夜、平沢家リビング
唯「・・・消しゴムは結局、筆箱の中にあったんだよね」
憂「一度探した場所は二度探さないって言うし、そういう見落としは良くあると思うよ」
唯「でも謎を解くのって、ちょっと面白いかな」
憂「それはみんなと一緒にやってるからじゃない?」
唯「私もそう思う。あーでもない。こーでもないって、りっちゃん達と騒いでる時が一番楽しいもん」
憂「その内、本当に日本海の断崖絶壁に行っちゃうのかな」
唯「その時は、憂も一緒に行こうね」
憂「ありがとう、お姉ちゃん♪」
唯「憂ー♪」
翌朝 三年生教室
唯「という訳で昨日は、憂と旅行雑誌を見てました」
和「ミステリーと関係無いじゃない。つくづくのんき姉妹ね」
唯「和ちゃんだって、筆箱をちゃんと見てなかったでしょ」
和「昨日も言ったけど、当たり前過ぎて見直す気にならなかったの」
唯「灯台もと暗しって事?」
和「灯台もっと暗し。くらい言うと思ったわ」
唯「私も、そうそうボケてはいられないよ」
和「それ自体が、もうボケじゃないの?」
唯「もう、和ちゃんはー」
唯、和「あはは」
律「うーす」
澪「和、消しゴムはちゃんと管理しておけよ」
紬「でも、ちゃんと見つかって良かったわね」
和「ええ。ただ昨日も言ったように、文房具くらいなら無くなっても困らないんだけど」
唯「私達の友情だけは、絶対に無くならないけどね」
律「それもそうだな」
澪「私達の友情は永遠だ」
紬「一生、友達でいてね♪」
唯「もう、真面目に返されるとこっちが恥ずかしいよー」
律、澪、紬「あはは」
和「みんな、そろそろHRが始まるわよ」
律「お前は少しくらい乗ってこい」
2年生教室
純「ミステリー、ね。唯先輩の場合、存在自体がミステリーって気もするけど」
梓「未確認生物。UMAみたいな?」
純「そうそう。軽音部に潜む謎の生物、ゆっしー。みたいな」
憂「ロッカーとかに潜んでるお姉ちゃんも、なんだか可愛いよね」
純「・・・いや、そういう事でも無いから」
梓「どちらかというと妖怪。座敷童系だよね」
憂「お姉ちゃんがいると、軽音部が栄えるって事?」
純「どこまで前向きな発想なのよ」
放課後 軽音部部室
律「謎はないけど、なぞなぞはどうだ」
澪「上は大火事、下は洪水。みたいな事か?」
律「そうそう。そういう奴」
紬「答えはお風呂だった?謎というか、とんちの部類ね」
律「まあな」
唯「・・・で、とんちってどういう意味?」
律「ほら、そこで泳いでるだろ」
澪「いや。それトンちゃんだし」
紬「やんが無いわよね」
唯「ムギちゃん。やんじゃないよ。ゃんだよ、ゃん」
律「聞く限りだと、何も違いは分からんけどな」
カチャ
梓「・・・済みません、遅れました」
唯「右は大火事、左は洪水。これーなんだ」
梓「急になんです。・・・ライブ中の軽音部じゃないんですか」
唯「どういう事?」
梓「澪先輩が右で照れてて、私が左で冷や汗かいてる構図です」
律「上手い事言うな」
紬「うふふ」
梓「で、答えはなんなんですか?」
唯「給湯器付きのお風呂だよ。右の蛇口からお湯が出て、左のバスタブに溜まるの」
梓(ひねりの欠片もないし、それだと両方火事だし)
澪「とんちはもう良いから、練習するぞ」
律「へいへい」
カチャ
さわ子「あら珍しい。あなた達、演奏するの?」
唯「だって私達、軽音部だからね」
梓「いや。唯先輩が言っても、説得力の欠片もないんですが」
唯「あずにゃん、しどいよ」
紬「まあまあ。さわ子先生、今お茶の準備しますね。お菓子の用意もするから、梓ちゃん手伝ってくれる?」
梓「はいです」
さわ子「ありがとう。・・・そうね。ムギちゃん達がいない間、3人だけで演奏してみたら?」
律「大丈夫か?」 ちらっ
澪「構成としては、特に問題はないが」 ちらっ
唯「面白そうだし、やってみようよ♪」
梓(全然分かって無いな、唯先輩)
5分後
じゃじゃーん
唯「・・・あれ?」
さわ子「まあ、予想通りの結果だったわね。華やかさに欠けるとでも言うのかしら」
律「ムギと梓が抜ければ、メロディは唯一人だからな」
梓「はいです」
唯「へ、下手じゃなかったよね。失敗もしなかったよ」
澪「それはそうなんだが。結局、普段からムギに頼ってたって訳だ。アレンジもあるし、私達にも言える事なんだが」
唯「私はこれからも、みんなを頼っていくつもりだよ。それじゃ駄目なの?」
澪「え?」
唯「私の足りない所をムギちゃんが補ったり、りっちゃんや澪ちゃんが補ったり。あずにゃんが助けてくれたり。私は、ずっとそうしたいんだよね」
澪「まあ、バンドとしてはそれでありなんだが。私もリズム隊として、律を頼る時もあるし」
梓「はいです」
律「なんか、上手く唯に言いくるめられたって感じだな」
