しいって思うのは……いけないことじゃないよね……?)
憂の【尊敬】ステータスが 0/5 → 1/5 にアップしました!
憂の【気になる】ステータスが 0/3 → 1/3 にアップしました!
※憂も大分落ち着いてきたようです。
71 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2011/10/04(火) 01:39:57.39 ID:u1KEPGXP0
風呂からあがり、二人は仲良く憂お手製の夕食を口に運んだ。
唯の体を心配して作ってくれたのか、熱々のスープが食卓に並んでいた。
スプーンですくって口にすると、じんわりとした温かさが体中に染みわたっていった。
料理を存分に堪能した後、風呂にも入ったためかすっかり体調も良くなった唯は、元気よく自分の部屋へと戻っていった。
ベッドに寝転がり、うーん、と気持ちよさそうに伸びをする唯。
唯「……えへへ。憂と過ごせてうれしかったなぁ……」
唯「うーん……今日はどうしようかなー?」
*定期選択肢*
A:勉強する
B:運動する
C:ギターの練習
D:ショッピングしつつ、おしゃれの研究
E:家事スキルを磨く
F:ご飯を食べて、今日一日はおしまい!
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2011/10/04(火) 01:44:30.54 ID:G10A2knPo
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唯「私は、誰と恋をする?」 【百合シミュレーションSS】 Part4 2