ゴゴゴゴゴゴゴ

直「異星人船を目視できる距離まで近づきました」

梓「とりあえずこの辺でストップ。交信をはじめて」

菫「はい」

憂「周囲に他の船はいないみたい……」ピピー

純「きっとみんな撤退したんだよ」

梓「えー、こちらはワカバガールズ号です。あなたがたと会話をしたいと……」

菫「異星人船から通信です!」

『ザザザッピピピピザザザピピピ』

梓「なんて言ってるかはわかりませんが、こうしてお互いに会話を続ければ言語解析ができるはずです。そちらもきっとこちらの言語を解析して……」

『ザザザザザーピピピピー』

菫「ううーん、これは……」

梓「どうしたの?菫」

菫「このノイズをどんなに解析しても、決まったパターンが見つかりません。言語として使われている音なら絶対に一定のパターンがあるはずなんです」

直「じゃあこれ、本当にただのノイズだったり」

ドゴオオンン!!

梓「え!?え!?」

憂「異星人船から攻撃だよ!」

純「シールド損傷!やばい、すごい威力だ!」

梓「なんで!?私たちは近づいてもいないし会話を続けただけなのに」

憂「梓ちゃん落ち着いて!今はこの船を守らないと!」

梓「そうだった!直、一旦離脱するよ!」

直「……今の攻撃でワープエンジンがダウン、通常エンジンで離脱します!」

シュゴオオオオ

憂「追いかけては来ないみたい」

梓「なんで……なんで機嫌を損ねちゃったの?」

『……お困りの用だね、あずにゃんや』

梓「この声は」

憂「お姉ちゃん!!」

唯『やっほー、みんな無事みたいでよかった!』

梓「先輩達こそ大丈夫ですか!?」

律『うーん、まあ大丈夫っちゃあ大丈夫だけど、異星人船の攻撃で船団がバラバラになっちゃって。
  私達は被害が少ない方だったから、損傷が大きい船の退避を助けてたんだ。
  それでようやく落ち着き始めたから、こうして偵察に戻ってきたんだけど……お前たちもやられたみたいだな』

梓「そうでしたか……提督はどうしてるんですか?」

律『デスデビル号が船団をかばって攻撃をもろに食らって撃沈しちゃったんだよね。船員は脱出したけどさわちゃんは相当落ち込んでるよ。
  だから私たちが代わりに頑張らないと!』

澪『こうしてる間にも異星人船は地球に迫ってる。対抗策を話し合わないか?』

純「そうですね!澪先輩!」

梓「私達は、接近せずに会話を試みたんですが、ダメでした」

唯『じゃあもうあれしか無いよね!』

梓「あれって?」

唯『私達も歌うんだよ!』

純「お、私と同じ発想!」

唯『お、お揃いだねー』

憂「良かったね純ちゃん!」

梓「今度は相手の礼儀に合わせてみるってことですか。確かにもうそれしかないですね」

律『よし、再び異星人船に向かうぞ!リベンジだ!』


ゴゴゴゴゴゴゴ

直「再び目視距離まで接近。ホウカゴティータイム号も位置につきました」

純「こんなに何度も逃げたり現れたりしたらそろそろ本気で怒るんじゃないかな?異星人も」

梓「不吉のこと言わないでよ」

律『よーし、ホウカゴティータイムが誇る歌姫!唯ちゃんの登場でーす!』

唯『いやーどうもどうも』

紬『異星人船との交信開始したわ。唯ちゃん頑張ってね!』

唯『うん、ゴホンゴホン。……こんにちはー♪こんにちはー♪宇宙のー果てからー♪』

梓「こ、これは……」

憂「お姉ちゃんの歌は癒されるよねえ」

純「え、まあ、うん」

唯『こんにちはー♪こんにちはー♪青いー地球へー♪』

『~~~♪~~~♪~~~♪』

梓「!!!」

菫「異星人船の歌が始まりました!」

直「作戦成功?」

唯『……』

律『唯?どうしたんだ』

唯『ごめん、この歌の続きがわかんないや』

律『あ。私もだ』

ドゴオオオオオン!!

澪『異星人船から攻撃だ!!』

梓「歌を途切れさせるから!もう!」

梓「ん……?でも彼らにとって歌を途切れさせることは怒ることかな……?さっきだって歌の途中でノイズを入れてきて……』

梓「あ、もしかして……!」

梓「ワカバガールズ号からホウカゴティータイム号へ!楽器を用意してください!」

律『へ?楽器?』

梓「はい!演奏するんです!私達の熱意を伝えるにはこれしかありません!」

律『わ、わかった!用意するよ!梓はちゃんとギター持ってるんだろうな!』

梓「もちろん!それどころかワカバガールズ号のみんなとしっかり演奏してますよ!
  というわけで私たちも楽器を用意するよ!」

純「はいはい了解!」

律『曲はどうする?』

梓「ふわふわ時間で!たぶんどちらも演奏できる曲はこれだけですから!」

菫「あのっ、私この曲まだ自信が……」

梓「大丈夫!!出来る!」

菫「は、はいっ」

梓「直!」

直「はい、2隻の音響システムにアクセス。調整は任せてください」

梓「こっちは準備オッケーです!律先輩!」

ドゴオオオン!