紬「お茶、入りましたー。・・・みんな、どうかしたの?」
唯「ムギちゃん、ムギちゃん。私、一生ムギちゃんのお世話になるからね」
紬「大歓迎でーす♪」
律「・・・少しは否定しろよ」
澪「まあ、ムギらしいと言えばムギらしいが」
梓「唯先輩らしくもありますね」
唯「あずにゃん、それ褒めてないでしょー」
律、澪、紬「あはは」
唯「自分に足りない物は、他の仲間が見つけてくれる。つまりバンド探偵とは、そういう意味だったんだよ」
律「この野郎、上手くまとめやがって」
さわ子「一体、何の話?」
澪「昨日から、ミステリーについて色々話し合ってまして」
さわ子「あなた達、そういうの好きね。というか唯ちゃんも助けてもらうばかりじゃなくて、自分もみんなを支えないと駄目でしょ」
唯「う、うぅ。これから精進しますです」
澪「でも唯は家で結構練習してるみたいだし、その成果は少しずつ現れると思うぞ」
紬「私も唯ちゃんと演奏してると、とても楽しいわ」
唯「澪ちゃん♪、ムギちゃーん♪」
さわ子「全く、二人とも甘いんだから」
律「さわちゃんはあれだろ。酸いも甘いも噛み分けた、長い人生の終着点を迎えてるんだろ。だははー」
さわ子「だったらお前には、砂を噛むような思いを味あわせてやろうか、このデコッパチ」
律「あー、ひどい目にあった」
澪「自業自得だ。ただ他の人を頼るのも良いが、やっぱり各々が自分のスキルを磨いていかないとな」
律「真面目な奴め。・・・唯、何してるんだ」
唯「皆さんの足手まといにならないよう、コードの練習をしてますです。はい」 びびーん、びびーん
律「いや、全然押さえられてないんだが。大体、どういうコードなんだ?」
唯「C7/B♭だよ」
梓「・・・そのコードは、結構ハードルが高いと思いますよ」
唯「あずにゃんでも無理?」
梓「私は手が小さいので、余計無理です」
澪「私の場合は大きすぎて、逆に難しいけどな・・・」
梓「え、えーと、澪先輩。こういう時は、普通簡素化しますよね」
澪「ああ。それにB♭の部分はベース部分だから、私の担当だ」
紬「となると残るのは、C7。唯ちゃんも、それなら弾けるわよね」
唯「うん、大丈夫だよ。みんなありがとー。本当にありがとー」
律「いやいや。改まって言われると、ちょっと照れるな」
澪「お前は何もしてないだろ」 ぽふ
唯「やっぱり私達は、バンド探偵。5人揃えば、出来ない事は何も無いよ」
澪「まあ、そういう事になるのかな。勿論、日々の努力があっての話だけど」
紬「これで一件落着。日本海へ行くのは、次の機会までお預けね」
梓(次って、どういう機会?)
澪「それとバンド探偵として続けていくからには、もっと練習しないとな」
律「・・・ちょっと待て。謎はまだ残ってるぞ」
紬「やっぱり日本海?それとも、安楽椅子かしら?」
唯「警察犬なんてどうかな。私、可愛いコリー犬をもふもふしてみたいんだよね」
律「いや。二人とも、話がずれてるから」
梓(警察犬の代わりなら、私にお任せあれ♪) くんかくんか
澪「それで、一体何が謎なんだ?」
律「軽音部が設立された経緯自体がだよ。これって、結構ミステリーだと思わないか?」
澪「そう言われてみれば。ムギは合唱部志望で、梓もジャズ研に行こうとしてんだよな」
紬「ええ、まあ」
梓「そんな時もありましたね」
律「唯も、初めはギター弾けなかっただろ」
梓「そこまで行くとミステリーどころか、殆ど奇跡ですね」
唯「そんな事無いよ、あずにゃん」
梓「え?」
唯「りっちゃんがいれば澪ちゃんがいるし、ムギちゃんが訪ねてくれば絶対放っておかないよね」
律「それは、まあ」
澪「実際そうだったからな」
紬「仮に訪ねてこなくてもギターケースを担いでる梓ちゃんを見かけたら、私絶対声を掛ける自信があるわ」
梓「私もムギ先輩に声を掛けられたら、間違い無く付いていくでしょうね」
律「そう言われると、私達が集まったのも必然って気がしてくるな」
唯「でしょー♪」
梓「でも待って下さいよ。音楽もやってなくてギターケースも担いでない唯先輩とは、どこで出会うんですか?」
唯「ちっ、ちっ、ちっ。あずにゃん助手、それは非常に簡単な話だよ」
梓「はぁ」
唯「お茶とお菓子あるところ、
平沢唯あり。だから私は、何があろうとここにいるんだよ♪」
律「それは軽音部と、何一つ関係無いだろ」 ぽふ
澪、紬、梓「あはは」
終わり
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
ギターコードの部分に関しては、ネット上の情報をパク・・・。
参考に致しました。
テーマとしては、「何も起きてないし、何も解決していない」ですね。
最終更新:2012年10月03日 19:25