病院

医師「たいしたことないです。一応、点滴打っていきましょう」

梓「あ~…………」

澪「よかった」

律「これからなんかあったら、誰かにメールなり電話なり、教えること!」

梓「はぁ……」

看護師「はぁ~い、腕出してくださ~い」

梓「え、なんですか?」

看護師「点滴ですから~動かないでね~下手に刺さっちゃうから~」

梓「え、な、なに、なんですか、点滴って、ちょっと、え、注射?」

看護師「注射じゃないですよ~点滴ですから~」

梓「え、だ、だって、針じゃないですか、注射じゃないですかそれ」

看護師「点滴ですから~動かないでね~」

澪「大丈夫だよ~」ガシッ!

律「痛くないからね~」ガシッ!

梓「ちょ、先輩、なにを、え、は、はり、はりりりりりりりりりりり」

看護師「ちょっとチクッとするけど、ガマンしてね~」

梓「ちゅうしゃははしかのよぼうせっしゅいらいしないってちかいを…………アッ」

梓「私がブライアン・ジョーンズみたいに死んだら先輩たちのせいです。
  クラブの新しい一員と墓碑に刻んでおいてください」

澪「大げさだなー」

律「梓ってば注射が怖かったのかよー」

梓「あんな怖くて痛いものを刺すなんて人間の所業とは思えません。
  スズメバチかボビー・ギレスピーくらいのものです」

律「でも、もう平気そうじゃん、腕に針刺さってるのに」

梓「これは注射じゃなくて点滴っていうんですよ。知らないんですか?」

澪「でも、もう平気そうだな」

梓「点滴ですから」

澪「そうじゃなくて。体だよ。梓って普段、弱ってるとこ想像つかないっていうか……
  だから、ちょっと珍しかったな」

律「これからは、ガレージにいるときも暖かくしなよ」

梓「はぁ……」

律「ちょっと、トイレ行ってくるね」

澪「うん」

梓「…………」

澪「…………」

梓「…………ねむ」

澪「これからは、困ったことあったら、私達に言ってね。メンバーなんだから」

梓「はぁ」

澪「梓の親も来てくれたし、律が来たら、そろそろ帰るね」

梓「そうですか」

澪「うん…………」

梓「…………」

澪「…………」

澪「梓はやっぱり、プロを目指してるわけでは…」

梓「というか、働きたくないです」

澪「そうか……でも、これから、もっと大人になってからも、ギターは弾く?」

梓「はぁ……別にギターなんて、弾きたくなったら弾けばいいだけですから」

澪「そっか……なんか、かっこいいな、梓は」

梓「……澪先輩は、きれいな髪ですね」

澪「あ、ありがと」

梓「……ふぅん」

澪「ちょ、ちょっと、髪の毛引っ張らないで、痛いし、顔がぶつかる……むぐっ!?」

梓「…………」

梓「…………んっ」

澪「ぷはぁっ!」

梓「む……」

澪「あっ、あっ、梓っ!?」

梓「憂が口移しで風邪が治るって前に……」

澪「ばっ、ばっ、ばかっ! そっ、そっ、そんなわけ、あるか!」

梓「じゃあ、私は騙されたんでしょうか?」

澪「しっ、しっ、知るかっ!!」



音楽室


梓「ムギ先輩、お茶が飲みたくなりました」

紬「は~い♪」

梓「唯先輩、唯先輩に触りたくなりました」

唯「うん! じゃあ、あずにゃん、さわりっこしよ~」ベタベタ

律「なんか前よりは自己主張するようになったね」

澪「うん……まぁ、いいんじゃない」

律「澪、なんか顔赤いねぇ。風邪?」

澪「えっ! う、うん、ちょっとだるくてさ」

唯「澪ちゃーん、風邪は口移しで治るって聞いたことあるよ~」

澪「ええっ!?」

紬「そうねー、梓ちゃんも良くなったし、梓ちゃんが一番ご利益がありそうねえ」

梓「…………にゃ」

澪「え、遠慮しとくっ!」

律「さーて、この後もまた、どっかでダラダラするか」

唯「生ダラ~」

澪「お前らな……」

律「ほんじゃ、今日はポテトでもつまみに行くか」

紬「ごめんなさい。私、一緒に行けないの」

唯「ええ~また~?」

紬「ごめんね。またね!」

澪「……心なしか、楽しそうだな、ムギ」

律「やっぱり、彼氏か」



某ファーストフード店

紬「いらっしゃいませ」

律「おお!!」

唯「ムギちゃん!」

紬「うふ。ご注文は?」

澪「なるほどね」

紬「ごめんなさい、だから一緒には行けなかったの。
  でも、今日はちょっとだけだから」

律「待ってるよ」

紬「ありがとう」

唯「ムギちゃん、セットください。あ、あと、スマイル!」

紬「は~い♪」

澪「しっかりやってるな、ムギ」

律「でも、なんで教えてくれなかったんだ? 軽音部なのにさぁ」

澪「きっと、タイミングを見てたんだよ。いいとこ以外見せたくないってさ」

律「ふ~ん、そんなもんかぁ」

澪「そうだよ」

唯「そういえばさ、澪ちゃん、前にあずにゃんに教えてもらったCDって何?」

