651 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 02:49:22.76 ID:O7o2kws30



→A:先にティーセットをしまって、トレイは後でしまう。

→C:ティーカップ→ティーポットの順番で片付ける。


火傷を負ったとき、ティーセットをトレイにのせていたことを思い出した唯は、ぷるりと肩を震わせた。
数十分前の二の舞にならないようにと、机の上でティーセットとトレイをわけ、再び並べ直す。
それからソーサーの上にカップをのせ、一双一双、丁寧に棚へと運んでいく。


唯「(カップは確かここでよかったよね……後はティーポットだけだね!)」


一つ一つ紬の手順を思い出しながら、何とかティーカップをしまい終えた唯。
ほっと肩の力を抜き、いよいよ大きなティーポットの運搬に取り掛かる。
無事な左手で、ポットの持ち手をひょいと持ち上げ、右手で注ぎ口付近に手をかざすようにして、ゆっくりと歩いて行く。
歩く振動で、時折ふらふらと揺れるティーポットを、バランスをとりながら運んでいくと、ようやく棚が見えてきた。
わずか数メートルほどの往復にもかかわらず、唯はわずかに汗をかいたような心地がしていた。


唯「よっし、これでっ、お、し、ま、いっ!」


トン、と音を立ててポットを置こうとしたその刹那。
わずかに揺れたポットの注ぎ口から、紅色の滴が勢いよく飛び散るのが見えた。


唯「――ひゃあっ!?」


びしゃ、と叩きつけるような水音がわずかに聞こえた。
じんわりと伝って来る温い感触に、唯はちらりと右手を一瞥した。
包帯を巻いた患部に、降り散った紅茶が染みわたっていくのが目に見えた。
染み込んで患部に届くと、一呼吸遅れてじんわりとした痛みが走った。


唯「うう……じ、じんじんするよぅ……」


火傷を負ったときほどではないが、じわじわと侵して行く断続的な痛みに、唯はわずかに顔をしかめた。
注ぎ口付近に近付けたおかげで、液体が直撃した右手の痛みは、すぐに引きそうもなかった。


※不注意で患部が紅茶をかぶってしまいました。

※唯の完治時期が一週間延びてしまいました。


652 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 02:50:03.68 ID:O7o2kws30




なんとか痛みが引いた後で、唯はトレイを運び終えた。
トレイに紅茶は残っていなかったものの、唯は恐る恐る棚横のすきまにそれを差し込んだ。
ふうう、と震わせながらため息をつくと、不意に軽快な、飛ぶような足音が耳に飛び込んできた。
たん、たんと響かせるその音が徐々に大きくなり、突然聞こえなくなったかと思うと、弾かれたように部室のドアが開いた。