律『うわっと!もうやけくそだ!いくぞ!1.2.3.4!』


キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI~~~~~♪

『~~~~♪~~~~♪~~~~~♪』

ふわふわタイム ふわふわタイム ふわふわタイム

ジャジャジャジャジャーン~♪


『~~~~~~♪~~~~~~♪』


純「ふう、次はどうする?演奏を途切れさせちゃまずいよね!」

梓「大丈夫だよ、ほら」

ゴゴゴゴゴゴゴ

憂「異星人船が進路を変更!元来た方向に帰っていくよ!」

律『なんだこれ、どういうこと??』

梓「やっとお互いに理解できたんだよ。文化の違いをね。私達は勘違いしてたんだ。異星人の歌は音楽じゃなくて言葉だったんだよ」

菫「音楽そのものが彼らの言語だったんですか……?」

梓「そう。異星人たちはそもそも私達と同じだったんだよ。最初から彼らのメッセージは言葉だった。
  だけど私達にとって彼らのメッセージは”歌”で、彼らにとって私たちの言葉はたぶんノイズか何かに聞こえたんじゃないかな」

純「それで、私たちに合わせようとノイズを送ってきたことがあったんだ」

梓「だけど私たちがいつまでたってもノイズしか出さないから怒ったんだろうね。
  異星人たちは、地球から発される電波を受信して、地球の音楽を言語だと思って地球に向かってきたんだと思う」

澪『そうか。私たちが音楽、つまり異星人にとっての言語を持っているにもかかわらず、交信でノイズしか出さないから敵対的行為と判断したのか』

唯『でもでも、なんで私が最初に歌った替え歌はダメだったの?』

梓「最初にラブクライシス号が異星人船と交信した時、異星人船は歌をすぐに打ち切ってノイズを出しましたよね。
  あれは彼らがこちらに合わせたつもりだったんでしょうけど、ラブクライシス号はそこから無言で異星人船に近づいて行った。
  だから、歌をすぐに打ち切ってノイズを入れるのは、私たちにとって不快な行為だったのではないかと思ってたんでしょう」

唯『あ、私が途中でしゃべっちゃったのがそれと同じだと思われたんだ』

律『それにしても短気な奴らだなー。何も攻撃することないじゃん』

梓「確かにラブクライシス号に攻撃したのはあちらが先ですけど、それ以前に防衛艦隊が異星人船に先に攻撃してしまってるので……
  ピリピリしてたんでしょう」

紬『文化の違いを互いに理解しようとしてたからこそ、こんなことになっちゃったのね……』

律『で、私達の演奏を聴いて帰って行ったのはなんでだ?そこが一番気になるんだけど』

梓「わかりません」

律『えっ?』

梓「私はただ、本気で演奏をすれば私たちの音楽文化が、彼らのそれとは別種だと理解してくれるんじゃないかと思っただけです。
  帰った理由はよくわかりません。直接音楽を聴けて満足して帰ったのかもしれないし、言語の違いを理解して再び詳しく分析しようとして帰ったのかもしれないし……
  まあとにかく帰ったから良かったじゃないですか」

純「あんた、たまにとんでもないところで大胆だよね」

梓「ありがと」

憂「でも今度は、異星人さんたちとちゃんとお話しできたらいいね」

梓「そうだね。ちゃんとした学者さんが今回のやりとりを分析すれば、また彼らが来るころには意思疎通ができるようになるよ、きっと」

菫「船団から通信です!退避した船も脱出した人たちもみなさん無事に合流できたみたいです!」

純「梓、今回の活躍は勲章ものじゃないの?」

梓「そ、そんな……勲章なんて、私はただ」

律『ホウカゴティータイム船長として、推薦しますぞ!』

梓「もう、やめてください!」

菫「梓船長かっこよかったです!私、この船のクルーで良かったです!」

直「私も……」

憂「みんな梓ちゃんがさらに頼もしくなったよ!」

梓「みんなやめてよ、たぶんこの会話も」

唯『あずにゃん、モテモテだねえ』

紬『いいクルーに恵まれて、良かったね♪』

澪『船長になるって聞いたときは心配だったけど、もう安心だな!』

梓「ほら、みんな聞かれてるー!」 

純「照れるなって、梓船長。あ、ワープエンジンの準備はできてるよ!」

梓「もう……みんな!配置について!」


梓「……ワカバガールズ号、発進!!」

「おー!」




宇宙船ワカバガールズ号の冒険はまだまだ続く




おわり



最終更新:2012年09月28日 21:27