それから数日後直の部屋


直 < ふとん敷く?

菫 < うん。眠たくなるまでおしゃべりしたい

直 < 明かりは点けっぱなしでいっか


直「変わったよね 中野センパイ」

菫「うんうん 憂センパイも驚いてた。変わりすぎて誰かと思った、て顔だった」

菫「スキンシップ大好きならもっと前からしてくれていいのに~♪」

菫「ああーいいなぁ直ちゃん! 先輩に抱きつかれて」

直「アレ最初 首にへんな力かかったのがキツい……」

菫「そうなの? おかしいなぁ 苦しくないはずだけど…」

菫「どうやってたの? やってみるよ」

直「うしろから首に腕をまわして…」

菫「うんうん こうして」

直「首の右側からぶら下がるように体重をかけて…」

菫「あっ こう」

直「うん で、これを飛びかかりながらやると」

菫「あー そういうことかぁ」

菫「梓センパイの体重なら首折れないよ」ニコニコ

直「うちの弟で試してみようか? 菫が」

菫「良いよ! ぜんぜんOKっ!」

直「いや冗談なのに…」

直「…でも、ああいう先輩も良いと思ってる。このごろ私たちに親身になって接してくれて、うれしい」

菫「ね! 無邪気な梓センパイもっと見たいね~♪」

直「・・・・・・菫、熱でもあるの?」

菫「えっ なんで?」

直「いや…………」

直「ここに来てから言ってることが キモい 」

菫「えっ……!?」

菫「……ほんとだ。ごめん///」

直「菫の意外な一面も明らかに……」

菫「ち ちがうよ!! お泊りだからテンションおかしくなってるだけ!!///」

直「ふぅん」ホクホク

菫「ほんとうだから!!」

直「うん わかってる。弟たちも泊まりがけの旅行すると、家よりうるさくて…。四人で騒ぎ放題」

直「そうでしょ? そこッ こっちからもドアの隙間から見えるんだよッ」

 「 」「 」「 」「 」

菫「頭が四つ並んで串団子みたいになってる…」キューン




菫(――そんなこんなで 私たち五人は学祭ライブを迎えました)


菫(舞台袖では 梓先輩が再び歌唱力に自信を失くすハプニングがありましたが…)


菫(恥ずかしながら、私の頼りない言葉でどうにか勇気づけることができ、無事ライブに臨めました)


菫(舞台上から見渡すとひたすら人ばかりで、去年の学祭ライブもこれだけ居たんだと驚きました)


菫(舞台が開幕した頃から頭が真っ白になってしまい、ライブ中のことはほとんど覚えてません…。録画で観たのとはまるで迫力が違い、ひたすら圧倒されたからです)


菫(だけど 楽しかったことは憶えています)


菫(それは私だけではなかったようです)



憂『いつも通りやれば大丈夫だよー』


純『あー楽しかったー!!』



菫(憂先輩と純先輩。二人は終始爽やかな笑顔を浮かべていた、とさわ子先生は言ってました)



直『先輩方お疲れ様でした!!』



菫(楽器パートのない直ちゃんはPAという、弾いた音を大きくしたり小さくしたり調節して幾つものスピーカーに送る、ミキシングの機材を操りました)


菫(また今日という日までに、自分の曲を聴かれる緊張も解けたらしく自信満々でした。自信のついた直ちゃんは凄いですよ?)


菫(ライブには満足できたと、本人から聞きました)



梓『ありがと!!』



菫(一番 一生懸命だったのは梓先輩だと思います。ドラム初心者のわたしがドラムパートを無我夢中で叩くように、梓先輩はボーカルに尽力を注ぎ、しかもギターパートをこなさなければなりません)


菫(そんな梓先輩の勇姿は真っ白な私の頭にくっきりと焼き付きました)


菫(必死な歌声、勇敢で小さな背中、汗ばんだうなじ、頬をつたい滴る汗露…………どれも魅力的でした)


菫(ただアンコールの時、練習したことのない"ふわふわ時間"を振ってくるたのは勘弁してください……もちろんグダグダ時間になりました。観客の皆さんにウケたのは幸いです)


菫(こうして私たちの学園祭ライブは幕を閉じました)


菫(直ちゃんたちや先輩方の様子から察するに大成功のようです)


菫(さきほど言ったように私は、ライブの最中のことをほとんど覚えていません。なので大成功を修めた実感が湧きません)


菫(それはもったいないことと思われるかもしれません。でも私はこう思うことにします。記憶が流れて空くことも含めて思い出なのです、と)


菫(そう、すべて思い出。わたしの頭でこぼさず覚えてられなくても、ライブは録画してもらってるからこれで良いのですっ)


菫(音楽に触れるようになって数ヶ月。短い期間でたくさんのことを教わりました)


菫(楽しい時間を与えてくださって、ありがとうございました)