姫子「ごめんねー、唯! 遅くなって……待った?」


制服に着替え終わり、若干息を弾ませた姫子がそこに立っていた。
女子高生らしくスカートをたくし上げた姫子に、唯はさりげなく右手を隠しながらにこりと笑いかける。


唯「ううん、全然っ! ごめんね、部室にまで来てもらっちゃって」

姫子「全然いいよ。むしろ、軽音部の部室ってどんな感じなのか、じっくり見たことなかったから来てみたかったんだ」

唯「えへへ、普通だよぉ。あ、でも、探してみると色々変なものとかあるよ~」

姫子「えー、何変なのって? 気になるよー。……あっ、そこが唯の席?」


部室を見渡していた姫子が、かたまった五つの席に目を移す。


唯「ううん、そこはムギちゃんの席。私の席はその向かいなんだ。で、隣がりっちゃんで、りっちゃんの向かいが澪ちゃん。一つ飛び出ているのがあずにゃんの席だよー」

姫子「あずにゃん? ふふっ、なあにそれ?」

唯「二年生でねぇ、猫みたいで可愛いんだー。あ、あとギターもうまくって……」

姫子「……ねえ、唯」


続けようとした唯を、やんわりと遮る姫子に目をやる。
姫子は、心配そうな表情をしながら唯を見つめていた。


唯「えっ、な、なあに?」

姫子「ギターっていうか……部活、できそう?」


姫子の言葉に、唯は一瞬口をつぐむ。


唯「……うーん……今すぐは無理だろうけど……でも、すぐ治るだろうし、たぶんすぐに弾けるようになるよ! 大丈夫っ」

姫子「本当に? 無理してないよね?」

唯「……うんっ、もちのろんだよっ。たぶん、次に行くときは弾けるようになってるだろうしね」

姫子「そっか……でも、普段から安静にしていなきゃだめだよ、痛いときはちゃんと周りにいわなきゃ」

唯「……うん、でもね、もう痛くないから平気だよ、大丈夫」

姫子「うーん……そっか」


言うと、姫子は顎に指を添えて少し考えるようにした。
唯が首を傾げていると、不意に顔を上げ、「じゃあ、遅くならないうちにかえろっか」と踵を返して唯を先導し始めた。

653 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 02:50:33.82 ID:O7o2kws30



二人は下駄箱をでると、何気ない会話を交わしながら無意識に早歩きで進んで行った。
時折唯の鞄をもちながら、姫子は笑顔でいろいろなことを話していた。
別れ場所の角までやってくると、姫子は担いでいた唯の鞄をゆっくりと手渡し、微笑んでみせる。


姫子「じゃあ唯、くれぐれもお大事にね。変な無茶とかしちゃだめだよ?」

唯「そんなことしないよぉ……じゃあ、今日はほんとにありがとね姫ちゃんっ、お世話になりましたっ!」


ふんすっ、と気合を入れて元気よく礼を言うと、姫子が歯を見せて笑い、軽く手を上げて角を曲がって行った。
繁華街の方に向かって行く姫子の背中を、しばらく見送っていた。


*選択肢*

A:「それじゃあ安静にしなきゃだし、早く家に帰ろうっと」
  憂もたぶん心配してるよね……まっすぐ家に帰る。

B:「姫ちゃんと別れがたいな……もう少しお話しをしよう!」
  姫子を呼びとめて、ほんの少し寄り道。たまにはいいよね?

C:「もう、姫ちゃんったら心配性なんだから……姫ちゃんこそこんな遅くまで大丈夫かな?」
  ちょっと付いて行ってみよう。ゆっくりゆっくり、姫子の後を追う。

D:「そうだ、あっちにも街があったよね。姫ちゃんのまねをして寄り道寄り道♪」
  なんだかすぐには帰りがたいかも。姫子とは別の街へレッツゴー!



655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) 2012/05/31(木) 03:02:52.80 ID:M/FMGb6/0


乙乙。
Aで

664 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 11:01:18.59 ID:O7o2kws30




→A:「それじゃあ安静にしなきゃだし、早く家に帰ろうっと」
  憂もたぶん心配してるよね……まっすぐ家に帰る。


唯「うーん……姫ちゃん、なんだったのかな……?」


姫子の部室での怪訝な様子に後ろ髪を引かれたが、包帯が取れかかっている患部を一瞥して、唯ははあと大きく息をつく。


唯「気になるけど……でも、その前にこれを何とかしなくちゃね……早く帰ろう」


慣れない左手でなんとか包帯を巻き直し、ようやく患部を固定できた唯。
軽く拳を握っては緩め、痛みが引いているのを確認する。
そのまま家路につこうとした唯だが、ふと思い立ち右手のブレザーの袖を軽く引っ張る。


唯「包帯なんて巻いてたら、憂、跳びあがっちゃうかもしれないし……あんまり見せない方がいいよね」


袖口にかすかに包帯をのぞかせながら、唯はてくてくと慎重に歩いて行った。

665 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 11:01:44.84 ID:O7o2kws30


空が薄暗くなっていく中、唯はようやく家にたどり着くと、おそるおそるインターフォンを鳴らした。
一瞬の沈黙ののち、突然ドアがばたりと開き、唯は思わずのけぞるようにした。


