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紬「ふぅん、そんなことがあったんだ」
唯「うん」
紬「きっと唯ちゃんが梓ちゃんに抱きついてあげないからね」
唯「へっ」
紬「梓ちゃん寂しいのよ」
唯「うーん。その発想はなかったよ」
紬「たまには抱きついてあげなきゃ」
唯「‥‥でもしばらくはいいかな」
紬「私に遠慮してる?」
唯「それもあるけどあれだよ、あれ」
紬「あっ、そっかー」
唯「うんうん。人肌恋しくなったあずにゃんは」
紬「澪ちゃんのところに駆け出すわけね」
唯「あの二人どうなるかな」
紬「うーん。どうだろう」
唯「なかなか難しそうだね」
紬「そうねぇ」
唯「やっぱり‥‥」
紬「うん。梓ちゃん次第かな」
唯「私は澪ちゃん次第だと思う」
紬「どうして?」
唯「あずにゃんがどれだけ頑張っても、澪ちゃんが振り向いてくれないと駄目だから」
紬「そっか‥‥」
唯「ムギちゃん?」
紬「ねぇ、唯ちゃん」
唯「なぁに?」
紬「私と一緒にいて楽しい?」
唯「やだなー、ムギちゃん。どうしてそんなこと聞くの?」
紬「楽しい?」
唯「‥‥うん。楽しいよ。辛いことも沢山あるけど」
紬「どっちのほうが多い?」
唯「それはわかんないよ」
紬「そう‥‥」
唯「だけどこうやってムギちゃんとお喋りしてる時は楽しいよ」
唯「ムギちゃんにお茶を入れてあげて」
唯「こうやってお話する時間、私は好きなんだ」
紬「それじゃあ、唯ちゃんは何が一番辛い?」
唯「ムギちゃんに何もしてあげられないのが」
紬「えっ」
紬「私、唯ちゃんにすっごくよくしてもらってるよ」
紬「朝学校行く前に来てもらってるし」
紬「放課後も良く来てくれるし」
紬「たくさんキスもしてもらってるし」
唯「‥‥そういうんじゃないんだ」
唯「これはあずにゃんにも言ったことだけど」
唯「ムギちゃんがベッドの上で一人ぼっちで過ごしてる時間、私は友達と話せるし」
唯「ムギちゃんが食べれないものも自由に食べられるし」
唯「沢山のお客さんの前でライブだってやれる」
唯「それがムギちゃんに申し訳なくて‥‥」
紬「そんなこと、どうでもいいのに」
唯「どうでよくなんてないよ! ムギちゃんがかわいそうだもん!!」
唯「好きになった人を幸せにしてあげられないのって辛いよ!」
唯「本当は‥‥もっともっと幸せにしてあげたいよ!!!」
紬「ゆ、唯ちゃん‥‥」
唯「だからね、ムギちゃん。私に出来ることならなんでも言って。本当になんでもするから」
紬「‥‥」
唯「‥‥」
紬「‥‥ねぇ、唯ちゃん」
唯「うん」
紬「私達が付き合ったときのこと覚えてる?」
唯「私の方から告白したんだよね」
紬「うん。私も唯ちゃんのこと大好きだったけど勇気が持てなくて告白できなかったの」
紬「唯ちゃんは絶対に私のことなんて好きにならないと思ってたから」
唯「でも違った」
紬「うん。唯ちゃんは好きって言ってくれた」
紬「本当に、本当に嬉しかったんだ」
紬「だからね、私の体のことなんて、些細なことだと思えるの」
唯「些細なこと?」
紬「ええ。唯ちゃんと付き合えたことに比べれば、取るに足らない些細なこと」
紬「だからいつか唯ちゃんが疲れてしまって、離れ離れになる日がきたとしても」
紬「それでも笑ってさよならできると思う」
紬「だって、これ以上なんてないんだから」
紬「唯ちゃんと出会えて」
紬「仲良くなって」
紬「手をつないで」
紬「告白してもらって」
紬「付き合って」
紬「それだけで私の全部を賭けても足りないぐらい嬉しかったんだから」
紬「だから唯ちゃんと出会えたのがこの体と引き換えだったとしても」
紬「私はこれっぽっちも後悔しないの」