菫『先輩方お疲れ様でした!!』



梓「それじゃ 今日は解散!!」

菫「はあ疲れた~身体動かしたくない……」

直「家に着くまでがライブだよ」

純「それは遠足じゃん…」


憂「あっ 梓ちゃん。部員だけで話したいことあるから部長は先帰ってて」

梓「えーっなにそれ!?」

憂「いいから いいから ほら早くっ」グイグイ

梓「ちょっ 私だけのけ者は酷くない? ってか押し出そうとするなーっ!」

憂「ばいばーい♪」

梓「もうなんなのよーー!!」

菫直「    」

純「やれやれ」

憂「さてと♪」

純「どーせテキトーにダベるんでしょ」

憂「うん!」

菫「あの…話が見えないです……」

直「じつは梓先輩はハブの対象なんですね」

菫「ダメですよぅ仲間外れは!!」

憂「ちがうよー!?」

純「梓を一人で帰らせる……いや行かせる……」

純「アンタってやつは…」

憂「仲間外れじゃないよー…?」ウルウル

純「お人よしの憂がそんなことするわけないじゃん」

憂「ありがとー♪」

純「ズバリッ 泣くね。梓のやつ」

憂「うん、きっと♪」

純「あー羨ましい。周りに恵まれすぎでしょ」

菫「結局どういうこと…」

直「さあ……」

憂「うふふっ とっても良いことがあるの、梓ちゃんにとって」

菫直「?」

憂「わたしたちがジャマしちゃわるいでしょ?」
















次の日


菫(お おはようございます…わかばガールズのドラムパート担当、斉藤菫です……)


菫(突然ですが事件です。私にとって一大事な光景が目の前に在ります)

菫(昨日ライブのあと梓センパイは言いました。明日、つまり今日からまたドラムパートの特訓を私にしてくれると…)


菫(残念ですが今日は不可能です。私にはとても解決できません…ッ)


菫(わたしは 唯 見守るしか…!!)



梓「Zzz……」

菫「ほわぁぁ、、、」

梓「Zzz……」

菫「(あ、あずさセンパイが机に伏せておやすみになってて こっちに向けた寝顔が 、寝顔が、超)か、か、かわ、かわ、かかか、」

梓「Zzz……nya…」

直「梓先輩が昼寝するなんて珍しいですね」

憂「一晩中寝つけなかったらしいよ♪ 朝からずっと眠そうにしてて、休み時間は寝て授業は起きるのを繰り返してたの」

憂「放課後になって部室着いたらとうとう限界きちゃったみたい。よく頑張ったよ~」

直「頑張りましたね。逆に菫は授業中ガッツリ寝てました」

憂「あははっ」

直「梓先輩 学園祭が終わってイメチェンするんでしょうか。今みたいに後ろ髪を一つに束ねて。アリですね」

憂「明日には戻ってるよ」

直「即答っ? ……ところで、」

直「…さっきから私たちの顔を覗き込んで何したいんですか純先輩…」

純「  !」

憂「純ちゃんはね、梓ちゃんのお昼寝をジャマしすぎて罰ゲーム課されちゃったの」

憂「今日一日おしゃべり禁止なんだよね? 周りにも伝わるようにバッテンマスクもセットで」

純「  !  !」

直「それは自業自得ですね…」

直「でもコミュニケーションとるの大変じゃないですか これだと…」

憂「だいじょうぶっ 見てたら言いたいことわかるから」

直「おおっ」

憂「ちなみに ついさっき言いたそうだったのは『そんなことより! 早く勉強したい!』だよ」

〇「  !!」首プルプル

憂「ほら合ってた」

直「首横に振ってますよ……」

菫「直ちゃん! 見て見て! センパイのほっぺを指で凹ませてたら擦り寄ってきたの!!///」

梓「Zzz…fuu……」

直「ひとりで何やってるの…騒ぐと梓先輩起きるでしょスミレ。あとキモい」

憂「スミーレちゃんってあんなキャラだっけ…」

菫「ハーッ!! すいません! 珍しいセンパイを見れてつい観察…じゃなくて感極まって…///」

憂「あはは…寝顔かわいいよね。でも寝かせてあげて?」

直「あんまりちょっかい出してるとこうなる」

純「   !」

菫「うわぁ……」

直(もしかして菫って、アレが本性……?)



梓「Zzz……みたかぁ…これがわかばの…わ…たし………zzz」


おしまい



おまけ


菫「お姉ちゃんにはライブ見に来てほしかったなぁ」

紬「あら ちゃんとスミレのこと観てたのよ?」

菫「居たの!?」

紬「わたし変装するのが夢だったの~♪」

菫「普通に来てよぉ 気づかなかった…」

菫「ハッ まさかライブの録画してくれた人って」

紬「わたし! あっ録画したビデオ観たかったらお父さんにもらって。観たいって言うから渡したの」

菫「旦那様が!?!?///」

紬「うん 斉藤といっしょに観るって」

菫「お祖父さまと…。わあああ! わたしが先に観るべきでしょふつう!!///」

紬「ごめんね~♪」




最終更新:2012年10月04日 21:08