憂「お姉ちゃんっ! どうしたのこんな遅くまで……って、あっ、ごめんね」

唯「へ、平気平気っ! ちょっとバランス崩しただけだよぉ……おっとっとっと」


そう言って、唯は傾いた体を立てなおすと、憂が開けてくれたドアをとっさに左手で押さえた。
力の入らない左手をぷるぷると震わせながら、そっと家の中に体を滑り込ませる。
すると、見かねた憂が、ドアに手を押しあててそれを手伝う。
やっと家に入ってドアを閉め終えると、エプロン姿の憂が申し訳なさそうに眉をハの字にした。


憂「ご、ごめんね……もうちょっとドア開けておけばよかったね」

唯「そんなことないよぉ~ありがとね。いやぁ、面目ないぃ……」


えへへ、とどこか恥ずかしげに右手で頭をかいてみせる唯。
その姿に微笑みかけた憂が、ある一点を見つめ目を見開いた。


憂「お、お姉ちゃん……どうしたのその包帯!?」

唯「えっ? ……あっ!」


唯が頭から右手を離したころには時すでに遅し。
何重にも巻かれた右手の包帯が、しっかりと袖から顔を覗かせていた。


憂「どっ、どどどどどうしたの!? 怪我っ? 怪我したの!? ちゃ、ちゃんと見せてお姉ちゃんっ!」

唯「えっ、いやっ、ち、違うよ、その、何でも……」

憂「うわっ、すごい巻かれてる……あっ、あんまり触っちゃ痛いよねっ、ど、どうしよう、でも大丈夫!? お姉ちゃん、えっとっ」

唯「うううう憂っ、お、落ち着いて落ち着いてっ!」


唯の右手を触ったり離したりしながら、あわあわと落ち着きなく身振り手振りを繰り返す憂。
憂を落ち着かせようとしながらも、どうしてよいか分からず混乱しきった唯。


二人は広い部屋の中で軽くパニックになりながら立ちつくすばかりだった。


*選択肢*

A:「ち、違うよ憂! ほら、勉強のしすぎで指にタコができそうだからちょっと巻いているだけだよ!」
  しょうがないっ、嘘も方便だよね。包帯巻いていたら分かんないだろうし……。

B:「じ、実はね……火傷しちゃって……治るのにちょっと時間がかかりそうなんだ」
  もう痛みは引いたけど安静にしなくちゃいけないしね。ちゃんと憂には説明しておいた方がいい、よね?

C:「な、なんでもない! なんでもないよ、あわわわわわっ!」
  うああ、どうしようどうしよう? とりあえず部屋の中に逃亡だよっ!

666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/31(木) 12:36:54.72 ID:uu94wnxDO


b

668 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 16:28:24.99 ID:O7o2kws30



→B:「じ、実はね……火傷しちゃって……治るのにちょっと時間がかかりそうなんだ」
  もう痛みは引いたけど安静にしなくちゃいけないしね。ちゃんと憂には説明しておいた方がいい、よね?


憂「えっ……や、火傷……!?」


憂の肩を左手で掴んで、声を張って落ち着かせた後。
観念したためか、不思議と落ち着いた気分のまま、唯はすうと息を吸った。
そして、頃合いを見計らって事情を説明した唯の言葉に、憂は目を見開いて静止する。


唯「うん……えへ、その、ね……さわちゃんに紅茶を淹れてあげようと思ったら……ちょっとドジしちゃって……」


唯がバツが悪そうにすると、憂は沈痛な面持ちで姉の包帯の跡を凝視していた。
辛そうに顔をしかめながら、「お姉ちゃん、痛そう……」と絞り出すような声をこぼす。


唯「あっ、で、でもね、今はそんなに痛くないんだよ! ちょっと用心のために包帯ぐるぐるにしているだけだから」

憂「だ、だってそんなに包帯っ……」

唯「もー、大丈夫だよう。保健室にも行ったし、ほんの少し腫れてるくらいだもん」


そう言って、唯が右手を憂の前でひらひらとさせる。
すると、巻きが甘かった患部の包帯が、スローモーションのようにゆっくり解けていき、はらりと音を立てて床に落ちた。
露わになった右手の甲には、痛々しいまでにぷっくりと膨らんだ火傷の腫れが残っていた。