澪「んー? えーと、なんか長い名前で……
  ジーザス・アンド・メリーチェインの『サイコ・キャンディ』」

唯「へー、どんなのどんなの?」

澪「なんか……梓だなってカンジだよ。うるさくて、ぼんやりしてて」

唯「へぇ~」

律「ムギもそうだけど、よくわかってるなぁ、澪はぁ」

澪「なんか含みのある言い方だなぁ」

梓「…………アハハ~ン♪」

紬「お待たせ~」

律「お、来たなー」

唯「もちろん、聞かなきゃね~」

律「いつからだよ~」

紬「えっとね~…」


澪「…………」

梓「うるさくて、ぼんやりしてますか?」

澪「うん……してる」



中野家のガレージ


律「なんか溜まり場になりそうだな~」

唯「でも、ガレージバンドみたいでかっこいいよ!」

紬「それじゃ、カバー曲をいっぱい練習しなきゃ」

唯「せぶんねしょあ~み~♪」

澪「その曲だと、唯と律だけになっちゃうぞ」

唯「え!? そうなの?」

律「あれ二人組だもんなー」

澪「くしゅっ!」

紬「大丈夫?」

澪「うん。そんなにひどくない」

梓「あ~……毛布あります」つ毛布

澪「あ、ありがと…」

律「お、えらいえらい。あれからはここにいる時は暖かくしてる?」

梓「最近はずっと毛布かぶってます」

澪「(……これ、梓くさい)」

唯「そうだ、あずにゃん、サイコキャンデーってある?」

律「なんかのクスリみたいだな」

梓「えーと……」ゴソゴソ

紬「なーに?」

唯「あずにゃんのオススメなんだって」

梓「ありました」

唯「かけてかけてー」

梓「…………」ゴソゴソ


Just Like Honey JESUS AND MARY CHAIN
(http://www.youtube.com/watch?v=AKN3QodIRW8)



唯「ほあ~」

律「普通にいい曲じゃん」

紬「あま~いカンジね」

澪「いや、このあとキィヤアーーーンってなる」

Jesus & Mary Chain "Never Understand"
(http://www.youtube.com/watch?v=noeTCf8PLuc)



律「なるほど」

唯「あずにゃんだ」

紬「まさに」

梓「…………アハハン」

律「お、なんだ、もしかして、照れてんのか?」

唯「あずにゃ~ん、かわいい~」スリスリ

梓「……ふにゃあ」

紬「……あ、ティッシュ」

澪「せっかく揃ったし、練習しよう」

律「お! やるか」

唯「アハハーン♪」

紬「あ、一応キーボードもある」



唯「シェケナベイベー!!」
  ジャジャジャジャッ ジャジャジャジャジャッ
  ブブブブーン ブブブブ
  ッタタン ッタタン
  ピーピーピピッピー
  グウオオオオオンン…ジョアアアジャカジャカジャカ


梓「元々、ここを父がジャズバンドの練習に使っていて……そこのピアノもそのときのです」

紬「そうなの」

梓「まあ、録音で遊んでる時はけっこう使いましたね」

律「ああ、こないだのホラー

澪「歌ってるのはないのか?」

梓「歌ですか……」

唯「そういえば、歌ってるのはカセットになかったね」

澪「いくつかバンド経験してるし、歌ったことあるだろう?」

梓「はぁ……まあ」

澪「歌ってみてよ」


梓「…………ブツブツ」
  ジャラアアーーーン

律「さっきの曲だ」

梓「りぃすんトゥッざがあーあずしぃてすおんはーふぁわー」

唯「わぁ」

紬「いい声だわ」

澪「(そういえば、入部してきたとき、歌ってみせたっけ)」



半年前

梓「あ~……じゃあキュアーのジャスト・ライク・ヘブンを……」

梓「……しょおみ~は~ゆどぅざとり……」
  ジャーンジャーンジャジャジャジャンジャジャーン!!

澪「(ギターはすごいのに歌はヘロヘロ……)」


3ヶ月前
合宿

梓「ぁあーあかーみさぁまおねぇーがぃ
  ふちゃりーだーけぇーのぉー
  どりぃーむうたーいーむぅーくぅだぁーさぁいぃ」

澪「(やっぱヘロヘロなんだけどなぜだろう……)」

律「(……なんか、泣ける)」

 ギュウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

~~

梓「Just like honey(恋人のように)
Jsut like honey(まるで恋人のように)」
  ジャラアアーーーン……

パチパチパチパチ!!


律「いいじゃん!」パチパチ

唯「あずにゃん、よかったよ」パチパチ

紬「ほんと」パチパチ

澪「うん、よかった」パチパチ


梓「みなさんの暇つぶしにはなったみたいですね」



                 お わ り 



最終更新:2010年02月19日 23:55