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「なぁに?」
唯「泣いていい?」
紬「うん」
紬「おやすみなさい、唯ちゃん」
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唯「あれ、ムギちゃん?」
紬「起きたんだ」
唯「あっ、私寝ちゃったんだ‥‥」
紬「うん。よく寝てた。可愛い寝顔ごちそうさま」
唯「て、照れるよ」
紬「キスしちゃいたいぐらいに可愛かったわ」
唯「じゃあキスするね」チュ
紬「うれしい‥‥」
唯「キスするだけで喜ぶなんてムギちゃんはちょろいね」
紬「うん。私ちょろい女なの」
唯「あはははは」
紬「うふふふふ」
唯「ありがとうね、ムギちゃん。おかげでちょっとだけ楽になったよ」
紬「梓ちゃんにも抱きつけそう?」
唯「それくらいよゆーだよ」
紬「そう? それは良かった」
唯「じゃあ次はムギちゃんの番だよ」
紬「えっ」
唯「ムギちゃんが一番つらいと思ってるのはなぁに?」
紬「‥‥」
唯「ムギちゃん、教えて」
紬「‥‥未来」
唯「‥‥」
紬「‥‥」
唯「あはは、それは仕方ないね。私が頼りないからだもん。もっとしっかしりなくちゃ」
紬「違うの!」
唯「ムギちゃん‥‥?」
紬「違わないけど、違うの」
紬「私、未来が怖かったの」
紬「私にとっての未来は、本当に真っ暗闇」
紬「いつ唯ちゃんが疲れちゃうかって考えると、深い絶望に襲われてしまう」
紬「本当にもう、生きていくのが嫌になるぐらい、深い深い絶望」
紬「だから未来のことはずっと考えないようにしてたんだ」
紬「ただ、諦める準備だけはしてね」
紬「だけど‥‥だけどね」
紬「さっきの唯ちゃんの言葉を聞いて、ほんの少しだけ光が見えた気がするの」
唯「光?」
紬「うん。ほんの少しだけどね」
紬「未来について考えてみてもいいかなって思えたの」
唯「どれくらい明るくなったの?」
紬「目を凝らせば文字が読めるぐらい、かな」
唯「ほとんど真っ暗だね」
紬「うん。でも頑張れば見えないこともないと思う」
唯「それで、ムギちゃんはどんな未来を見たの?」
紬「‥‥白いドレス」
唯「結婚式?」
紬「無理かな?」
唯「無理じゃないよ」
紬「でも私、歩けないよ」
唯「私が抱きかかえるよ」
紬「大丈夫? 私そんなに軽くないよ」
唯「鍛えるから大丈夫」
紬「唯ちゃん。期待してるね」
唯「うん! 任せてよ!!」
唯「ムギちゃん、ちょっとは幸せになってくれた?」
紬「私はもとから幸せだよ」
唯「‥‥そうでした」
紬「でも、今はもっと幸せだよ。ドレス楽しみ?」
唯「う?。プレッシャーがかかるよ。頑張ってお金貯めなきゃ」
紬「うふふ。頑張ってね」
唯「ねぇムギちゃん」
紬「なぁに?」
唯「私も、実は諦めてたんだ」
紬「えっ」
唯「ムギちゃんがいつか捨てられると考えてるのは仕方ないって」
紬「うん」
唯「でもね、それはちょっと違ったんだね。だってムギちゃんの笑顔、昨日より明るいし」
紬「‥‥そうだね」
唯「今まで知らなかったムギちゃんを知れてよかったよ」
紬「私も」
唯「きっかけはあずにゃんかな」
紬「それと、澪ちゃんのおかげでもあるかしら」
唯「やっぱり持つべきものは仲間だねー」
紬「そうね。澪ちゃんと梓ちゃんは本当に素敵な仲間だわ」
唯「澪ちゃんとあずにゃんは本当にいい仲間だね」
紬「‥‥」
唯「‥‥」
紬「ねぇ唯ちゃん」
唯「うん」
紬「りっちゃんは私達に何をもたらしてくれるのかな?」
唯「わかんない。でも、きっと素敵なものだと思うよ」
紬「楽しみだね。未来がまた少し明るくなったみたい」
おしまいっ!
最終更新:2012年09月30日 19:52