憂「お、お姉ちゃん……そ、それ……」

唯「え、えと……」

憂「お姉ちゃんっ……ふ、ふえっ……うっ……ううっ……」


唯が驚いて顔を上げると、憂が手で口を覆い、ぎゅっと固く目をつぶって体全体を震わせていた。
目じりには涙をにじませ、弱弱しくしゃくりあげている。


唯「う、憂っ? ど、どうして憂が泣くの?」

憂「……だ、だってっ……お姉ちゃんの手、手がっ……ふっ、ぐすっ、う、うううっ……」

唯「憂、ちゃんと治るんだから……ね、大丈夫だよぉ……」

憂「お、お姉ちゃんがっ、うっ、テストや、ギターで頑張ってた手がっ……そんなに……ふ、ふええっ」

唯「う、憂……」


どう答えてよいか分からず、唯はしばらくの間憂の頭を撫でてなだめていた。
憂は唇を噛みしめながら、必死で涙をこらえていた。
しんみりとした空気の中に、憂のしゃくりあげるような音だけが弱弱しく響いていた。

669 :1です ◆duJq3nZ.QQ 2012/05/31(木) 16:28:54.96 ID:O7o2kws30



少しして憂の震えがおさまると、唯はそっと妹の顔を覗きこんだ。
憂はゆっくりと顔を上げ、「ごめんね、ごはん、つくっちゃうね」と小さく苦笑いして台所に向かった。
指で軽く目元をぬぐい、フライパンを取り出して料理に取りかかろうとする妹の姿に、何ともいたたまれない気持ちになりながら、唯は制服を脱いだ。


憂「……はーいっ、お姉ちゃん、できたよー」


いつもより明るく努めている憂の声に、部屋着に着替え終わった唯もすぐに食卓につく。
いつも通りの美味しそうな匂いに鼻をひくつかせながら唯は思わず笑顔になった。
すると、不意に右手をつかまれたような心地がして、顔を向ける。


憂「お姉ちゃん、ちょっと待っててね」


見ると、憂が唯の右手首を軽くつかんで、患部を見分していた。
患部に触れないよう慎重に位置を確かめながら、ガーゼを当て、またたくまに包帯を巻いて行く。
あっという間に処置が終わり、真新しい包帯の気持ちよい感触に、唯は顔をほころばせた。


唯「ありがとー、憂~。もうほどけないですむよ」

憂「……うん、よかった、上手く巻けて」


甲斐甲斐しい妹ににっこりと笑顔をみせると、椅子に座りなおして夕食を食べ始めようとした。
隣に気配を感じ、もう一度顔を向ける。
そこには、唯の席の横で中腰になったままの憂の姿があった。


唯「あれ、憂? まだ何かあるの? 早く一緒にご飯食べようよぉ」

憂「ううん、私はまだいいよ。先にお姉ちゃんが食べて」

唯「えっ、でも……」


唯が言おうとすると、憂が唯の箸を取り、遠慮がちに言った。


憂「お姉ちゃん、右手がこんな状態だったら食べづらいでしょ? よかったら私、えっと……手伝うから……遠慮しないで食べてねお姉ちゃん」


恥ずかしそうに頬を染め、ちらちらと視線をさまよわせながら、憂が箸をかざした。


*選択肢*

A:「……えへへっ、そ、そう? じゃあ悪いけど食べさせてね。……あ、あーん」
  ちょっぴり恥ずかしいけど、憂に食べさせてもらおう。なんだかくすぐったいなぁ……。

B:「だっ、だだだ大丈夫だよぉ! ちょっとなら指も動かせるし、二人で一緒に食べた方が美味しいよ。ね、食べよう憂」
  姉妹でもやっぱり恥ずかしいよぉ……。でも、心遣いがすごく嬉しいよ、ありがと憂っ。

671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/05/31(木) 17:05:11.35 ID:mzhdv21o0


うーん、やっぱAかなぁ

672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山形県) 2012/05/31(木) 17:45:42.84 ID:GQ+pv87ko


Aしかありえない

673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/06/01(金) 05:41:44.57 ID:ASN3TG7W0


a!
1よずっと見てるから完結させてくれよ



唯「私は、誰と恋をする?」 【百合シミュレーションSS】 Part4

最終更新:2012年09月27日 21:53